ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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21話・うずまきボルト

 

━━▶︎ DAY??? 座標・宝食堂

 

「また……ここか。」

 

明るい和を基調とした店内。

その座敷席で、

アマド氏は待っていた。

 

「最近顔を見せられなくて

すまないなお嬢ちゃん。

構築時間の延長と

複数台作るのに手間取ってな。」

 

「あ……はい。」

 

「おいおい、久々の再会ってのに

気が乗ってないじゃ無いか。

嫌なことでもあったか?」

 

「言わなくても、知ってるでしょ。

寧ろ、それがボクを呼びつけた

理由だよね。」

 

ボクはアマド氏の正面に座った。

 

「それもあるが、理由の一つに過ぎん。

嬢ちゃん、散々な目に遭ったな。」

 

「本当だよ。ただ映画作り

してるだけなのに、

こんな難航するなんて

思いもしなかったよ。」

 

「事実は小説よりも奇なり。

……よく言ったモノだ。

世の中そう簡単に事は運ばない。

キャンサー蔓延る世界なら、尚更な。」

 

「…………。」

 

「まぁ、辛気臭い話は後回しにしようか。

ではみんな大好き、

お待ちかねのQ&Aの時間といこう。」

 

みんなって……

質疑するのはボク一人なんだけど。

 

「今更だけど……いい?」

「何だ。」

 

「アマド氏ってどうやって

此処に来てるの?

まさか、自ら一々仮死状態になってる

訳じゃ無いよね。」

 

「筋がいいなお嬢ちゃん。

半分合ってて、半分間違ってる。」

「……え?」

 

「利用したんだよ。

禁術『口寄せ・座標墓灊』の拡張性をな。

俺は今、強制的に座標を構築し、

術中被験者と干渉する事のできる

ヘッドギア装置を付けているんだ。」

 

「……凄い。」

 

「だが、この術をずっと掻い潜って

居られる訳じゃ無いんだ。

コンピュータ内に侵入した

ウイルスを自動的に排除する

セキュリティソフトウェアのように、

この場が見つかれば即消される。

要するに、此処は時限性の隠れ家

みたいなモンなのさ。」

 

「隠れ家……なんだね。」

「ああ。それだけ

分かってくれりゃ充分だ。

どうだ? 気分は落ち着いたか。」

 

言われてみれば、

リラックスしてるような気がする。

 

「うん。なんか落ち着いたよ。」

「そんじゃ、イッシキの楔と

もう一度向き合うとしようか。」

「これと……」

 

ボクは、手のひらに浮かぶ

黒い菱形模様に目を遣る。

 

「ああ、それだ。

君がイッシキと会話を交わし、

何か気になる事があっただろう。」

 

「待って! 

何でボクが彼と話したのを

知ってるの!?」

 

「此処は魂の檻であると同時に、

『記憶の庭』なのさ。

その気になれば、君だって

俺やイッシキの記憶が見放題だ。

おそらくは、魂が退屈しないよう

用意された扉間の慈悲……

なのかもしれんな。」

 

「でも、ボクはやらないかなー。」

 

「見たくなったら見ればいい。

この俺が、やり方を手っ取り早く

レクチャーしてやるぞ。」

「気を遣ってくれてありがとう。」

 

「じゃあ一旦記憶の話はやめだ。

で、どうなんだ。」

 

「力をくれたって言ってました。

なんだっけ……すくななんとかと、

だいこく……とかなんとか。」

 

「秘術・少名毘古那と

秘術・大黒天だ。

書き記すなら、こうだ。」

 

机の上にいつの間にかあった白紙。

そこに鉛筆でスラスラと

正式名称を書いていった。

 

「秘術・少名毘古那……

秘術・大黒天……強そうな字面だね。」

「強そうも何も、

実際に強すぎる能力だ。」

 

「どんな風に強いの?」

 

「秘術・少名毘古那は、

自身もしくは、視界に映る凡ゆる物質を

瞬時に縮小する能力だ。

勿論、縮小した物体はその分

質量や重量、体積まで縮小してしまう。

何も知らない相手からすると、

突然モノが消滅したように

見えるだろうな。」

 

じゃああの時、鉄骨が消えたり、

イモータルセルの槍が消えたり

してたのは……

『縮小』していたからなんだ。

 

「それと、縮小したモノを

瞬時に元のサイズへ戻せる。

欠点を挙げるなら、

生物にはその力を使えない所だな。

ただ、この能力だけでは

そこまで脅威では無い。

問題はもう一つの力だ。」

 

「……秘術・大黒天。」

 

「ああ。大黒天は『少名毘古那』にて

縮小した物体を

『時間の止まったどこかの異空間』から

元のサイズで取り出せる能力だ。

いつでも自由に、どんな場所にも

予備動作なしで出現させられる。

イッシキが何度か見せてただろ。」

 

もしかして、DeathSlugや

イモータルセルが

急に串刺しになったり。

大きくて黒い立方体の匣が、

何も無いところから

落ちて来たのも……大黒天の力?

