相澤くーん、私を殺してくれよー   作:科葉諸友

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感想いつもありがとうございます。あと誤字報告もめちゃくちゃ助かってます。ボタン一つで誤字修正できるの最高です。もっとください(怠惰)


ヴィラン連合の秘密暴露会

 

「……あああ!どうなってんだくそッ!……ゲームオーバーだ。黒霧!帰って出直すぞ」

 

 そんなことを言って、死柄木と黒霧は逃げた。

 残ったのは、幽霊だと騒ぐひざしくんやタイムスリップを疑う香山先輩、私の存在がイマイチ信じきれていない相澤くんなどなど。そしてその混乱する現場を、二足歩行のネズミ?クマ?っぽい生物が収めた。

 とりあえず私は、医師による健康診断を受けることになった。昨日それも終わり、つい今朝健康診断の結果が出た。生命活動は問題なく行われており、一部を除き体は健康そのものだそうだ。

 

 で、今やっと感動の再会タイムだ。

 

「本当に、天井なんだな」

「そうだよ。その証拠に、私しか知らないことだってちゃんと知ってる。例えば私の右胸の下に黒子があるとか」

「それは俺も知らない」

 

 なんかすごい懐かしい。そうそう、相澤くんってこんなテンションだったよね。

 

「じゃあひざしくんが虫苦手とか?」

「おいおい久しぶりにあってそれかYO!!別に苦手でもいいだろ?!」

「おお、やっぱりまだうるさいままなんだ」

「うるさいってひどくない?俺のアイデンティティ!!」

「“個性”のダブルミーニングだね」

「ふふ、本当変わらないわねあんたたち」

 

 そう言うのは香山先輩だ。こちらも相変わらず露出の多い私服だ。懐かしい。

 いやあ、本当、奇妙な巡り合わせがあったものだ。これもそれもオールフォーワン(害悪)のお陰というのが複雑な気分だが。

 しばし四人で再会の喜びを分かち合ったところで件のネズミさん(どうやら校長だったらしい)が声をかける。

 

「さて、感動の再会のところ悪いけど、君が()()()()()の話を聞かせて欲しいのさ」

 

 病院のベッドに座る私を囲むのは、相澤くんにひざしくん、香山先輩、校長にオールマイト、その他もろもろの雄英高校教師陣だ。

 こういうのは普通、先に家族に話すらしいのだが、私の場合家族はオールフォーワン(またもややってくれた)関係で逮捕されてそれきり絶縁してるのでそれは飛ばした。

 そんなわけで、今日はオールフォーワン(例のクソ)の秘密暴露大会だ。

 

「オールマイトさん。これは確認なんですが、今代のワンフォーオール継承者はあなたなんですよね?」

「……!!どこでそれを……?」

「いやまあ、勘です」

「勘!?」

「まあそれさえ確認できれば問題ありません。ええと、そうですね、とりあえず私の視点で起きたことを順々に話そうと思います」

「いやちょっと待って!!」

 

 突然焦りだしたオールマイトが耳打ちで話しかけてくる。

 

「あ、天井君。実はワンフォーオールの話は秘密にしててね……」

 

 ああ、そういえばそうだっけ。

 

「なんで秘密にしているんですか?」

「オールフォーワンは私の代で討ち取った。奴に感化されたヴィランをこれ以上増やさないためにもこの情報は……」

「えっ、あのクソ野郎死んだの!?」

「クソ野郎って……」

 

 どうやら私が脳無をやっていた間に色々あったようだ。おばさん最近の話についていけないよ。

 私が死んだ時は確かに生きていた。ただ、私が改造によって思考不可の状態になってからは記憶が曖昧過ぎてよくわからない。てことはその間にオールフォーワン(あのゴミ)は死んで、死柄木はその遺志を継いだ、といったところだろうか。

 ……いや。

 

