━━▶︎ DAY9 8:30
「月歌さん、寝坊したとか
言ってどっか行きましたね。」
「休日くらいは良いと思うよ。
ボクらも、ついにあの日が
来てしまったしね。」
「ようやくですか……
桐生さんと独楽バトルリベンジマッチ!」
「……うん。」
イモータルセルとの交戦から
1週間ちょいが経過した。
完成した新作独楽も回し慣れ、
勝ちが狙えるまでに上達した。
映画練習で疲労した
仲間の代わりとして
えりか氏を練習相手にしてみたが、
これが結構参考になった。
「そういえばこの1週間ちょい、
イモータルセルと戦ってからも
色んな出来事が目白押しでしたね!」
「そうだね。
ルカ氏が昨日、えりか氏を
部屋に連れてきた上に、
カルパス競争とか、
バンドメンバーに加えたりとか……
予想外の事ばかりだよ。
当人は楽しそうだから
構わないんだけどさ。」
「ですね……!」
「あとは、作戦の模擬演習だっけ?
あれも苦労したよね。」
「はい!」
今週特に手間取ったのは、
作戦の模擬演習だ。
合同訓練は、思いの外
お互いの動きが中々噛み合わず
多少のタイムロスなどがよくあった。
それでもなんとか、
模擬作戦のフェーズ2を完遂し合格。
ポイントガンマで待ち構えていた
ダイヤモンド・アイに
苦戦した事は記憶に新しい。
と、今週の思い出にほんの少し
浸ってる間に。
LINNEの着信音が鳴った。
メールの内容は、
美也氏の呼び出しだ。
「呼ばれてしまいましたね!
良いでしょう、
私たちでやったりましょう……!!」
「……おー!」
*
━━▶︎ ナービィ広場。中央。
大島屋同盟の面々と……あれ?
なんか多い?
「よーナンジャモ!
面白そうな事始まりそうだから、
31Aのダチ連れて来たぞー!」
「ルカ氏……。」
「蒼井も、練習の成果を見届けに
31Bの皆さんとやって来ました!」
「えりか氏……」
「やぁナンジャモ!
映画撮影サボって何してんのかと
思ったら、
独楽遊びしてるそうじゃない!
面白そうだし、
私たち31Cも観戦してあげるわ!」
「見てやるでゲス!」
「イヴ氏まで……」
「ハーイMs.ナンジャモ!
アタシたち31XもWatchするわよ!」
「桐生……どうして我々30Gまで
連れて来たんだ?」
「まぁ、見ていてください白河さん。
少しは気晴らしになりますよ。」
「そうか……なら観戦させて頂こう。」
何ということだ。
まさか31Dと31Fを除く
31期セラフ部隊と30G部隊が
観戦するなんて……
(凄く緊張する……!!)
「ナンジャモさん……?」
「あ、ごめんタマ氏。
少し緊張して圧されてるだけだから。」
「ナンジャモさんなら大丈夫です!
この1週間の訓練の成果……
堂々と見せたりましょう……!!」
「だね。」
「作戦会議は終わりですか?
では見せて貰いましょうか。
あなた方の用意した新作独楽とやらを。」
ボクはタマ氏と
アイコンタクトを取り、
懐から例の独楽を出し見せつける。
美也氏は、面を外しニヤリとした。
「ほう……それが新作の独楽ですか。
なんとも厳ついお姿……
今からお相手するのが楽しみです。
独楽紐、巻かせてください。」
「うん。」
独楽を手渡しし、
美也氏に巻かせた独楽が帰ってきた。
「触れてみて分かりました。
この独楽にはあなた方の
強い想いが宿っています。
重量、質感、形状……
どれを取っても一線を画す逸品に
仕上がっています。」
「それほどでも!!」
「ちょっ、タマ氏!
あまり驕りすぎないでよ!?
負けた時悲惨になるからね!?」
「全くもってその通りです。
……さぁ、始めましょう。
キャロルさん、進行お願いします。」
言って。
美也氏はステージ前で構え始めた。
いや待って、
前回と明らかに構え方が『違う』ッ!
「その顔……ナンジャモさん。
気がついたようですね。
前回わたくしは、独楽の回し方を
セーブしていました。
あの時は飽くまでも初戦のハンデです。
白河さんが観戦する以上、
わたくしも無様な姿は
見せられませんから。」
「ギャラリーも多いし、
本気で来てくれた方が
ボクら的にも有難いよ。」
「はてさて、その余裕が
何処まで続くのか見ものですね。」
ボクは手に力を込め、
楔を発現させる。
「3……2……1……GO Shoot!!」
同時に独楽がステージに降り立つ。
どちらも初戦とは違い、
回転速度や移動速度までも
ワンランク上の戦いになっていた。
クルクル……キィン キィアン!
散る火花と、剣戟を彷彿とさせる
甲高い金属音。
正に、侍同士の生死をかけた
鍔迫り合い。
いいや違う……
今ボクは、美也氏と刀を交えている。
「ぎぃえぇっ!