 

「……あれだったんだね。」

「納得したみたいだな。」

 

「あれってボクにも使い熟せるの?」

 

「使い熟せるも何も、

6割程度の解凍で使える方が

コチラとしては不思議でならない。

そのまま行けば、すぐにでも

使い熟せるようになるだろうな。」

 

「そんなに異常なの……ボク?」

 

「異常というか何というか……

お嬢ちゃんは大筒木一族にとって

類を見ない最高品質の

器なのだろうな。

今になって、イッシキの野郎が

激甘な対応なのも

頷けるってモノだ。」

 

「最高品質だと、

何かいい事があるの?」

 

「寧ろ、いい事づくめだ。

転生した後の本体スペックが

大幅に変わるといってもいい。

質が悪ければ、元となった身体が

力に耐えきれず、わずか2日で

その寿命を終える事だってあるんだ。」

 

「まるで実際にあったかのような

言い方だね。」

「あったも何も、イッシキは

その策に嵌められて死んだのさ。」

 

「…………。」

 

「おっと、こういう暗い話を

しに来たんじゃなかった。

すまないなあ、お嬢ちゃん。」

「というと?」

 

「成り行きではあるが、

イッシキの楔の力を

大きく引き出したのは事実だ。

それと同時に、自分の無力感も

感じた事だろう。」

 

「…………。」

 

「そこでだ。

楔をより実践的な武器として

鍛え上げたいと思う。

楔には大筒木由来の

戦闘経験値や特殊能力の反映の他に、

時空間移動をしたり、

自然発生以外のエネルギーを

吸収して、自らのエネルギーに

還元する能力があるんだ。」

 

「楔に、そんな力が……」

 

「俄には信じ難いだろうが、

これも事実だ。

吸収能力を使えるようになれば、

物理的攻撃を行わないキャンサーを

完封する事だって可能だ。」

 

「って事は、アマド氏も

楔を使えるってコト?」

 

「初めに言っただろう。

『複数台作る』のに

時間をかけていたと。」

 

「つまり、アマド氏以外の人も

ここに来るの……?」

 

「ああ。君より解凍が進んだ

楔使いの先輩だ。

失礼のないよう、修行に励んでくれ。」

「分かった。」

 

「もう来ていいぞ。

うずまきボルト君。」

 

バッと店の扉を開けて

入店して来たのは、推定12歳くらいで

あろう金髪の少年だった。

 

「うずまきボルト!

呼ばれて参上だってばさ!!」

 

「…………。」

 

「おいアマドのじっちゃん!

このネーチャン反応薄いってばさ!!」

 

「そもそも君みたいな年下の

男の子が来るとは思わないだろう。

少し混乱してるだけだ。」

 

「ご、ごめんねボルト氏。

その……

テンションについてけなくて。」

 

「なぁアマドのじっちゃん。

もしかしてだけど俺、

いた〜いガキだと思われてねーか?」

「十中八九思われてるだろうな。」

「ガーン……」

 

肩を落とし、あからさまに

悲しそうな顔になるボルト氏。

まるで進級デビューに失敗した

アカデミー生みたいだ。

 

「そう落ち込むなボルト君。

君は彼女の希望なんだ。」

「俺が……このネーチャンの?

ははーん……。」

あれ? なんでボルト氏

急に嬉しそうなの?

すんごいニヤニヤしてるんだけど!

 

……まさか。

 

「ちょっ、アマド氏!?

ボルト君に何を吹き込んだの!?」

 

「ボルト君をやる気にさせる為、

強硬手段に出たまでだ。

悪く思わないでくれ。

……というか、

そろそろ自己紹介したらどうだ。」

 

色々言いたい事はあるけど、

時間が限られてる以上。

モタモタしてもいられない。

 

「ボクはナンジャモ。

楔にはまだ不慣れだけど、

色々教えて貰えると助かるよ。」

 

「任せな。

大船に乗ったつもりで

頼ってくれていいってばさ!」

 

すごい自信だ。

 

「そんでよォ、ナンジャモのネーチャン。

アマドのじっちゃんから聞いたけど、

キャンサーという怪物と戦ってる

らしいじゃねぇか。」

「うん。」

 

「何せ相手は怪物だ。

楔の練度を上げて

吸収能力や時空間移動を

モノにするのもいいが、

もう一押し

特別な力が欲しくねーか?」

 

「ボルト君、何のつもりだ?」

 

「アマドのじっちゃんも分かるだろ?

チャクラが練れなくても、

楔のエネルギーを使えば

出来なくないってばさ。」

「理論上は可能だが……本気か?」

 

「ああ。俺はいつだって本気だ。

ナンジャモのネーチャン、

俺の手のひらをよーく見とけよ。」

 

ボルト氏が楔を発現させ、

手のひらに力を込める。

 

すると、手の上にエネルギーが

収束し、乱回転しながら

青い球状を形作った。

 

「これは……?」

 

「――『螺旋丸』ッ!

命中すると相手を吹き飛ばす

すんげー必殺技だってばさ!!」

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

柿P「4章後半に約9カ月かかりました!」
自分「よっ! 待ってましたぁ!」

???「アニメBOROTO一部、終わりました。
アニメ2部はしばらくお待ち下さい。
原作も、これから3か月休載します。」
自分「なん……だと。
おい……俺は悪い夢でも見てるのか。」

……現実でした。
こんな涙、あったんだ。
ということで、 
次回もよろしくお願いします。

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