タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 作者は初見のソウルライクは器用貧乏スタイルで攻略したくなるタイプなので初投稿です。



メインキャラを強化するための都合の良い辻褄合わせ、始まるよー♪

 彼方から“アルバイトに巻き込まれた義塾の学生を瘴気から護るための法具として草薙レプリカを貸し出した”という報告を受けて納得したり。

 彼方から“人が依代となり常世の鬼が喚び出されたのは倒したが対策部隊の中で嬉しくない温度差があった”という報告を受けて頭を抱えたりと。

 

 学園にてひとりの教師が今後のことでポンポンを痛めていたころ、義塾ではひとりの不良がとある女子生徒にどのように接触するべきか大真面目に悩んでいた。

 

 もちろん銀城海斗のことである。

 

 見た目からして自他ともに認めるヤンキーであるが故に、交換学生という学園の代表として義塾にやって来た凪菜にどのように接触するのが正解なのかあーでもないこーでもないと考えていた。

 兄である彼方に敬意を抱いているからこそ、その妹である凪菜に迷惑をかけるのはヤンキー倫理的にアウトなのだ。優等生かどうかは知らなくても真面目に授業を受けている生徒に不良が、それも上級生が気安く話しかけるのは……と、海斗なりに気を遣っているのである。

 

 従えるだけなら腕っぷしが強ければいい。

 

 慕われるには気配りが求められるのだ。

 

 ついでに、当の凪菜が頭の上になんかデップリ太った鳩のようなナマモノを乗せているせいで周囲から注目されていることも海斗にとっては向かい風となっているのかもしれない。

 その正体は召喚術式の訓練と、見せ札として周囲を欺くために喚び出した八色絶骨鳥である。さすがに骨のまま実体化させるのはアレなので色々と試行錯誤した結果、何故か雷属性をパチパチさせる鳩のような姿で定着してしまった。

 

 見るからにあったかふわふわな鳩。それも頭の上にちょこんと座ったまま。たまに凪菜からお菓子を与えられてモグモグする姿もなかなか愛らしい。

 

 だがその正体はDLCエリアの迷宮主である鬼神と真っ向勝負できる巫女が召喚したDLCエリアを徘徊する鬼畜なのだ。

 投擲武器や弓矢はもちろん、魔法スキルさえ届かない超高度から霊気爆雷を投下して学生能力者の100や200は殺傷できるだけの戦闘力は有している。

 

 しかも現状では雷属性だけしか喚び出せないが、ほかの属性も鍛えれば最大で8羽編成の鳩さんヤーボが絨毯爆撃を仕掛けてくる地獄を作ることも可能なのだ。これに対抗するなら神社にご神体として祀られている対空戦車でも引っ張ってくるしかあるまい。

 

 

 さすがの海斗も、まさか頭に鳩を乗せた少女が一瞬で自分を消し炭にできる雷属性Sランクに到達した実力者だとは見抜けなかった。故に、どうやって警戒されないような切っ掛けを作ればいいのかと考えていたのだが。

 

 

(……そういえば、暮間との交流もある様子だった、気がするな。無銘さんもデモンシード絡みの話は知ってるって言ってたワケだし、回りくどい形になるがそれもアリか? 周囲に誰かいるタイミングで、教室とかで普通に話しかければ変な誤解もされねぇだろ)

 

 

 鵺の巫女、名門たる暮間の娘。

 

 そこにもしっかり配慮しつつ、やましいことは無いのだからと堂々と棗のクラスに乗り込む海斗。教室がザワザワしてもなんのその、下手にキョロキョロすることなく目的の人物のところまで一直線である。

 

 

「一応、改めて名乗っておこう。銀城だ。暮間、鵺の巫女であるお前に頼みたいことがある。侍として、精神を鍛えるためにお前のところで管理している伽藍洞を使わせて欲しい」

 

「……その言い方ですと、単にステータスを強化したいという意味では無いのでしょうね。理由をお聞きしても?」

 

「もちろんだ。ワケも話さずこっちの都合を押し通すつもりはねぇ。と、言っても……説明するより現物を見せたほうが早いな。オレはコイツを使いこなせるようになりたくてな」

 

「失礼、少しお借りします。……これは」

 

 

 武器の目利き、というよりは巫女としてのエーテル感知能力による鑑定のようなもの。そのままの名称では余計な混乱が生じるだろうと神霊の力により【白鞘の霊刀】という銘を着せられたそれが、普通の武器ではないことを棗は確かに読み取っている。

 

 それとは別に。

 

 

(……彼方くんの霊気? なんでまた、そんな武器を銀城さんが?)

