誰よりも!何よりも!語り継がれる存在にあたしはなりたいの!   作:UNponpon

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 サブタイトルがいいの思い浮かばず、何回か読み返すと、主人公は効率厨というイメージが勝手に湧いてたのでRTAっぽいサブタイトルになってしまった。
 無難に、『親子水入らず』の方がよかった気もしますが、深夜テンションの私には判断できん。


 あと、感想と評価をくださりありがとうございます! わざわざ時間をかけてまで頂けるとは思いもしなかったので、すごく嬉しいです!


3.宿は好感度稼ぎイベント

 

 正門から見える村とは段違いの人の数と夜が近づいているというのに、それに反するような活気。

 あちこちで色んなものが売られている光景にあたしは久しぶりに大興奮した。

 そう、ついにだ。ついに来れたのだ。

 

「ここがヴァリアント王国! お伽噺から伝えられし伝説の聖剣が眠りし古の国!」

 

 このヴァリアント王国に!!

 あたしは、王都まで人や荷物を運んでくれる馬車から降りると、憧れの地に叫ばずにはいられなかった。

 

 眠った次の日の早朝に村からヴァリアント王国の正門であるここまで、休憩を挟みながら馬車を揺られて夕暮れ時には着いた。

 すっかり辺りはオレンジ色の光で照らされており、もうすぐ地上におやすみを告げる月がやってくる。

 まだ見たことない盗賊や魔物が最も強く、活発になる時間帯であり、夜に行動するのは大変危険。

 夜の時間がやってくる前に、安全な王都に着いて安心だ。

 

 それにしても転生あるある、盗賊の遭遇が無くて本当に安心した。

 一応、自前の包丁をこっそり持っていたとはいえ、子供の身体で怪我なしで突破するのは、技術がないあたしには不可能。

 もしクロードのような雑魚が人質に取られたりしたら、勇者を目指す心優しいあたしは、彼と入れ替わろうとするかもしれない。

 その後の未来は、奴隷となって売り飛ばされて勇者になれず、夜の奉仕をするbad endになったので、本当に助かった。

 騎士のパパがいるが、あたしが武術の心得を習得するまでは、遠出は控えるようにしようと心に誓った。

 

 そして門番の審査も無事に通り、王都の中へとついに入っていった。

 獣道ではなく、ちゃんとした石畳でできた道であり、綺麗に舗装されている。

 少しずつだが、夜の暗闇を覆い隠すかのように街灯や店内に明かりが灯されていった。恐らく魔法で照らしているのだろう。

 あたい達は乗せてもらった馬車を見送りながら、泊まれそうな宿を探しに行く。

 この世界は、電話がないから予約もできず、自分たちで宿を探さなければならない。慣れない長旅に疲労している体には、キツイ話だった。

 人生初めての馬車の乗り心地はお世辞にも好きとはいえない代物で、酔って気分も悪くなった。今は初めての異国の地にテンションが上がってすっかり治ったけどね。

 ちなみにクロード君は、父親であるホワイツさんにおぶさって気持ちよさそうに寝ていた。相変わらずへなちょこですね。

 テンションでは誤魔化しきれなかった重たい体をひきずって、あたしはトボトボと歩いていった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 やっとの思いで見つけた頃には日が完全に沈み、暗闇が空を覆い尽くしていた。

 ちょっと高そうな外見の宿だったが、夕食をとった食堂に隣接する宿で朝食付きということもあり、両親達はここに決めたようだ。

 宿は内装の統一性、広さ、清掃のされ具合からまぁまぁ豪華な場所だとわかる。どうやら一般人が利用する宿の中では上位の快適さを誇るところであるらしい。

 

 チェックインも済み、いよいよ部屋とご対面をする。

 シングルベッドが2つ並んでいて、それなりに大きいサイズだ。ベッドの間には魔法で明かりをつける照明がある

 そして珍しいことにお風呂が各部屋それぞれにに存在していた。それなりにいろんな場所で仕事をする機会があるパパも驚いていたのが珍しさを示す証拠でもあった。

 といっても、蛇口やシャワーといった物品はないので、自分達の魔法で水を張って風呂を作らないとならない。

 

 この世界の家具というか、魔道具と呼ばれる魔法陣が組み込まれていたものは己が保有する魔力を動力としてさまざまな効果を生み出すものである。

 今回のお風呂では、魔力をこめると水を張る、湯加減を自動で調整するの2つの魔法陣が内包されており、魔法を扱うのが苦手でも一定の魔力を使えば同じ効果が生み出せる便利な品であった。

 ちなみに家のお風呂は、水魔法で水を生成した後に火魔法で加熱するだけであり、湯加減の調整が非常に難しい。

 勇者への鍛錬で体に保有できる魔力を爆上げしたあたしは一体何杯分の宿のお風呂を張れるのだろうか。

 一回分の必要な魔力を知りたかったのにパパがいつの間にか沸かしていた。あたしやりたかったのに……

 

 それからあたしは体が疲労していたので、いつものように早めにママと一緒にお風呂に入った。

 湯加減は自動で調整してくれる優れ物で気にする必要がないので、気持ちも落ち着くことができる。

 それしても、ママのお胸はかなり大きい。出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。ママの遺伝子が反映されるなら将来、立派な体つきになるに違いない。

 とはいえ、同じ性別の女としてママを見ていると嫉妬心が芽生えるのは事実。だから──

 

「えいっ!」とママに水鉄砲で奇襲を仕掛けた。結果、顔に直撃して驚いた顔をしたママをみて、ニヤケ笑いが止まらなかった。

 あたしの様子に気づいたママはお返しにと、両手でお湯をかけてきた。

 大人が掬い出すお湯の量はとても多く、小さな手では完全に庇いきれずに顔に受けてしまう。

「やったな」とあたしは再び反撃をして、ママはその仕返しにと応酬が続く。

 バシャバシャと、いつしかそれはお湯の掛け合いとなって、ママが降参するまであたし達は目一杯楽しんでいた。

 

