おう、おかえり。
お勤めご苦労さん。
夜は空いてるかい?

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綾坂さん誤字報告ありがとうございます。


第七隊 監督者

怪獣、いつから居たのか定かではないがそう呼ばれるモノがいる。

彼らは紀元前にてすでに確認されており、度々悪魔や妖怪、果ては神などとして記されている。

彼らは人間用の兵器では一切傷付かず、衝撃すら受けない。

物理的干渉をほぼ単体で占有しているようで、己が意のままに地に立ち、潜り、空を歩む。

食も、水も、空気すらも必要とせず立ち向かえるのは狩人と呼ばれる特異な身体をもつ生物のみだった。

 

 

 

 

狩人。

動植物全てにおいて確認され、その身に怪獣と同性質の何らかを有している存在。

遺伝的性質を持たず、ただ自然的に発生することのみが狩人たる条件であった。

 

 

 

「おい、聞いたか?また第七隊が獣の大型やったらしいぜ。」

「またあそこか、あいつら実力すげーのに全く表に出てこねぇから兵装実験部隊とか言われてるんだろ?マジで上の考えることはわかんねぇなぁ。」

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜、つっかれた。なぁ結、配給の酒交換してくれよ。」

兵装を担いだ黒髪の男が小柄な女性へと声をかける。

「嫌よ。圭、ビールばっかり寄越すじゃない、お陰でまだ若いのに下腹がでちゃいそうでヒヤヒヤしてるんだから。」

20半ばに見える茶髪の女性が愚痴混じりに男の言をバッサリと捨てる。

「斬首、討滅確認終わりました。回収お願いします。」

少し離れた位置で細身の、しかし鍛えられた体を持つ青年が通信端末で事の終了を知らせる。

 

帰るぞ。と細身の少年、太一が声をかけ帰投を促す。

 

うーい、と2人して気の抜けた返事を返し第七隊は帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー!」

エントランスに元気な声を響かせ、結は何処かへと走り去っていった。

 

「おう、お疲れさん。みんな無事で何よりだ。」

エントランスで酒を片手に従業員と話していた60代手前の男が2人を見て顔を綻ばせる。

 

「まぁな。つっても結はすぐに食堂にいっちまったけどな。」

肩をすくめながら圭が目の前の男に近寄り、太一も無口なまま男に頷いてみせた。

 

「あれだけ元気なら大した怪我もせず帰って来れたってことだろう?ならなぁんも気にせんで済む。いいことじゃないか。」

男は緩やかに、心から安心したように話し続ける。

 

「これで俺は飲み仲間を失わずに済んでんだ。これからもあんま無茶せん程度に頑張ってくれ、俺の為にな。」

 

「はっはっは!あんたにしてみれば確かに重要なことだな。」

 

「そうだとも!2人とも今晩は空いてるかい?」

持っていた酒を見せつけるように掲げ、男は聞く。

 

「もちろんさ。なぁ?太一。」

「あぁ、狩の後はあんたの為に空けてあるさ。」

じゃあ飯時にな。と男の誘いを快諾し、2人は報告の為に上司の執務室へと向かった。

 

 

「なぁ。」

執務室へ向かう道中、太一は圭へ話しかける。

「あの人が居るから俺等、ただいまって言える様な気がするね。」

「そりゃあそうさ。あの人がいつもあそこで笑顔で迎えてくれるから、晩酌に誘ってくれるから俺達はなんとしても帰らんといかんって思えるんだ。」

 

生き延びろ、立ち向かえ。ほんで無事に帰ってきたら、俺がお前らにおかえりを言ってやる。

だから、死ぬな。

第七隊が創設された時、初めて会ったおっさんにそう言われた。

初対面の50前半の男性にそう言われた時、三人は一様になんだコイツと思っていた。

その男性は言葉通り、どんなに怪我をしても、無傷で帰れた時も、あの心からの笑顔を三人に与えてくれた。

そんな様子をみて、三人はこの施設を帰る場所として認識できた。

 