 

 

 大勢の侍たちの戦いの歴史が刻まれている霊刀を手に、ほんの数回ほど素振りをしただけの彼方の霊気を正確に判別した現象にどのような名付けをするのかは読者の皆様の自由である。

 但し、北辰の迷宮攻略と朧討伐を完遂した真白と棗のふたりが意気揚々と彼方に模擬戦を挑み、前歯が全部折れる勢いの男女平等パンチにより霊気を顔面に直接叩き込まれた経験があることを念の為ここに開示しておく。

 

 大太刀の真白と二刀流の棗。まず斬撃属性の武器という時点で相性は最悪であり、ふたりの物理系スキルは彼方から継承したものばかり。自分の技を避けることなど見切りスキルに頼るまでもなかった。

 色気は無いのに血の気ばかりは過剰供給、それでいいのか年頃の乙女たちよ。挑まれたからと言って本気で返り討ちにする彼方サイドにも問題はあるかもしれないが、そんな負け方をして満足している真白と棗もだいぶ手遅れかもしれない。少なくとも鵺はマジかコイツらと若干引いた。

 

 

 雨の日に傘をささずに踊る人がいたっていいように、バレンタインとバイオレンスを間違える乙女がふたりぐらいいたっていい。自由とはそういうものだ。ちょっとそれは意味が違くねって? それはそう。

 だが危険な領域の扉を8BEATでノックしていることと棗が優秀な巫女であることは関係ない。白鞘の霊刀をチェックして攻撃力のステータス補正が技量と精神にあることを確認し、その上で結界を張るための法具に似た気配も感じ取れた。

 

 

「正確なところまではわかりませんが……おっしゃる通り、これは普通の武器ではありませんね。私が探れる深さだけでも、少なくとも150……いえ、200年以上……は、実戦で使用されていたと思われます。プロの巫女であれば、もっと霊気の深層まで潜れるかもしれません」  

 

「鵺の巫女でも判別できねぇレベルの業物か。そりゃ常世の瘴気とやらを簡単にガードできるワケだわ」

 

「常世の……? なるほど、義塾の序列戦や配信されている結界戦とは別枠の事情がある……と。わかりました。では、今週末にお時間は作れますか?」

 

「次の休みだな。わかった、感謝する。残念ながら借りを返せるアテがねぇのが情けねぇ話だが」

 

「おや? 私は週末に時間を作れるか確認しただけで、伽藍洞に潜れるよう取り計らうとはひと言も言っていませんよ? 門前払いになっても言い訳をしなくても良いように、しっかり準備と覚悟を済ませておいてくださいね?」

 

「……ハッ! おもしれぇ。そういう歓迎の仕方はオレも望むところだ」

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 そして週末。 

 

 

「「「「すげーッ! かっけぇーッ!」」」」

 

「おいガキども、危ねぇからあんまりペタペタ触んなよ。火傷しても知らねぇぞ」

 

 

 珍しいタイプの来客と、見慣れた四輪駆動の車両とは違うバイクならではのフォルム。週末の鍛錬にやってきた男の子たちが興味を示すのは当然であり、案の定ヤンキー倫理的に海斗は気分を害することなく好きにさせていた。

 

 そこへ。

 

 

「……へぇ。ずいぶんご立派なお車がやってきたと思えば、葛見……誠二郎だったか?」

 

「貴方は……銀城、海斗さんですか。どうも、こんにちは。貴方も暮間の家になにかご用事が?」

 

「まーな。つい先日、苦い思いをしてテメェの無力さを痛感した。コイツぁステータスだけじゃなくて根性を叩き直さねぇとダメだと思って暮間に頭下げて鍛錬を頼んだ。そんなトコだな」

 

「なんというか、意外ですね。ボクから見れば、序列戦で活躍し破竹の勢いでランキングを上げている銀城くんはいつでも自信に満ちているように見えていましたので」

 

「身の程知らずのカエルが水溜りで鼻ァ伸ばしてた、ってワケよ。んで、オレから見れば迷宮攻略でスマートにご活躍中のオマエはなにしに来たんだよ、って話になるんだが?」

 

「弱音を吐いているところを見られてしまったものでね。しかも、よりにもよって交換学生の、学園の巫女に。せめて人前では葛見の御曹司としての姿を維持しなければ、と気をつけていたのですが……今後は油断しないように、ということで」

 

「そうかよ」

 

「ええ」

 

「…………」

「…………」

 

