TSっ娘ハーレムとか正気か?~世界救って女の子に囲まれるはずが、パーティーは全員元男だったんだがどうすればいいですか~   作:恥谷きゆう

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臆病者の戦い

 ここ最近のやり取りで、ツルギの性格について少しずつ分かってきた気がする。

 彼女は人間を嫌う様子を見せつつも、人間の意志に価値を見出している。

 

 彼女の冠する悪徳、傲慢。驕り高ぶる。

 しかしツルギの場合、他人を見下すのは人への期待があればこそだ。

 

 人間の自由意志を、己を貫き通す意志を賞賛し、俺には期待をかけた。

 その根底にあるのは、嫌悪の裏返しの愛情だ。

 きっとコイツは、ソフィアが考えるほど分かり合えない存在ではない。

 

 横に控えるツルギの顔を見る。

 言動とは不釣り合いに幼い顔立ち。

 

 彼女の横顔を見つめながら、俺は先ほどの言葉を思い出す。

 

『妾の力を貸そう。あるじどのが人間のままでいられる方法で』、だったか。

 

「ツルギ。本気、なんだよな?」

 

 俺が先程の宣言の真意を問うと、彼女が頷く。

 

「ああ。先刻確信した。あるじどのは妾の完全なる力を引き出すにふさわしい器の持ち主。その前向きな『傲慢さ』があればできる。七罪の魔剣が真骨頂を引き出すことができるだろう」

 

 

 ◆

 

 

 精霊騎士によって観測されたゾンビの群れはゆっくりと、しかし確かな足取りでこの街に迫ってきているようだ。

 先程の交戦とは違い、逃げることはできない状況だ。

 敗走してきた俺たちは今、態勢の立て直しのために共和国北部の街まで戻ってきていた。

 辺境の街といえど、ここには多くの住民がいる。今から急遽避難させるのは無謀だろう。

 

 であれば、ここで迎え撃つしかない。

 街の北部に陣形を展開するのは先程まで青い顔をしていた精霊騎士たちだ。

 彼らは未だ不安の拭えない様子で立ち竦んでいる。

 

 そんな彼らの先頭に、小さな影が堂々とした態度で立った。

 

「古来より、闘争に赴く人間の心理は概ね二種類に分けられる」

 

 まるで歴戦の指揮官かのように、重々しく演説をするのはツルギだ。

 

「戦いの興奮に酔いしれ、昂りを感じる者と、死の恐怖に怯え、恐怖する者じゃ。その二択で言えば、貴様らは後者だろう。死の恐怖に怯える臆病者じゃ」

 

 ツルギの言葉を聞いた精霊騎士が下を向く。

 その言葉を否定することはできない。圧倒的な物量差を前にして、彼らは恐怖し、敗走した。

 けれど、ツルギは決してそれを詰ることはしなかった。

 

「──しかし、それでいい。臆病者は無能を意味しない。優秀な兵とは勇敢な猛者ではなく臆病で慎重な者じゃ。昂りに身を任せるのではなく、凡人ゆえの恐怖に呑まれそうになりながら、死に物狂いで戦うのじゃ。震える両手で武器を握り込み、己の身を護ることに集中せよ。英雄になる、己が状況を打破するなどと考える必要はない」

 

 そこまで言ってから、ツルギは満面の笑みで俺の方を振り返った。

 

「偉業は、我があるじどのがやってくれるはずだからのう」

 

 ……なんかすっごいハードル上げられた!? 

 まあただ、今ので精霊騎士たちの表情が少しマシになったのを感じ取った。

 どうやらツルギはこういったことが得意らしい。年の功、といったやつだろうか。

 

 そんなやり取りをしているうちに、遠くの方に多数の影が見えてきた。

 間違いない。ゾンビの軍勢だ。平原で相対した時よりもさらに数が多く感じられる。

 

「さて、我らの力を見せる時がやってきたのう、あるじどの」

 

 ツルギが揶揄うような視線を向けてくる。

 ……さっきからツルギのプレッシャーが半端じゃない。

 彼女はずっと俺にキラキラという視線を向けてきている。

 邪気がなさそうなのがなおさらタチが悪い。

 

 ……ええい、こうなればやるしかないか! 

 

「──じゃあ行くぞ、ツルギ!」

 

 俺が声をかけると彼女の姿が傲慢の魔剣の中へと消えていく。

 魔剣を鞘から抜くと、いつもよりも剣先が輝いているように見えた。

 なるほど、今なら新しい力が使えるというツルギの言葉は嘘ではないらしい。

 

 力いっぱい地面を踏みしめ、敵の方へと突撃する。

 

 無謀にも単独で躍り出た俺の目の前には、平地を埋め尽くさんばかりのゾンビの群れがいた。

 亡者たちの目が一斉に俺を見る。何もしなければ、圧倒的な物量差に押し潰されるだけだろう。

 

「『ひれ伏せ』」

 

 剣に魔力を籠めて、重力魔法を発動する。

 傲慢の魔剣の力を引き出した今の俺の重力魔法はSランク相当。

 広範囲に放たれた重力魔法がゾンビたちに襲い掛かり、片っ端から地面に倒していく。

 

 しかし範囲を広げた分だけ重力魔法の威力は下がり、致命傷には至らない。しばらくすれば、ゾンビたちはまた起き上がってくるだろう。

 ただ、俺は独りで戦っているわけではない。

 

「い、行くぞおおお!」

「「オオオオオ!」」

 

 俺の攻撃を後方から見ていた精霊騎士たちが一斉に動き出した。彼らは俺のところまで追いつくと、地面に伏すゾンビに次々とトドメを刺していく。

 

『よい調子じゃ、あるじどの。このまま最奥の亡霊騎士まで突っ込んでしまえ』

 

 ツルギの声が頭に響いてくる。

 簡単に言ってくれる。まだ敵がわんさかいるってのに。

 

「キョウ! 少し下がれ!」

 

 後方からヒビキの声が聞こえたかと思うと、巨大な稲妻が地面を走り、進路を塞ぐゾンビたちを次々と焼き尽くした。

 道が切り開かれる。そしてその道を途切れさせまいと、飛び込んだシュカが周囲の敵をさらに殲滅していく。

 

「ナイス、ヒビキ、シュカ!」

 

 頼もしい援護を受けて、俺はさらに前に進む。

 そうして俺は、ついに亡霊騎士と相対することとなる。

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