「オールフォーワン、まだ生きてるんじゃないかなぁ……」

「!?」

「ヴィラン連合、おもいっきりオールフォーワンの息がかかってますよ、あれ」

「!!??」

 

 オールマイト、リアクションが大きくて面白いな。

 誠に残念ながら、私の過去を話すうえでオールフォーワン(某外道)は欠かせない。滅茶苦茶本当に残念ながら。

 とはいえさすがに教師陣全員にオールフォーワン(はいはい死ね死ね)のことを話すわけにもいかない。結局、奴のことは「オールマイトと関わりのある、昔有名だった悪党」程度にぼかして話すことになった。

 

「一度死んでから私の目が覚めた時、私は水槽の中にいて、外ではオールフォーワンと“ドクター”と呼ばれる男が話していました」

「ドクター、か」

「脳無は、人間をもとに作られた改造人間で、個性付与や薬物投与、手術などで無理やり強化され、その負荷に耐えられず知能を失い命令を聞くだけの人形にされた存在、らしいです。で、その脳無研究に深く携わったのがドクターなんだと」

「……そうか。まったくもって悪趣味だが、奴の持つ個性を利用すれば可能だろうね」

「それで、死柄木はオールフォーワンの後継で──」

 

 

 ◆

 

 

「──で、ここから先の記憶はぼやけて分からないです。多分、完全に“脳無”になったのだと思います」

 

 あれからしばらく。大方喋り終えた、と思う。

 

「そうか……君はどうやってその“脳無”状態からもとに戻ったんだ?」

「オールフォーワンが私に与えた個性は三つ。圧縮、変換、修復。圧縮は蜂蜜の密度の調整。変換は、蜂蜜に触れたものを蜂蜜に変えられます。ただし生物は適応範囲外。それで、修復は自分の体の修復ができます。多分、修復の個性で脳を()()()んだと思います」

「……しかし、そんな簡単に解けるような洗脳をあのオールフォーワンが?」

「……そこに関しては、恐らくあの時の天井の行動が予想外のものだったからだと思います」

「何をしたんだい?」

「握りつぶしました。自分の頭を」

 

 ……あの、皆さんそんな正気を疑う目で私を見ないでください。

 

「いや、相澤くんが死んじゃうと思って、どうにかしようと考えたら自分が死ぬのが真っ先に思い浮かんで」

「……行き過ぎた自己犠牲はよくないと思うわ」

「あの時は洗脳の影響で思考が回ってなかったんですよ」

「じゃあはちみつさんよ、思考が回ってたならどうした?」

「もうちょっとスマートに自殺できたよ。体内の大事な血管を蜂蜜で塞ぐとか」

 

 私だって、さすがに脳みそまき散らすのははしたなかったと思うよ。

 

「……彼女、前からあんな感じだったの?」

「……そうですね」

「OH」

 

 何やらこそこそ話すオールマイトとひざしくん。だからその目はなんだ。結果的に最適解だったじゃないか。いや、それどころか“修復”の個性がなかったとしても私が死んで相澤くんが助かるのが最適解だったはずだ。私は何も間違ってないな、うん。

 

「そのあと“修復”で脳を一から作り直して、その時に洗脳を振り払ったと。若返ったのもそれの影響?」

「そうですね、修復すると記憶の中にある過去の自分そのものになるようです。洗脳を受ける前の記憶を参照した結果17歳の頃に戻ったみたいです。制服もおまけでついてきました」

「なるほど……なら、オールフォーワンもその個性で力を取り戻していると考えた方がいいね」

「ああいや、その心配はあまりないかもしれません。“修復”は対価として寿命を払うみたいなので、ただでさえ個性で無理に長生きしているあいつはそう易々と使えませんよ」

 

 あれ?朗報のはずなのになぜか空気が重い。

 

「……そうなんだ。……あの、その対価ってどのくらい使うんだい?」

「大体、戻す時間の二倍くらいですかね」

「そうか、じゃあ天井君はこれ以降使わないように」

「それはちょっと難しいですね」

「……というと?」

 

