TSっ娘ハーレムとか正気か?~世界救って女の子に囲まれるはずが、パーティーは全員元男だったんだがどうすればいいですか~   作:恥谷きゆう

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ステータスオープン!

「それじゃ、とりあえず作戦会議といくか」

 

 

 

 眼鏡をスチャ、と人差し指で上げながら、彼女は不敵に笑った。

 

 

 

「ようやくいつものお前らしくなったな」

 

「いつものボク?」

 

「自分の頭の良さに自信満々で、鼻につくところ」

 

「ふん……少なくともキョウよりは頭が良いからな」

 

 

 

 偉そうに腕組みをするヒビキ。ちょうど胸を強調するような姿勢になってしまうので、俺はそれを凝視してしまった。

 

 コイツ、でかいぞ……! 服の上からでも分かるそれは、見るだけでも柔らかそうだ。

 

 可能ならいつまでも眺めていたいが、しかし中身がヒビキであることを考えると複雑である。

 

 

 

 そんな俺の邪念には全く気付いていないように、ヒビキは俺に聞いてきた。

 

 

 

「お前はハーレムパーティーを作りたいとか抜かしていたな。具体的にどうやって作る気だったんだ?」

 

「決まってる。強くなって、魔神? とかいうのを倒して世界救って、その過程で女の子助けて惚れられる」

 

「なめてんのか? 計画性ゼロかよ」

 

「なあ、その美少女フェイスでいつもみたいに罵倒するのやめてくんない? なんか変な気分なんだけど」

 

 

 

 彼女は俺から少し目を逸らした。思わぬ言葉に動揺したようなリアクションだ。

 

 

 

「……コホン。女の子を助けるってことはそれなりに強くなる必要があると思うが、お前は戦えるのか?」

 

「ああ。ここに来た時に頭の中に流れ込んできた情報によると、俺には転生特典みたいなやつがあるらしい」

 

 

 

 正式名称は『天からの贈り物(ギフテッドスキル)』。異世界からのこの世界に転生した者たち、別名勇者に与えられる強力なスキルのことだ。

 

 

 

「一つは『適応化』。言語能力の取得だけじゃなく、身体能力の向上、精神の強化までしてくれるらしい」

 

「うん、その辺はボクの認識と一緒だな。平和に過ごしていた現代人を戦いに駆り出すために必須のスキルだ。このスキルのおかげで、異世界人は大した努力をしなくても強い」

 

 

 

 異世界人を召喚するのは、これが目的だ。加えて、異世界人はこれとは別に強力なスキルに目覚めることが多いらしい。

 

 

 

「おお、じゃあやっぱり俺も……」

 

「あんま調子乗んな」

 

 

 

 ヒビキは、人差し指を立ててチッチッと振った。男だった時にはむかつくことしかなかった動作だが、眼鏡美少女がやるとドキドキする。くそっ、中身ヒビキのくせに……!

 

 

 

「奴隷してたボクでも聞いたぞ。この世界にはもう何人もの転生者が出現し、戦いに駆り出されている。それでも魔神と呼ばれる人類の最大の敵は倒されていない。この意味が分かるか?」

 

「俺の見せ場があるってことだな!」

 

「馬鹿! みんな失敗してるってことだよ!」

 

 

 

 ヒビキはやれやれ、というように額に手を当てた。相変わらず所作の一つ一つがムカつく奴だ。

 

 

 

「お前の能天気さは相変わらず羨ましいくらいだが、ゲームや小説感覚でいるとあっさり死ぬぞ」

 

「いいや、死なないね。少なくとも三人はハーレム要員を見つけるまではな」

 

 

 

 そうだなあ、お嬢様とケモ耳っ娘と、魔法使いの女の子。異世界ハーレムならこれくらいは欲しいかなあ。それで艱難辛苦を乗り越えて最終的には俺に惚れてくれる感じで。

 

 

 

「……ともかく、その辺のスキルはボクにもある。二人で協力すれば、順調に成長する分にはなんとかなるだろう」

 

 

 

 ついに俺の妄言は無視され始めた。

 

 

 

「そういえばヒビキは、俺よりも早くこっちに来たんだろ? どんな戦い方できるんだ?」

 

 

 

 どんなスキルがあるのだろう。とワクワクして聞く。しかし、ヒビキの表情は硬かった。

 

 

 

「……ボクはずっとこっちに来てから奴隷だ。そんなことしていない」

 

「そ、そうか……」

 

 

 

 ヒビキが眼鏡を上げると、レンズが光って目元が見えなくなる。けれども俺は、なんとなく彼女がどんな表情をしているのか分かった気がした。

 

 少しだけ声を大きくして、俺は言葉を紡いだ。

 

 

 

「まあ、俺が来たからには安心しろ。少なくともお前に退屈なんてさせない。最高に楽しい異世界生活ってやつを送らせてやるよ!」

 

「まったく、その自信はいったいどこから来るんだかな」

 

 

 

 呆れたように苦笑するヒビキの様子に一安心する。そうだ、お前はそういううんざりした顔の方が似合う。

 

 

 

「こういう時は定番のあれだよな。『ステータスオープン』!」

 

 

 

 その瞬間、俺の目の前には何やら文字がたくさん記載されている画面が表示された。

 

 

 

名前 キョウ

 

職業 勇者

 

【ユニークスキル】

 

適応化 A

 

驕傲(きょうごう)の主 A

 

 

 

【スキル】

 

剣術 B

 

炎魔法 B

 

楽天家 S

 

鑑定 C

 

 

 

「おお……なんか強そうだぞ」

 

「……え? そんな単純なことで所持しているスキルが見れたのか?」

 

 

 

 何か愕然とした様子のヒビキが「ステータスオープン」とつぶやくと、彼女は虚空を見つめだした。

 

 

 

「ふむふむ……水魔法がSだな。Sっていうのは強いって認識でいいのか?」

 

「S……!? おいおい、なんか俺より凄そうじゃねえか!」

 

 

 

 ふむふむ、とステータスを見続けるヒビキ。

 

 

 

「土魔法がA、雷魔法がAだな」

 

「どれどれ」

 

 

 

 本能的に使い方が分かったので、俺はスキルの鑑定を使用した。

 

 

 

名前 ヒビキ

 

職業 魔法使い

 

【ユニークスキル】

 

適応化 A

 

魔力透視 S

 

 

 

 

 

【スキル】

 

水魔法 S

 

土魔法 A

 

雷魔法 A 

 

 

 

「おい……おい、俺よりめちゃくちゃ主人公っぽいじゃないか! ずるいだろ! 俺にもそういう分かりやすく強そうなの欲しいぞ!」

 

 

 

 俺の様子を見たヒビキは、ニヤリと嫌な感じの笑みを浮かべた。

 

 

 

「フッ……お前にだって強そうなスキルはあるじゃないか。『楽天家 S』フッ……フフフフッ、ハハハッ! 楽天家! ただのお気楽馬鹿ってことじゃないか! お前らしいな!ハハハハ!」

 

 

 

 ヒビキは本当に楽しそうにカラカラ笑った。クールな印象を受ける顔が緩くなり、目元がふにゃ、と笑う。

 

 笑顔の方が可愛い、という一瞬湧いた邪念を振り払うように、俺は突っ込んだ。

 

 

 

「お前……笑いすぎだろ!」

 

「いや、悪い悪い。これでも褒めてるんだぞ? お前の気楽さに救われたことだってあるからな。さっきだってそうだ。いつもいつも、お前には助けられている」

 

「お、おう……」

 

 

 

 おい、急に素直にモノを言うなよ。どう答えればいいのか分からなくて困るだろ。


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