【旧作】『仮免提督といじわる空母』【ログ】   作:萩原 優

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今回は模型出ます。お楽しみに(`・ω・´)b


第7話「提督のお昼休み(2日目)」

”キタコレ!”

 

駆逐艦漣のインタビュー(サムズアップを決めつつ)

 

 

 

 今日も執務室から追い出された。

 

 流石に映画ばかりも健康的じゃないし、摩耶にたかられたらもう酒が無い。

 よって久しぶりにランニングで汗を流し、ひと風呂浴びた。

 

 が、まだ非番の時間は終わらない。

 海自時代は半舷上陸があんなに楽しみだったと言うのに、いざ遊べと言われるとすることが無い。

 町の商店街(と言ってもあるのはスーパーくらい)で酒とつまみを調達しても良いが、島民の為に輸送した物資を、軍のトップが買っていったら印象悪かろう。

 

 そこで、明石が倉庫に使っているガレージに、「貸出可」と書かれた釣り具がある事を思い出す。

 せっかくの風呂上がりに海風を浴びるが、船乗りには気にならない。

 

 喜び勇んで桟橋に下りた時、遠方で水柱が上がった。

 体を震わせるが、実弾にしては爆音が小さい。

 額に手を当てて見上げる。妖精制作の特別性だ。

 

「あれは……、瑞鶴たちか」

 

 先頭切っている彼女は、自ら艦載機に指示を与え、模擬弾を投下している。攻撃役は〔瑞山〕艦爆だな。〔瑞雲〕を陸上化したやつで、器用貧乏だが扱いやすい機体だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 雲龍たちは陣形を保ちながら追従する。

 正直なところ、先頭の瑞鶴以外練度はまだまだというところだ。

 

「釣りなら今日はもう無理じゃない?」

 

 双眼鏡を外すと、釣り糸を垂らすサイドテールが見えた。曙だ。

 確かこれでは魚は逃げてしまったろう。

 

「ならお前は何でそうしてるんだ?」

「精神統一よ」

 

 ぴしゃりと返され、若干傷ついた。

 邪魔をするなという事だろう。俺は背中を向けてその場を去ろうとする。

 

「何してんの? となり空いてる」

「……」

 

 言われるまま桟橋に腰を降ろす。

 話し相手になってくれるという事だろう。

 

「敵機が投弾してから回避するやり方だな。エンガノで伊勢型がやってたやつだ」

 

 瑞鶴はあれを見る前に沈んでいる。うちの伊勢型は大規模な空襲を経験して無いから観る機会も無かったはずだ。おそらくだが、自分で調べて2人に聞いたんだろうな。

 

「あいつがそんな地道なやり方を取るとは思わなかった。もっと猪突する印象だったんだが」

「……変わったのよ」

 

 変わった、か。

 そう、確かに変わったのだろう。

 

「変わらざるを得ないじゃない。強くなるしかないの。大切な戦友を失ったんだもの」

「……どうしてそう思う?」

「私が瑞鶴さんならそうするからよ」

 

 違いない。彼女の意志の強さは先輩からも漣からも聞いている。

 俺はどうだろうな。自慢じゃないがメンタルの弱さには自信がある。尻尾蒔いて逃げ出すだろうな。実際そうなった結果ここにいる。

 

「シャンとして。ちゃんとクソ提督(前任)の後を継いで」

 

 昔の俺なら、任せろと奮起したかな?

