【完結】龍教団物語   作:ターキィ

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16話:墓荒らし

 

「天に在す神龍よ、願わくば地に愛をもたらしたまえ。弱きものに愛を与える糧を我らに与えたまえ」

「悪鬼羅刹を我らから遠ざけたまえ、天魔外道から我らを護りたまえ」

お香の臭いと煙、そして守護の祈りで修道院の中は満たされていた。

修道院では定期的にこうして振り香炉を炊いてお清めをしている。

「いつものことながら、煙だらけね」

「そうですね」

ルーナと共に私は外に避難していた。香の臭いはあまり得意ではない。

「お前たち、サボりはよくないぞ」

振り香炉を持ったバルトロがやってきた。

「ちょっと避難してるのよ」

「浄めの香から避難?お前たちは悪しき者どもなのか」

まあそういう事になるだろう。

「なりませんよ!」

「人手は足りてるからまあいいがな。あまり感心は出来ないぞ」

全く真面目な男だ、真面目な上ハンサムだ。絶対モテる。

するとそこへ、街からの訪問者がやってきた。慌てている様子である。

「申し上げます!共同墓地にアンデットが現れましたぁ!」

「何ですって!?」

報告に来た町人の言葉に、ルーナは驚きの声を上げた。

「ウジャウジャいますよ!早く来てください!墓荒らしがめちゃくちゃに!」

「すぐに行くわよ!あなたたちもついてきて!」

「はい!」

「お、俺も!?」

「いいから!」

私とルーナとバルトロの三人ですぐさま現場へと向かった。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

墓地にはゾンビやスケルトンが闊歩しており、さながら戦場のような様相を呈していた。

その中心には墓荒らしがいた。どうやら彼がこの騒ぎを引き起こしたらしい。

彼は剣を振るい、周囲のゾンビやスケルトンを次々と斬り倒している。

しかしながら、お清めや付呪を行っていない武器では何度も蘇ってしまう。

そのため、数を減らすことが出来ずにいた。このままではジリ貧だ。

「何してくれちゃってんのよもう」

「はわわわ、ぞ、ゾンビ!スケルトン!」

バルトロは腰を抜かしている。本当に怖がりだ。

「ひゃあああぁ、助けてくれー!」

私たちが駆けつけたのに気がついたようで、墓荒らしは助けを求めた。

「あの悪党、ただ黙って助けるべきかしら」

「クピドならそうするはずです」

「そうね、じゃあ助けるとしますか」

ルーナは片手剣を構える。私は手をかざし呪文を唱えた。

「光よ!切り裂け!」

光の円盤が放たれ、墓荒らしの周りにいたゾンビやスケルトンをまとめて切り裂く。

これで彼の周りからは敵がいなくなった。

「た、助かったぁ!」

「アーデルヘイトさん、付呪を」

「了解。光の加護よ!」

私は彼女の持つ剣に神聖の付呪を付与した。不死者に救いを与えるにはこれが効果的だ。

「私は彼を連れ出します、援護を」

「はいよ!」

ルーナは私を置いて、敵の真っ只中に飛び込んでいった。彼女に近づこうとする敵を片っ端から薙ぎ払う。

彼女はまるで舞うように戦っていた。華麗かつ無駄のない動きで次々と敵を屠っていく。

そうして、墓荒らしの服を掴み引き摺るとそのまま安全な場所まで移動させた。

「アーデルヘイトさん!」

「光よ、爆ぜろ!」

呪文を叫ぶ、アンデットたちの中心で激しい光を伴う爆発が起こり、周囲を焼き尽くした。

「相変わらず、おっかない魔法ですね」

「これでも神聖魔法の基礎なんだけどなぁ」

私たちはそんな会話をしながら、墓地の掃討を終えたのだった。

「きゃーーーっ!!」

「あ、バルトロさん」

終えていなかった。バルトロが女性のゾンビやスケルトンにもみくちゃにされている。

「モテモテね、バルトロ」

「神龍よ!不死者からお救いください!!」

しかし、死者にもモテるとは、容姿がいいのは得であるのだなー。

ルーナのツボに入ったようで、クスクスと笑っている。

「見てないで!助けてくれよぉ!」

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「すみません、出来心でして……」

「死者の眠りを妨げてはいけませんよ。罰当たりなことはやめて下さいね」

「本当に申し訳ないです……」

「全くだ!とんでもないことをしてくれたな!!」

墓荒らしの男は平謝りしていた。バルトロが一番怒っている。お前は何もしてないだろ。

反省しているようだし、これ以上責めるのも酷だろう……とでも言うと思ったか!既に衛兵を呼んであるのだ。

「貴様かぁ!墓荒らしは!」

「ひえぇっ!?お許しくださいぃ!!」

「まずは亡骸を元の場所に埋める作業だ!」

「ひいいっ!?」

衛兵たちは男を連れて行き、説教と埋葬作業をさせに行った。

「さて、私たちも戻りましょうか」

「はい、そうですね」

「俺はもう嫌だぁ……!」

こうして、墓地の事件は幕を閉じたのである。

バルトロはその日、ギヨームのベッドに潜り込んで寝たのだという……。

 

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