相澤くーん、私を殺してくれよー   作:科葉諸友

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ハッピーエンドプランを考えた

 所謂、超常黎明期になる前。個性なんてものが一般に知られていない程にレアだった時代に生まれた私は、無個性で弱っちくて、20になる前にコロッと死んだ。気づいたら死んでた。多分、個性関連の事故に巻き込まれたんだろうけど、突然死んだので明確な死因は分かっていない。まあどうせオールフォーワン(例のクソ野郎)のせいだろう。

 

 ここまでは一般的な悲劇で、当時じゃニュースにすらならない話。そしてここからが、少し特殊な悲劇だ。

 

 実は私は無個性じゃなかった。勝手に自分で命名するが、「転生」という個性を持っていた。それ故、知らない赤子に生まれ変わった。

 が、道端に捨てられた私は何もできずに死んだ。これが私の2()()()の生。

 そして転生して、その()の生では平凡な家庭にうまれ平凡に苦しみ死んだ。

 

 まあ、ここまで来れば流石に察しがついた。二度あることは三度ある。どうやら私の転生(これ)に関しては、三度どころか無制限に起きるようで。

 他殺2回、事故死2回、病死1回、自殺5回。計10回、色々条件を試してみて、どれもダメだった。周囲に転生先(赤子)がいないような太平洋のど真ん中で死んでみても、餓死してみても、アルミホイルで全身包んで死んでみても、無慈悲に新しい生がやって来るだけだった。

 

 なーんにも楽しくない人生×10数回で私は完全に疲れてしまった。

 辛い。死にたい。もう生きたくない。終わりたい。

 ひたすらそう願って、なんとか私を終わらせる方法を探して11回目の生を生きていた時、私は彼に出会った。

 

 10回目の生では「個性」について深く知るために研究者になって、それでも良い策は見つからなかった。だから今生では、個性の扱いに関して高い技術を持つ「ヒーロー」になる予定だった。

 そのために、まずは雄英高校ヒーロー科に入って、さあ学ぶぞと意気込んでいた高校一年の春。

 

「相澤消太です。個性は抹消です。よろしくお願いします」

 

 私の隣の席になった彼は、自己紹介でそう話した。個性を消せるというのだ。

 個性が消えた状態で死ねば、私の個性は発動しないのではないだろうか。

 

「ねぇ、相澤君。私を殺してくれない?」

 

 気がつけばそんな言葉が出ていた。

 

 断られた。

 

 

 ◆

 

 

「おはよう相澤くん。昨日はいきなりごめんね。あれから色々考えたんだんだけど、確かに今の日本において殺人というリスクは相当に大きいよね。いや、そもそも人死にが出る時点でかなり危ない橋だ。なにせ止められる自殺を止めないだけで責められる社会だもの。昨日の私の提案は合理的でなかったよ」

 

 さて入学式翌日だ。昨日のキルミー発言は良くなかった。これまでの2桁を超える前世であまりに軽々と死んでいたため人の死が持つ影響をすっかり忘れていたが、まあ殺してくれと言われて殺してくれる人はそうそういないよね。

 そんなわけで、代案だ。

 

「だから代わりに、私のバディになってよ。君のバディにさせて」

「……何がどうしてその結論になったのかはこの際置いておくとして。バディってのは、今度行われる戦闘訓練の話か?」

「あー、うんそうそう」

 

 まあ至極簡単ですごく簡単な話。何も相澤くんに殺してもらう必要はないのだ。相澤くんがいる時にうまーくヴィランに殺してもらうとか、うまーく事故死するとかすればいい。そのためには相澤くんと友好関係築かなきゃだからね。

 とりあえず目標はバディ、もしくはサイドキックになることだ。そして理想を言うと、それになるよりも前にさっさと死にたい。

 

「おはよう!!今日も朝から飛ばしてるね天井さんッ!!」

「山田くんおはよう」

 

 話しかけてきた彼は山田ひざし。声が大きい人だ。彼もまた相澤くんと仲良くなろうとしている。やっぱり彼も死にたいのだろうか。

 

「ところでその髪!その目!その制服!どうしちゃったのさイメチェン!?」

 

 さて、目標「相澤くんと仲良くなろう」を達成するために、とりあえずは見た目から変えることにした。

 死ぬために生きていた今までの自分は、オシャレのオの字すらなく、化粧もしなければ髪の手入れもしておらずボサボサに伸び放題。総評すれば良くて芋娘、悪くて貞子と言ったところだ。

 前世は研究ばかりで人との関わりが限りなく薄かったので忘れがちだが、人間見た目は大事である。中身と見た目どっちが大事とかそれ以前に、見た目がまともじゃない奴は大抵中身もまともじゃないのだ。特に清潔感は大事。

 

 そんなわけで私は、常人の数倍の年月積み重ねた知識が導き出したパーフェクト美少女フォルムに変身した。

 何の変哲もない黒色だった髪は綺麗な金髪、はちみつ色に変化。ボサボサの髪もストレートパーマをかけて綺麗なロングに。ついでに目にもカラコンを入れてこちらもはちみつ色にした。化粧もバッチリ決めて、スカートの裾も上げた。膝上20センチ!

 

「どう?相澤くん。これネットで童貞が好きなファッションって載ってたの」

「待て、俺を童貞扱いするな」

「それでほら、どうなの?感想は?」

「……まあいいんじゃないか」

「んもう照れちゃって相澤クンったら!!というか天井さんグイグイ行くね!!相澤くん狙ってる感じ!?オ・ア・ツ・イ感じー!!??」

「概ねそうだね」

 

 天井はちみつ(あまいはちみつ)。それが今世の名前だ。ちなみに今世の個性も「甘い蜂蜜」でもろ名前と被ってる。まあ個性が名前に似るというのはよく言われることだ。犬が飼い主に似るのと同じようなものだろう。

 

 と、そこで。

 キーンコーンカーンコーン。

 予鈴の音と共に扉が開き、白色のもじゃもじゃヘアの男子が入ってくる。

 

「セーーフッ!!いやあ危なかったな。これならギリギリ遅刻じゃない!おはようショータ、ひざし、あままままま!?何そのその髪!その目!その制服!イメチェン!?」

 

 彼の名前は白雲朧。声が大きい人だ。




 一応必須タグの「転生」入れたけど、おそらく意味が違う気がする。
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