エヴァンゲリオン短編集

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 大変、スピリチュアルな話となっています。

 意味不明な文章の羅列でございます。

 シンエヴァの円盤特典映像を見たせいか、心が揺さぶられておりますのでご容赦くださいませ。

 しかし、どうしても描きたくなったのだ。
 どうしようもないのだ。

 良ければご笑覧くださいませ




愛だけを残せ

 

 やむにやまれぬ。人生は綱渡りだ。

 

 選ぶつもりが選ばされている手品だ。

 

 死後、肉体という重石に縛られていた21グラムは自由を得て、数多の光のトンネルを潜り抜けて、闇へと堕ちる。どこまでも、どこまでも堕ちていく。

 

 闇の中の風を受けながら、抜け落ちたすべての者がある言葉を求めた瞬間、それは唐突に目の前に現れるだろう。

 

 光だ。

 

 闇の向こうに浮かぶ微かな光は、まるで夜空に瞬く一番星のようで、全てはその光を求めて手を伸ばす。

 

 光は次第にその姿を見せる。それは、幾つもの、それこそ無限ともいえる21グラムの集合体。それは絡み合い、溶け合い、根を伸ばし、幹を育て、枝葉を伸ばし、実を結ぶ。それこそが全ての始まりの場所であり、全てが還る場所であった。

 

 その光を目にした者は、次に自らを目にするだろう。そして、そこでようやく自身が黒く塗りつぶされていることに気づく。

 

 気づいた瞬間、魂は水の中に落ちた絵の具のように、光の中にぽちゃんと波紋を立てて飛び込んだ。水につけた絵筆から絵の具が滲み出るように、自身を塗りつぶしていた黒が無秩序に広がりを見せ、魂はやがて光だけとなる。黒は、その者の生きた証であった。

 

 光だけとなった魂は、目の前の光の大樹、その根へと吸い上げられていく。大木が結んだ実は熟すと枝からこぼれ落ち、空を舞うように闇を登っていった。

 

 落とされた黒は何処へ行くのか。

 

 光の大樹の前に、黒い石板があった。いや。それは正しくない表現であろう。那由多の如き、生きた証の集合体。黒が集まり、石板のような形を成したものであった。

 

 これを、人は『いのちの書』と呼んだ。

 

 これは慈悲であり、掃溜めであった。全ての魂が、何も持たずに旅立てるように。全てのしがらみ、悔いや恐れ、悲しみを忘れ去れるように。

 それゆえに、生を受けた全ては舞い戻り、真白い紙に黒いインクで証を刻む。

 それゆえに、思いがけない幻に誘われて、思いがけない風向きに運ばれて、偶然の朝、偶然の夜、我々は何も知らされずに踏み出す。

 

 その石板の前に、異なる生を終わらせた魂が二つ。石板は人では聞き取れない、しかし意味のある言葉をかけた。

 

『弱き者、汝の名を名乗れ、しなやかに』

 

 問われた魂は答えた。

 

「I・・・k・・・ari・・・・・・S・・・hin・・・ji」

 

 石板は再び、今度は別の魂に意味のある言葉をかけた。

 

『強き者、汝の名を名乗れ、ささやかに』

 

 問われた魂は答えた。

 

「Ask・・・a・・・・・・La・・・ng・・・ley」

 

 二つの魂は、光で満たされていた。しかしその二つを、細い、一本の黒いインクが結んでいた。

 

 そこに大いなる者の手が現れて、それを切ろうと試みた。黒いインクは編まれた糸が引きちぎられるように、プツプツと、その繊維を失っていった。

 

 しかし、その中にあった細い、極めて細い最後のインクだけが、大いなる者の手にあっても千切れなかった。

 

 石板は慈悲であった。全てをここに置いていかなければ、みんな儚くて、愛しくて、振り返ってしまうから。

 

 千切れたインクを庇うように、石板から黒が滲み出でて、最後のインクにまとわりついた。それらは二つの魂に寄り添っていた者たちの証であった。それは『縁』であった。

 

「やれやれ。やはりこうなったみたいだね」

 

 石板に記されていた名が、光を発して浮かび上がる。

 

「軽蔑に値するよ。キミに幸せは似合わない。それだけは何度も何度も、その魂に刻みつけているハズなのに・・・」

 

 その名は、唾棄すべき相手に向けて呪いを放つ。それでも二つを結ぶインクが切れる事はなかった。

 

 『縁』が、二つを守っていた。

 

「縁が、キミ達を導くだろう。導いてしまうだろう。それと知らぬ間に探し合う。それと知り合いながら、迷い会う・・・」

 

 その名は、大樹を見た。大樹からはいくつかの実が、闇の覆われた空へ向かって舞い上がるところであった。それを見た石板から、また数本の黒が、二つの魂を結ぶインクを纏うように滲み出でた。

 

「キミ達とは関係のない魂までもが、その『縁』を守ろうとしている。幾度の世界を経ようとも、幾つの宇宙を跨ごうとも、その『縁』を望む者たちがいる」

 

 その名は、二つのうちの一つに語りかけた。

 

「キミの名前は残らない。激流のような時の中で、キミだけは絶対に取り残されるだろう。キミ達がそのインクをそれ以上太くすることはできない」

 

 語りかけられた魂が、瞬いた。

 

「それでも残す、と言うんだね。キミの生命の証に、それだけは・・・」

 

 その名は、悲しみに満ちた声で言祝いだ。

 

「さあ、行きなよ。次の世界が待っている。それだけは僕にも止められない」

 

 二つの魂が大樹の根に吸い上げられた。そして、それはやがて実を結び、空へと舞い上がった。

 

 その名は、石板に再び名を刻んだ。

 

「羨ましいよ。決して壊れないものを、キミだけは残す事ができる。碇シンジ君の幸せを願う僕のように、キミの幸せを願う者達がいるんだね。その『縁』を望む、無銘の、無数の者達が・・・」

 

 刻まれた名から黒いインクが結んだ実の一つに伸びて、魂に色を刻んでいった。

 

「碇シンジ君。今度こそ、キミを幸せにしてみせるよ」

 

 黒く実った魂は空を上がった。

 

『壊れない、愛・・・・・・』

 

 石板が人の理解できぬ、意味ある言葉を囁いた。

 

 それが現世に届くことは、決してないだろう。

 

 

 

 了





 中島みゆき『愛だけを残せ』より

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