なんかナンジャモさんと
桐生さんの目つきが怖いですぅ!」
「國見さん、落ち着いて下さい。
天才剣士であるわたしから
申し上げますと……
彼女らは今、精神世界で
互いの刀を交えています。
それ程までに、両者の戦いに対する
想いが強いのでしょう……。」
「全然納得できませんが!?」
右から来るッ!
キィンッ!
「はああっ!」
美也氏が仕掛ける一閃を弾いた。
「ここまでやりますか……
ナンジャモさん!」
「直、大島屋同盟のところに
連れてくよ……美也氏!」
「それでもわたくしは……
セラフ隊員です!!」
キィンッ!!
左、下、右上……
どれもしなやかで力強い一太刀だ。
でも、追えない動きじゃない。
隙を見て大きく弾き返そう。
「ていやあぁっ!」
「ここだッ!!」
ガキィンッ!
「なッ!?」
突きで確実に決めるッ!!
「決めさせて貰うよ……美也氏!」
ガッキィィン!!
美也氏の独楽が場外に飛んだ。
「――勝負アリっ!!
WinnerはァーMs.ナンジャモぉ!!」
「やりましたね!
ナンジャモさん!!」
「うん!」
「これが新作独楽の力……
わたくしが敗北を喫してしまうとは
思いもしませんでした。
しかし、このまま勝てるとは
思わないで下さいね。」
あれ、いつものおっとりした
声音が乱れてる?
もしや美也氏、イラついてる。
「小笠原さん。『例の独楽』を。」
「本気ですね……桐生さん。」
30Gの仲間から、美也氏が
とある独楽を受け取った。
「これは一体……」
「――魔の独楽・三日月宗近。
使う事はないと思ってましたが、
あなた方の戦果を鑑みて、
使う事にします。
白河さん、見ていてください。
このわたくしが圧勝する
華々しい様を。」
「あぁ、見せてくれ。桐生。」
「ぎぃえええっ!
あっちも遂に本気の独楽だして
来ましたぁ!!」
「大丈夫だよタマ氏。
ボクらが
精一杯を込めて作った独楽だ。
最後まで信じて戦い抜こう。」
「はい……!!」
「3……2……1……GO Shoot!!」
キィンッ!!
再び、ボクは美也氏と刀を交える。
……が。
「……くっ、さっきより重い。」
「ナンジャモさん、
先程の威勢は何処に言ったんですか?
この程度の防御では、
わたくしの猛攻を
抑えられませんよ。」
キキィン! キィン!
右か……左か?
ダメだ。あまりに速すぎて
追いつくのでやっと。
さっきとはまるで、
戦いのステージが違う。
正に一触即発。
少しでも気を抜いたら、
ボクが場外に斬り飛ばされるッ!!
それでもボクは……喰らいつく!
ここまで協力してくれた
みんなの為にも!!
「はあぁっ!!」
キィンッ!
「良い太刀筋です!
その喰らいつく姿勢で、
わたくしを
もっと愉しませてください!!」
廻り、廻って、赫い火の粉が舞う。
喰らいついて拮抗する両者の剣戟。
場外付近のステージで互いに躱し、
時にはぶつかり合う。
時間さえも忘れてしまう刹那の死闘。
長く、ひたすらに続き。
クル……クルクル……
「はぁ……はぁっ、
もう降伏してもいいんですよ。
ナンジャモさん。」
「まだだ。ボクはまだ廻れる。
みんなが背中を押してくれるから。」
キィン!
「虚勢も、ここまで行くと
惨めですよ……くっ。」
効いてる。あと一歩だ。
「まだっ……うっ。」
「ふふっ。正に命を削る大博打……
ナンジャモさん、貴女、
限界が近いようですね。」
「どうだろうね……」
美也氏は勝ち誇った様に
刀を振り上げ、歩み寄った。
「さぁ、決着と致しま……ぐふっ!?」
振り上げた刀が、地面に落ちる。
膝を地につき、姿勢を崩した
美也氏が不思議がる様に呟いた。
「……このわたくしが、吐血?
貴女、一体何を……」
狙い通りだ。
ボクの独楽が限界に
達しつつあるなら、
あちらもそれは同じ……。
「教えてくれないか……
あと『何秒』だ?
美也氏がこのステージで
廻っていられる時間は?」
「馬鹿なッ!
わたくしは確かに貴女の独楽を
追い詰めた筈……」
「これが……ボク達の覚悟だよ。
一先ずは、ボクらの勝ちだ。」
「……悔しいですけど、
認める他ありませんね。」
……コトっ。
……クルクル……クル……コトっ。
「――2秒の僅差ッ!!
勝者……Ms.ナンジャモぉお!!」
「「「「「ぉぉおおおおお!!!」」」」」
どうも、たかしクランベリーです。
4章後編、最高でした。(完走&感想)
ヘブバンで一番の
ストーリーどれって訊かれたら、
間違いなく4章後編選びます。
(めぐタマ推しの個人的意見)
ビャッコの眼……あれ手帳だったのか。
……以上。
もう話すネタも切らしたので、
しばらく後書きはお休みします。
よろしくお願いします。