TSっ娘ハーレムとか正気か?~世界救って女の子に囲まれるはずが、パーティーは全員元男だったんだがどうすればいいですか~   作:恥谷きゆう

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膝枕

 寝て起きたら全部解決していたし、俺はなぜかヒビキの膝枕で寝ていた。

 やわらかい。あったかい。

 あれ、俺ってもしかしてヒロインだった……? 

 

「な、なあヒビキ……なんで俺はここで寝転がってて、お前が全部解決してるんだ?」

「ああ? 腹の傷が痛むから余計なこと喋んなよ」

 

 膝枕から顔を上げようとすると、さりげなく顔を押し戻された。

 ヒビキの眼鏡の奥の目が、俺を見つめている。

 優しくて、気遣いがあって、むずがゆい視線だった。

 

「もう、解決したのか?」

「はあ? お前見てただろ」

「いや、斬られたあたりから記憶がないんだけど……」

「……」

 

 ヒビキはちょっとむすっとした顔になると、俺の額を軽く叩いた。

 

「なんで覚えてねえんだよ、馬鹿」

「いや、そう言われても……」

 

 いや、本当に分からない。なんで怒ってるんだコイツ。

 そんなやり取りをしていたら、ようやく今の状況が飲み込めてきた。

 どうやら、あの瘦身の男は倒せたらしい。

 

 助かった。あのままだったら、みんな仲良く死ぬところだった。

 

「みんなは?」

「ソフィアはベッドで寝てる。ただの肉体の疲労だから、すぐに回復するだろうよ」

「あのお姫様ホントちぐはぐだな……」

 

 剣を一振りしただけで倒れる最強の騎士がいてたまるか。

 

「シュカは……命に別条はない。肉体的ダメージはないからな。ただ、精神的なダメージがちょっと大きそうだ」

「そう、か」

 

 最後に見たシュカの姿を思い出す。地面に倒れ込み、悪夢にうさなれるようにしていた彼女の姿。

 強敵を前にして、一撃入れるどころか立ち向かうことすらできなかったことについて、彼女はどのように思うのだろう。強さに固執し、それをアイデンティティとしてた彼女は。

 

「まあでも、みんな無事なら良かった」

「……そうだな」

 

 少しの沈黙。

 ヒビキが小さく息を吸うのが聞こえた。

 

「なあ、キョウ。──ありがとな」

「……なんでだ?」

 

 感謝されるような覚えはない。むしろ、俺の方が感謝しないといけないくらいだ。

 

「ボクを必要としてくれて、ありがとう」

「……そんなの、感謝なんていらないだろ」

 

 そんなの今更だ。俺が必要だったから、お前と一緒にいるだけだ。

 そう思って反論するが、俺の顔を見下ろすヒビキは柔らかく笑うだけだ。

 

「お前にとってはそうかもしれないけどな。ボクにとっては結構大事なことなんだよ」

「そうなのか? 別に俺がどう思おうとお前には関係ないだろ」

「いいや、違う。ボクは、お前に必要とされて嬉しかったんだ」

 

 そう言う彼女の顔は本当に嬉しそうで、華が咲いたみたいなその顔に、俺は一瞬だけ見惚れてしまった。

 

「ボクのできることなんて、本当につまらないことばかりだったんだ。机の上のお勉強だとか、口喧嘩とか、その程度。だからお前が羨ましかった。だから、つまらない絶望に囚われて立ち上がれなくなった」

「いや、俺を羨ましがるところなんてないだろ」

 

 むしろ、俺の方がうらやましかったくらいだ。そんなこと、気恥ずかしくて絶対口に出せないが。

 

「でも、羨ましがっても、お前の持ってるモノを欲しがっても、ボクには手に入らない。だから、ボクはボクの欲しいものを手に入れることにした」

「……そうか。まあ、お前が満足できるならいいんじゃないか」

 

 少なくとも、辛気臭い顔してるよりずっとマシだ。

 

「言ったな? お前がそう言うなら、ボクはボクの欲しいモノを欲しがるのを諦めない。後悔するなよ」

「お前がどんな選択をしようとお前の勝手だ。俺の止める道理なんてない」

「フフ……そうか、そうか」

 

 なぜか満足気なヒビキの表情は、どこか艶やかに見えた。

 頬が紅潮して、眼鏡の奥の瞳が緩んでいる。

 まるで、恋する乙女みたいだ。

 

 友人がそんな風に見えてしまったことに少しばかり罪悪感を感じて、俺は眼を逸らす。

 

 

「まあ、十分堪能したから解放してやるよ。ほら、立て」

 

 彼女に促されて立ち上がると、わずかにふらつく。傷は塞がっているが、血が足りないらしい。

 俺の肩を、ヒビキがそれとなく支える。

 

「行くぞキョウ。こんなところでいつまでも寝っ転がってるんじゃねえ。お前はハーレムパーティーとやらを作るんだろ」

 

 言葉の裏にどんな感情があるのか、今の俺には分かりようもなかった。

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