ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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28話・シネマバトル、決着ゥゥーッ!

 

 

「うっ……ヤバいよユッキー。

これが、最上の切なさだったんだな。」

「何処がだよ!?

すごく既視感のある

ストーリーだったぞ!?」

 

「うぐっ……柳ぃ。

涙と切なさが止まらないよぉ……。」

「それはお嬢様の懐が広い証です。

その感性をどうか忘れないでください。」

 

まーたここにも被害者が居るよ。

 

「さて、審査員の皆さん。

次の上映まで時間があるので、

審査会議を兼ねて

お嬢様と一緒に

お茶会でもいかがですか。」

 

「いいねやなぎん!

あたし肉パフェ欲しい!」

「月歌、お前どんだけ肉好きなんだよ。

後それデザートじゃねぇからな。」

 

 

………………。

 

…………。

 

 

審査員一同のジャッジお茶会も

終わり、瞳が潤んでいた

月歌や丸山もいつの間にか

上機嫌になっていた。

 

どうやら31Fの部隊長は、

あたしが想像するよりも

遥かに優れた執事なのかもしれない。

 

「おいユッキー。」

「……んあ?」

「ボーっとしてる場合か?

そろそろ31Aの映画始まるぞ。」

 

「あぁ、悪ぃ。

少し考え事をしてた。」

 

「折角の映画鑑賞なんだ。

リラックスして観ようぜ。」

「……だな。」

 

 

 

━━▶︎ 劇場版31A!

 

『ドキドキ★コノヨザル』

 

『タイトルから

出オチじゃねぇかァァアア!』

 

私立、パルルデア学園。

それは、言わずと知れた名門校である。

 

日々生徒らが勉学や部活動に励み、

文武両道を貫いていた。

 

その学園で頂点に君臨する

番長・コノヨザルは、

学園内で最もモテる

男子ポケモンである。

 

風の便りでは、

大企業の社長が

溺愛する御曹子なんだとか。

 

どこか親しみやすそうな、

球体を思わせる丸いボディ。

それでも、威厳を感じさせる

獅子の鬣の如し逆立つ髪。

 

凛とした迫力のある赫い眼。

 

彼の威風堂々とした

立ち居振る舞いに、

恋心を鷲掴みにされる

女子や女子ポケモンが後を経たない。

 

このボク……コイルヘッドも、

その一人だ。

 

「ちょっと、聞いてる?

コイルヘッド。」

「あ、ゴメン。ラブリーマスク。

勉強でつまづいた所があって、

どうやってその公式を解くか

考えてて……」

 

「嘘が見え見えよ。

今日もどうやってオとすか

考えてるんでしょ。彼のこと。」

「うっ……ラブリーマスクちゃんには

バレバレかぁ。」

 

「アタシもよ。」

「……え?」

「だから言ってるでしょ、

アタシも彼を狙ってるの。」

 

「そんな……」

 

ラブリーマスクは微笑んだ。

 

「遠慮なんて必要ないわ。

お互いに全力でapproachし合って、

彼を認めさせればいい。

どういう結果になろうとも、

彼の選んだ選択に

文句をつける気はないわ。

それこそが、アタシの正義だからね。」

 

ボクは、本当にいい親友を持ったなぁ。

 

「おやおや、恋バナでゴザルか?

拙者にも聞かせてくれでゴザル!」

 

「え、ゲッコウガちゃん!?」

 

天井に張り付いてたゲッコウガが

飛び降りて華麗に着地した。

 

「いいわよ。ねぇ、コイルヘッド。」

「う、うん。別にいいけど。」

 

「嬉しいでゴザル!」

 

………………。

 

…………。

 

 

「成る程、皆して

コノヨザル殿を

狙っているのでゴザルか。

奇遇でゴザルな、実は拙者も……」

 

ゲッコウガの発言を遮るように、

教室のドアがガラガラと

スライドした。

 

そこから現れたのは……

 

「オーッホッホ! 