 

 

 

「大型討滅御苦労様。疲れているところ悪いけど、今回の怪獣について報告を頼めるかな?」

糸目の男性。この施設の責任者で、怪獣研究家。

「はい、今回の獣型は・・・

 

 

 

 

「あのおっさん質問多い。纏めろっつーの。」

報告を終えた2人は愚痴りながら廊下を歩く。

「だな、太一はあんなおっさんになるなよぉ。」

太一を揶揄いながら圭は時間を確認する。

時刻は午後5時を過ぎたところ、食事には少し早い時間。

「とりあえず飯まではしたい事しとくか。俺は兵装見に行くけど太一はどうする?」

「俺はちょっと寝る、飯時に通信鳴らしてくれ。」

「オーケー、じゃあ後でな。」

あぁ、とだけ返し太一は部屋へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリリリッと通信端末がなり、太一は目を覚ます。

時間か、と体を起こし食堂へ向かう。

 

 

 

「おう、きたか太一くん。」

おっさんは片手を上げ、こちらを呼ぶ。

「待たせたか?」

と問うと、いいや、ちょうどいい時間だ。と男は微笑んだ。

 

 

 

 

 

「だからおっさん!俺のチータラ取るんじゃねぇよ!」

「ガハハハ!早い者勝ちだろう!」

 

「おーい、ゲンさん俺らも混ぜてくれよ。」

「おう!来い来い!」

 

「みろよゲンさん、久しぶりにウィスキー交換したんだよ!」

「なにぃ!一杯くれ!頼む!」

 

「ガハハハ!お?なんだ圭、煙草か?ちと待て、俺も行く。」

「ん、太一も来るか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリリリッと端末に通信が入る

「太一です。」

『第七隊へ出動要請です。直ぐに支度を済ませ、ヘリポートまでお越しください。』

いつもと同じ平坦な声で知らせられる。

「太一了解。」

 

 

 

 

 

 

ポートへ向かうとバララララと直ぐに飛べる様、ヘリは暖気運転に入っていた。

「今回は神を自称する人型の中型怪獣です。異能系、高速移動が確認されています。お気をつけて。」

敬礼をする警邏隊に会釈をし、ヘリに乗り込む。

来たか、そう呟き圭が操縦者に無線を入れる。

『出してくれ。』

 

異能系の中型、高速移動。

そう脳内で反復し現着を待つ。

 

「今回もいつも通り結の先制から始める。他に案は?」

圭が提案する、と言ってもいつも変わらないが。

特に反論もなく頷く。

結も不満は無さそうだ。

 

 

「機動型の異能怪獣だ。当たらなくても攻撃は続けろ。被弾は全てを想定しろ。必ず勝って帰るぞ。」

「「了解」」

 

『怪獣視認。直上500m地点にて停止します。回収地点は停止地点より北西2km先、幹線道路上にて停泊します。緊急時は事前連絡をください、エンジンを掛けてお待ちします。グッドラック。』

そう通信が入り、ドアのロックが解除される。

系と結を順に見て頷き合う。

そして圭が合図を出す。

「第七隊、出撃。」

 

 

 

 

 

 

 

 

『気付かれた!次撃開始!』

怪獣へとハンマー型の兵装を振り下ろそうとした結より通信が入る。

いつも通り結の先制が通らなかった時のために照準を合わせていた銃型兵装の引き金を引く。

ダンッと音を鳴らし、中型の腕に当たるのを確認する。

『右腕部破損確認。』

『結、血討準備。』

鋸の形をした主人より更にでかい兵装を持って突撃する圭から通信が入る。

血討。兵装に自身の血を吸わせ、兵装の怪気を上昇させ有効度を底上げする機能。

『了解。』

 

