聖王ちゃんと魔王ちゃんのワルツ   作:3×41

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ウィンザリアにて鍛治見習い2

 翌日、ケムリはグェインという傭兵が所属しているという

 グリフォニス傭兵団を訪ねてみようかと思っていたのだが、

 アスティが時折り邪悪な笑みを隠しきれていないので

 さらに刀剣の鋳造を行い。数日後には魔術学校の試験を受けることになった。

 

 翌日、魔法学校の試験までまだ数日あったケムリ達は、昨日会った

 グェインという傭兵が所属しているというグリフォニス傭兵団に挨拶をしようと

 傭兵の駐屯地区へと訪れていた。

 

 グェインは口こそ悪い傭兵だったが

 結局ケムリの作った出来がいいとはとても言えない刀剣を

 結局6本買ってくれた。

 ああいう人ばかりならもしかすると結構売れるかもしれない。

 

「いやぁ。兵戦区というのはあれじゃろう?

 いつも騎士団とか傭兵団とかがアホみたいに争っとるところなんじゃろう?」

「嘆かわしいことです。複数の諸侯が数百年間領土争いを続けているとか

 聞くところによればそれぞれの国の聖地であり竜が眠っていると

 古来より定められているのだそうですわ」

「なるほどそれでどの諸侯も譲れんということなんじゃな。で、どうする?」

「どうもしねぇよ。ただ傭兵団に挨拶にうかがうんだよ。

 ボクの鋳造した武具でも買ってくれる奇特なお客さんがいれば

 お得意様になってもらえるとありがたいからね」

「そんなやつおらんじゃろぉ〜」

「うるさいな。おまえは黙っとくんだぞ」

 

 ケムリ達が傭兵の駐屯地区でグェインの名前をたずねると

 すぐにグリフォニス傭兵団の駐屯地を教えてもらえた。

 どうもグェインが所属するグリフォニス傭兵団は中規模程度の傭兵団らしかった。

 ケムリが訪れた駐屯地では複数のテントが設営され、

 昼食の頃合いもあってか、戦場の土煙の空に白煙を立ち上らせていた。

 

「なんだいおまえは? あぁ、グェインの紹介か、あいつ物好きだからなぁ」

「グェインならグリフォニスの天幕にいるんじゃないか? 

 ちょうど戦術会議で千人長は全員呼び出しだろ。

 いや、あいつは千人長じゃぁないんだけどな。

 人を引っ張れるタイプじゃねぇからアイツ」

 

 傭兵達が口々に言う。

 

「そうですか、ちなみに武器になにか不足はございませんか?」

「あぁ、はは。いやぁ、まぁいまのところはないかな」

 

 明らかに歯切れが悪い。彼はどういう紹介の仕方をしたのだろう?

 おそらくは正直にありのままを話したのだろう。

 

「グェインはバカ力だからなぁ。

 そこらの剣じゃすぐおっちまうから何使ってもかわんねぇしな」

「オレなんてこの前愛刀貸したら一撃目でぶち折りやがってよぉ。

 それで代わりに買ってきたのがこれだぜ? ほぼ木刀よ」

 

 傭兵が掲げて見せたのはケムリが売った刀剣だった。

 

「これはなんとも言い難いですね。妖刀のほうじゃなかっただけマシというか」

「木刀使って折られずに真剣に太刀打ちできる技術があるやつなんてグェインぐらいだろ

 その技術を剣を折らないほうになんで使えないかね」

「グリフォンに文句言ってやりゃまともな剣をよこさせるだろうぜ」

「おうそうしろそうしろ。そんな剣主軸にしてたらすぐ死んじまうぞ」

「でしたらボクが言伝を承りましょうか? ちょうど団長さんにも

 ご挨拶したく思ってましたので」

「えぇそうかい? わるいねぇじゃぁちょっくら頼むわ」

 

 ケムリが傭兵に教わった天幕を訪ねると

 グェインを含む千人長達が机に地図を広げて戦術について会議をしているところだった。

 ケムリに気づいたグェインが手を振った。

 

「おうケムリじゃねぇか。入れ入れ。なぁグリフォンこの剣さぁこいつから買ったんだよ

 こんな顔してこんな殺意の塊みてぇな刀打つんだぜ」

「ボクじゃないです」

「あぁすあないねグェインがわるがらみして。こいつは腕はたしかなんだけど

 すぐ剣を折ってしまうからとにかく数があると助かるんだよ。

 ケムリくんだったかな。防具の打ち直しなどはできるのかな?

