ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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12話・DeathSlug

 

━━▶︎ DAY12 12:45

 

映画撮影と任務を並行しながら、

それなりに日が経った。

 

今日は、31Aのみんなと

お昼をいただこうと

カフェテリアに入ったところだ。

 

そこで、

つかさ氏が何かに気づいた。

 

「ん? アレは31C?

あんなメンバーだったかしら。」

 

イヴ氏と弥生氏以外は、

確かに見慣れないメンバーだ。

 

「まさか、

お肉を焼いて食べている!?」

 

「31Aか……

こちらは焼肉食べ放題90分を

注文する余裕すらあるのよ。

ふっふっふ…………」

 

「ウマウマでゲス!!」

 

「豊後、ハラミは赤身だから

醤油だれって言ったでしょ!

なに味噌だれつけてるの!」

 

「ハラミはホルモンだわ。」

「知らなかった!!」

 

「山脇様はあまり頭が

よくないのでゲスよ!」

「手下がそれ言っていいのか。」

 

「山脇様は天才マッドサイエンティスト

なんでゲスよ!?」

 

「ふっふっふ……その通りよ。

だからもう決まったの……

完璧なる悪の配役がねぇ!

アンタ達、自己紹介なさい!」

 

「山脇様の忠実なる僕にして、右腕!

豊後・弥生でゲス!!」

「天穹の理を今ここに……」

 

「カレンちゃんでぇぇええす!!」

「妾は李映夏!

悪しき計略を企てるのは大得意ぞ。

……フッ。」

 

「大島・六宇亜!

一般人の人質役として頑張るよ!

……ハァ♡

どんな拷問してくれるか

楽しみらよぉ……♡♡」

 

「え、何。

スコアタ40万でも撮りに行くの?

てか、ムーアに限っては

人選ミスなんじゃないの?」

 

「「――スコアタ40万って何!?」」

 

「お、ユッキーとワッキー

息ぴったりじゃん。いつの間に

そんな仲良くなったのさ。」

 

「「――なってないわ!!」」

 

「以心伝心ですね!!」

 

タマ氏がノリ良くハキハキ

言ったあたりで、

赤ランプが光り激しく回り始めた。

 

それと同時に、

サイレンがカフェテリア内に響く。

 

「ん? 何の音だ?」

 

『新宿ドーム哨戒網より入電。

第二次防衛ライン内に

キャンサー集団の侵入を確認。

映像にてレベル2の個体を確認。

確認回します。』

 

「「「………………」」」

 

『31A、31Cは直ちに出撃準備。

準備終了後、

格納庫に集合して下さい。』

 

「……っ!?」

 

「こういう時は了解って言っておけ。」

 

「「――了解!」」

 

 

 

━━▶︎ DAY12 15:00

 

作戦内容の詳細を格納庫で聞き、

急ぎでボクらは被災地に着陸した。

 

ボクら2部隊は手塚氏から

実力を買われ、DeathSlug討伐作戦を

前線で行える許可が降りている。

 

その覚悟を胸に踏み出した時、

イヴ氏が声をかけてきた。

 

「なぁ、ナンジャモ。」

「ん?」

 

「映画撮影の勝負は

まだ互いに準備段階。

だからここで、更に加点要素を

増やすなんてのはどうかしら。」

 

「つまり……?」

 

「この戦場でより多くのキャンサーを

倒した方が大加点。ってのはどう?」

 

イヴ氏は自信満々に

電子軍人手帳の画面を見せる。

 

「この『ファスト・ミニタリー・マップ』を

見てごらん。

こいつはねぇ、マップ表示の他、

キャンサーの位置情報や討伐数を

記録してくれる優れモノなんだよ。」

 

「DeathSlugが迫って

来てるようだけど、大丈夫?」

「……もしかして怖いのかい。」

 

「実際に見てみないと、分からないよ。」

「はっ、この勝負もらったも同然だね!」

 

「イヴァールちゃん。行きますよ♪」

 

「いいね、ナンジャモ!

