TSっ娘ハーレムとか正気か?~世界救って女の子に囲まれるはずが、パーティーは全員元男だったんだがどうすればいいですか~   作:恥谷きゆう

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そんな君に救われたんだから

 最初に大図書館に行った日から一週間程度が経った。

 俺たちはほどほどに冒険者としての仕事をこなしながら、大図書館へ通う日々を続けていた。

 

 俺たちと言っても、図書館に真面目に通い続けていたのはヒビキとソフィアの二人だ。

 俺とシュカの二人は早々に飽きてしまった。そもそも読んでも何のことか分からないしな。

 では、俺たち二人が何をしていたかというと――

 

 

 「――てりゃあああああ!」

 

 シュカが大きく振りかぶった拳を叩きつけてくる。

 それに対して、俺は剣を横に構えて対抗した。

 

 「ッ……!」

 

 剣の腹に拳が突き刺さると、凄まじい衝撃が両手に伝わってきた。

 踏ん張った脚がズリズリと後ろに下がる。腹のあたりから力を入れて、なんとかシュカの勢いを押し留めた。

 

 辛うじて生み出された拮抗状態。

 けれど、両腕を使っている俺に対して、シュカはまだ右手しか使っていない。

 

 「フッ!」

 

 さらに一歩踏み込んできたシュカは、体を逆側に捻って左腕を振りかぶってきた。

 

 「フレーゲル剣術――ワイドカット!」

 

 このままじゃ対応できない。

 俺はスキルを発動させて剣を加速させると、シュカの拳に剣を合わせた。

 衝突音が鳴り響き、シュカの拳が弾かれる。

 

「アハハ! 最初に比べると随分とスキルの使い方が上手くなったじゃん!」

「そりゃあ、ちょっとはな!」

 

 俺だってこっちに来てからずっと遊んでたわけではないのだ。

 ソフィアの指導の下、剣術の鍛錬に励んできた。

 おっとりして見えてその実スパルタな彼女の指導はそれはまあ厳しいものだった。そんな日々の成果が少しは出ているのだろう。

 

「でも……」

 

 シュカの体が再び動き出す。

 大きく踏み込んでくると、次は軽い拳を連続で繰り出してきた。

 

 「魔闘術――烈火 乱れ吹き」

 

 一瞬にして十近い拳が飛んできた。目にもとまらぬラッシュ。

 剣を持つ俺と無手のシュカでは、速度という点では圧倒的に彼女が有利だ。

 体の中心に剣を持ってきて、致命打を避けようとする。

 

「グッ……!」

 

 ラッシュといえどもその拳は一撃一撃が重たいものだった。体に伝わってくる痛みが俺の動きを鈍らせる。

 

「ハアッ!」

 

 トドメに、ハイキック。

 俺の胸に突き刺さった一撃は、肺の空気を全て吐き出させた。

 痛みに悶える俺はたまらず膝をつく。

 そして、両手を上げた。

 

 「参った。俺の負けだ」

「フッフーン! また、僕の勝ちだね!」

 

 ドヤ顔のシュカは胸を張ると、跪く俺に手を差し伸べてくる。

 

 「ほら、立てる?」

 

 シュカの小さな手を掴んで立ち上がる。

 相変わらず、小さな手だ。先ほどまで俺を圧倒していた拳とは別物みたいな、女の子の手。

 少しだけドキドキしてしまったのは、彼女には秘密だ。

 

 鍛錬は一旦終わり。

 二人で木陰に座って休憩をする。

 心地よい風が吹いてきて、額の汗がゆっくりと乾いていくのが分かる。浅くなっていた呼吸がゆっくりと通常のリズムに戻ってくる。

 

 少しばかり沈黙が降りる。

 ちょうどいい機会だと思った俺は、前々から思っていたことをシュカに聞いてみることにした。

 

 「なあ。この国に来てから、歴史について色々聞いたよな?」

 「え? あー、そうかもね」

 

 大図書館にいる人に限らず、この国に住む人たちは「歴史」というものについて深く考えているようだった。

 泊った宿にも歴史ある絵画なんかが飾られていたし、主人にその来歴を自慢げに語られたものだ。

 その時の主人がひどく誇らしげだったことが、俺にとっては印象的だった。

 

 「なあ、歴史の重みってなんだろうな」

「知らないよ、そんなの。今どうするかの方が大事じゃない?」

 

