ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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8話・いずれ世界を滅ぼす女

 

━━▶︎ DAY6 ???

 

「どうだ!?」

「やったか……!?」

 

「手加減できない相手でした……。」

「ひひゃひゃひゃ……! もう立てまい……

ひーーーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

 

ご丁寧にフラグ建築したせいか。

 

手塚氏は腰を軽くはたき、

何事もなかったかのよう

スンと立ち上がった。

 

「まあ。こんなところね。」

 

「だろうと思ったよ。」

 

「馬鹿な……。」

「どんな強さなの……。」

「これ以上は……敗北の予感!!」

 

「くっそ……ここまでか……!!」

 

「お見事。合格よ。」

「え? 何に?」

 

「あなた達の戦闘能力は、

もう実戦をこなすのに

充分なレベルに到達している。」

 

ようやく。

この五日間の頑張りが、認められた。

 

「今回の結果と、これまでの訓練の

成績を考慮した上で通達します。

あなた達31Aを

『切り込み隊』に任命します。」

 

「切り込み隊! かっこいい響きです……

これで勝つるですね!!」

「ちょいちょい挟んでくる

そのネットスラング、なんなんだよ。」

 

「切り込み隊とは?」

「なんだろう? いい予感がするな……。」

「だから、普通悪い予感だろ……。」

 

「それはなんなのかしら。」

 

「キャンサーの集団に真っ先に

突っ込んでいってもらう、危険な役目よ。」

 

タマ氏がハッと目を見開いた。

 

「なんという言葉のトラップ!

持ち上げておいて落とすなんて!!」

 

「落としてなんかいないわ。

選ばれた精鋭にしか

任せられない役だもの。」

 

「…………」

 

「あなた達には、自信と誇りを持って

この役目をこなしていってほしいの。」

 

「そんな言い方をされたら、

弱音が吐けない……!!」

「お前。結構な修羅場くぐってきてる

筈だろ……。」

 

「切り込み隊の死亡率は他の

どの隊よりも高くなる。それは事実よ。

ただ当然周囲はサポートするし、

何よりデフレクタがあなた達を

守ってくれる。」

 

「……………。」

 

「とにかく戦場ではデフレクタの残量、

それが切れた場合の退避行動を

忘れないで。それだけを

守ってくれたら、死なせないわ。」

 

「そんな……。」

「恐い……。」

 

「今の聞いても喜んだままで

いられるのか。月歌。」

「へっ、きっと何かの冗談さ!

なぁ司令官!?」

 

「マジです。」

 

「お前ら、止まるんじゃねぇぞ……」

「死んだふりで逃れようとすんなよ。」

 

「明日から

あなた達の活躍に期待するわ。

じゃあ、今日はこれで解散。」

「お疲れ様でした。」

 

「ちょっと待ったぁっ!」

 

解散ムードで動き始めた

ボクらの前に、

菱形の眼帯をした少女が

立ちはだかった。

 

「え、何?」

 

「あら、揃いも揃ってどうしたの?」

 

「あらためて31Aに

自己紹介したいのだけど、いい?」

「どうぞ。」

 

「行くわよ。私は天才科学者の

山脇・ボン・イヴァール!

いずれ世界を滅ぼす女よ!!

ふっふっふ……」

 

「なんでそんな事企んでる奴が

セラフ部隊にいるんだよ。」

 

このユキ氏の意見だけは

完全に同意だ。

 

「あちきは山脇様の忠実なる

僕にして右腕……豊後・弥生でゲス!

山脇様の手にかかれば、

三日ともたないでゲスよ! 

けっひっひ!」

 

「まるで、絵に描いたような

僕キャラだな……。」

 

「ほら、あなた達も例の自己紹介

してやんなさい。」

 

「アーデルハイドは

そういうキャラではないでゴザル。」

「……無理矢理

連れてこられたっていいますか。」

「研究の続きをしたい。」

 

「楽しそうだからついてきただけです♪」

 

「でも悔しいって感情は一致してたろ!!」

「そうでゲスよ!」

 

「全くないでゴザル。」

「……強制参加というから、

ついてきたまでですが。」

「研究の続きをしたい。」

 

「楽しそうだからついてきただけです♪」

 

「えー!」

「なんということでゲスか!」

 

「ぐだぐだですね!!」

 

あの菱形の眼帯した子……イヴ氏が

リーダーの6人部隊だとして、

一体このタイミングで

出会いに来たのはどうしてだろう。

 

直接聞くしかなさそうだ。

 

「あのー、イヴ氏。

今日は、どうゆう用件でボクらに

会いに来たのかな?」

 

「イヴ氏!? 

