【旧作】『仮免提督といじわる空母』【ログ】   作:萩原 優

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お待たせしました! 最初の決戦です!


第16話「鎮守府は最初の試練に向かう」

”夜戦! 夜戦! 夜戦!”

 

軽巡川内のインタビュー

 

 

 

 翌日早朝、夜を徹して南進した我が空母機動部隊は、黎明と共に艦載機の発艦を開始。〔紫電改〕及び〔海燕〕戦闘機に護衛され、爆弾と魚雷を抱えた〔流星改〕が飛び立って行く。〔五式戦〕を艦上化した〔海燕〕は若干旧式だが、これは工廠のキャパが足りずやむを得ない措置だった。それでも練度の面では深海棲艦の上を行くと読んでいる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 敵の情報は潜水艦からの情報で筒抜けだ。無論我が方の位置も特定されているだろうが、こちらはどうせ正面からぶつかるつもりなのだ。

 

 彼女たちの役割は、「敵空母を潰す」事だ。正確には速力低下でも飛行甲板の破損でも何でもいい。艦載機を使えなくする事だ。そうすれば機動部隊は余裕を持って二の矢が放てるし、進撃中の戦艦部隊への空襲も防げる。

 

 攻撃隊の護衛は〔海燕〕が担当し、妖精改造で高高度性能を底上げされた〔紫電改〕は編隊上空をカバーする。これは津田大佐の方針だ。

 

 数刻後、高高度を進撃中の〔紫電改〕が、同高度で待ち受ける艦戦と激しい空中戦が行われる。これにより、我が方の攻撃隊を上空から逆落としに攻撃する敵艦隊の意図は潰えた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「奴ら、少々思い切りが良すぎたな。中高度での護衛機をもう少し増やすべきだった」

 

 と言うのは津田大佐の評でえある。

 

 突入した雷撃機は輪形陣外周の駆逐艦・軽巡洋艦を突破し、敵空母に殺到する。雷撃機が敵の目を低空に引きつけたタイミングで、上空から〔流星改〕が800kg爆弾をヲ級・ヌ急に叩きつける。致命傷には至らないが、艦載機の使用は不可能だろう。

 

 続く第二次攻撃隊が到着。手負いの空母に止めを刺し、そればかりか護衛の戦艦にまで直撃弾を放り込み、雄祐と引き上げて行く。

 

 第一次攻撃隊の収容後、第三次攻撃隊の発艦準備完了。ここで、ひとつの選択肢が生じる。

 

『意見を聞いておく。第三次攻撃隊は生き残りの空母を叩くか、第二艦隊(長門たち)を支援するために、無傷の戦艦群に食らいつくか。お前ならどちらと戦う?』

 

 帰還を務める空母赤城は、通信機越しに獰猛な笑いを浮かべた。

 

「……もちろん、強い方と!」

 

 津田大佐は命令を下す。彼もまた、勝ち誇った笑みを浮かべながら。

 

『第一艦隊は転進し、敵戦艦部隊を攻撃せよ! 第三艦隊はこのまま前進! 手負いの獣(機動部隊)に止めを刺せ!』

 

 雲竜型を中心とした第三艦隊を、後詰に回したのは技量の問題ではある。だが、素地において第一艦隊の面子に劣るわけでは断じてない。ベテランたちのサポートに徹すれば十二分に活躍が見込めるし、それによって得られる経験は大きなものがあるだろう。

 

 第三次攻撃隊は北上中の戦艦部隊を発見、ト連送と共に攻撃を開始する。〔流星改〕の数が不足していたため火力が足りず戦果は軽微であったが、護衛の軽空母はきっちりと沈めた上、防空戦闘により陣形をバラバラにした。そこに潜水艦が襲い掛かる。

 

 長門旗下の戦艦部隊が到着した時、陣形は組み直されたばかり。敵は完全に余裕を失っていた。

 

