0話・パルデアの未来(パルデア軸)
ボクは、ナンジャモ。
パルデア地方のジムリーダーを
任された人気配信者。
趣味は配信で、ユニークな企画を立てるのも
得意だからついつい取材とかをよくしてしまう。
今日は、面白い情報を得たので
アポを取ってテーブルシティのカフェへ
取材に行った。
待ち合わせしたクライアントは、
逸早く披露したいのか。
今か今かと身体を震わせていた。
ボクは、その彼が居る席に向かい合う形で着席した。
「ハァ……ハァ。会いたかったよぉ♡
ナンジャモたん……」
マクノシタを思わせる程ふっくらとした
体型の彼は、ねっとりとした口調で言う。
(この反応、もしかしてボクのリスナーさん?
だったら尚更、慎重に取材した方が良さそうだ。
今や、ちょっとやそっとの言葉でも
炎上してしまう世の中だしね。)
「オンコンハロちゃお!
ボクも会えて嬉しいよ!」
「デュフっ。眼福ですなぁ。
ボクちんはマクノって言うんだ。
よろしくネェ。」
(うん。やっぱりこの男、
ボクの典型的リスナーだ。
さて、本題に入らせてもらうか。)
「こちらこそよろしく。
それで、空飛ぶスリーパーの件なんだけど……」
「もうっ、ナンジャモたんはせっかちだネェ。
ま、そーゆう所も可愛いから良いけど。」
「ボクの話……聞いてる?」
「勿論さァ、でもね。ここでスリーパーを
出すわけには行かないでしょ?
だから、南2番エリアの一本道まで
一緒に行ってくれるかい。」
「分かった。」
ボクは了承し、彼と共に店を後にした。
南2番エリアを歩く事数分。
マクノは急に立ち止まった。
「デュフ、ここら辺で良さそうだ。」
どうやら彼は、披露するポジションに
辿り着いたようだ。
「確かに、ここでなら存分に飛べそうだね。
例のスリーパー、期待してるよ。」
「デュフっ、任せなよ。
出てこいスリーパー。」
「スリィィーんっ!!」
「これが……空飛ぶスリーパー。」
「その通りさ、パッと見普通のスリーパーに
だろうけど、彼は飛べるんだ。
よく見ておきなよ。」
ボクは言われるがまま、
スリーパーの動きに注目する。
スリーパーはニヤリと口角を上げ、
糸に吊された5円玉を懐から出して構える。
「――スリーパー、催眠術。」
罠に嵌められたと気がつくよりも先、
ボクの意識は暗闇へと沈んでいった。
「戻れ、スリーパー。
ラルトス、テレポート。」
「らるぅぅ!」
彼らは、ラルトスの放つ桃色の光と共に
その場から姿を消した。
眠ってしまった少女を巻き込んで。
………………。
…………。
「うっ、ここは……――ッ!?」
動けない。
何か粘着性の強い縄に拘束されてるっ!?
「デュフフッ。どうだい、
ボクちんのワナイダー君が
仕込んだねばねばネット。凄いだろぉ。」
「ボクをこんな目に合わせてどうする気?
トップが黙っちゃいないよ。」
「トップ、ねぇ。確かにこの事態を知ったら
ボクちんはタダじゃ済まないかもねぇ。
でも、そんなのはどうでもいいんだ。
現トップの席なんてすぐにでも消えるしさ。」
「……どう言う事。」
「ボクちんは悲しいよ。
推しのナンジャモたんが諸悪の新生チャンピオン、
ハルト君に利用されて居ることが。
それに気付かずに嬉々として居るのも。」
ボクの質問を気にせず、勝手に彼は口を進める。
「何の話……」
「やっぱり、知らなかったんだね。
数字と楽しさばかりに目が行って、
最悪の可能性を見落としてる。」
「最悪の可能性。」
「そうさ、ここ最近不自然だと思わないのかい。
ハルト君が毎週のようにコラボ配信に
応じてくれる事。
ナンジャモたんは彼のプロパガンダに
利用されているんだよ。」
「だからっ! なんの話しだよっ!!」
「ここまで言っても分からないのか。
じゃあハッキリ言うよ。
1ヶ月前に起きた〈解放事件〉、
あの事件の犯人は、ハルト君だ。」
「嘘……」
「嘘なんかじゃない。
彼がパルデアの全ての封印を解く映像は、
ボクちん自身がこの目にし、
スマホロトムに納めた。」
「…………」
「全ての呪物を手中にした者の末路。
その結果、パルデアそのものがどうなるかは
アカデミーを主席で卒業した
ナンジャモたんなら分かるよね。」
「どうして、どうしてそんな事を。」
「考えられるのは唯一つ。簒奪と独裁だよ。
現トップに罪を擦りつけて
引き摺り降ろせば、
力による統治を容易くできる。
それ程までに、トップの利権は大きなモノだ。」
「その事実が本当だとしても、
ハルト君がそんな事出来るわけがない。」
「あぁ、彼1人ならね。
そもそも彼も利用されてるに過ぎない。
この事件も、一人一人の思惑が偶然合致して
出来たものだからね。」
「…………」
「全て、ジニア先生の計画通りって事さ。
彼は本来あるべきパルデアの生態を観測したいんだ。
その為には、あまり動きのない
現パルデア政権を崩してリセットする必要がある。
ま、とある博士の大穴調査が頓挫した時点で
そうするしか無かったんだろうね。」
どうして彼はこの事件を事細かに
把握しているんだ。
「デュフ。ボクちんが何処まで
事件の中身を知ってるか気になるかい?
