相澤くーん、私を殺してくれよー   作:科葉諸友

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誤字報告めちゃくちゃ有難いです。思った以上にありますね、誤字。これで誤字はなくなっただろうと思ってもどこからともなく湧いてきます。まったく過去の自分は何をやっていたんだか(憤怒)


Lack of Luck

 

 私の人生、かなり不幸に塗れているが、何が悪かったのだろうか。まあ大体はどこぞのAFO(アホ)が悪いのだが、それは置いておくとして。

 世界が悪かった。間が悪かった。総評して、あまりに運が悪かったと言える。

 運の不足。それが私の人生の敗因だ。

 

 

 ◆

 

 

 天井はちみつに呼び止められた三人、相澤消太、山田ひざし、香山睡が彼女と相対する。

 場所は屋上。学校のではなく病院の屋上であったが、その情景は呼び出された面々にいつかの青春を思い出させた。もっとも、呼び出した本人からすればつい最近の出来事なのだが。

 

 風が通り抜けて天井の髪が揺れる。その姿は13年前とまったく変わっていない。相澤が守れなかったものであり、ヒーローとして守りたいものの象徴だった。

 あの日の彼女がタイムスリップしてきたかのような光景に三人は少し見惚れた。

 

「みんな、随分大人っぽくなったね」

「そうか?」

「ひざしくんはなんかチョビ髭が生えてるし、相澤くんに至っては髭も髪も伸ばしちゃって。香山先輩は……あれ、全然変わってない……?なんでそんなに若いんですか?」

「私はまだまだ現役よ」

 

 色々あったとはいえ、死んだと思っていた友人にまた会えたのは嬉しいらしい。久しぶりの会話に三人の口元が緩む。

 

「にしても、まさかまた会えるなんてな!人生何があるか分からないもんだ」

「……そうだな」

「こうして屋上に集まると、昔のことを思い出すわね」

「昔はショータも俺と一緒にヤンチャしてたのにな」

「していない。話を捏造するな」

「あらそう?4バカなんて呼ばれるくらいだから武勇伝が沢山あるのかと思ってたわ」

「4バカのバカ担当はひざしくんと朧くんだけだからね」

「ちょいちょーい!はちみつだって人のこと言えないだろ!?」

「私は赤点取ったことないけど」

「問題行動は目立ってただろ」

「あれは──」

 

 天井が話を切り出すまで待つ姿勢を保つ相澤、香山と、単純に話が弾み始めた山田によりしばらく軽口の応酬が行われる。

 そして、話の中心の天井はというと……。

 

(なんか相澤くん凄いかっこよくなってるんだけど!!)

 

 内心穏やかでなかった。

 

 十数の前世からなる年齢アドバンテージにより、好き好きと言いつつもある程度保っていた余裕がたった今崩壊した。

 彼女の胸の奥にキュンと何かが()()感覚があった。

 

 要するに、相澤は天井の好みドストライクのイケおじになっていた。

 

 今まで十の生を経験してきた天井だが、それらは全て過酷なものであり、色恋沙汰に興じる余裕などなく、むしろ常に流血沙汰に巻き込まれていた。そしてそのどれもが短命だったため精神的な成熟もない。

 天井は長い時を生きてきた割に、とてつもない恋愛弱者だったのだ。

 

(なんか色気が!色気があるよ相澤くん!なんで?どうして!?どうしよう!!)

 

 はちみつ色の頭の中の脳みそはあっという間にピンクに染まりエラーを吐き出していた。

 

 

 ◆

 

 

「──それで、大事な話のことなんだけどね」

 

 私はあれから雑談を少しして心を落ち着かせ*1 、話を切り出した。

 その言葉により、三人も聴く姿勢に入る。

 

「むかしむかし、超常黎明期のそのまた昔、個性なんてものが一般に知られていない程珍しかった時代の話。ある女の子がいました。女の子は無個性で弱っちくて、20になる前にコロッと死にました。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。──」

 

