そんな思いで書きました。
続きません。
それはあり得たかもしれない人類史でもある。
本来なら選定される筈の歴史だが、これを空想樹と呼ばれている特殊な樹木で地上に繋ぎ止めている。
これを育成し新たな汎人類史とする事がクリプターの役目である。
尤も、あからさまに何か裏があるのは見え見えだが、この異聞帯というのは正直興味を惹かれるのだ。
あり得たかもしれない歴史、本来なら続く筈が無かった世界が続いた世界。
そんな可能性を見て、興味を惹かれないと言えば嘘になる。
――――もし、歴史や神話や物語がこうだったらと思うのは誰であれ一度はある事だろう。
そしてそんな機会を手に入れたならば、一度は改変してみたいと思うのもまた当然の事だった。
更に付け加えるなら、自身のサーヴァントの願いを叶えてあげたいという親切心もあった。
サーヴァント、羅刹王ラヴァーナの願い。それはラーマーヤナという英雄譚の主人公、ラーマの妻であるシータを自身のモノにしたいという情欲だった。
死んでもなお変わらんのかこのヒトヅマニアはと呆れ果てたものだがサーヴァントの要望を叶えてあげるのが良いマスターというもの。
異聞体を作成するにあたって空想樹に細工を施した。
サーヴァント、ラヴァーナの記憶を空想樹内で仮想運営されている過去のラヴァーナに転写する事。
おかげでサーヴァントのラヴァーナは消滅してしまったが、異聞帯の王がサーヴァントになっているようなものなので構いやしないだろう。
ついでにラーマが異聞帯内に侵入できないようにもした。
そして最後はシータに対する仕掛けだ。彼女に対してはある霊薬を飲ませた。
その薬は記憶を操作する霊薬。北欧神話のシグルドが飲んだとされている記憶を改変する霊薬だ。
ラヴァーナはシータに対して無理矢理事を為す事は出来ない。もし事に及ぼうとすればシータは自害するからだ。他にはシータの前世に対して言いよって呪われたせいとかという逸話も無いわけではないが、同意があればそういった事はおこらない。
なのでシータからラーマの記憶を消してしまえばいい。正確にはラーマだけではなく、全ての記憶を消したわけなのだが。
とはいえ自分に出来るのはここまで。後はラヴァーナの努力次第だ。
そうして全ての調整を終えた後、異聞帯へと侵入する事になった。
※
結論から言えばラヴァーナは本懐を遂げたらしい。
記憶を全て失ったシータを甲斐甲斐しく世話をして、彼女からの信頼を勝ち取ったラヴァーナは無事シータと結ばれる事に成功した。
記憶を全て失った彼女に対し、ラーマも来ない状況で落とせないならもうどうしようもないが、そういう事にはならないで良かったと思う。
まあうまく行ったのはインドの異聞帯があったからだろうが。
「で、これは一体どういう事?」
「――――どうもこうも無いぞクリプターよ」
自身の眼前に居る玉座に座ったシータ似の少女は自分を見下ろしていた。
その目付きはシータのものに比べて鋭く、冷たいものだった。
「貴様が父と母の仲を取り持ってくれたおかげで余が産まれた。そして父より力を授かったことで余がこの異聞帯の王となったのだ」
この異聞帯の王の言葉を聞き、ラヴァーナの奴がシータとの間に産まれた娘に全てを移譲して死んだことを悟る。
あんにゃろう。まさか全て放り出すとは思ってもみなかったぞ。
こっちに全て任せて去るとか無責任にも程がある。
「貴様には感謝しよう。貴様が居なければ余は産まれなかったのだ」
「は、はぁ、どうも」
「だがそれとこれとは別。貴様には余の監視下に入ってもらう。この島で勝手な真似は許さんぞ」
「あ、それは良いですよ。こっちもこの異聞帯を汎人類史にするのが目的ですし、どうせなら雇い主の望む方向に進みたいので」
正直な話、内輪揉めで争って自滅するのは間抜けの所業だ。
出来る事なら仲良くしたいし、この後に起こる災厄も乗り越えないといけないのだから。
ついでにこのままだと僕はラーマに殺されかねないし。
「ふん、ならば良い」
「納得してもらえて良かったです。して、陛下のお名前は?」
自分が名を尋ねると彼女は誇らしげに答えた。
「我が名はイルイット。羅刹王ラヴァーナとジャナカ王の娘であるシータの間に生を授かった羅刹王女である!」
真名:イルイット
クラス:アルターエゴ
本来の歴史には誕生せず、異聞帯の中で誕生した英霊。
異聞帯が無くなれば自身の存在も消えてなくなる為、自身の存在を汎人類史に刻み付けようとしている。
こんな感じで異聞帯のオリジナル英霊とか見てみたいので誰か描いてくれないかな?