誰よりも!何よりも!語り継がれる存在にあたしはなりたいの! 作:UNponpon
今日、ド◯えもんの映画をみて、とても感動しました。
そして感動したテンションで、つらつら書いてしまいました。反省してます。
窓から光が差し込んできて、眩しさのあまり目を覚ますと朝だった。
周りを見るとあたしの両親はすっかり起きていて、観光する準備を進めている。
おはようございます、と挨拶をした後、急いで着替えや洗顔をし始める。顔を水で洗ってからピンクの髪をほぐしてツインテールに結ぶ。
服装は白のブラウスに赤色のスカーフをつけて、オシャレをしてみた。シンプルながら上品さのあるこの服装はあたしのお気に入り!
本をバックに入れ、背負って準備が整った。
さぁ、早く朝食を食べよう。聖剣があたしを待っている。ソワソワして仕方がない。早く行こう。見に行こう。
「時間はあるし急がなくてもいいのよ、ネロ」
ママがなんか言ってたが、あたしの耳には届かなかった。
***
ようやく両親の身支度が終わり、部屋のドアを開けると同じタイミングで隣の部屋のドアが開かれる。
隣の部屋を借りていたヴィクトリア家もちょうど準備が終わったところらしく、あたし達を呼びに行こうとしていたようだ。
クロード君もいつものモブっぽい村人の格好ではなく、きちんとオシャレをしていて張り切っているのがわかる。
あたし達は宿を出て、隣接する食堂で朝食をとることにした。夕食の時もお世話になりました。
食堂に入ると、ウエイターに空いている木製のテーブル席へと案内される。酒を飲みにきた仕事終わりの客でごった返していた夜間とは違い、客が少ない朝はヴィクトリア家と隣接している席に座れたことが純粋に嬉しかった。
注文を終えた後は、今後どのように観光するかを、大人達が話し合っている間にあたしはクロード君と聖剣が見れるね、とお互いに聖剣の姿、形、大きさを想像しながら熱く語り合いながら、食事を待つ。
5分くらい待って、運ばれた料理はここで人気なハムエッグセットだ。ほんのり焦げたハムがいい匂いを放ち、とても美味しそう。
あたしは卵を切り分けて黄身と白身、両方を口に入れた。
……初めて食べる食感だ。黄身は固焼きだというのに、白身は半熟のプルプルを残している。前世では半熟卵が好みだったが、この世界では衛生上の理由で1回も食べていなかったのだが、まさかここでプルプルに出会えるなんて、今日はツいてる一日になりそうね。
ハムの匂いが少し強いが、こんがり焼けたパンと食べることで中和され丁度いい匂いとなり、そこに黄身を合わせると、味全体が柔らかくまとまっていく。
大変美味しゅうございました。
夜ご飯もかなり美味しかったので、この食堂はかなり当たりの部類だと言えるだろう。
「朝ごはんも頂きましたし、そろそろ行きましょうか」
クロード君の父であるホワイツさんの一言でお金を払って、あたし達は忘れ物がないかチェックして夜ご飯もここで食べたいな、と少し名残り惜しくも思いつつ食堂を後にした。
ちなみに大人が話してる時に盗み聞きをしたら、聖剣のある教会へは午後に向かうらしい。
焦ったくてしょうがないが、今日ついに見れることには変わりない。聖剣という名のメインディッシュの前に、観光を前菜気分で楽しむとしよう。
あたし達は次の目的地へと足を運んだ。
***
お昼ごはんを屋台の食べ歩きで済ませて、ようやく教会へと行くことになった。といっても、もうおやつの時間が迫っているんだけどね……
両親達が久しぶりに来た王都で、気になった店や懐かしい店に立ち寄りながら、観光をした結果、予想以上に長引いてしまっていた。
知り合いだった店長と30分以上立ち話に夢中になったり、目についた店を片っ端からウィンドショッピングしたりと、大人だけ旅行を楽しんでいてずるい。
あたしの1年半にも及ぶ願いを目の前で焦らされ続け、そして──
「遅くなってごめんね、もう寄り道しないで教会に行くから。だから……怒らないで、ね」
「怒ってなんかないです。さっきもママは寄り道はもうしないって言ったのに……約束破った」
「うっ……次はちゃんと守るからごめんね」
──めっちゃ拗ねてた。
冷静じゃなくてつい、ちょっと流暢に喋りすぎたから途中で子供っぽくしたけど、気持ちは本物だ。
ママ達が観光したくなる気持ちはわかるけど、向かう道中で道草を食いまくってたら、心優しいあたしだって不機嫌にはなります。
しょんぼりしたママをよそに、今度はグレーネさんから声がかかる。
「それは謝るわ、どうしても知り合いを見かけたからつい……」
「グレーネさん達は待ち疲れて寝ちゃったクロード君を放置して……。こんなに待つならあたし達3人だけで聖剣を見にいけばよかった……」
あたしの言い分にグレーネさん達は、何も返すことができなかった。
知り合い見かけたら、グレーネさんが声かけたくなるのもわかるけど、自分の子供を他の子供に面倒を見せます?