 それも含めて安く刀をこいつに流してもらえるとこちらとしても助かるんだよ」

「えぇそれはもう喜んで。なんなりともうしつかりますんで。

 といいますかいいんですか? どうも戦術会議をしているようにお見受けしますけれども、

 ボクのような部外者を招き入れても?」

「いいのいいの。どうせ今回は正面からのぶつかり合いなんだからな」 

 

 グェインがカラカラ笑いながら言う。

 

「そういうわけですのであまり渋い顔をなさらないでください。サー・バリスタン」

 

 グリフォンは天幕の奥手にいるフルプレートアーマーを着た老年の騎士に言った。

 老年の騎士は渋面を隠さず、グリフォンの言葉に片眉を吊り上げるのみだった。

 グェインがこっそりとケムリにささやく。

 

「ただの傭兵団の俺たちが戦果あげるもんだから、王家直属騎士団からお目付け役ってんで

 次席の部隊長とその部隊員たちがきてんだよ。

 お目付け役なんて言うと聞こえがいいがどうせ俺たちが戦果をあげりゃ

 あいつらの手柄ってことにしたいんじゃねぇの。いい全身鎧着てうらやましいねぇ」

「おい貴様。聞こえているぞ」

「ケキャキャ。あの無礼な輩は打ち首にしてしまいましょう。バリスタン卿」

「やめろ。ケフカ殿もそのくらいでよろしい。

 傭兵の軽口をいちいち咎めていたら首がいくつあっても足りぬ」

「それでサー・バリスタン。我々の配置についてですが」

「ふむ、赤狼騎士団と紫犀騎士団と黒蛇騎士団は

 それぞれ城塞の前方と左右を固めると通達されておる」

「じゃぁ俺たちはまた前方の切り込み部隊ですかい?」

 

 おそらく千人長の一人であろう傭兵の男が不満げに言う。

 老年の騎士は少々圧を強めた。

 

「黙れ傭兵風情が。グリフォン殿いかがか? 

 三大騎士団に背後を任せ疾風陣をとるというのは?」

「我々は異存はありません。バリスタン卿」

「どうせあいつらは俺たちの部隊の後ろで見張ってるだけだぜ? いつものことだがな」

 

 グェインが再び耳打ちする。

 別の女の千人長が唸って言った。

 

「しかしこれはひどいねぇ。今回は向こうも全力できてるみたいだしこんな配置だと

 こちらは半分は死人になるよ」

「聞こえているぞ傭兵。お前らに我々の背後が預けられるものか」

 

 そこにケムリの後ろからついてきていたアスティがテーブルからひょっこりと顔を見せた。

 

「あれれ〜おかしいのう。この地形を見ると最右翼に山地が位置しておるのう」

「これはかわいらしいお客さんだね。その通りだけど、その険しい山地は陣がしけないし

 獰猛なシャドウキャット達のなわばりでね。だから今回はこちらの広い平原が主戦になるだろう」

「シャドウキャットは獣よけの鈴と、獣肉を囮にすればおそらく避けられますわね」

 

 アスティの隣にセスタが頭をのぞかせて言った。

 

「へぇ〜そうなんじゃなぁ〜。ということはこの山地を迂回すれば

 敵陣の背後を挟撃できるわけじゃなぁ〜」

「話にならん。子供の生兵法だ。第一誰が山地を迂回するのだ」

 

 バリスタン卿が声を荒げる。

 グリフォンはしばらく考え込んで

 

「ふむ、、、不可能ではありませんね。

 まず我々が疾風人をしいて正面の敵にあたり、

 次に強撃後退をしながら背後の紫犀騎士団と後列交代をして

 紫犀騎士団が防御を固めている間に山地を迂回できれば…」

「やかましいぞ傭兵。我々王侯騎士団が信用もおけぬ傭兵どもと連携などできるか

 疾風陣で強撃前進、この方針に変更はない。よいな傭兵ども」

「バリスタン卿がそうおっしゃるなら異論はありません」

 

 

 

 「お嬢さんたち、おもしろい見方をどうもありがとう」

 

 天幕を後にしたケムリの連れた幼女たちにグリフォンがお礼を言う。

 

「え、でも正面衝突するのでは?」

 

 そうたずねたケムリにグェインがカカカと笑った。

 

「わかってねぇなぁケムリ。そんなもんやり方次第よ。

 じゃぁとりあえずどんな剣でもいいからよ

 20本ぐらい頼むわ」

「えぇ、まいどありがとうございます。

 ただこんな成り行きであれなんですが、

 ありがたいことに魔法学校の入学試験を受けられることになりまして

 20本の新規の刀剣のご依頼については問題ないと思いますけれども

 その後はそうなると刀剣の供給は多少遅れるかもしれません」

「あーいいのいいの。足りなくなりゃよそあたるし

 とりあえず安く手に入りゃいいんだからさ」

 

 こうして不自然に運よく大口の注文を取り付けたケムリは

 アスティとセスタを連れて帰路についたのだった。

 

「しかし見たかセスタ? あいつは危ういのう。堕天するぞ。下手をすると」

「願わくば犠牲の少ないことを祈りたいですわ」

 

 後ろでヒソヒソと話す少女たちの声は運よくケムリには聞こえなかった。

 

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