【祖龍と神龍】
かつての世界は、混沌としていた。
万人が万人に向けて闘争を起こし、人も魔物も無かった。
強い者は強い者であり続けることを強いられ、弱い者は虐げられ続けていた。
割れた世界の管理者ハーメルは、世界に自身の力を分け与えた大型爬虫類、ドラゴンを四柱放った。
心や感情、想い、祈りを司る支配の龍。
生命の為す営み、文化や信仰を司る戦争の龍。
物質やその動きや熱、魔術などのエネルギーを司る飢餓の龍。
そして、生命や霊魂、時間を司る死の龍。
これが四柱の祖龍と呼ばれる存在である。
彼らは基本的に異常にスケベであり、異種族にも興奮する異常ドラゴンであった。
現在でもいたるところで人々を誑かしているらしく、野良ドラゴンがいるのはその為らしい。
手始めに彼らは自分たちでまぐわった。彼らは両性具有であった。
それで生まれたのが、十六柱の神龍である。
彼らはそれぞれ個別の概念を司っているドラゴンである。
しかし結構いっぱいいるので紹介は割愛する。
【西方教会の分裂】
西方世界の龍教団がかつて一つであった時代。
およそ500年前の帝国崩壊以降、西方世界は魔族が猛威を奮った。
まず、西方大陸北西岸の半島の偶蹄獣人が中心の属州ブルモリカにて成立した魔王国というものが存在した。
帝国の崩壊後、人類種とエルフ種に迫害を受けた魔族たちの受け皿となり、住民構成が大きく変化する。
そうして革命が起き、魔王の称号は魔族の人間により簒奪されることになる。
魔王国は追い出された土地の回復を名目に各地に攻め入り、大陸北西部を掌握。
北の海に浮かぶ人類種の多く住む島々、グレートランドは孤立してしまった。
そこで、グレートランドの解放と魔王国の脅威の排除のために勇者軍が組織される事になった。
詳細は割愛するが、第一次勇者軍は魔王軍主力部隊を打ち破り、交易保護の約束と相互通行許可条約を締結した。
これにより、以降勇者軍を送る意味は殆ど無くなってしまった。
しかしながら、莫大な利益を得た商人と宗教的な情熱を燃やした龍教団の結託により第二次、第三次と続いていくことになる。
そして、時代は降り200年前の第四次勇者軍が組織された。
一部の商人に煽動された民衆が中心となり、悪名高い傭兵が勇者として名乗りを上げた。
当然、道中での振る舞いは散々なものであり、暴力と略奪と姦淫に満ち溢れたものであった。
唯一龍教団より派遣された治癒師エドゥルネはその行為を糾弾した。
しかし勇者は彼女を凌辱の後殺害する。この出来事は目撃者によりすぐに龍教団に報告される。
龍教団は激怒し、第四次勇者軍に対する聖戦の布告を宣言した。
そんな最中、六つの集団がそれぞれ異なる立場を取って行動を起こしたのである。
エドゥルネにはフアンという兄がいた。報復者フアンはこの事に最も怒り、徹底的な報復により尊厳の回復を試みた。
彼は勇者軍の素性を調べ、故郷の家族、友人、恩師や近所の住人に至るまで可能な限り全てを殺害した。
この一派は後に"憤怒の教会"として独立する。
現在では秘密結社と化しており、龍教団の暗器と呼ばれているが、殆ど世に情報が出てきていない。
上記の報復をやり過ぎだと、たまたま故郷を離れていた勇者の妹を匿ったのが人類種の女性、隠遁者モニカの一団であった。
彼女は罰は罪人にのみ与えるべきで、それ以上の事をしてはならないと考えていた。
慈悲深いモニカの元には比較的穏健派の龍教徒が集まってきた。
そうして、愛と幸福を司る神龍クピドの名を借り、現在の"クピド派"になったのである。
この宗派は人種を問わず西方世界で広く信仰されている。西方諸派で最もまともなので。
報復はするべきだが、殺すのは勿体無いと考えたのは半狐獣人の男、支配者ジョアンであった。
強制労働に従事させる方が長く罰を与える事ができると考え、勇者軍の捕虜を奴隷にした。
現在、"西部教会"を名乗っており、労働と苦行により徳を積むことを是としている。
西方大陸南西部のイベルパニア半島内北西、レオリーリャとポルカ・トゥーレでのみ信仰されている。
信者は商人、特に奴隷商人が多く、奴隷と自分に苦役を強いている。
勇者軍の賢者を捕えた観測者エーゴンはその者の知識に驚愕し、殺すのは惜しい考えた。
彼はドワーフの鍛冶師であり、魔導具の製作をしていた。
賢者の知識を書き出させ、死ぬまで魔導具の研究に携わらせたという。
彼らは賢者の手により蓄積された知恵と知識の書を聖典と見做すようになった。
道具の神龍タロスを中心としたいくつかの神龍と共に聖典を崇める"タロス派"が誕生した。
主にドワーフと都市部の中流階級以上の人々に信仰されている。貧者と弱者の救済を行わない為、農村や貧困層には全くの不人気。
龍教団随一の猟奇殺人者の北方の兎獣人、狂乱のミエリッキは当然この騒ぎに食いついた。
同好の士を集め、勇者と関わりのあるもの全てに戦いを挑んだ。関わりがなくても戦いを挑んだ。
彼ら北方の兎獣人は昔から武勇の龍ハッカペルを信仰しており、その名を叫びながら暴れ回ったという。
伝承によれば、途中で遭遇した転生者も7人ほど殺害しており、聖女教徒に目の敵にされている。
これはそのまま"ハッカペル信仰"と呼ばれるようになった。
戦場での道義を重んじ、また北方の伝統信仰が習合している。
その為なのか戦が絡まない場合は意外にも現実的かつ常識的である。
模擬戦闘が儀式として行われている。主に北方にて信仰されている。
まずは悪行を広く知らしめ人々の繋がりで追い詰めようとした商人たちがいた。
この集団は後の"星霜宗"の諸派の元となる。
人の耳を塞ぐことは出来ず、また人の口を塞ぐことも出来ないと考え、情報戦で戦った。
元々が商会であるため交易と交流を重んじている。教義は多くが金銭や情報、商取引に関連するものである。
頻繁に巡礼を行っており、西方と東方を繋ぐ役割も果たしている。
西方世界の南東部、ロタール南部、内海を挟んで南の砂漠世界などで信仰されている。
これらは旧来の龍教団から分裂し、元々の龍教団は龍正教として区別されるようになった。
龍正教は西方世界南東部のビザンチスタン帝国、そしてこれらの動乱とは無縁であったグレートランドで信仰されている。