 お風呂を出て、今度はパパがお風呂に入っている間に、例の勇者のお伽噺の本を読む。

 これは、わざわざ家から持ってきた大切な本であり、小さい頃から読んでいたので少しボロボロだ。

 最初の頃の辛い鍛錬で勇者を諦めなかったのは、この本を読んで奮起していたからであり、親の顔の次に見たといって過言ではない。

 明日に備えて、自身の原点とも言える勇者の物語を復習しようとしたものであり、ついでに聖剣へのアピールに繋がると思ったから持ってきたのもある。

 

 

 このお伽噺の冒頭をざっくり説明すると、

 これは世界が人間と魔族が世界を半分に分け、生存していた時代の話。

 人間と魔族は共に知能があり、互いに仲良く協力して生きていました。彼らの関係は永遠に続くとそう思われていました。

 しかしある日、ある王国は魔族の恐ろしい過去を記した書物から、とある真実に気づきました。

 それは、なんと魔族の王である魔王は人間の領地を奪い取り、魔族の土地にするといった野蛮で下劣な行いをしていたのです。

 その国の王様は、その話を他国へと伝えました。すると、他国でも似たような話があるというのです。

 人間の王達は確信しました。──我々人間の土地は魔族に奪われたままであると。

 彼らが早速、動き始めました。まず彼らの臣民にこの話を公布し、魔族の真実を伝えました。

 真実を知った人間達は取り返そうという世論が生まれ、次第に大きくなっていきます。

 それも見た王達は、魔王に人間の土地を返還してほしい、このように頼みました。

 しかし、魔王はそんな事実はないと、その要求を無視したのです。

 なんとこの期に及んで魔族どもは、人間の土地を奪ったことを隠蔽しようとしていたのです。

 いつまでも魔族に騙される人間ではない! 土地を奪われた先祖の仇を! 人間の力を見るがいい!

 果敢な彼らは土地の奪還を求め、人間はついに戦争を仕掛けました。

 勇敢な戦士達は人間を舐めて腐っていた忌々しい魔族を次々と撃破していき、勝利を収めていきます。

 人間の力を認めたのか本格的に魔族が戦いに参戦するようになり、戦いは混沌を極めていった……。

 

 

 長い年月が経って泥沼化した戦いに、勇者が登場して一気にケリをつけるんですけどね。

 勇者の幼少期から魔王討伐まで様々な話が収められた本はもはや一冊では足りず、シリーズ化して登場している。

 だから、あたしは幼少期に汚点を作らないように常に人の目を気にしているし、鍛錬も欠かさない。

 後世で『何かに導かれるように彼女はを鍛え続けた。鍛えて、鍛えて、自身の限界を超えてもなお、鍛えた。やがて史上最強の勇者として絶望に立ち向かうのだった』と書かれるのだろう。

 さっきのお風呂での出来事のような子供らしい行動も記されて恥ずかしくないのかですって? 

 よくある精神が肉体に引っ張られるやつだから正直気にしてないし、逆にこれは有効活用できる。

 子供らしく振る舞うことで、どこか親近感を覚えさせることができる。勇者は魔王を殺す兵器ではなく、ただの強い人間なのだ。仮に感情豊かでもやる時はやる人間と認識させればそのギャップで人間らしさも出せ、物語も面白くできる。

 だから、幼少期のあたしは普段しっかりしているけど、両親には甘える可愛らしい一面を持つ人物として振る舞っているというわけだ。

 

 さて、本を読んでいる間に、パパがお風呂から出てきた。腹筋が綺麗に割れていて鍛えられているのがよくわかる。さすが騎士。

 それから、ベッドに座って親子水入らずで気楽に雑談した後、眠くなってきたあたしは、パパのベッドに潜った。

 

「……珍しいね、僕のところに来るなんて」

「えへへ〜。今日はパパがここに連れてきてくれたお礼に、ここで寝ようかなって! ……ダメ?」

 

 ベッドの毛布にくるまって、ひょっこりと頭だけ出してお願いしてみる。もうあたしはここで寝ることを決めたというアピールをする。

 

「ダメなんて言わないよ。そうか、お礼か。ならありがたく受け取らせてもらうよ。ありがとうネロ」

「ありがとう、パパ! 大好き!!」

「っ!」

 

 あたしはすかさずギュッとお腹あたりに抱きついた。普段はしない愛情表現をすることで、パパの好感度が上がるはず。

 クールなパパは顔には出にくいので、ここぞという時に使うのが良。顔を赤らめて無言になったので照れていますね。

 今日からはパパの隣で寝ることにします。理由は将来あたしを鍛えてもらうために、関係を良くする必要があるからだ。

 ごめん、ママ。今日からパパっ子になる。パパがいない日はママのところで寝るから許してほしい。

 

 そろそれ本格的に眠くなったので、抱きつくのをやめて寝る準備をする。

 それに気づいた両親も早めに寝ることを決めたようで、明かりを消してベッドに入ってくる。

 

「おやすみなさい、ママ! パパ!」

「「おやすみ、ネロ」」

 

 あたしは聖剣のことを思い浮かべながら、夢の世界へと誘われた。





 今回はキリが良かったので、短めになった。
 それよりも、書いてる時にこれ入れようと新しい妄想が生み出されて、書きたいものが増える病気になってしまった。

 このままだと、勇者に選ばれる時期までの話をずっと書いてしまいそうなので、旅行終わってからは、ほぼバッサリやろう。ダラダラ書いてたらモチベ下がりそうだしね。
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