聖王ちゃんと魔王ちゃんのワルツ   作:3×41

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ウィンザリアにて2

 ヨークザンでは三日三晩不眠不休で犯人の捜索が行われていた。

「下手人は見つかったか?」

「いや、まだだ。この人数で見つからないなんてありえんぞ」

「やはりこの地殻変動に巻き込まれたんじゃないのか?」

「その可能性は多分にのこされているな、だとしたら運が悪い、

 いや、生きて捕まるよりはずっと運がいいやつか」

「先日までこんな巨大な谷はなかったからな。まるで地獄まで続いてるみたいだ」

 兵士の一人が谷底を覗き込みながらつぶやいた。

 谷底はどこまでも暗く、深さもさることながら左右にも

 まるで大陸を両断する川のようにどこまでも伸びているかのようだった

 これでウィンザリア地方との物流は完全に遮断された。

 この渓谷を橋で行き来できるようにするには数ヶ月は要するだろう。

 

 

 

 

「え、学校ですか? それは随分急というか、急展開な話ですね」

 ケムリはヘパイストル本工房でノーラに話をもちかけられていた。

「まぁ誰に話してもそう言われるんじゃないかね。

 ただジジイがなんか信心づいちゃったっていうか

 この出会いに運命感じちゃってるみたいなんだよね」

「ボクさっきサポートがなってないって蹴られましたよ」

「うーん。まぁどっちかっていうとあの妹ちゃんたちのほうにかね。

 ジジイまさかあの歳でほうけたんじゃねぇだろうな」

「まぁ確かに学校というのは願ってもないいいお話だとボクも思います。このご時世教育は貴重ですし」

「そう思う? そうだよなぁ。やっぱあのくらい小さくても

 教育を受ける機械っていうのは私だってあるべきだとは思うけどさ」

「学校に封じておけばそうおかしなこともできないはずだし・・・」

「なんかちょいちょい話噛み合ってない気がすんだけど

 いちおうケムリくんも学校については賛成ってことでいいんだよね」

「ええ、おっしゃるとおりです。でも学費がですね。ボクに出せるかというところが、、、

 工房のお給金をもう少しいただけたりします?」

「おやおやケムリくんはうちがいまどれくらい火の車かご存知ないらしい」

「学校についてはボクも考えたことはあるんですが、

 そういうこともあってこの目論見はいまだ現実味をおびてないんですよね」

「そこでなんだけど一応学費が必要ない、まぁそりゃ一定の条件はあるんだけど、

 そういう学校に入学してみないかってジジイが張り切っちゃってるんだよ。

 あれで一応元名工だからそういうツテがあるんだってさ」

「ははぁ。そういうことですか。その条件が気になりますけれども、

 3食出るなら願ってもないですね。あの子たちけっこう食べるんですよ。

 条件というと試験かなにかあるんですか? そのくらいなら保護者のボクも同伴しますんで」

「なんか話が噛み合わないってのはこれもそのひとつだけど、

 入学するのはケムリくんもだよ。そもそもキミ保護者権持ってるんだろ?」

「ええぇぇっ!? ボクもですか!? ボク元奴隷ですよ!??」

「え、そうなの? いや、まぁそれは多分入学自体には問題ないはずだよ」

 

「お話は聞かせてもらいましたわよ。お兄ちゃん」

「ケムリもついに学生か。感慨のあるもんじゃのう」

 テーブルから幼女二人がひょっこり顔をのぞかせる。

 

「いやおまえらの話なんだけどな。少なくともボクにとっては」

「身分や職能に関係なく教区が受けられる。これは素晴らしいことですわ、お兄ちゃん」

「鍛治の真似事でその日暮らしを続けられると早晩ワシらの胃袋にも関わりそうじゃからのう」

「いやなんでボクが説得されてるんだ? おまえらボクの言うこと聞いてた?」

 

「3人とも、結論は決まったと思っていいかい?」

 ノーラにケムリが答える

「ええ、それについては異論はありません。ちなみに条件というのを聞かせてもらっても?」

「や、私もよくは知らないんだけど、なんか試験があるらしいよ」

「入試というやつですか? それはまぁ、あるでしょうね。どんな試験なんです?」

「まぁいろんな学科があるらしいから適性ってことになるのかな」

「へぇー柔軟な方針なんですね。ちなみになんていう学校なんです?」

「オージェストン魔法学校だってさ。52連合侯国の12の魔法学校のひとつだってことらしいよ」

「へ、へぇー」

「ワタクシもはじめて聞く名前ですわ。試験に受かればですけれど、なんだか楽しみですわねお兄ちゃん」

「まぁ大変そうではあるけどね」

「試験についてはもう少しジジイの口利きに時間がかかるらしいから

 しばらく工房で私らの手伝いでも頼めるかい」

「ええそれはこちらからお願いしたいくらいです」

「うんうん。試験工房ならいつでも使ってくれていいし。そっちで刀でも作れば

 市場で売ってみるといいよ。戦争が佳境らしいからナマクラだってそこそこ

 売れるかもしれないよ」

「ハハハ、それだとありがたいですけど。やっぱり才能ないですか?」

「私はハッキリ言う方だけどいいかい?

 手伝いだけでもある程度はわかるもんなんだけどさ

 才能がないでもないけど、ジジイの弟子たちには遠く及ばないだろうね。

 ジジイも顔見りゃわかるんだけどたぶん同意見だろうね。

 まぁとりあえず形になるだけいいんじゃない?」

「みたいですねぇ。とりあえずしばらくよろしくご指導お願いします。

 ・・・あとアスティ、おまえなんえさっきから黙ってるんだ?」

「なんじゃお前様、ワシに会話してほしかったのか?」

「いや珍しいと思ってさ。おまえを黙らせとける方法があるのか気になったんだよ」

「のうお前様よ。どの魔法学校でもそうじゃが、

 どこも一筋縄で行くものではない。励むのじゃぞ」

「うん、いやおまえ誰なんだよ。

 ていうかヘパじいさんはお前らのために口利きしてくれてるんだぞ。

 おまえら二人のことでやってくれてるんだからちゃんとお礼をいっとくんだぞ」

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