 そしてつまらない10個の昔話が始まった。どの昔話もバッドエンド。しかもその内訳はオールフォーワン関連のバッドエンドが7割だ。

 内容もほとんどが苦しんでいるようなものばかりで、不意に訪れる幸せは全て誰かに壊される。こんなの子供が聞いたら泣くぞ。この物語の作者の「世界」とかいう奴は何考えてるんだか。

 

「──そして、少女は11回目の生を得ました。彼女が生まれたのはまたもオールフォーワンの信者の家でしたが、今回は運良く早めにヒーローが逮捕してくれました。そして少女は孤児院に行きます。しばらくは孤児院で慎ましく暮らしていましたが、少女の個性が強個性であることが分かると、少女を引き取りたいという親御さんが沢山現れました。少女に拒否権はありませんでした。結局、少女は孤児院に一番高額の()()をしてくれる親御さんへと預けられました。しかし、その親御さんもまたオールフォーワン関係者でした。──」

 

 そして11個目の話が始まる。今度の話は昔話ではない。私にとっての今世の話だ。

 まあ、だからといって今までの話とそう変わらない、このまま進めばまったく面白くないバッドエンド一直線の話だが。

 

 結局この後、引き取って貰った親御さんに厳しい個性訓練(虐待)されて数年過ごした後、隙を見て警察に連絡。それとなくオールフォーワン(人生最大の敵)絡みであることを匂わせればとても精力的に動いてくれた。

 で、その後は奨学金制度とか補助金とかを使って雄英高校に入学したわけだ。

 

「──そして、その学校で少女は出逢いました。個性を消せるという少年に。個性が消えた状態で死ぬことができれば、「転生」が発動せずに、生まれ変わることなく真の意味で死ぬことができるかもしれません。いい加減生きるのに疲れていた少女は少年に頼みました」

 

 相澤くんが冷や汗を垂らした。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、相澤君。私を殺してくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決まった……!

 ふふふ、完璧な流れだったね。

 なにせこちとら、あの時の私と容姿も身長も変わってないからね。同じ顔で同じセリフを同じ声で言うことができる。

 ほら、相澤くんめちゃくちゃ目を見開いてるよ。うんうん、あれだね、ミステリー小説の最後の探偵の推理がビシッと決まった気分だ。ネタばらしはいつだって楽しいものだ。

 

「……それは、本当の話なのか」

「信じて欲しい、というのが本音かな。別に隠してた訳じゃないけど、こんな大きな秘密を黙っておくのはいい加減嫌でね。相澤くん達のことは信頼してるから、秘密とかはない方がいいと思って」

「……そうか」

 

 あー、なんか凄いスッキリした気分。今までいくら「個性」という超常の話でも、転生云々は与太話扱いされてきたからね。そのせいで私のこの秘密を知っている人は今まで殆どいなかった。……まあ、それを言えるほど信頼できる人がそもそもいなかったってのもあるけど。

 こういう秘密を告白するイベントはお互いを信頼しあっている友人同士だからできるのだ。だからこそ嬉しいというのもあるのかもしれない。

 

「別にだから何って話じゃないよ。ただ知っておいて欲しかっただけ。前世なんてあくまでオマケだよオマケ。ああでも、相澤くんは責任重大かな。なんとしても私の死に目を見届けて貰わないとだよ」

「……ああ、そうだな……」

 

 お茶目っぽく言った私のそれに重々しく返事をする相澤くん。もっとも、たとえ個性を消されて死んだとしてもまた脳無になっちゃうかもだけどね! ……なーんてギャグを言える空気でもないな、これ。

 

 そんなわけで私の秘密暴露会は重々しい空気で終わることとなった。だから言うの嫌だったんだよなー。

 

 

 ◆

 

 

『ところで、私今日で退院できるんだよね』

 

『でも私ってつい最近まで、洗脳されていたとはいえオールフォーワンの手下やってたわけじゃない?やっぱり、監視の目がある方がいいと思うの』

 

『四六時中監視してくれる人と一緒にいた方がいいよね?』

 

『ほら、私のことをよく知っている理解者で、信頼できるヒーローで、いざとなったら個性を消して無力化、拘束できたりする人が監視してくれるといいよね?』

 

