誰よりも!何よりも!語り継がれる存在にあたしはなりたいの! 作:UNponpon
普段全くスポーツ観戦しないし興味もない私でしたが、気がつくと全試合を見ていたほど今回の野球は面白かった。
石造りの階段をピンクのツインテールを揺らしながら駆け上がる1人の美少女。
小さな身体には無尽蔵の体力があるのか、顔色ひとつ変えることないことから、少女の並々ならぬエネルギーを感じられる。
タッタッとリズムよく足音を鳴らしながら、止まることなく進み続けるその姿は、すでに英雄としての片鱗を覗かせているようだった。
これから少女は初めてかの有名な聖剣と対面する。
そこで起きた出来事は、当時、勇者を志していた少女が強さの高みへと昇らせ、我々の窮地を幾度となく救ったあの魔法への第一歩となったのだ。
彼女の話をする前に、少しだけこれを記す際に実際に彼女と会話した内容を紹介させていただく。
彼女は勇者に成りたかったようで、様々な努力をしたが結局成れなかったようだ。だが我々は彼女が英雄に成るべくして生まれた存在だと思う。
誰一人頼ることができず、味方がいなくとも、己が正しいと信じる道を突き進む姿は英雄そのものであり、決して目の前の悪しか知らない勇者ではない。
彼女曰く、誰にも教えてはいないらしい願いも叶ったようで、今は勇者というのはただの肩書としか捉えていないようであった。
そして彼女と直接話した我々の憶測に過ぎないが、仮にもしも彼女が勇者となり、勇者として世界を守るために敵を打ち払えば、永遠の平和が訪れるだろう。しかし虚飾に塗れた世界の真実を知った時、心優しい彼女は後悔と懺悔の嵐に飲み込まれ、取り返しのつかないことをしたと絶望するだろう──と。
我々の憶測に対し彼女は、絶望することはない、と苦笑をされていた。信念を貫き通した彼女には不躾であったと我々は後悔した。
さて、今回我々は彼女の生き様を多くの者に知ってもらいたいと、取材の申し込みをしてみたところ、彼女は快く迎えてくれこうして話を伺える機会を頂いた。
彼女は気さくに色々話してくださり、我々の質問も気前よく応えてくださった。この場を借りて彼女に最大限の敬意を表します。本当にありがとうございました。
この本は彼女の協力があってこそ完成したと言って過言ではない。
──彼女が勇者ではなく英雄だったからこそ偽りから取り戻した世界の到来と共に我々はこれからも彼女を追っていくだろう。彼女の歩んだ物語を。彼女の下した結論を。
何せこれは彼女が紡ぐ偉大で永遠に語られ続けるであろう英雄譚のほんの序章に過ぎないのだから。
『Episode of N-eroica』の一部より抜粋
***
「ふぅ、ようやく着いた……走ったから少し疲れたよ」
階段飛ばしをしないように一段一歩で踏み締めて走ったから足が重く、太ももが特に疲れた。だが、この経験もまたあたしの身体を高める糧となるのだ。
乳酸が溜まり、パンパンな足を少しだけ揉んでから、教会の敷地に繋がる門をくぐることにした。
「これが王国最大規模のルミエール教会。名前の通り白くて、圧巻の大きさね」
目に最初に入るのはやはりその大きさ。大体100mくらいだろうか。教会を前にした時、その迫力と巨大さに圧倒されてしまう。
美しい彫刻が施された鐘楼を中心に左右に空高く伸びる立派な2つの尖塔は、王都のどこからでも見えるくらいの規模を誇り、王都のシンボルとして圧倒的な存在感を放っている。
このルミエール教会は光の名を指していることだけあって、白を基調としたデザインとなっていた。
驚くべきことに、この教会は勇者のお伽噺に登場するほど歴史的価値がある建物なのだが、長年の風化による塗装剥がれやシミ、亀裂は全く確認することができなかった。
定期的に建て直しているのか、修復を繰り返してるかわからないが、その病的なまでにこだわるその白さは永遠に闇に染まることのない光を表現しているのだろうか。
