「それで、調子はどうだい?」
「ああ、やはり君の言う通り、雄英の生徒を
「君が苦戦するなんて、珍しいね、
「どうも、精神が強すぎてのぅ……。上手く記憶と精神を弄ったんじゃが、弄ったそばからそれが修復されておる。ヒトの記憶は一部が欠けても他の記憶との関連から思い出すようにできておるが、こいつはそれが異常に速い。個性が絡んどるのかもしれん」
「へえ。どんな個性なんだい?」
「「甘い蜂蜜」。蜂蜜を出して操るという、記憶や精神とは全く関係ない個性じゃ。明らかに記憶を守るような個性が絡んでおるはずなんじゃが……」
「まあ、当初の予定では作るのは黒霧一体だけだったんだ。それが達成できれば問題ないよ」
「……そうじゃな、
◆
「これは傑作だ!蜜蝋、拘束しろ!」
死柄木に「蜜蝋」と呼ばれる女、その素顔は天井はちみつそのものだった。死柄木の発言から、「蜜蝋」は天井はちみつの死体をもとに作られた存在らしかった。
動揺を何とか抑えつつ応戦を続ける。死柄木の命令通りこちらを拘束しようとしてくる蜜蝋の個性を抹消し、死柄木を捕縛布で拘束する……が、その手に触れられ捕縛布が崩れていく。
「……っ!」
完全にそれが崩れ去るまえに個性を解除するも、天井……じゃない、蜜蝋の攻撃が飛んでくる。
「ははは!動きが鈍ってるんじゃないかヒーロー。動揺が隠しきれていないぞ?」
蜜蝋の攻撃、こちらに迫りくる粘性の強い蜂蜜が死柄木に伸ばしていた捕縛布に触れた。すると、触れた部分の捕縛布がどろりと溶けた。いや違う、
「チッ……!」
最悪のタイミングが瞬きと重なってしまった。急いで蜜蝋の個性を解除するも、蜂蜜に変わった捕縛布やコスチュームはもとに戻らない。まずい、死柄木の手を避けきれない。
「チェックメイトだ」
死柄木の手が頭に伸びる。その個性を消すも、代わりに抹消が解除された蜜蝋の個性によって拘束されてしまう。視界が死柄木の手で埋まる。
「1……2……3……4……」
死柄木がニタニタ笑いながらカウントを始める。抹消が解除された瞬間、俺は死ぬ。
「5……6……7……8……」
まずい、これ以上は……。
俺が個性を解除しかけたその時、突然蜜蝋の拘束が止んだ。何が起こったのかそちらを見てみれば、蜜蝋は自分の頭に手をあてていた。そして……
その頭を握りつぶした。
「……は?」
死柄木から漏れた声が俺の内心を代弁した。
地面にピンク色の肉片が散らばった。
◆
水中から物をながめているような、ぼやけた世界。私はながらくここにいる気がするし、そうでない気もする。
思考がぼやけてゆらぐ。
さっきから体がかってに動いている。白いかみの人が私を動かしているみたいだ。
どうやら私は戦っているようだ。
長いこと私はぼやけている。ぼやける前はなにをしていたんだっけ。わかんないな。
そういえば私はしにたかったのだっけ。なんで?わかんない。じゃあいいや。
なんだかさっきから勝手に体がうごいてるきがするなあ。黒い髪のひととたたかっているみたい。
あ、相澤くんだ。
相澤くんが私と戦ってる。死にそう。助けなきゃ。
じゃあかわりに私が死のう。
頭に手を伸ばして、握りつぶす。
◆
突如頭を握りつぶした「蜜蝋」の頭部に、欠損したところを補完するように蜂蜜が集まっていく。それだけでない。彼女の全身を覆うように蜂蜜が集まっていく。そしてその蜂蜜が別のものに
数秒でそれは終わり、そこに現れるのは若々しく透き通るような肌、そして蜂蜜色の目と髪。そしておまけに、雄英高校の制服。その姿は、相澤のかつての同級生、天井はちみつそのままであった。
「……あれ、生きてる」
天井はそう言葉をこぼし、現状の整理を始める。
やっと冴えてきた脳の中からできるだけの記憶を掘り起こす。
が、なぜかまだ死んでおらず、こうして通常通り思考ができている。
考えられるのは、植え付けられた個性。確か、「圧縮」、「変換」、「修復」の三つを
そのうちの「修復」は欠損した肉体を修復する機能があった。それが、脳というCPUがない状態で、つまり脊髄による反射反応で使われた結果、改造された
「なにをやっている蜜蝋……!早くこいつを拘束しろ!」
天井が何やらわめく死柄木に歩み寄る。その途中、新たに得た個性を使用し、蜂蜜を圧縮して棒の先端に球が付いた何かを作り出す。
「ハニー・ディッパー!」
そう言いながら、その手に持った鈍器で死柄木を殴り飛ばした。
「っ!?」
戸惑う死柄木を放置し、相澤の方を向いた彼女はかつてのように笑いかける。
「久しぶりだね、相澤くん」
何はともあれ、相澤くんがいるならそれでいいよね!
相澤に会えてニッコニコの天井。突如脳無に裏切られて困惑する死柄木。もっと混乱している相澤。オールマイトによってお空へ吹っ飛ばされる対平和の象徴脳無。増援として駆けつけてきた教師陣。
場は混沌を極めた。