圭がノコを横になぎにするも高速移動で回避される。

『太一、時間稼げ。』

『了解。』

移動方は慣性ありの直線移動である事を確認し、時間稼ぎを了承する。

ダダダッと3度引き金を引き、着弾の確認をせず移動する。

一瞬振り返り、移動先を確認し、通信を入れる。

『10秒後投下地点へ誘導する。9、8、7…』

カウントしつつ銃撃しながら移動する。投下地点付近で待機するのは

 

『2、1、交代。』

血討を行ったハンマーを持つ結。

怪しく鳴動するハンマーを確認し、足元へ銃撃し、目眩しがわりにする。

 

 

「ハァァァ!」

と結はハンマーを乱暴に振い続ける。

 

『怪気抑制弾装填完了。』

土埃の影に息を潜める圭へ通信を入れる。

『指示待て。』

間をおかず通信が入る。

 

視線の先では結のハンマーと怪獣の操るコンクリ塊や車が舞っている。

『そろそろキツイかもー!』

結よりヘルプの信号が入る。

 

『抑制弾撃て。』

視界の端から圭が飛び出し、指示をよこす。

 

外さない様、怪獣の胴体目掛け抑制弾を放つ。

『命中確認。』

『結下がれ。』

『了解。』

 

 

 

 

「これで終いだ!」

圭は声を荒げ、動きの鈍った怪獣へノコを振り下ろす。

瞬間、人型の口元に笑みが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結!憑依だ!帰投する!圭は見捨てろ!』

目の前で動きが止まった二つの影を見て直ぐに指示を出す。

 

『ヘリへ緊急回収要請!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、ゲンさん。久しぶり。」

糸目の男が、近づいてくる。

コイツが来るってことは[そういう事]なのだろう。

「何年ぶりだ?」

「12年ぶりだよ。狩人の怪獣化は。」

怪獣化。

稀に人型怪獣が持つ異能。

人に憑依し、その人間を依代に怪獣として再臨する。

現状最悪と呼べる事態だ。

通常、怪獣は通常兵器では相手取れず狩人の細胞を包有した狩猟兵装を狩人本人が使ってようやく討滅できる様になったのが現代だ。

 

では、古代は?

血を纏った狩人が素手で、ステゴロで相手取っていたのだ。

では、憑依された狩人は?

怪獣としての物理耐性を持ちつつ、狩人と言う人とは隔絶した身体能力を持つ再臨した怪獣。

 

 

「次がいない状況ではあまり良くない手立てだとは思うんだがね。」

「ああ、だから次を指名したまえ。その者を次の君にしよう。」

思わず手が出た。

胸ぐらを掴み、頬を撫でた。

それだけで佳月は、ニンゲンは吹き飛んだ。

 

「…わかった、誰が怪獣化した?」

 

「圭さんです。ゲンさん。」

佳月の助手が淡々と告げた。

「そうか。」

彼方先で倒れている佳月を尻目にエントランスを去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『間もなく支部に着きますが、太一さんへ伝達事項があるとのことなので残ってください。結さんはメディカルチェックです。医務室へ向かってください。』

ヘリで帰投中に伝達があった。

「結、1人で行けるか。」

ブランケットに包まり、縮こまる結に確認する。

「…うん。」

 

『両名了解。』

 

 

 

 

 

 

「おう、お疲れさん。」

ヘリポートでは、いつもと違う雰囲気を纏うゲンさんが待っていた。

 

「結ちゃん、またご飯行こうね。」

「はい。」

 

太一。と眺めている所に、ゲンさんから声がかかった。

ゲンさんがヘリに足を掛けながら顎で席を指す。

「乗れよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

『出してくれ。』

ゲンさんがそういい、ヘリが再び宙へ浮く。

 

「さて、遂に俺の本来のお仕事の時間だ。太一くん、まずはコレを。」

そう言い差し出されたのは赤い液体。

少し粘度のあるソレ。

「血、ですか。」

「お前には、コレから人を辞めてもらう。」

言いながらゲンさんは手袋を外す。

傷だらけだから、と見せてもらえなかったその手には無数の傷跡と、黒く変色した手があった。

 