いくらパパが近くでいたとはいえ、パパはママ達と子供達の二組に何か危険が迫らないように見張っていたので、空気が読める賢いあたしは話しかけることができなかった。
しかもクロード君がベンチで寝たせいで、話し相手もいない孤独の中、談笑をするママ達を見て、3人組のグループで話題が分からず帰り道に余るボッチだった頃を思い出して寂しくもなった。
「もうママ達3人で、ブラブラどっか行ってください!」
「ネロちゃん……」
みんなで見に行きたい気持ちはあるけど、あたしの目的は聖剣を一目見ることであって観光なんて、おまけにすぎない。
見にいけないくらいなら、二組に分かれた方が効率的。ママ達はおしゃべりもでき、あたし達は教会に行くことができる。
お互いWin- Winで損はない。パパ以外の大人達だけで楽しんでいればいいのよ。もう知らない。
ママ達をほっとくことにすると、
ゴーンーーゴーンーー
3時の到来の鐘の音が王都中に鳴り響いた。
時間の経過を告げる鐘は、人が活動を始める時間から、太陽が沈むことまで。具体的には午前7時から午後の6時くらいの間の1時間おきに、鐘が鳴る仕組みらしい。パパが朝、部屋でそう教えてくれた。
こうやって話している間に、時間もどんどん過ぎていく。明日まで王都に滞在するけど、今日見たいんだよ、あたしは!
時間も限られているし、ママ達に背を向け、歩こうとすると目の前にパパがいた。いつの間に後ろにいたのか気づかず驚いた。多分、目を大きく見開いていたと思う。
身長の関係もあるし、逆光で顔が影に隠れて表情はわからないが、状況的に怒っているのだろう。いくら親子とはいえ、言葉の限度は存在するし、親を蔑ろにする発言は良くなかった。
眩しそうに目を細めるあたしを気遣ったのか、親が子供を諭すときに目線を合わせてくるやつなのか、屈んであたしと目線が合う高さに合わせてくる。
どちらにせよあたしは気まずさから、顔を逸らしてしまい、パパの顔を直視できなかった。
しばらく顔を合わせずにいると、パパの手があたしに目掛けて飛んでくる。殴られるかと怖くなって思わず、目をつぶって頭を抱えた。
恐怖で震えていると、痛みではなく優しく頭を撫でる手がそこにはあった。
「へ?」と思わず、間抜けな声が出てしまい、目を開けるとそこには、申し訳なさそうな顔をしているパパがいた。怒っている顔でないだけマシだが、どうしてそんな顔をしているのだろうか?