ボクちんは有名な探偵の息子なんだ。
真実を追うのは推しを追うことの次に得意だよ。」
「………………」
「安心してナンジャモたん。
洗いざらい全部話すさ。
ジニア先生はまず、優秀なトレーナーである
ハルト君が封印呪物に興味を持つよう
レホール先生に呪物系統の授業カリキュラムを
組み込むようお願いした。」
「次に手を組んだ相手は、四天王アオキ。
彼にとって絶好の駒だったろうね。
現トップを引き剥がした後、
表向きでトップを継がせるには
持ってこいの人材だ。
彼自身も、トップからのパワハラ染みた
扱いに大きな不満を抱いていたからね。」
「後は、呪物に精神侵食されたハルト君が
パルデア全土を破壊すれば
目的は達成されるって計画だ。
……要するに、どう足掻こうと
今のパルデアには未来が無いんだよ。」
「だったらボクが止める!!」
「――たかが1ジムリーダーが
止められる訳無いだろ!
もう奴らはそういう次元じゃないんだ!!
ボクちんの親父は
この事件を追って3日前消されたんだ。
ボクちんだってすぐにでも消される!!
今だって――」
我を忘れて叫ぶマクノ氏を遮るように
スマホロトムが懐から現れ、通信が繋がる。
「マクノ、お前は知りすぎた。
後数分でお前のところにつく。」
「この声、セイジ氏っ!?」
「お前、ナンジャモにも話したのか。」
「あ……ぁあああっ。
もうダメだ。僕ちんらは特定されたッ!
来る……執行官が!! 粛清の為にッ!!」
「…………」
「ナンジャモたん。ボクら2人で逃げよう!
そうだ。そうしよう!!」
後数分で追いつくような相手に、
逃げ切れなんてしない。
彼は血走った目で宙に
3つのモンスターボールを投げ、
ポケモンを繰り出した。
「「「エネぇぇっ!! エネエネぇぇっ!」」」
「3匹のマルマイン!?
マクノ氏、一体何を……」
「ナンジャモたん。
これでボクちん達、アイツらから逃げれるよ。
マルマイン――大爆発。」
「「「エネェェエエエエ!!!」」」
刹那、眩い光が視界を支配した。
*
「瀕死状態のマルマインが3匹。
――ちっ、心中か。
下らない真似しやがって……
パモさん、彼らが不可解な事を
していないか心配だ。
床をWatchしてくれ。」
「パモぉ!!」
「どうしますか、ジニアさん。」
「そうですねぇ……
これで真実を明るみにしようとする
障害は消え去りましたし、
私たちが直接どうこうする必要はありません。
後はハルト君に頑張ってもらいましょう。」
「頑張ってもらうって?
……人柱の間違いだろ。」
「いいえ、彼は尊い犠牲の一部です。
本当のパルデアを取り戻す為の……
私たちはそれを観測する。
ただそれだけの事です。」
*
「――ハッ!?」
目が覚めた。
あり得るはずがないのに。
ボクは確かにあの時、
マルマイン3匹の大爆発に巻き込まれて死んだ。
なのに、背中からはサラサラとした
砂のような感触をはっきりと感じる。
まるで、
夜のロースト砂漠で寝転んでる気分だ。
「起きろ、小娘。」
「……誰っ!?」
誰かが声をかけて来たので、
ビクリとして立ち上がった。
目の前には、
全身真っ白なおじさんが居た。
彼は、人ならざる雰囲気を
強く醸し出している。
――神々しい存在との邂逅。
一時期、アカデミーの書庫で
読んだ数々のライトノベル。
その作中によくある境遇だった。
むしろこの状況、そうとしか考えられない。
「あの……貴方はもしかして、
ボクを転生させてくれる神様ですか?」
「フンっ、貴様にはこの俺がそう見えるのか。」
「じゃあ、貴方は一体……」
「俺は、大筒木・イッシキだ。
ちなみにさっきの話だが、
お前の認識は強ち間違っちゃいない。
我々大筒木の一族は、
段階こそ要るが神に至れる存在だ。
……大筒木・シバイのようにな。」
「…………」
「だが、その目標も潰えた。
貴様がここに居るのは、そういうことだ。
――死んだのだろう?」
「はい。」
「貴様は、このままでいいのか。」
「え。」
「このよく分からない砂漠の檻に
閉じ込められたままでいいのか。」
「それは嫌だ。
でも、イッシキ氏がここを
出られてないのなら、
方法はないでしょ。」
「いいや、ある。
貴様がここにいる事でな。」
「あるなら最初から言ってよ!?」
「急に馴れ馴れしくするな。鬱陶しいぞ。
そもそも、
このやり方が成功するかどうかは
俺自身半信半疑なんだ。」
「……ごめん。」
「反省こそ感じるが、俺に対する態度は
変わらなそうだな。まぁいい。
俺の右手と
お前の利き手を合わせろ。」
「こう、ですか。」
掌を合わせた瞬間、
淡い光が10秒ほど出現し。消えた。
「あのぅ……何をしたんです。」
「転生に必要な段階だ。掌を見てみろ。」
「うわっ!? なんか真っ黒な
菱形模様が付いてる!」
「フッ、見込み有りか。では始めるぞ。」
「お、お願いします!」
「――己生転生。」
どうも、たかしクランベリー(本物)です。
ヘブバン全イベント読了済みのヘブバンファンです。
BORUTOもポケモンSVも好きなんで、
どちらの要素もモリモリ詰め込んでます。
よろしくお願いします!