 今の俺には応えられそうにない。

 

 曙も返答を期待したわけではないらしい。黙って水面を見つめている。

 

「どうしてそんな事を言う? 皆俺が嫌いか、無関心だろ?」

 

 自虐ではなく、素直な疑問だった。

 曙は鼻を鳴らす。「そんな事も分からないのか」と言わんばかりだ。

 

「漣よ」

「……そうか」

 

 曙とは同じ七駆の仲間だ。漣を俺の教育係に引き抜く時も、随分と抗議されたと言うのは先輩の弁だ。

 

「漣が付きっきりでこんな腑抜けを育てたかと思うとむかっ腹が立ったわよ。でも本人に『信じてあげて』なんて珍しく真顔でいわれたらね」

 

 そんな事いってやがったか。

 本当にあいつには迷惑をかけている。

 俺には先輩のような慕われる提督は無理だ。だけど先輩の宿題を片付けたら。

 ちゃんとこいつらに向き合うべきだ。

 

 好かれようと。嫌われようと。

 

「ところで、養成機関で漣はどうだったわけ? あいつが”ご主人様”と呼ばせるのは今までクソ提督以外に居なかったわよ?」

 

 本題は済んで、世間話の時間になったらしい。

 近しい人間の別の顔を知りたいと思うのは、別に艦娘だけではあるまい。

 

「別に、特別な事はしてないぞ? 昔のネット文化について意気投合して、それから話してるうちいつの間にか」

「ちょっと、あれの変な趣味を助長しないでよ? こっち(令和)に来て突然変な事を言い出した時には頭を抱えたんだから」

 

 あいつの変なネットスラングは艦娘になってからなんだな。

 よく考えたら昭和初期に「キタコレ」とか言い合わんか。

 

「まあ、せっかく気に入られてるんだから、妹分をぞんざいに扱ったりしないでね。やったら殺すけど」

「しねーよ。大体妹分なんかじゃない。あっちが姉貴だ」

「そうなの?」

 

 初めて言葉の奥にあった剣が消えた。

 意外な事実を突きつけられたのと、単純に興味があったのだろう。

 

「あいつ結構えぐいぞ。『あれれー、ご主人様ほどの提督がこんな事できないわけないですよね?』なんてヤバい量の課題を出してくる。で、意地になって片付けると『ご主人様なら当然ですよね。次行きますヨ』ときたもんだ」

「あー、確かにそういうとこあるかも。一度潮がそれでドン引きしてたわ」

 

 あいつとしても必死だったろうな。先輩からの期待もあるし、戦線の拡大で提督の増員は急務だったからな。海軍も資質を持つ者を探し回っている。それが民間の、船乗りの経験すらない若者をスカウトしているありさまだ。

 さぞプレッシャーは大きかっただろう。おくびにも出さないが、あいつはそう言う奴だ。

 

「で、くたくたになって部屋に戻ると、特に疲れた時だけ置いてあるんだ。今時貴重な菓子とか栄養ドリンクとか、たまにだけど缶ビールとかな。本人はとぼけてたけど、他に誰がやるってんだろうな」

 

 共通の人間を肴にしておしゃべりは楽しいものだ。

 だから、ちょっと気を緩め過ぎた。

 

 顔を上げた時、真剣な瞳に出迎えられた。

 

「……あんたさぁ」

 

 何を言われるのか、彼女の意図を掴みかねた。

 だからこそ、虚を突かれたのだ。

 

「漣にしてもらったことを、そのまま皆にやれば全部解決じゃないの?」

 

 俺は、何も言えなかった。




本日の模型は艦上爆撃機〔瑞山〕です。「瑞星」にするとエンジンと被っちゃいますのでこの名前になりました。

ご覧の通り〔瑞雲〕を陸上機化した機体で、その使い勝手の良さを引き継いでいます。爆撃の他に雷撃も行え、『いつ海』よろしく少々の空中戦なら行えてしまいます。

ただ、25番爆弾と小型魚雷しか搭載できない為、便利であっても〔流星〕を補完する戦力に留まっています。

まだ練度が低い雲龍たちは、使い勝手のいい〔瑞山〕で経験を積んでいると言う事ですね。

あと当然ながら戦艦には搭載できません。日向さん( TДT)ゴメンヨー


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


〔瑞山〕は拙作の一次創作作品『王立空軍物語』に登場する機体で、友人の谷利氏に作って頂いたものを許可を頂いて公開ししています。

王立空軍物語 第1部『鋼翼の7人』編
https://ncode.syosetu.com/n2895gx/
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