「ごめんな、ネロ。いつも我慢ばかりさせて」
「あたし、我慢なんてしてないよ」
「ネロは優しいな……ネロは本当にママと一緒に行かなくていいのかい?」
「ママとは行きたいけど、どうしても聖剣を見に行きたいの。ずっと行きたかったの。だから、ごめんなさい」
ママいらない発言は、親不孝だと自覚してるし、罪悪感もある。だけど、聖剣と出会う──これだけは譲れない。人生の最初の分岐点と言ってもいい。
あたしは目を逸らさまいと、真っ直ぐとパパを見つめる。
「そうだね、確かにネロはずっとここに行きたがってたよね。勇者の話が好きなネロが本当に行きたいのもわかるよ。でも、ママ達とも行きたい気持ちもあるって教えてくれたよね」
「うん」
「時間が過ぎて、見れなくなるのが怖いんだよね。ママ達のおしゃべりが長過ぎて、もしかしたら……と思っちゃったのかな?」
「でも楽しそうに話してて、声もかけられないし。約束しても破っちゃうママにどうしたらいいかわからなかった」
「そうだね、ネロは色々考えたけど、動けなかったんだね。近くにいたのに気づかなくてごめんな」
パパがあたしを抱きしめてくる。大きくて包容力のあるパパの腕の中は、悲しかった心を溶かすように、温かい何かが伝わってくる。
嬉しいのか、悲しいのか、表現できないその何かは、あたしの心を占拠してきて、自然と涙が出てきた。呼吸が震えた。
パパがあたしの頭を胸板に自然に押し付けてくる。なんでも受け止めてくれるような気がして、あたしはついに泣いた。赤ちゃんの時以来の涙だった。
泣いている間、パパはずっとあたしのことを撫で続けてくれていた。
ようやく涙が枯れて、気持ちも落ち着いたしあたしはパパから抱きしめることはやめた。鼻をすすると、パパがあたしに顔を合わせてくる。
「ママ達を許してくれないか」
「ママを?」
後ろを振り返ると、暗い表情で俯いてるママがいた。とても寂しそうで孤独だった自分の立場と重ね合わせてしまった。
そのママの様子にどっちが悪いかわからなくなった。
「すごく反省しているみたいだし、もう一度チャンスをくれないか? パパもママと一緒に行けないと悲しいし、ネロも本当は一緒に行きたいよね?」
その言い方はずるいよ、パパも悲しいし、あたしもママと行きたい。本当に言うべきことはこれしかない。
「わかった。ママを信じる」
「そうか、許してくれてありがとう」
パパはそういうとあたしのことを抱きしめてくる。あたしもパパを抱きしめ返す。これが親子か……
そして、パパから離れるとママの方へと足を運んだ。ママはあたしを見ていることしかできなかった。
あたしがやりたいことは1つだけだ。それは──
「ママ、どっか行けって言ってごめんなさい」
──謝ること。
ママがいなくなって欲しいなんて、例え冗談でも言ってはいけない。勇者らしくないから謝るとかそういう意味ではない。あたしを育ててくれたのも、ここに連れてきてくれたのも、可愛げのないあたしを否定せずに、そばにいてくれたママのおかげ。
今回、あたしが許して終わりにしてはいけない。ママ達が悪いとはいえ、謝らずに時間が解決してくれる卑怯な手は使いたくない。有耶無耶にするほど些細な出来事じゃない。だから頭を深く深く下げた。
「ネロは悪くないのよ。約束を破ったママが悪かったの。ごめんさない」
「ううん、あたしもひどいこと言っちゃってごめんなさい」
そう言ってママはパパと同じようにあたしを抱きしめた。ただ、頼り甲斐のあるパパとは違い、体の震えが伝わってくる。顔を見なくてもわかる。ママは音を立てずに静かに泣いていた。
どうすればいいか、わからなかったけど安心させるように、ぎゅっと抱きしめた。
「ママとあたし、お互い悪い所があった。だからあたしはママのこと許すし、ママもあたしを許してください」
ママは何も言わなかったけど、多分うなずいてたと思う。
あたしはもう気にしてなかった。ママの気持ちが十分過ぎるほど流れ込んできたから。だけど、優しいママはおそらく自身のことを責めるだろう。
だからここでもう一度信じるという意味を込めて、ママに頼ることにする。簡単に許すと、返って相手が自分を思い詰める可能性があることも考慮して。
「だけどママだけ色々買ってずるいから。もしあたしに欲しいものがあったら、そのときはママにお願いしてもいい?」
「わかったわ。さっきはごめんなさい、ありがとうね」
ちょっと意地悪にいうとママはちょっぴり笑ってそっと頭を撫でてくる。あたしも笑顔をお返しした。
うん、これで仲直りもできたし、前より絆が深まった気がする。『雨降って地固まる』ってやつだ。
そういえば、ママとは初めて喧嘩したかも。あたしは家では大人しくいい子にしていたから。でも、喧嘩してママの新しい一面を見れたし、仲が深まって結果的には、良かったの。
もう少しだけ家族に甘えようと思った。もう少しだけ頼ってみようかなっと思った。打算的に考えるのではなく、もっとこう……家族として。
あたしは自分が思ったより愛されてることを知ったのだから。
***
さて、いつまでもウジウジしてられないし、気分を上げるためにも未来のことを考えよう!
