聖王ちゃんと魔王ちゃんのワルツ   作:3×41

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オージェストン魔法学校にて2

 オージェストン魔法学校の屋上でミスリルの大鐘楼の通過儀礼を無事くぐりぬけた

 ケムリ達はエルダーメイスターマグナゴルに連れられてサウザンドメイスターが訓示を与えるという

 講堂へと到着していた。講堂は広く木製の椅子が並べられており、

 ミスリルの大鐘楼の通過儀礼を終えた新入生達が好きな場所に座っていた。

 

「よろしい。では私の引率はここまでです。

 座る場所を選んで静かにサウザンドメイスターの到着を待つように」

「はい。わかりました。エルダーメイスター・マグナゴル」

 

 マグナゴルがその場を後にするとケムリはひそひそ声でアスティにたずねた。

 

「なぁアスティ、おまえここのこと知ってるみたいだけど、サウザンドメイスターっていうのは?」

「あん? アレクシスじゃろ?」

「アスティ、いけませんわよ」

「あぁいかんいかん。しらんしらん、ワシはなんにもしらんぞ」

「こいつら…」

 

 アスティがそっぽを向いてピューピュー口笛をふく。

 と、アスティが講堂の一角に目をやって言った。

 

「ん? のうケムリ、あそこじゃ、あの女のところに座ろう」

「うん? まぁ別にボクはどこでもいいけど」

 

 アスティが指差した先には木製の椅子に座った新入生らしい女生徒と

 その隣に直立した30歳前後の男が控えているようだった。

 

「あの、隣に座ってもよろしいでしょうか。この子が気になってるみたいで」

「うん? 私か? そうだな。いいだろう。こらワットスン、顔をしかめるな。私の学友だぞ」

 

 女生徒が直立で控えていた男をたしなめるように言う。

 ケムリが簡単に自己紹介をすると、

 

「あぁ、ケムリくんと言うのか、よろしく頼むぞ。

 私はユークィン・アルトリアという。こちらは執事だ。

 スチュワート・ワットスンという。おいワットスン、なにを黙っているのだ」

「…クイーンをよろしくお願いします」

「クィーン?」

「あぁ、私はアルトリウス王国の王族だからな。皆は私をユークイーンと呼んでいるぞ」

 

 あけすけな自己紹介にケムリはたじろいだ。

 元奴隷が52連合侯国がひとつの王国の王女に軽々しく話しかけてよかったのだろうか。

 

「カーッカッカッカ! アルトリア!? アルトリア一族の末裔か!?」

 

 アスティが突然笑い始める。

 

「カーッカッカッカ。こりゃええわい。アナスタシアのやつ笑わせよる。

 なにが私は生涯結婚をしない。アイアンメイデンだ。じゃ。

 カーッカカカ! いかん、腹がよじれる」

「フフフ、いけませんわアスティ。笑っては失礼ですわよ」

「すみませんこいつらが。なにせ幼女なもので、どうかご容赦を」

「うん? かまわんかまわん、楽にしてよいぞ。おいワットスン、渋面をつくるな。学友だぞ」

「あ、ちなみにあなたの隣の子供達も入学生ですか?」

 

 ケムリがユークィンの隣を見ると、

 セスタやアスティと見かけ上の年齢は同じくらいの少年が二人座っているのが確認できた。

 

「うん? いやいや、この子たちはワットスン同様、私の付き添いだ。

 私は孤児院を運営していてな。みんなついてきたいとせがんだのだが大勢で押しかけるのも

 アレだったからな。くじ引きでこの子達だけ連れてきたのだ。ランスロットとガウェインだ。

 元奴隷の子達だが、悪く思わないでやってくれよ」

「へ、へー。そうなんですか」

 

 自分も元奴隷だということはつげてもいいのだろうか?

 ガウェインとランスロットがユークィンに促されてペコリと頭を下げる。

 

「ほう。さすがアナスタシアの血を引いた女じゃな。二人とも英雄王の素質があるのう。

 おいユークィン。孤児院には他にどんなやつがおる?」 

「そこのあなた。いくらクイーンのご学友で幼女でいらっしゃるとはいえ言葉遣いには…」

「ワットスン。やめろ、学友だぞ。アスティといったかな?

 他の子たちはアーサーやガラハドや、まぁ13人の小規模な孤児院なんだけどな。

 私はなかなか子供になつかれないのだ」

「まぁアナスタシアの血ならそうじゃろうなぁ」

「孤児院を運営なさっているなんて、とても素晴らしいですわ。

 ぜひワタクシもうかがわせていただけますかしら?」

「ええとキミは、セスタといったね。ああかまわないぞ。是非とも招待しよう。

 きっとあの子たちもよろこぶぞ。なぁワットスン」

「ええそうですねクイーン」

「なんでちょっと不機嫌なんだおまえは。スチュワートならちょっとは感情を隠すものだぞ」

 

 ケムリ達が話していると、屋上からゴォーン ゴォーン ゴォーンと鐘が鳴り響く音が聞こえてくる。

 講堂の壇上でエルダーメイスターマグナゴルがいう。

 

「まもなくサウザンドメイスターがいらっしゃいます。一同静かに」

 

 そしてそう言ってすぐに、壇上の空間が薄ぼんやりと歪み。

 一人の白髪の老人があらわれた。

 おそらくあの人がサウザンドメイスターだろうとケムリは予想した。

 

「…わたしがこのオージェストンのグランドメイスター。アレクシス・ダンドリオンじゃ」

 

「なぁケムリ。あれがサウザンドメイスターだ。

 なんでも年齢が1000歳を超えているらしいぞ。いったいどうやってるんだろうな?」

 

 隣のユークィンがヒソヒソという。

 いわく12魔法学校の学校長はグランドメイスターと呼ばれるらしいのだが、

 そのへんからサウザンドメイスターと呼ばれているらしい。

 

「ウィザーズ・ヴェイルはそなたらの入学を歓迎しよう。

 学ぶものは学び、魔の資質を持つものはその才能を開花させればよい。

 しかしわたしはそれらの一切に興味がない。それらは長い歴史の波にうかぶ小さな泡でしかない」

 

 サウザンドメイスターがあけすけな物言いをする。

 1000年以上生きるとああなるものなのだろうか。達観というやつだろうか。

 サウザンドメイスターが講堂の入学生達を見渡しながら続ける。

 

「この悠久の歴史において、ワタシとこのヴェイルは、ヴェ、、、」

 

 サウザンドメイスターの視線がピタリと止まる。

 その目線の先にはチョコンと座るセスタの姿があった。

 

「カッ、、、カハッ、、、セ、セスティアード様、、セ、セス、、カハッ、、、」

 

 サウザンドメイスターは白目をむいて気絶し、その場に崩れ落ちた。

 

「バレたのう」

「バレましたわね」

 

 ケムリは再び頭が痛くなってきていた。

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