臆病者ばかりでみっともないですわね。

やはり、あたくしこそが

選ばれるにたる存在なのかしら!」

 

「あの子は。」

「今日も懲りないでゴザルなぁ。」

 

高らかな笑い声を上げて

現れたのは、

学園でも嫌な意味で有名な

サーナイトお嬢様だ。

 

傲慢や我儘という言葉を

体現したような悪役令嬢で、

隙あらば惚れた相手にも

容赦なく突っかかる。

 

何度突撃しても

折れない彼女の姿勢は、

ボクらが見習うべきなのかもしれない。

 

「コノヨザル様、見てくださいまし。

これ、あたくしの専属シェフが

腕を振るって仕上げた

手鞠ずし弁当ですわ。

極上の舌触りと旨味が味わえる

逸品でしてよ。

是非ご堪能くださ……」

 

ベチャア!

 

サーナイトお嬢様の顔面に、

バナナの皮が投げつけられた。

すばやさがさがった。

 

コノヨザルは、

不機嫌そうに口を開く。

 

「ヴァウッ!」

 

『ビャッコかよォォオオ!?

てかどこが威風堂々だよ!

女子の顔にバナナの皮投げつける

ような奴がモテてんの

普通に可笑しいだろ!!』

 

「何だって……

サーナイトお嬢が、

もう『バナナポイント』を 

稼いでるなんて。

このままじゃ、ボクら……。」

 

『バナナポイントって何だァ!?

ただの嫌がらせ以外の

何ものでもないだろ!!』

 

バナナポイント。

それはある種の伝説だ。

 

7つのバナナポイントを集めた時。

校内グラウンドのバナナの木に

祈りを告げると、

どんな願いも叶うらしい。

 

『モテるってそっちィ!

そういう意味でモテてんのかよ!?

恋心っつーか、コイツに関わる奴全員

私利私欲じゃねぇか!!』

 

「やめろにゃ!

コノヨザルが困るって言ってるにゃ!」

 

女子生徒ポケモンのニャオハ。

 

コノヨザルの幼馴染で、

彼の言葉を唯一

理解出来るポケモンでもある。  

 

「そんな……あたくしが

コノヨザル様を苦しめていただなんて。

次こそは、次こそは満足させますわ!」

 

顔にバナナの皮をつけたまま、

サーナイトお嬢様は踵を返し

教室から去っていった。

 

授業をサボってまで何をするんだろう。

 

「いやはや、まさかサーナイトお嬢殿に

拙者らが一歩遅れるとは

思わなかったでゴザル。」

 

「ええ。アタシ達は明日の

Big eventで巻き返すしかないようね。」

 

……そう。

幼馴染とご令嬢という

最強のヒロインらに対抗し、

ボクら一般女子生徒が

ヒロインレースで大きくアドを

取る方法がひとつだけある。

 

それこそが、明日のバレンタインデー。

 

最高に美味いチョコバナナを

彼にプレゼントした女の子が、勝つ。

 

「そうだね。

明日、悔いのない勝負にしよう。」 

 

「ええ。また明日ね。」

「御意でゴザル!」

 

 

………………。

 

…………。

 

翌日。

 

案の定、教室の座席でコノヨザルは

バレンタインチョコに埋もれていた。

 

とても不服そうな顔をして。

 

その惨状を目にしたニャオハは、

ぶつけようのない怒りをただ呟く。

 

「去年と同じ……

誰も学習してないにゃ。

コノヨザルが欲しいのは、こんな

空っぽな愛の塊じゃないのにゃ……。」

 

「ヴァウッ!」

「にゃっ!?」

 

コノヨザルは、用意していた

大きめのキャリーケースに

チョコを詰めていく。

 

「そんな大量のチョコ、

何処に持って行くのにゃ!?」

「ヴァヴァウッ!」

「……そうかにゃ。」

 

二人は哀愁を漂わせ、

放課後の教室から離れていった。

 

「ハーイ、コイルヘッド。

チョコバナナはあげたのかしら?