凄いあだ名つけてくるわねアンタ!

まぁいいわ。

そんな呼び方したこと、

絶対後悔させるからねぇ!」

 

「で、話ってのは何だよワッキー。」

 

「茅森ィ! アンタまで

変なあだ名つけんじゃないわよ!!」

「完全になめられてるでゲス!!」

 

「いい加減本題に入ってもらっていい?

エリート諜報員であるこのわたしは、

あなた達ほど暇人じゃないの。」

 

「1番マヌケそうな奴に

1番言われたくないセリフを

言われたでゲス!!」

 

今にも怒りで爆発しそうな程

震えてるイヴ氏は、

一度深呼吸をし、ボクに向き直った。

 

「私たちにとって、あなた達はライバル。

倒すべき敵だからよ!

ふっふっふっふ…………。」

「そうでゲスよ、けっひっひっひ!」

 

「いきなり敵認定かー、なんか新鮮っ!」

「楽しくなってんじゃねーよ。

お前らが散々煽り散らすから

こうなったんだぞ……。」

 

「その通りだわ……つまり、

31期の『A』にふさわしいのは

あなた達じゃないってことよ。」

「お門違いもいいところでゲスよ。」

 

「え? 『A』ってことに

何か意味があるの?」

 

「説明していなかったわね。

新入隊員たちは

6人1組の部隊にわけられ、

任意のアルファベットに

割り振られる。それは知っているわね?」

 

「ええ。」

 

「その場合のアルファベットに

深い意味はない。

ただし『A』だけは別。

『A』はその世代で最も優秀と

認められた部隊にあてられる

特別なアルファベットなの。」

 

「やった!!

さすがあたしらの部隊長!!」

「ナンジャモの戦闘能力がやたら

高いのは確かだが、

あたしらも褒めろよ。」

 

「それが気に入らないのよ!

司令官、なぜ入隊したての彼女たちを

31Aとしたの!?

私には理解不能よ!!」

「山脇様はあまり頭が良くないので

ゲスよ。」

 

「手下がそれ言っていいのか。」

 

「単純に彼女たちの身体能力や

ポテンシャルを考慮しただけよ。

それ以上の情報は開示できないし、

言う必要もないわ。

ただ一つの『異例』を除いてね。」

 

「……異例だって?」

 

「これに限っては、

セラフ部隊全員が知るべき事象よ。

それは、セラフの副作用。」

 

手塚氏が、ボクの顔を見て告げる。

イヴ氏も、疑問符が

浮かんでるかのように口を開けた。

 

「セラフの……副作用?」

「セラフを使っている状態の

ナンジャモさんを見ていたわよね。

顔半分と、

そこから下の腕や手にかけて

広がる黒いアザ。」

 

「確かに、そんなのもあったわね。」

 

「セラフを初めに手にした時、

彼女はとてつもない激痛に襲われ、

悲鳴をあげていたわ。

今はそういった様子が

見られないけど、いつ再発しても

可笑しくはない。」

 

「なんだって言うのよ……」

 

「もしこの副作用が

セラフを経由して発症し、

死に至る伝染病だとしたら、

セラフ部隊

そのものが潰れる可能性がある。」

 

「………………」

 

場にいる皆の空気が、急に重くなった。

 

「ナンジャモさん、

今更聞き直すようで悪いのだけど、

その黒いアザに関して

何か心当たりはある?」

 

ある。

 

今までは適正試験に向けて

気が回ったせいか。

あまり語る機会がなかった。

 

ボク自身も深くは知らないけど、

今こそ話すべきだと思う。

 

イッシキ氏の言葉が本物なら。

少なくとも、

そんな恐ろしい代物じゃないから。

 

「今まで黙っててごめんなさい。

このアザは

セラフの副作用でもなければ、

伝染病でもないんです。

ある人物に、意図的に

与えられた力なんです。」

 

「……ほう。

他のセラフ隊員と違い

身体能力や戦闘能力が逸脱していて、

それらの成長速度が異常に速いのは

その所為って事ね。」

 

「与えた人は、

これを『楔(カーマ)』と言っていました。」

 

話がややこしくなりそうだし。

イッシキ氏が与えたって事は

まだ黙っておこう。

 

「……『楔』。

どうやら、私たちが

勘違いしていたようね。

ナンジャモさん。

適切な情報提供、感謝するわ。」

 

「いいんです。何も言わなかった

ボクにも責任があるので。」

 

「気にしないで頂戴。

今は、その有益な情報を

得られただけで充分だわ。

ではこれにて、解散。」

 

 

 


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