ここで私は先手を打たせてもらうわ!」

 

意気揚々と言い放ち、

イヴ氏は前線へと駆け出した。

 

それでもボクは。

 

「……あのさ、みんな。」 

 

「ん、どうしたナンジャモ。」

「ボクら、もっと大事なことを

忘れていると思うんだ。」

 

「奇遇だな。あたしもそう思ってた。」

「……ルカ氏。」

 

「あたしらはドームの人たちを

助けに来たはずだ。

キャンサーを

たくさん倒すためじゃない。」

 

「つまりは……勝つ事を目指さない?」

 

「うん。あたしはここのドームの

人たちを助けたい。

今はそのことにしか

情熱を向けられないから。

ナンジャモも、そうなんだろ?」

 

「その通りだよ。

ルカ氏は鋭いなぁ……」

 

「いやいや、

あたしもまだまだ半人前さ。

で、みんなはどうなんだ?」

 

「良いと思う。」

「可憐氏……」

 

「あたしたちが最優先すべきは、

ドームの人たちの命。」

 

「わたしもそれで構わない。

出世した方がお母さんの情報は

得やすくなるかもしれないけど、

それで大切なものを犠牲にしたくない。」

 

「私も異存ありません!!」

「そーだな。」

 

「みんな……ありがとう。

行こう。そして守ろう!

ボクらならやれる!!」

 

 

 

━━▶︎ DAY12 ???

 

新宿ドーム周辺を

左回りに進み、集団行動する

キャンサーを順調に殲滅した。

 

視認できる範囲でも

敵影はごっそり減っており、

きちんと戦闘した成果が目に見える。

 

その分、

こちらも消耗は避けられない。

 

息を乱したルカ氏が

状況確認へと動き出した。

 

「ふぅ……! ユッキー、残りは?」

「ビルの影に潜んでいるやつらを

倒せば終わりだ。」

「順調だな。」

 

「あーら、31Aのみなさんじゃない。」

 

狙ったかのようなタイミングで、

イヴ氏が歩み寄ってくる。

 

「よう、そっちはどうだ?」

 

「は、順調も順調よ!」

「ザコばかりで楽勝でゲスよ!」

 

グギュグバァッ!!!

 

奇怪な鳴き声が空気を震わせ、

地をも震わせる。

 

皆がその状況に戦慄し、

振動を強く感じた方へ顔を向ける。

 

「ん? あれは?」

「え?」

「そこのビルの上だ!」

 

そこには、

荒廃したビル群の中を

ズシズシと移動する

巨大な異形の姿があった。

 

先程の揺れを起こしたのは、

間違いなくあの異形だと

一同は確信し、息を呑む。

 

「なに……これ……」

「これが、DeathSlugだと言うの……」

「なんてでかさ……!!」

 

「ばかな……でかすぎるでしょ!」

「やばいでゲス!」

 

「まともにやったらひとたまりもない!

こいつは先輩部隊に任せましょ。

後退して迂回するよ!!」

「はいでゲス!」

 

「31A、あんたらも

のろのろしてると死ぬよ!!」

 

31Cの2人は

激しい危機感に駆られ撤退していく。

 

「あたしらも後退しよう……!」

 

「先輩っていつ来るのさ。

この距離じゃドームまですぐだよ。」

 

「あたしらだけで……行けるか?」

 

「ドームの人々の危機が

すぐそこに迫ってるのに、

ボクは撤退なんて選べない。」

 

「ナンジャモがこう言ってんだぞ!

みんなはどうさ!?」

 

「ふんっ! あんな図体が

デカいだけのナメクジ、

このエリート諜報員である

わたしの敵ではないわ。」

 

「いいでしょう!!」

「……ああ、付き合うぜ。」

「待っておったわァ!!」

 

「ナンジャモ、指示を頼む。」

 

「行くぞ、みんな!!」

 

一斉にトランスポートで、

DeathSlugの移動予測経路に

周り込み対峙する。

 

「グギュグバァッ!!!」

 

どうやら、目の前のボクらを

明確な獲物として判断したようだ。

 

「で、どうするよ隊長さん。」

 

「タマ氏とカレン氏は

可動域の小さそうな左右の後脚部に

それぞれ斬撃を与えてくれないかな。

そしたら姿勢を崩して

大技を打ち込める。

大技の指示は随時行うから……

作戦開始!!」

 

「はいっ!」

「ひゃっはぁ!!」

 

キィンっ!!