 私は説明のために、()()O()N()()()()()()“修復”を切る。そうするとすぐに変化が訪れる。私の身体全身にものすごい速さで()()が入り始める。

 

「オールフォーワンが裏切者に仕掛けた自害装置か、単純に個性複数所持の代償かはわかりませんが、常に修復の個性を使ってないといけないみたいです」

「……そうなんだ」

 

 そうなんだよねぇ。これが実にめんどくさい。

 使い続けているうちに無意識でできるようになったが、なんかゴリゴリ寿命が削れている感じがして不快だ。

 17歳の頃の姿で居続けているわけだから、17歳から三倍の速度で寿命が減っていると考えればいい。本来の寿命が100年だとしても死ぬのは44歳か。今までの人生、最長でも30歳を超えられなかったけど、今世でも長生きできないようだ。

 

「おばあちゃんになってみたかったんだけどなぁ……」

 

 やっぱり全部オールフォーワン(消えろ!)が悪い。ほんといいことしないよねあいつ!

 

「……治療法はないのか」

「うーん、それこそ個性を消せればいいんだけど」

 

 相澤くんが聞いてくるけど、まあ現実的じゃないよね。個性を消すって、それができれば苦労しないっての。じゃなきゃ私はさっさと死んでる。

 

「ま、もともと死ぬ予定だったんだし、生き返れただけ儲けですよね」

「……ソ、ソウダネ……」

 

 梅干を噛んだみたいな表情で同意してくるオールマイト。あ、あれ?なんか空気が重くない?ここは改めて私の生還を喜ぶところじゃないの……?

 

「……ええと、うん、話はこれで終わりかな?」

「それが、もう一つあります」

 

 これは確証がなかったから最後に言うと決めていた話だ。

 

「あの、朧くん……白雲朧は今、何をしていますか?」

 

 ドクターとやらは、あの時確かに「白雲」という名前で黒霧を呼んだ。あまり考えたくないことだが、私が死ぬ少し前、瓦礫に呑まれた朧くんは、もしかして……。

 沈痛な面持ちをする教師陣。しばしの沈黙の後、口を開いたのは相澤くんだった。

 

「……あの時、天井と俺が最後の共闘をしたとき、瓦礫の下敷きになった時点でもう、命はなかったらしい」

「……そっかぁ」

 

 またも沈黙。

 ……まじで、オールフォーワン(下水以下の腐れ外道)さぁ……。

 

「……黒霧は、朧くんだよ」

「!!」

 

 目を見開く相澤にひざしくんと先輩。

 

「……そんな素振りはなかったが」

「正確には、朧くんの遺体をベースに改造された脳無、だね。死にたてほやほやの遺体を使ってるから、多分脳の損傷も少なく、だから人の言語を理解できる知能をもったままの脳無。ただ、色々と弄られてるから生前の記憶は多分……」

「……そうか」

 

 私という前例がある以上、黒霧を朧くんに戻すのは不可能ではないだろう。ただ、それこそ「他者に使える“修復”」みたいな個性でもない限り難しいだろう。

 私の状況提供はこうして後味が悪い形で幕を閉じた。これも全てオールフォーワン(あんにゃろう!)のせいである。

 

 

 ◆

 

 

 ヴィラン連合の秘密暴露会が終わってから、私は相澤くん、ひざしくん、香山先輩の三人を引き留めた。

 さて、私としてはここからが本番だ。

 

「少し時間いい?大事な話があるの」

 

 話すなら今だと思った。私の「転生」に関して。少なくとも心から信頼できるこの三人には話しておこうと思うのだ。

 ……だからひざしくん、そんなに嫌そうな顔しないでよ。先輩まで。何?重い話はお腹いっぱい?いやいやここからが本題なんだって。ちょ、相澤くんまで顔しかめないでよ。

 

 




天井さんも白雲くんも生きてたって。良かったね相澤くん!
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