「俺達は、人狩り。支部じゃもう俺だけになっちまったが、怪獣化した狩人、それも人間の兵装持ちへの狩人だ。」

急な情報に頭がついていかないのにも関わらず、ゲンさんは続ける。

「後天的な物理系狩人と言ってもいい。成り損ない、なんて俺達は呼んでたけどな。」

ハハハと、まるで馬鹿話でもしたかの様にゲンさんは笑う。

『投下地点到着です。』

 

「まあ、何にせよ見とけ。そっからさきは佳月、支部長に聞いとけ。」

 

『ありがとう、運転手さん。』

『いえ…よろしくお願いします。』

 

行こうか、そう言い黒い手で俺の肩を押し、ゲンさんも落下する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、圭。」

 

「あんまり帰ってこないもんだから俺が来ちゃったじゃないか。」

 

「なあ、俺はお前らのこと優秀で強くて、そんで…」

 

「最高の飲み友達だって。本当に、心から、そう思ってたんだぜ?」

 

まるで迷子の子を迎えに来た親の様に。

なんでもないことかの様にゲンさんは話しかける。

 

 

 

 

 

 

 

「さあ圭、最後の宴会だ。」

腕を異形化させた指で裂き、血を流す。

 

 

「太一、コレは血討の原型だ。血を流し、人狩りとして狩人を狩る技だ。効果は大体血討と同じだ。」

 

そういい、彼は圭の兵装を掴んだ。

自殺行為だ。通常、兵装は狩人の細胞を包有させ、兵装すらも狩人の一部として認識させて効力を引き出す代物だ。

他人の兵装を使えば、兵装に、包有された怪気に呑まれるはずだ。

 

 

「俺らは腕と足が既に他人の怪気で犯されている。今更ただの狩人の怪気に犯されるもんか。」

 

そういったげんさんはとても初めて使ったとは思えないほど滑らかに、大型の鋸型兵装を扱ってみせた。

いや、事実初めてではないのだろう。

こうして他者の兵装を使用するのは。

 

「違和感なく扱え、まるで最初から己が物だったかの様に。」

轟音の中、ゲンさんの声だけはよく聞こえた。

「同情なんぞするな。お前が死ぬ。」

返事を待たずに、ゲンさんは淡々と告げる。

 

10分程だろうか、戦い様を見せる様にいろんな手法で圧倒する姿を見せたゲンさんが怪獣化した圭の背を踏み、押さえつける。

 

「これで、仕事を終わらせるんだ。」

そう言い、腕を水平に構え。

異形化した腕が、まるで剣かのように平たくなっていく。

「また後でな、圭。」

そういって腕を、振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お疲れ様です、ゲンさん。』

ヘリの中で無線を使い、運転手が話しかけた。

『これが仕事だからねぇ、ところでシーツかなんかあるかな。』

『支部長よりコートを預かっております。座席下のケースです。』

『ありがとう。』

 

そう言って一向に戻す気配の無い腕を隠すように、フード付きのベージュのコートを羽織り、コチラを向く。

「さ、帰ろうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支部につくと、ヘリポートで支部長が待っていた。

 

「やあ、ご苦労様。」

いつもの狩の後のように、いつも通りかのようにこちらへ話しかける。

 

「地下の広場は開けてある。準備ができたら向かってくれたまえ。」

 

地下といえば倉庫代わりのあの広い空間か?

そこに何が?