現実が想像を超えるというのは、こういうことを示すのだと、あたしは目の前のルミエール教会に尊敬を込め、キチンとお辞儀した。
さて、あたしは今すぐにでも教会に入って聖剣を見に行きたいのだが、1人で先にここに来たので、今からママ達を待たなくてはならない。一緒に見ると約束したが、気持ちが抑制できず、一足早くダッシュしてきたわけで。
それにしても先の見えない長めの階段は少しキツかった。おそらくあれは、勇者の素質を示す試練みたいなモノだと思う。
目標に辿り着くまでに折れない心と目標に突き進み続ける力の両方が試されているのだろう。
先代の勇者もここを訪れ、この階段を上って聖剣を抜いたという描写から少なくともここを登るだけの力は持っていないといけない。
あたしもそれなりに疲れたというのに、なぜか疲労の『ひ』の文字すら見当たらないくらい元気そうなお年寄りの姿がそれなりに目に入るのは一体なぜ? 息が上がった様子も身体強化魔法を使用した痕跡も見えないし……
まさかあたしの普段住んでる村の人たちが弱くて、王都の人間が魔法なしでも特別に強いってこと!?
もしそうだとしたら、腕力だけは勇者並みとか、魔力は勇者を超える才能だとか、勇者の凄さが霞む人間が生まれる可能性がある。万能な勇者のイメージが崩れてしまうではないか。
でも待って。確かに勇者の圧倒的な力を示す機会が減るデメリットが発生するが、ストーリー的には、劣っている村人が優秀な王都人に努力で打ち勝つ成り上がりモノ。所謂、シンデレラストーリーとなるはずだ。
前世でも王道の展開としてドラマや映画で長い間親しまれていたからこそ一定の人気は出るはずだし、『努力が実るとは限らないが、努力なしに叶う夢もない』という教育面に置いても、実例として教科書(この世界にあるのかな?)に取り上げてくれるかもしれないし、物語としても悪くないと言えるだろう。
ポジティブに考えよう。身体が劣ってるけど、物語要素を含めればプラスに傾いているとあたしは思う。
これを達成するために、あたしが王都人より優れる必要があるので、この事実が将来の最低目標の指針となったことはありがたい。
あたしは、ここにいる王都人であろう同年代の子供へ勝手にライバル心を燃やしながら、ママ達が来るまで精巧な彫刻が数々刻まれている外観をじっくり観察するために、のんびりと外を周った。
***
「あ! ネロちゃん! ここにいたんだね!」
ちょうどぐるっと一周して入り口付近でぶらぶらしてたら、クロード君の声が聞こえた。振り返るとクロード君が大きく手を振っていた。想定していたよりも随分と早く着いたな。
みんなの方へ走って合流すると、ママが話しかけてくる。
「どうだった? あなたがずっと行きたがってた教会を見て」
「うん! 本で読んだよりもずっと大きいし、とってもきれい!」
「そうね、ママも初めてきた時のことは今も覚えているくらい感動したわね」
ママのいう通り、この光景は一生忘れることはないくらい強烈だった。あまりに汚れのない純白の教会に一瞬、脳が理解を拒みそうなほど現実離れしていて神がかっている、と思わずにはいられない。
この世のものとは理解できないほど、それはとても異質だった。
クロード君も教会から目を離せないようで、言葉の通り、息を呑んでその美しさに目を奪われていた。
……息といえば、ママ達も全く疲労感がなく、魔法を使用した痕跡もない。呼吸も乱れていないし、汗ひとつかいていないな。
あたしよりも貧弱なクロードも疲れた様子もなく、ピンピンしている。あたしは少し汗もかいたし、口呼吸もしてしまったというのに……
まさか、この世界の人は前世基準だと化け物レベルの体力が一般的なのか。どうやらあたしは5年半も勘違いしていたらしい。これは『井の中の蛙』よりもひどいよ。だって井の中すら知らなかったのだから。