 

 しばしの無言。

 

 周囲にいた小学生たちは一瞬だけふたりのほうへ視線を向けるが、特に険悪な雰囲気ではないことを悟り立ち去ることにしたようだ。

 

 そして。

 

 

「……安心しろよ()()()。途中で泣き言が出てくるようなら、オレが容赦無くケツを蹴り上げて気合を入れてやらぁ」

 

「それはどうも、()()()()。キミが知恵熱を出して倒れてしまったときは、ボクが頭から水をかけて起こしてあげますよ」

 

 

 まともに会話をするのは今日が初めてのふたり。

 

 それでもお互いになにか通じるものがあったのか、男の友情の不思議である。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 戦闘用に着替えを済ませたふたりが案内されたのは、目的の伽藍洞ではなく道場のひとつであった。踏み込んだ瞬間に結界の感触があったことから察するに、単なる手合わせではなく本気の勝負で実力を見極めるつもりなのだろうと男ふたりの表情が引き締まる。

 特に迷宮攻略を中心に活動しているため対人戦の経験値が少ない誠二郎の横顔は死地に向かうかの如く真剣味を帯びている。自分の父や兄の正体が本当はクソザコメンタルなのを必死に誤魔化していることを知らない誠二郎にとって、弱味を他者に見られて葛見財閥の名を貶めるなど絶対にあってはならないのだから。

 

 常世の鬼と接触して無力を痛感した海斗に比べて緊張感に欠ける理由のような? と思うのは第三者のメタ視点による思い込みであろう。風評により取引きひとつ問題が出るだけで数十人、下手をすれば数百人のお給料に影響する可能性があるのだ。人目を忍んで自己啓発に勤しむほど真面目な誠二郎でなくとも無視できるものではない。

 

 

 暮間の名を知らぬ者は義塾に無し。いったいどれほどの手練れが自分たちを試すのだろうと緊張と、不思議な期待感と高揚感を胸に中に入れば。

 

 

「葛見誠二郎さん、銀城海斗さん、ここまでの移動の間に心の準備はできましたか? もっとも、結界に踏み込んでしまったのですから、いまから時間の猶予が欲しいと言われても受け入れるつもりはありませんが」

 

『ククッ、なかなか面構えは期待できそうじゃねぇか。己は嫌いじゃないぜ? あとは、どの程度の意気地を見せてくれンのか、ってだけだ』

 

「うぉッ!? 神霊鵺ッ!? そ、そうか、暮間の家の道場だもんな、そりゃ神霊も実体化できるタイプの結界も……そりゃ、あるか。いやけど、暮間……が? 試すって、お前が、オレたちとタイマンしようってのか?」

 

「いや、確かに、ボクのヒダル女神よりも戦いに特化した神霊なのは知っていますが……だとしても、さすがにそれは。確かに義塾には接近戦の心得がある巫女の女子生徒も大勢いますけど……それに、壁際の人たちは」

 

 

 驚きポイント① いきなり鵺の出迎え。

 

 驚きポイント② まさかの棗がやる気。

 

 驚き? ポイント③ なんか観客いる。

 

 

 当然、いる。日比野鈴音も、祁答院更紗も、無銘凪菜も。なんなら水守蔵人も穂村烈人も並んでいる。女子3人は当然のこと、蔵人はもちろん烈人も原作とは真逆の素直さによりトレーニングに誘われれば断る理由はない。

 2作目の主人公である鈴音と、攻略対象であるイケメン4人が休日のイベントで同じ場所にあつまる。これはきっとロマンスの神霊様が気を利かせてくれたに違いない。ファイティング☆ガールズ、死闘の予感きっと誰か(日本武尊に誘われて覗き見してる神々らへん)も感じてるだろう。

 

 

「私が招待しました。戦いを“視る”のも立派な鍛錬ですので。まさか、精神鍛錬を希望したおふたりが、視線が気になり集中できないから困る……とは言いませんよね? などと挑発しなくても、それぞれの事情で注目されることなど慣れているかとは思いますが」

 

「いや、そこは別に気にしねぇけど……」

 

「なら大丈夫ですね。それでは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「────ッ!?」」

 

「どうかしましたか? 少々、ズルのような気もしますが、私は先に待ち構えていた側ですから準備万端な状態です。さぁ、せっかくの機会です、時間も勿体ないですからね! いつでもどうぞッ!」

 

 

 これが意図的な挑発ならイケメンどもも憤りの欠片ぐらいは産まれたのかもしれないが、棗の目の色は夏休みに大きなカブト虫やクワガタ虫を見つけたときの小学生男子のソレである。

