緋色の欠片 ー私は、緋の眼の代理出品者でしたー   作:秋田慶

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すれ違う想い 二

 私、アイリスはあれから、噴水のある公園で膝に頬杖をついてため息をついていた。

 

 帰ろうと思ったものの、道がわからない。いや、その前に電車もバスも運行していない。

 とりあえず朝が来るまでこの公園にいることにした。

 夜の公園にはちらほら人がいる。さすが都会の真ん中にある公園である。人がいなくなることはなくて、寂しさもそんなに感じなかった。

 

 噴水の水しぶきが、時々私の顔をぬらす。

(ねむ……)

 段々と睡魔がやって来て、私は頭を膝に埋めて目を閉じる。

 野宿もまあ、悪くない。

 そんな風に思いながら意識が遠のいてきたところで、

「君、こんなところに一人でいたら危ないよ?」

 突然真上から声が聞こえて私はバッと顔を上げた。

 

 するとそこには、黒髪の男の子と、白い髪の男の子が立っていた。

 

(こ、こども……?)

 

 見るからに自分より年下である。

 寧ろこんな男の子の方が危ないのでは、と思わずにいられなかった。

 

「あなたたちこそ危ないと思うけど……?」

 

 私がそういうと、黒髪の男の子が言った。

「オレ、プロハンターだから」

「は!? プ、プロハンター……!?」

 

 どこかで聞いたことのある言葉だ。

 そう、クラピカはじめ、センリツやバショウ……またアイリスの仕事仲間であるテキサスもそういえばプロハンターであった。

 

(えっ、でもこんな子供が……?)

 

 呆然としていると、黒髪の男の子が手を差し出す。

「家はどこ? 送ってくよ」

「気持ちは嬉しいんだけど……」

 

(道が……わからない……)

 

白い髪の男の子が声をかけた。

 

「どうした?」

「道が……わからないの……」

「まじ? 野宿した後どうやってここから帰るつもりだったんだよ」

 白い髪の男の子は驚いた顔をした。当たり前の反応だ。

「まあ適当にバス時刻でも見て、知ってる場所まで行ければ帰れるかなー……なんて」

 

 私は愛想笑いをしていると、黒髪の男の子が、

「地名だけでも教えてくれれば、送ってくよ」

と言った。世話を焼いてくれる、優しい子なのだろう。

 

「おい、ゴン。オレたち朝イチからクラピカに会う約束があるんだろ? 遠くに行くと間に合わないぜ」

 白い髪の男の子が黒髪の男の子をゴンと呼び、クラピカの名を出し、思わず私の視線は白い髪の男の子に向いた。

 

「ねえ今、クラピカって言った?」

 

 確かに今、この子はクラピカと言った。

 

「あ、ああ……そうだけど?」

 白い髪の男の子は困ったようにアイリスを見た。

 

「もしかして知り合い?」

 ゴンがアイリスに言う。

 

「う……うん、ちょっとね。あなた達こそ、クラピカとは知り合いなの?」

「オレたちはハンター試験を受けた頃からの仲間だよ」

 ゴンが答えた。

 

 意外だと思った。こんなクラピカと性格も年も遠いであろう子達が、クラピカと仲がいいだなんて。

 この子達とあのクラピカが気が合うのかな、と思った。

 でももしかしたら、この子達の前では違う顔を見せているのかもしれない……と思ったら、少しこの子達が羨ましいと思った。

 

「クラピカと知り合いなら君も来る? せっかくだしさ」

 笑顔で言うゴンに白い髪の男の子が困ったように止めに入る。

「お、おいゴン」

「いいじゃんキルア」

 ゴンが白い髪の男の子をキルアと呼んだ。

 キルアは眉をひそめてふうっとため息をついた。

 

 クラピカに会いたくないわけは無い。

 けれども、あんな事があってすぐになど、クラピカに会わせる顔が無いと思った。

 

 あんなに嫌われてしまっては──……

 

「ううん、私はいいよ」

「でも」

 ゴンが寂しそうな顔をして言った。

 

「クラピカが元気なら……それでいいの」

 

 アイリスはそう言うと立ち上がって二人から離れた。

 クラピカに合わせる顔なんて、あるわけない。

 

 気付いたら私の頬は濡れていた。

 噴水の水と違って、少し塩の味がした。

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