ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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9話・勝負でゲス!

 

 

「待ちなさいっ! 

何しれっと話の論点変えて

このまま解散しようとしてるのよ!」

 

またもや解散の雰囲気をぶち壊し、

イヴ氏が邪魔に入った。

ついに手塚氏も、

彼女たちの対応に呆れている様子だ。

 

「何が言いたいの。」

 

「勝負よ。」

「勝負でゲスよ!」

 

「ボクらが勝負?」

 

「私たち31Cと31Aを

公平に競わせてほしいの……

勝つ自信あるし!!」

 

「勝ったら?」

 

イヴ氏が不敵に笑った。

 

「Aを私たちが頂くわ。

どう、司令官?」

 

「人類ピンチの時にそんなこと

やってる場合じゃないだろ……。」

 

「……そうね。いいかもしれない。」

「やるの!?」

 

「お互い良い刺激にもなる。

ねえ、七瀬?」

「はい。異論はありません。」

 

「よし!!」

「キタでゲス!!」

 

「That's great!!」

 

「「「――ッ!?」」」

 

突然現れた人物に、一同が目を向ける。

そこには、マスクとマントをした

ヒーロー風の金髪少女が居た。

 

「そんな驚かないで頂戴。

アタシは偶然

通りがかってきた部隊長よ。」

 

「なんで同期の部隊長が三つ巴に

なってんだよ! 意味分かんねーよ!?」

 

あたふたとするユキ氏を置いて、

謎の人物は此方へ向いた。

 

「oh! Ms.ナンジャモ!

アナタと会うのは初めてだわね。

初めまして。

アタシは31Xの部隊長をしている

キャロル・リーパーよ!」

 

「キャロルさん。

どうして来たのかしら。」

 

「もうっ、冷たいわね司令官!

アンタ達これから勝負するでしょ。

だったら、

このアタシに勝負内容を

決めさせてもらえないかしら。」

 

「確かに、A側やC側が独占して

競技を決めたりしたら

八百長になりかねない。

……いいかもしれないわね。

それに、私たち司令部が

その内容を考える手間も省けるわ。」

 

絶対最後の言葉が本音だろうと

みんな知っているが、

空気を読んで黙り込む。

 

「サンキュー司令官。

その勝負内容とはズバリ……

シネマバトルよ!!」

 

「シネマ……バトル?」

 

「ええ。

31Aと31C、それぞれの部隊長が

一本のショート映画を作成し、

ドーム住民にエンタメを提供する。

より顧客満足度の高い方が

勝利ってことでどう?

勿論、テーマは各々の

好きにしてもらっていいわ。」

 

「成る程、面白い試みね。

ドーム住民を活気付ける

良いきっかけになりそうだわ。

許可してあげる。

七瀬、映画施設と交渉お願い。」

「はい。」

 

「やるの!? 

ってかマジで通るのかよ!?」

 

「これで決まりね。

しかし、もっと勝負をフェアにする為に

特殊ルールを与えるわ!」

 

「特殊ルール?」

 

「Exactly!! 

31Aチームは31Cから1人役者を選び、

31Cチームは31Aから1人役者を選ぶ。

というルールよ。

その他の役者は自由でいいわ。」

 

「へぇー、アンタ結構面白い勝負

思いつくじゃない。

ま、どんな勝負であろうと

負ける気は一切ないけど!!」

「さすが山脇様でゲス!!」

 

「イヴ氏、

随分と自信あるみたいだね……

もう何をするか浮かんでたりする?」

 

「当然よナンジャモ!

私たちの作品テーマはズバリ、

世界征服よ!! 

凶悪な極悪集団って事、

改めて認知させてあげるわ。

ふっふっふっ……。」

「けっひっひ!!」

 

「先手を打たれてますね!!」

「いや、打たれてねーだろ。」

 

「何を言ってるのかしら。

私はもう、現31Aから

誰を借りるか決めてるわよ。」

 

早い。

 

ボクでもまだ決まってないのに。

そもそも、ボクの部隊に

世界征服が相応しい人なんて……

 

「朝倉さん。アナタを指名するわ。」

 

「え? あたし。」

 

可憐氏は、

訳もわからずきょとんとした。

 

「いいえ、私が求めているのは

シラフのアナタじゃないわ。

もっと、極悪なオーラを放っていて。

それこそ世界征服を嬉々として

賛同しそうな方の……」

 

「……あひゃ…………

ひゃーっひゃっひゃっひゃーっ!!