 

「グギャガガァッ!?」

 

姿勢を崩した。

大技を当てるなら今だ。

 

「畳み掛けるよ!

ユキ氏! 流星!!」

 

「任せろ! 

派手なのいくから、後は頼んだぜ!

……どうだッ!!」

 

流星の如き弾幕が雨のように

降り注ぎDeathSlugの外殻を

大きく損傷させる。

 

「グギァッ!」

 

「手応えあり!

つかさ氏、メメントモリ!!」

 

「やってみせるわ!

こんなのはどう? はいバーン!」

 

「ググギァッ!」

 

「カレン氏! ブラッディダンス!」

 

「ひゃっはァ!

切り刻ぁむ……

切り刻ぁむ切り刻ぁむ!

カレンちゃんでしたぁぁああ!!」

 

「ルカ氏、フィニッシュ頼んだ!!」

 

「おうよッ!

黒焦げにしてやるぜ……

結局切り刻むんだけどな!!」

 

キインッ!!

 

「グギャゴォォッ!!」

 

断末魔を上げ、異形は地に伏せた。

 

「やったか!?」

 

着地したルカ氏が言う。

しかし、何かが可笑しい。

 

「待て月歌! 様子が変だ!!」

 

ユキ氏が何を察し声を上げた瞬間。

地鳴らしが発生し、

風向きが異形に寄る。

 

「ぎぃぁぁああっ!?

立った! 立ち上がりましたぁ!!」

 

「嘘……だろ。

そんな事、あってたまるかよ。」

「万事休すってやつね。」

 

「ひひゃ……奴め。

呑気にビームを溜めておるぞい……」

「クソっ……あたしもカレンちゃんも

反動で動けねぇ!!」

 

「ナンジャモさん!

今ある私たちのデフレクタ残量では

到底あの光線を受けきれません!!」

 

「くっ……」

 

『代われ。小娘。』

 

「――ッ!?」

 

ボクは、いつの間にか座標に居た。

 

「そんなに驚いてどうした?

このままではお前……死ぬぞ。

そんな迷惑な真似、俺が許さん。」

 

「イッシキ氏、何でこんな時に!?」

 

「安心しろ。この座標に

時間という概念は存在せん。

お前はここで黙って見ていろ。」

 

「分かった。」

 

…………。

 

「ナンジャモ……さん?」

 

「全く……この程度のハエで

梃子摺るとはな。下らん。

解凍は12・7%程度か……充分だ。」

 

ズガガガガッ!!

 

「グギァッ!!」

 

「なんそれ!?

DeathSlugが黒くてデカイ棒の

串刺しになってますぅ!!」

 

「あの眼と男のような低い声……

本当にナンジャモなのか。」

 

「外野が一々煩いな。いい機会だ。

敵を斬る手本を見せてやる。」

 

ボクの身体を支配した

イッシキ氏が宙に浮いて、

セラフを片手で振り上げる。

 

「これが、斬るということだ。」

 

そして、振り下ろす。

 

ザンッ!!

 

刹那、凄まじい風圧が起こった。

 

「わお! ディスイズ真っ二つ!!」

 

DeathSlugの胴体が、

真っ二つに分断され。

瞬く間に白き柱へと姿を変えた。

 

「嘘だろ……

あのDeathSlugを

一瞬で両断しやがった。」

「それだけじゃねぇ月歌。

見ろ。数キロ先の道路まで

斬った跡が残ってやがる。」

 

「これが……ナンジャモさんの

真の力だとでも言うの?」

「ひゃっはァ! 肝が冷えるのォ!」

 

 

 


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