勿論アタシはあげたわよ!」

「ラブリーマスク……」

 

「拙者やお嬢様も渡したでゴザルよ!」

「オーホッホッホ!

貴女はどうなのかしら!」

 

「ボクは……渡してない。

ううん。渡さない事にした。

彼に必要なのが、

それじゃないと思ったから。」

 

「「「――ッ!?」」」

 

「ボクは行くよ。」

 

 

………………。

 

…………。

 

 

ボクは二人の後を追って走った。

 

二人は、

夕景に染まった河川の橋で佇んでいた。

 

「ヴァウウウゥゥ……」

 

「誰も自分を自分として見てくれない。

願いを叶えてくれるだけの

機械としか見ていない。

それは本当に、

『生きてる』と言えるのか?

……その気持ち、痛いほど分かるにゃ。

ニャオハは、コノヨザルの気持ちを

尊重するにゃ。幼馴染として。」

 

コノヨザルは、

キャリーケースを河川に投げ捨てた。

そして……

 

――バッ。……ぎゅっ。

 

「「――ッ!?」」

 

「良かった。間に合った。」

 

ボクはすぐさま駆け寄って、

コノヨザルの手首を掴んだ。

あと数秒、数秒遅かったら彼は。

 

「何でコノヨザルの邪魔をするのにゃ!」

「幼馴染なら分かるでしょ!

こんな事間違ってるって!!」

「……ッ!?」

 

「ボクが友達になるから!

願いなんて叶わなくていい!!

夢や願いっていうのは、

自分の力で叶えるから嬉しいんだ!」

 

「……全く、水臭いですわね。

あたくし達が居る事、

忘れてもらっては困りますわ。」

「そうでゴザルよ。」

「YES!」

 

「……みんな。コノヨザルの

お友達になってくれるのかにゃ?」

 

「当たり前だよ。友達になりたい。

それが今のボク達の気持ちだ。

そうでしょ、皆。」

 

一同は、頷いて同意の意思を見せた。

 

「みんな。ありがとうにゃ。」

「ヴァウウッ……」

 

その日。

ボクらの友達が2人増えた。

 

不器用だけど、

とっても楽しいお友達が。

 

 

 

「うぐっ……柳ぃ。

ボクもコノヨザルとお友達に

なりたいよぉ……。」

 

「ええ。お嬢様なら、

きっといいお友達になれます。」

 

「うっ、ユッキー。

あたしも友達になりたいよぉ。」

「丸山の真似したらあたしが

甘やかすとでも思ってんのか?

さっさと採点しろよ。」

 

「月歌ちゃーんショック!」

 

各々の採点書を柳が収集し、

ノートPCで素早くデータを算出、

比較をする。

 

結果は、思いの外早く出た。

 

「この映画勝負……

31Aチームの勝利です。」

 

「やったぜユッキー!

あたしら31Aの勝ちだぜ!」

「……だな。」

 

「ん? どうしたんだよ。

そんな渋柿食ったみたいな顔して。」

「いや、嬉しいには嬉しいんだが……

これ、ポケモンって概念

入れる必要あったか?」

 

「ユッキー、それは

言ってはいけないお約束だぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






どうも、たかしクランベリーです。

昨日の生放送、最高でした。
あいな様は推しなので、引きます。

そして気がつけば、
シネマバトルもかれこれ
8週間くらい擦り続けてて、
自分でも驚いてます。
(3/24〜5/19までやってる。)

映画やりてぇ→楔覚醒させてぇ
→独楽バトルやりてぇ
→あ、映画終わらせなきゃ。
って感じで右往左往した
結果これです。

もういい加減本編進めます。
(合間合間に本編度外視の
ギャグ回を挟む可能性有り)

といいつつ、この後も
ちょびっとだけ映画ネタ擦ります。
よろしくお願いします。

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