よく分かっておるではないか! 小娘!」

 

「ふっふっふっ……待っていたわよ。

――闇将軍家康!!」

 

「ひゃーっひゃっひゃあ!

貴様とは良い酒が

飲めそうじゃのォ……!!」

 

「やはり……闇将軍家康か……!?」

 

「お前らどんだけ

そのネタに味しめてんだよ。

カレンちゃん。お前もまともに

付き合わなくていいからな。」

 

「それで、ナンジャモさんの方は

決まったのかしら?」

 

「……ごめん。テーマすら

まだ決まってないや。

少しだけ、時間をくれないかな。」

 

「勿論よ。今、急に決まった勝負だしね。

まだ時間はあるから、

じっくり決めなさい。

明日までなら、全然待てるわ。

アタシが伝えたい事は以上よ。」

 

「キャロルさん。

有用な企画提供、感謝するわ。

ではこれにて、解散。」

 

 

 

━━▶︎ DAY6 18:10

 

夕飯やデンタルケアを終えた後、

ボクはタマ氏にナービィ広場へ

呼び出された。

 

「またお呼びたてしてすいません。

ショート映画のテーマについて、

私も何か協力出来たらと思いまして……」

 

「いやいや、ボクの方こそだよ。

夕飯の時、映画のテーマをみんなが

色々提案したのに、

結局決まらずじまいにしてしまったし。」

 

「だからこそ、突き詰めるべきでしょう!

きっと何か思いつくはず……!」

 

タマ氏は優しいな。

本当は他のみんなみたいに、

自分の時間が欲しいはずなのに。

 

「そうだね。突き詰めればきっと……」

 

「あのぅ、突然聞いて悪いんですけど、

『ポケモン』って何ですか?」

 

「あ。」

「……?」

 

そういえば、ポケモンという生物が

当たり前のように居る前提で、

過去の話をしていた。

 

タマ氏が疑問に思うのも無理ない。

 

「ごめん。ボクの説明不足だったね。

ポケモンっていうのは、

人々と共生し、人々の生活や

心を豊かにしてくれる。

不思議な力を持った生き物なんだ。」

 

「この世界で言う……

ペットのようなものでしょうか。」

 

「ペットっていうよりは、

パートナーかな。

少なくともボクら人間は、

彼らを対等な存在だと思ってるよ。」

 

「すごい世界なんですね。

……そうだ!」

 

何か閃いたかのように、

タマ氏が声を上げた。

 

「どうしたの?」

 

「ポケモンを題材に

するのはいかがでしょうか!

主人公トレーナーと

ライバルトレーナーが

繰り広げる熱き青春物語!

これで勝つる……!!」

 

そうか。

敢えてこの世界にない概念で

エンタメをしてみる。

 

……アリかもしれない。

否、大アリだ。

 

これなら、あの31Cに

負けないテーマになりえる。

 

「名案だよタマ氏!!」

「ひょえっ!?」

 

「よーし!

まずは、ポケモンっぽい

セラフ隊員を厳選していこー!!」

 

「ちょっ、ナンジャモさーん!

肩ゆらさないで下さいぃ!

……酔うっ!!」

 

 

 

━━▶︎ DAY6 21:10

 

 

結局、日が沈んだ時間帯だけあって。

ほとんどのセラフ隊員は

出歩いていなかった。

 

おかげで成果はゼロ。

 

気が付けば。

 

風呂や就寝前のデンタルケアを

タマ氏と済ませ、

マイベットで寝転んでいた。

 

ベットの上段では、

タマ氏が悔しそうに声を上げている。

 

「……見つかりませんでしたね。

ピンと来るポケモンっぽい人。」

 

「心配しなくていいよ。

明日の昼休憩から時間を取れば、

きっと出会えるって。」

「……ですね。」

 

「それじゃあ、お休み。」

「はいっ。」

 

明日に希望を託し、ボクは瞳を閉じた。

 

そして、ぼんやりと微睡む視界の中。

パチパチと。また目が開いた。

 

「――ハッ!!」

 

次に目を開いた時。

ボクはやけに明るい店内にいた。

 

いや、この和風な内装……

見覚えがある。

 

「チャンプルタウンの、宝食堂?

でも、どうして。」

 

「それについては、俺が話そう。」

 

「――ッ!?」

 

何かを知った風な声で、

声がかけられる。

 

声の聞こえた方を見ると、

白髭を蓄えた

サングラスのおじさんが、

座敷席で座っていた。

 

「あなたは……一体?」

 

「まぁまぁ、取り敢えず俺の前に座れ。

話はそれからだ。」

 

 


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