 あの後、天井は俺の家に泊まることになった。天井に押し切られた。なんなら山田と先輩までそれに便乗してきたのでどうしようもない。

 ちなみに退院と言っても健康上の問題がないと診断されただけであって、本来なら今日も明日も数日間は監視の目がある病院暮らしだったらしい。

 わざわざ校長に許可をとってまで俺の家に泊まる熱意はどこから来るのだろうか。

 

『……一応言っとくけど、手を出すのはやめときなさいよ。女子高生が相手だと法的に……』

『言われなくとも出しませんよ』

 

 ……解散する時に先輩がこっそり耳打ちしてきたが、流石にそれくらいは心得ている。

 

『おお、ここが相澤くんの家か。すごい、相澤くんの匂いがする』

『そりゃあするだろう。俺の家だ』

 

 家に到着してからはそんな非合理極まりない会話をいくつかして、冷凍食品で夕食を済ました後、天井は直ぐに寝てしまった。

 身体が健康そのものとはいえ精神は疲れていたのだろう。俺のベッドを占領して*2 熟睡する様はむしろ感心すらする。

 

 ……転生、か。

 

 「大人子供」。天井の話を聞いて、脳内にその言葉が浮かんだ。「大人とは裏切られた青年の姿である」とは誰の言葉だったか。天井は、裏切られ続けて大人にならざるを得なかった子供だ。

 今まで二桁に及ぶ転生を行い、その中で一度も30歳を超えたことがないと語る彼女は、俺にはそういう風に見えた。

 

 13年前、異様に大人びていると感じた彼女だが、今話してみれば100年を生きた()()の子供に感じられるのだ。

 

『相澤くーん、私を殺してくれよー』

 

 いつだかの彼女のこの言葉は確かに本心から来るものだった。

 そういえば彼女は、最初から俺の個性目当てで俺に近づいてきたのだった。

 

『死にたいんだ。別に死ねればいいから、今でも後でもいいんだけど。ただ、できればさっさと確実に死にたいから、君に殺して欲しいの』

 

 そういえば彼女はそんなことを言っていた。

 今でも、俺に殺して欲しいと思っているのだろうか。

 今でも俺に求めていることは、転生という牢獄を脱出するための鍵としての役割なのだろうか……。

 

「……らい……すき……」

「……っ」

 

 声のする方を見てみれば、むにゃむにゃと口を動かす彼女がいた。

 

『あい、ざわくん。だいすき』

 

 フラッシュバックするのは、彼女が最期に放ったその言葉。

 

「……ああ、知ってるよ」

 

 ……そういえば、そうだった。

 天井はちみつは、案外普通の女の子で、案外ノリが良くて俗なところがあって、死生観だけやたら完成されているけれど、人並みに正義感があって、俺に愛を囁いて死んだのだった。

 

 まったく、馬鹿なことで悩んでしまったな。

 

 警戒心ゼロでスヤスヤと眠る天井の横、床の上の寝袋に入る。

 

 天井はちみつが「大人子供」だからなんだというのか。守る理由がひとつ増えた、ただそれだけのことだ。

*1
相澤くんは相澤くんだ。カッコイイイケオジ澤くんになったとしても本質は変わらない。まあふと見える昔と変わらないところもキュンとくる──じゃないじゃない、落ち着け私。落ち着くのよ私。カッコイイからって何よ、止まりなさい胸の高鳴り。深呼吸して落ち着くのよ。ひっひっふーひっひっふー……てこれラマーズ法じゃん出産でもするのか私は。……私も結婚するのかな。……いやいやいや、落ち着け私、まだ早い。いやいつかはしてみたいけど……じゃなくて、妄想を止めなさい。そのタキシード姿の相澤くんを消しなさい。……ええと、なんだっけ? ああそうそう、私の転生の話するんだった。

*2
「相澤くんの匂いがする!」らしい




個人的に、学生時代の相澤君はかっこよさと可愛さなら可愛さの方が勝るけど、教師やってる相澤先生だとエッチさの方が勝る。
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