 シュカの返答はそっけない。あまり興味がない、あるいは気にしても仕方がないという態度だ。

 

 「まあ俺もそう思ってたんだけどさあ。でもこの国に来て色んなものを見ていると、違う考えも浮かんでくるわけ」

 「へえ。『楽天家』にしちゃ良く考えたじゃん」

「うるせえ」

 

 俺を揶揄ったシュカがカラカラと笑う。

 

 「まあ、色々考えるのも大事だけど、キョウ君はキョウ君のままでもいいんじゃないかな。……その、ぼ、僕はそんな君に救われたんだから……」

「……なんだって?」

 

 尻すぼみになった最後の方が聞こえなくて問い返す。

 するとシュカは、なぜか頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。

 

「とにかく! 今の僕たちにはそんなの関係ないでしょってこと!」

「まあ、そうかー」

 

 まあ、そのさっぱりした返答はシュカらしいな。

 そう思った俺は一旦考えることをやめて、心地よい風に意識を向けた。

 しばらくの間、穏やかな時間を過ごした。

 

 

 ◆

 

 

 ソフィアが大変なことになった。

 

 ヒビキからそう伝えられたのは、鍛錬を終えて宿に帰ろうしていた時だった。

 大図書館にいたはずの彼女は慌ててここまで走ってきたようで、眼鏡を外して額の汗を拭っていた。

 

「大変ってなんだよ。危ないことか?」

「いや、そうじゃない。そうじゃないんだけど……とにかく大変みたいなんだよ!」

 

 彼女にしては珍しく要領の得ない言葉だった。ちょっとパニックになっているようにも見える。

 とにかく、何が起こったのか直接見に行くしかないようだ。そう悟った俺とシュカは大図書館へと向かった。

 

 ヒビキに案内された先は、大図書館の二階のとある本棚の前だった。

 一般に開放されている区画の中でも特に奥まった場所にあるそこは、古臭い本がいくつも置かれている。

 背の高い本棚の間を進むと、何やら熱気の籠った声が聞こえてきた。

 

「これは……とんでもない発見です!」

「この記述を見ろ! これが本当なら、つまり最近の研究のあの――」

「おい、私にもよく見せろ!」

「やめろ! 古書の周りで騒ぐな! 万一のことがあったらどうする!」

 

 見た感じ、学者が何かの集まりだろうか。

 賢そうな顔をした年配の男女が、しきりに何かを言い合っている。

 狭い通路にワラワラと集まっているせいで道を塞いでいる。しかし彼らはその事実にすら気づいていないようだった。

 

「ソフィアはこの奥だ」

「……え、ここにソフィアが?」

 

 事情はつかめないが、彼女の疲れた表情を見るにどうやらそれは真実らしい。

 興奮して騒ぎ続けている教授たちを押しのけて奥へ。議論に夢中な彼らは俺たちに目もくれなかった。

 

 通路の奥に向かうと、その先には何やら疲れ果てた様子で椅子に座るソフィアと、彼女に熱心に話しかける女性の姿があった。

 

「――これはもはや生ける精霊と言っても過言ではありません! 人の身でこれほどの力を身に宿すとは……いったいどのような善行を為してきたのでしょうか!?」

「ですから、先ほどから説明している通り、これは私のスキルの影響であり私自身は何も……」

「そんなわけがありません! 何か秘密があるはずです!!」

 

 女性が熱の籠った大声を出すと、ソフィアがうんざりしたように項垂れた。

 常に余裕ある態度の彼女のそんな様子は珍しい。

 

 「ソフィア。ヒビキに呼ばれて来たんだが……何があったんだ?」

 「キョウさん……よくぞ来てくださいました……!」

 

 俺の顔を見たソフィアがパッと顔を明るくする。

 一方、ソフィアの横にいた女性は俺たちの姿を見ると小さく一礼した。

 

「ソフィア様のお連れ様でしょうか? 初めまして。私はララ。この国において精霊騎士の役割を拝命しております」

「はあ、初めまして」

 

 熱のある……ちょっと引くくらい熱のある様子から一転してキリリとした表情を見せる精霊騎士、ララに困惑する。

 とりあえず、俺はソフィアの方に向き直る。

 

「その、何があったんだ?」

 

 彼女に会うまでずっと疑問に思っていたことを口にする。

 するとソフィアは、疲れた表情で事の顛末を話し始めた。

 

「実は――」

 

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