「各艦、今までの鬱憤を叩きつけてやれ! 撃ち方はじめ!」

 

 指揮官を失って意気消沈していた東の果ての鎮守府は、新たな提督を得て再び深海棲艦に牙を剥いたのだ。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

丹賑島鎮守府 中央指揮所

 

「……姫クラスが居ない」

「あっ!」

 

 ぼそりとつぶやいた言葉に、大淀が反応した。ベテランの彼女も、久しぶりの大戦(おおいくさ)で状況に埋没してしまったらしい。

 拠点のボスである姫クラス。あれが一番の脅威だから、見逃すわけにはいかない。

 

「まさか、1隻だけ硫黄島に残って籠城する気では?」

 

 確かにそれもひとつの戦術ではある。艦隊で籠城すれば資源は直ぐに底をつくだろうが、姫クラス1隻だけなら長期間粘る事が出来る。

 ただ、今までの深海棲艦を思うと、どうもしっくりこないのだ。いくら合理性があったとしても、働き蜂が女王蜂を見捨てるだろうか?

 

 そもそも、敵の取れる手段はそう多くはない筈だ。瑞鶴も言った。

 

『捨て鉢になって突っ込んで来るか、逃げちゃうかじゃないんですか? あ、あと敵から奪おうとするかも』

 

 突っ込んでくるわけでも、略奪を狙う訳でもない。なら、残りはひとつ……。

 

 俺はレシーバーを繋ぎ、第一、第三艦隊の直掩を担当している龍驤ら軽空母部隊を呼び出した。

 

『なんや司令官? うちらも前に出るんか?』

「残念ながらその逆。艦隊を分派して、北東方面を偵察してくれ。大物がそっちに行く可能性がある」

『了解や!』

 

 深海棲艦が総出でひとりの姫を逃がす。前例は無いがありえない事じゃない。姫クラスがいれば拠点は立ち直れるのだ。

 

 数刻後、祥鳳所属の〔彗星〕が、北上する小艦隊を発見。その中に姫クラスを確認した。直ちに足止めの攻撃を命じるも、待ち伏せしていた潜水空母から例の新型艦載機が発艦。祥鳳率いる分艦隊は恐慌状態に入ってしまう。

 新型はスピードこそ速いが動きが単調で迎撃も容易。前回のように不意を突かれさえしなければ。だが結果的に今度も不意を突かれた。結果的にこちらが足止めを食らう事になった。

 

「こいつは、また皆の前で謝らんとな」

 

 もはや苦笑するしかない。敵を罠にかけはしたが、土壇場でしっぺ返しを食らった。パーフェクトゲームなど期待するべきではないと思いつつも、悔しいものは悔しい。

 

(しかし、あの囮の使い方、まるで先輩みたいだな)

 

 彼が生きていたらこの上なく嬉しいが。

 もし、深海棲艦に……。

 

(やめよう。妄想の域だ)

 

 日は沈みつつある。空母の天下から、砲雷撃戦の時間となる。

 突撃を告げる報告は川内からだ。さぞ良い顔で舌なめずりしている事だろう。

 

 とにかく、この戦に勝つことだ。

 

 そうじゃないと、俺はこのまま仮免提督だからな。




今回も模型の解説をば。

〔紫電改〕
作中の〔紫電改〕は〔零戦〕の正式な後継機になりますが、技術的にはかなりブーストしています。
誉の排熱問題を解決する為、特に〔B29〕と同じターボチャージャーを装備していますので、エンジン出力が別物です。

〔海燕〕
艦上化した〔五式戦〕です。機体が〔零戦〕より頑丈なため、カタパルトの使用に適しています。過給機が一段式なので、低空中空専門の機体ですが、使い勝手が良いため、〔瑞山〕と共に護衛空母で重宝されてます。

↑の機体は拙作の一次創作にも登場しております。
『王立空軍物語』
https://ncode.syosetu.com/n2895gx/
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