 

「太一君、コレからしばらくゲンさんと行動してくれるかな?」

糸目をこちらに向けながら問うてくる。

「分かりました。」

 

 

エントランスを抜け、廊下の奥。

エレベーターに乗り込んだゲンさんは最上階のボタンを押す。

普段は誰も近寄らず、枯れた木だけがポツンと立っているだけの屋上。

閑散としており、年単位で手入れされていないことが伺える。

 

フードコートを目深に纏うゲンさんの後を追い、枯れ木に近寄る。

そして、ゲンさんが木に触れた事で異変が起きた。

数瞬前までは枯れ木だったソレはツヤを得、枝を伸ばし、花を咲かせた。

それどころか、意思があるかのように蠢き、枝をゆっくりとゲンさんの前へと移動させた。

「ただいま。」

 

 

 

 

「彼は人狩りの死期を教えてくれる怪獣だ。」

怪獣と聞き、身構えるが木は特に何もしてくる事なくただゲンさんを迎え入れるように佇むのみだった。

 

「推定樹齢1200年を超える桜の怪獣、害があるとすれば人狩りの俺らの怪気の侵食度を視覚化させて死期を悟らせることぐらいの安全な怪獣だ。」

 

 

「12年前は葉桜ほどの開花率だったが、見ろ今じゃ満開だ。」

いっそ刺々しく思えるほど、その桜は美しく咲いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターから降り立った地下は屋上と同じ、長いこと人の出入りが少なかったようで、隅の方で埃が踊っている。

そして部屋の中央には1つのケースが置いてあった。

人1人余裕で仕舞い込めそうなそれは。

「太一、血は接種したか?」

目を奪われていた所に声をかけられ、一泊遅れて頷いて見せる。

 

「よし、ならおさらいだ。

あの箱を開けて中にある物を装備しろ。」

 

 

装備?ならあれはなんらかの武装か?

そう思い、ゆっくりと蓋を開け放つと、そこに入っていたのは。

「兵装…?」

大きな直刀型の兵装と思しき物。

それを手に取り、振り返ろうとした時違和感を感じ、直刀で飛んできたナニカを受ける。

 

「よく止めたな。さあ、初仕事だ太一。」

 

「怪獣化寸前の俺を、殺してくれ。」

「急にどうしたんだよゲンさん!」

そして俺は違和感を覚えた。

なぜ俺は誰のかもわからない兵装をなんの疑問も持たず装備したのだろうか。

 

「怪獣化した狩人にはそいつの兵装が一番よく効く。理由は今のところ例が少なくてハッキリとは分からんらしい。」

離れながらゲンさんが講釈垂れる。

「お前が体内に入れた血は俺と先代の血だ。こっちも理由は不明だが、人狩りは人狩りの血でしか増えんし、先代以上先の血は混入しないらしい。」

 

「だから、どういうつもりだって聞いてんでしょうが!」

力一杯叫び、どうにかゲンさんを止めようと試みる。

 

「桜を見た時言っただろう、あれは俺らの死期を視覚化すると。」

時間にしては数秒、しかし俺には数十秒にも感じられる間をおいて言い放つ。

 

 

「満開の桜を咲かせた人狩りは、そこが終わりなんだ。

これ以上戦えぬ、生きられぬと。」

だから、と懇願するようにゲンさんは俺を見る。

 

「せめて人として終わらせてくれ。」

 

 

 

 

 

 

なんだよそれ、まだ生きてるじゃ無いか。

まだ喋れてるじゃないか。

見た目だって人そのものじゃないか。

 

いや、腕はあの時からずっと戻っていない。

むしろあの戦いの前ですら人とは思えない見てくれだった。

でも、だからって。

 

「これは俺のエゴでしかないか。」

諦めたように、ゲンさんが腕を下ろす。

 

そして

「俺がやるよ。」

そう言い、自分の首に腕を当てた。

剣と化した黒い腕を。

 

頭が真っ白になった。

何も考えれなかった。

なのに、俺は近づいていた。

 

「…なんだい、いいのかい?」

驚いた顔をして、その後いつもの優しい笑みを浮かべてそう聞いてきた。

 