あたしの今までの努力で得た体力は、この世界においては標準装備だったようだ。何もしてなさそうなクロードにすら劣る体を恨んだ。
「ネロ、どうかしたのかい? 顔色がいつもより悪い」
パパがあたしの様子を察したようで、心配そうにこちらを見てくる。どうやらあたしはわかりやすく動揺しているようで体に出ていたらしい。
足を引っ張る体に嫌気がさし、ぶっきらぼうになっていた。
「あたしは疲れてたのに、みんなは疲れてないからすごいなって思っただけです……」
ハァ、とため息をついてグーパーグーパー、と自分の体を改めて認識してもう一度ハァ、とため息をついた。
顔が良いだけじゃ勇者になんてなれないのに……あたしは心の中で嘆いた。
「? 空中板に乗ってたら疲れることはないのに、どうしてネロは疲れたのかな?」
「空中板?」
「おや? なんでも覚えているネロが珍しいね。あそこにある乗っているだけで地上から教会まで運んでくれる魔道具のことだよ。僕たちはこれに乗ってきたし、ネロも乗ったと思うけどね」
パパに連れられて指差す方向には、人がやたらと密集しているような場所があり、何かを待っているようだ。そのまま観察していると、人々の顔が一斉に同じ方角の空中に向かって歩き始める。彼らの足元には薄い板があり、ある程度人が乗ると下へと降りていった。
……これ、エレベーターじゃん。板と柵だけのコンパクト設計の魔法で動くエレベーターだ。魔法で動くとはいえ、ハイテクな魔道具があることに開いた口が塞がらなかった。
どうりでみんな疲れていないわけだし、階段に誰一人として人を見かけなかったわけだ。
便利な魔道具があることを見逃すなんて、目先の欲に囚われて視野が狭くなっている証拠だ。勇者はいつだって的確な指示を仲間に伝える冷静沈着、沈着冷静でいなければならないというのに。これは反省ですね。
唖然としているあたしを見たのか、パパは悪戯な笑みを浮かばせていた。
「その様子だと空中板を知らなかったようだね。やはりあそこの階段を使ったのか」
「……階段なんてあたしは無理ですよ」
「別に隠す必要はないさ。階段を利用することは禁止にされていないし、ネロも鍛えてた身体を確かめるのにいい機会だったんじゃないかな?」
「ッ! どうして鍛えていると?」
「子供のことなら当然、と言いたいけど確信を得たのは昨日かな。ネロが抱きついてきた時の力の入れ具合で分かったよ。元から村での行動が体を鍛えるかなって半信半疑だったのもあるけどね」
さすが騎士といったところだ。犯罪者を取り締まることあって洞察力がすごい。職業柄かあたしの行動を分析していたのかもしれない。
あと可能性としては、筋肉がつき始めた頃、つまり外に出るようになってから村の周りを走ったり筋トレしていたのが、村の噂になってパパの耳に入ったのかもしてない。
なんにせよ、あたしの人生目標を知られなければ最悪なんでもいい。
もし知れ渡ったら、よく人助けする人に人助けをする理由を聞いた時、自己満と答えて絶句させてしまうように、勇者としての人格モデルがマイナスに行きそうだしね。
だからあたしの人生目標だけは死守しなければならない。あたしは余計な情報を与えないためにも口を閉じた。
…………。
その作戦を実行するあたしをパパは面白いものを見るような表情をしていた。
「少しからかいすぎたかな。パパはネロのやっていることを反対することはないよ。むしろ協力するくらいだ」
「え? なんでも協力してくれるの?」
「叶えられる範囲ならね。もちろん、僕がネロに剣を教えるのもありかな」
「……剣を教えて欲しいことも知ってたの?」
「推測だったけど当たっていたようだね。家に帰ったら早速やろうか」
鎌かけられた! 考えなしに発言する子供の思考のせいで引っかかってしまった。