ちなみに買いたいものはもう決まっている。これがあれば今後の修行が楽しみになってくる。パパにお願いして色々教えてもらお。
その買いたいものはこの世界にもあるようで、前世であった修学旅行で必ず誰かしら買うあの有名なアイテムを買ってもらおうと思うが、今は家族の仲直りのシーンで、そんな雰囲気ぶち壊しのものを要求するわけにはいかない。タイミング的にも聖剣見た後の方が自然だし。
そう内心、明るい未来を想像していると、ついにクロード君が眠たげに声を発した。
「ん? あれ? 母さん達、やっと話終わったんだね」
……せっかくいい感じに仲直りできたのに、雰囲気が台無しだよ。
ようやく起きたクロード君に、彼以外の全員の視線が集中する。クロード君は訳がわからないと言った様子で首を傾げていた。
「みんあボクのこと見てどうしたの? もしかしてボク、なんかやっちゃったの? 寝言とか?」
なんだ、コイツ。クロードが起きたのをみんなが見ただけでしょ。な◯う系主人公か? いや、間違えた。空気読めない系幼馴染だった。勇者になる主人公はあたしだ。
素でクロードを主人公と表現するとは……なんたる不覚! 外面は問題ないが、気持ちの問題だ。なんとか挽回しなければならない。
あたしは座って眠そうに目を擦るクロードの手を掴み取って引っ張った。
クロードは立ち上がりながら、動揺しつつこちらに来る。あたしはその勢いのまま、引っ張っていき小走りをする。
「ほら、クロード君が寝てるせいで、こんなにも遅れたんだし、早く行って聖剣を見にいこ!」
「ごめん。でも、ボクを待ってくれてありがとう」
ここで、クロードに対して聖剣を見に行ける嬉しさをニコッと笑顔をすれば、これだけで1枚のイラストとして、後世で勇者の幼少期エピソードの表紙や挿絵を飾ること、間違いない。
後はクロード、君が見た感じたこと、体験したことを幼馴染として人々の前で語るだけで、それが一冊の物語として成立するだろう。
美少女で勇者予定であるあたしが笑顔を向けた今の出来事もまた、彼の記憶から忘れることのない素晴らしい思い出になったはず。
1つ1つの思い出に補正がかかることで、話が美化され、よりあたしの名が知れ渡るのだ。頑張れクロード。お前が唯一勇者を深く知る伝道師だ!
そうなるなら、雰囲気台無しの件は水に流そう。懐が広いのも主人公らしくていいね。
「でも、ネロはやっぱり優しいね」
「……でもの後、なにモニョモニョ言ってんの?」
「いや、なんでもない。気にしないで」
ニコニコとしているクロードになぜか身震いが走った。発言と行動に嫌悪感もなかったのに。
「ほら! ママ達も早く行かないと追いてっちゃうよ!」
あたしは誤魔化すように首を振って、暗い雰囲気を明るく声で照らそうとママ達に呼びかける。
クロードから手を離して、胸に期待を秘めながら教会へと走り出す。
──ここからついにあたしのメインストーリーの序章が始まるのだ。
あたしは、そう確信した。
いまだに聖剣見れてないって遅過ぎないっと読み直した時、思いました。
本当だったら昼ごはん食べて、聖剣を見る予定だったんですけどね……
今回は、喧嘩させてしまいました。なぜ感動した作品見てから喧嘩させる発想が出たのか、後書きを日記みたいに書く今の私には理解できません。
ですが、ネロが家族に対してが演技が減りそうで、家族円満になって結果オーライ。良かったね。
親子って、こんな感じに喧嘩するのかな? 私は親には言わず、心の中で不満を溜め込むタイプなのでなんとも。
この作品、ジャンル的にざまぁ系らしく、私は気づいていませんでした。友達にも軽く確認したら、ざまぁ系に近いらしいです。ざまぁ系は追放とか復讐が多いイメージだったし、ジャンル違うと思ってた。
ざまぁ系を意識するなら、もう少し勇者を調子乗らせようかな。ざまぁ系を読んでみて判断しよ。
次回は少し時間がかかりそうです。前々から情景描写とか心理描写が苦手でとても苦戦しそうなので。