 海斗と誠二郎が互いに向き合い頷き合う。おそらく、自分たちは勘違いをしていると。名門暮間、鵺の巫女。きっと学校では見せたことのないような戦闘技術をマスターしているはず。ならば有り難くご指導ご鞭撻を頂戴しようと海斗は使い慣れた大剣を、誠二郎は斧槍を構えた。

 

 のだが。

 

 

 

 

 

 

「────判断が遅いですよ?」

 

 

 

 

 

 ボール、である。

 

 なんの変哲も無い、子どもが遊ぶようなサイズもお値段もお手頃そうなボールである。

 

 それがふわりとふたりの正面に投げ出され。

 

 

「疾ッ!」

 

 

 棗の投擲したクナイで貫かれ、目潰しの粉末が撒き散らされたッ!! 

 

 

「ぐぉッ?!」

「うわッ?!」

 

 

 油断ッ! 

 

 男たちの中に、棗がこのような搦め手を使う可能性など存在しないッ!! 

 

 

「「えぇッ!?」」

 

 

 これには蔵人と烈人も思わず声が出るッ! 

 

 

「少し、痛いですよッ!」

 

「チィ……ッ!?」

 

 

 右手に雷光を、左手に旋風を纏わせた諸手突きッ! 

 

 筋力への振り分けは控え目とはいえ、直撃すれば肋骨を全て砕かれる致命傷となる一撃。

 それでも喧嘩慣れしている海斗であれば反応が間に合う。吹き飛ばされこそしたものの、どうにかダメージは最小限に抑えることに成功した。

 

 

「海斗くんッ!」

 

「他人事ッ!!」

 

「ぐぁッ!?」

 

 

 迷宮攻略を中心に活動しているからこそ仲間の危機に反応してしまう。視界不明瞭の中で攻撃を受けたであろう海斗に反応してしまい、その隙を突かれ派手に蹴り飛ばされたッ!! 

 

 両人、混乱。

 

 しかし辛うじて、どちらも意地にて立ち上がる。

 

 

「さすが、この程度は余裕で耐えられるようですね。しかし、残り時間は少ないですよ? 大きな痛みを感じているときに、小さな痛みに気付くのは難しいですから。私、投擲は得意なんです。とても。……鵺の毒針、絶命まで70秒。これで時間もおふたりの敵となりました」

 

 

『誠二郎ッ! そっちの坊やもッ! 頭を切り替えて腹ァ括りなァ。あのお嬢ちゃんをタダの巫女だと思ってると大変なことになるよ?』

 

「ヒダル、婆……?」

 

「もう、そいつは身を持って味わったがな……」

 

『こんなもん、挨拶代わりさね。暮間のお嬢ちゃんの戦い方は歴史の表舞台で喝采を浴びていた侍たちのモンじゃない、その裏側で……ただ、静かに鬼を斬ることを生業にしていた連中の戦い方だ。ったく、いったい何処の莫迦だい? こんな阿漕な真似を巫女に叩き込んだのはさ……ッ!』

 

 

 忌々しそうに、吐き捨てるように、しかしどこか愉快そうに。睨み付けてくるヒダル女神に対して鵺はなにも応えない。

 その沈黙に代わって棗が答える。あの戦いが終わってから、真白と冗談半分に面白がっていた話題の使い所として適当だと。

 

 

「えぇ。ヒダル女神のおっしゃる通り、いまの私は巫女ではありません。鵺の巫女、正調・暮間十八番改め────無銘我流、暮間棗。罷り通らせていただきます」

 

 

 朗報ッ!! イケメンたちがヒロインと恋愛フラグを消化してパワーアップするイベントの雲行きが怪しくなった辻褄合わせに、前作クリアデータをそのまま引き継いだライバルキャラが鍛えてくれるぞッ! 言葉通り死ぬ気で学んで強くなろうッ!!




世界の理
『休日にヒロインとイケメンたちのエーテルが同じ場所に集まっているのか……。ほぅ、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ。あとは、ヒロインには活躍の舞台があれば充分なんだな』

黄龍
『暮間のお嬢ちゃんもすっかり染まっちまったのか。ほぅ、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ。あとは救いが間に合わず指の間から零れ落ちていくモノがあったとしても、手のひらに残ったモノを護ってくれれば充分……おぇっぷ、真面目な台詞は具合が悪くなるわコレ。薬食代わりに鰊の麹漬けで一杯やんべ』
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