当たられて悔しいけど、パパとの訓練約束をできたことは正直デカい。1日でも多く修行して技も磨きたいから、ありがたかった。悔しいけども。
「そんなことより、早く行こ!」
「そう腕を引っ張らなくても聖剣は逃げはしないよ」
あたしは話を逸らすように、明るい声でルミエール教会にいきたいと急かした。あたし達の会話を遠くで眺めていたママ達をいつまでも待たせるにもいかないしね。
小走りして待たせたことを謝って、いよいよ聖剣の保管されているルミエール教会の内部へと木製の重厚そうな扉をくぐった。
***
ステンドグラスの光が神秘的な空間を演出しており、床、柱、壁に大理石が惜しみなく使用されている。
気品溢れる金の装飾が彩られており、目を奪われる。この世界の神が天井に描かれているからか、静かで厳かな空間は装いだけでなく、空気感まで違った。
教会の人に聖剣がどこにあるか聞くと、地下にあるそうだ。
あたしは聖剣の場所まで直行しようとするが、残念なことに観光客が進むルートは決まっており、聖剣は本当に最後になって見れるらしい。それまでの道中には教会の歴史や遺物といった、前世でよくあるお城の内部観光と同じ形式で、自由に動くこともできなかった。
ちなみにあたしにとって歴史や遺物はすでに本で履修済みなので遺物を生でみたこと以外、面白みのカケラもなく、退屈だった。
2階もあったけど、1階の続きだったので、教会から見る王都の景色が日に照らされて綺麗だったことくらいしか印象に残っていない。
期待外れもいいところだと、内心愚痴をこぼしているとやっと地下に行けるようだ。
地下へと続く螺旋階段を降りていくと、自然光で明るくなっていた教会とは違い、蝋燭で光源を取っていた。魔法で明るくすればいいのにとどうしても思ってしまうのは、あたしだけだろうか。
人の波によってゆらゆらと揺らめく炎を横目にしながら、どんどんと降りていく。降りるにつれ、あたしの期待は増加していった。
少し肌寒いなと思ったところで、蝋燭の灯り以外の光が差し込んでいた。ようやく着いたのか。
ついに1年半の願いが叶う。ようやくお目にかかることができそうで心が高鳴るのは感じる。
やっとの思いで、階段を抜け、中に踏み出すと常識を超えた景色があった。
日の光が届かない地下に燻んだ乳白色の壁には今まで見た教会の中で最も大きいステンドグラスが嵌め込まれている。そこから射し込む、陽光に目を細めた。
どこからやってきたかわからない小さな植物が石畳の隙間で懸命に生きており、柱には緑の葉をつけた蔦が絡まっていた。
まるで放置された神殿みたいで、自然と人口の融合ともいえる空間が神秘的だが、落ち着くような暖かい空気を生み出していた。
そしてその奥には、少し高い台座があり、そこの上にはあたしが求めていたもの──
自然光が降り注ぐ先には、自然物でも人工物でもない何か別の存在というか、静かに佇んでいるだけなのに、目を離せない特異な物体が座している。
──聖剣がただそこに存在していた。
……ちょぴっとしか聖剣出てないけど、ようやく見れましたね。
ネロの伝記みたいなの想像してたら、書いてみたいとなったので書いた。伝記系は読んだ記憶ないからほぼ推測。
ネロパパの口調も大体固まってきた気がする。
神殿の外観のイメージはレーゲンスブルク大聖堂が一番近いかと思います。
話は変わって、私はよくAIにTS銀髪幼女女神を描いてもらっているのですが、今回はAIに私がなんとなく思い描いているネロを描いてもらいました。個人的に出来はまぁまぁです。パソコンあればもっといいのできると思うけども。
自分の思うネロのイメージを壊されたくない人は見ない方がいいです。
ネロ・セネット
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