「よくわかんないけど、ゲンさんにはお世話になったから。」

自分で出した声なのに、震えてる声を聞いて驚いた。

 

「最後が自刃なんて、なんか、それは違うじゃないか。」

 

フフフ、と笑いながら

 

「ありがとう。」

そう言ってくれた。

 

 

 

 

「本当はもっと話したかったし、もっと馬鹿騒ぎしたかった。

ちゃんとお礼も言えてないし、あんたがどれだけ俺たちの支えになってたかも伝えきれてない。」

でも

「これで少しでも恩返しできるなら。」

 

「俺が殺してやる。」

 

「またな、太一。」

そう笑顔で告げるゲンさんに直刀を当てる。

 

「今度会う時は俺のほうが年上だからな。」

そう言って直刀を振りかぶる。

そして

 

「またな、ゲンさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、こんな所まで来てもらって悪いね太一君。」

糸目で、飄々とした、車椅子のジジイを見る。

 

「私もなかなかいい歳なのでね、借りてた借りを、貰い受けてた労働力の対価を払おうと思ってね。」

そう言ってすっかり白髪頭になってしまった支部長と対峙する。

 

「今度一時凍結していた第七隊を再興する事になったんだ。」

どこまでも底知れない笑顔で、そう宣う。

 

「君に、そこの管理を任せたい。」

あの時のゲンさんのようにね。と補足し、こちらを伺う。

 

「分かった。」

「それはよかった!実はもういるんだよね、エントランスに。すぐに向かってくれるかい?」

この老耄、殴っても許されるのではないだろうか。

 

 

 

 

エレベーターを降り、エントランスの受付にて要件を確認する。

 

「なるほど、それでしたらそこの三人がそうですよ。はい、そうです、奥の丸テーブルの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よう、お前らが七隊か?

ん?俺か?俺はお前らの上司だ。

ああ、いやつってもお前らみたいに現場行くわけじゃないしそんな気使うな。

ああ、太一でもいいし、おっさんとかあんたとかでもいいさ。

まあ何はともあれ、第七隊就任おめでとう。

初日だし手短に行こうか。

俺からの命令は3つ。

生き残れ。

立ち向かえ。

そんでちゃんとここに帰ってこい。

そしたら

 

俺がお前らにおかえりを言ってやる。

 

俺がお前らの帰りを待っててやるから。

 

ここでな。

 

 

 




さて、ここまで読んで下さってありがとうございます。
久しぶりにGOD EATERを思い返して書きたくなったので書いてみたのですが、なかなかどうして見切り発車にも関わらずスラスラとかけました。
舞台イメージはゴッドイーターとさほど変わらないのでGEプレイヤーなら思い浮かべやすいでしょう。
けい、ゆい、たいちの第七隊のほんの少しの一幕です。
最初のイメージの時点で、ゲンさんがほぼ主役と言っても過言ではなかったですが、ここまで太一君が出張ってくるとは思ってませんでした。フッ軽な子です。
太一君と新たな第七隊には是非とも頑張って頂きたいですね。
時代だとかバックボーンは正直そこまで作り込んでないので何と無くで補完してください。
しかし、おじ様族はいいですねぇ。
自分で見ててゲンさん大好きですもの。
途中で一瞬イメージ画像でも描こうかと思いましたが、そんな事よりもさっさと投稿したい欲が勝ちましたね。
好きなゲンさん、第七隊像を思い浮かべてください。思いを馳せてください。
私はそうしてます。
ラストのゲンさんの斬首では私の頭の中で「とても素敵な六月でした」が流れました。
皆さんはどんな音楽が流れたのでしょうか。
さて
今頃七隊は周囲を巻き込んで宴会をしているのでしょうか。
太一君の桜は今どの程度なのでしょうか。
気になる所ですが、覗き見はこれまで。
少し長くなってしまいましたが、これにて当作品はお終い。
では、またどこかで見かけましたら、その時は是非よしなに。
錬鉄でした。

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