ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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29話・Rotary Mole

 

━━▶︎ DAY15 8:30

 

「おー、やってるなぁ。」

 

あ、ルカ氏がイヴ氏達に

ちょっかいかけてる。

 

「何でゲスか!?」

「邪魔しに来たの!?」

 

「いやいや、お互い大変だなって。」

 

「馬鹿さでゲスか?」

「私たちを馬鹿にするって言うの……。」

 

「馬鹿なんて

一言も言ってないんだけどな。」

 

「アンタと一緒にされたら

誰でも馬鹿だと思うわよ。」

「酷い言われ様だ……

みんな言い返してやってくれ!」

 

食卓に広がるのは、

食欲をそそる黄金色の滝。

ボクらはその輝きと香ばしさに

魅入られていた。

 

「なにこれ……」

「すごいチーズの量!」

 

「ハチミツを加えたら、

もはやスイーツ!」 

 

「だね! 出来れば

バケットを用意して

サンドイッチ作るのもアリかも!

絶品チーズサンド、きっと

タマ氏も気に入るよ!」

 

「良いですね!

ディスイズチーズサンド!!」

 

「別の事で盛り上がってるーー!!」

 

「はっ、哀れなやつね。」

 

ユキ氏は、もっちりとした

謎のパンをチーズで

ひたひたにして頬張っていた。

 

その表情は、いつもの仏頂面が

嘘みたいに思えるほど、

ニヤニヤとしていた。

 

あのパン……ボクも食べてみたいな。

 

「え、なになに!?」

「いや、チーズナンがすげぇ

美味いってだけだぞ?」

 

「恋人のあたしが

馬鹿にされてるのに、

そんなことでぇ!?」

 

「馬鹿にされるのは

お前の普段の行いの所為だろ。

あと、あたしは月歌の恋人に

なった覚えはねーよ。」

「えーーー。

よし、あたしも食おう!」

 

「なんて切り替えの速さ!

恐いでゲスよ!」

「まったくだね……

関わらないでおきましょ。」

 

 

 

 

━━▶︎ DAY15 16:30

 

午後の訓練も、及第点ではあるが

なんとか達成できた。

フェーズ4、輸送車護衛。

 

目標損耗率5%未満にするという

ミッションで、4%までに抑えられた。

 

程々の疲労感を癒させる為にも、

31A、31B両部隊は部屋に戻り

束の間の休息に入った。

 

文字通り、束の間の休息だった。

 

『31Aは、至急出撃準備を済ませて

司令官室まで出頭して下さい。』

 

焦燥の混じった声音で、

ななみ氏のアナウンスが入った。

 

「良い予感しかしねーな。」

 

「なんだよその前向きさは!?

この戦時下で

そのブレない前向きさすげーよ。

凄過ぎてリスペクトの念を

抱いている自分がいるよ。」

 

「よく分からないけど、

早く行った方がいいんじゃないかな。」

「そーだよ! 気づかせてくれて

ありがとうナンジャモ!!」

 

「急ぎましょう!!」

 

 

……………………。

 

 

………………。

 

 

――司令官室。

 

室内では、緊迫した空気が漂っていた。

手塚氏も相当焦っている風に見える。

 

「揃った?」

 

「揃った。」

 

「Rotary Moleを、

パトロールの哨戒部隊が発見したわ。」

 

(まさか、

こんな早く見つかるとは……)

 

「それは助かる。」

「あら、どうして?」

「……いや、何も。」

 

「……そう。

助かったのはこちらの方よ。

あなた達が割り当ての

地域を埋めたから場所を絞れたの。」

 

――コマンド:Diver――

 

「ナンジャモとオタマさん。

難しい顔してどうしたの?」

 

「い……いや。だから何もないって。」

「でしょう……!!」

 

もしかしたら、

Rotary Moleの中に

イモータルセルが居る可能性だってある。

 

イッシキ氏が彼に興味を持ってるから

現れてもなんとかなるだろうけど、

前回のように上手くいくとも限らない。

 

不測の事態に備えて、

最大限警戒しておこう。

 

「私語は済んだようね。

では、本題に戻るわよ。

31Aは有明区域の指定ポイントに

急行し、Rotary Moleを討伐しなさい。」

 

「タマ氏……覚悟はいい?」

「勿論です! 急ぎましょう!」

 

「では、直ちに出撃しなさい。」

 

「「「「「「――了解!!」」」」」」

 

ヘリポートをすぐさま飛ばし、

目撃例のあった哨戒網へ移動した。

 

哨戒網の割には、

小型キャンサーが多い。

 

どうやらルカ氏もその違和感に

気がついたみたいだ。

 

「あれ? 

やけに敵影が多くないか。」

「月歌、これがお前の言っていた

良い予感か?」

 

「な訳ないじゃん!

なんか足止めくらってるみたいで

ムカつくよ!!」

 

「そんじゃ、さっさと掃討して

目撃情報のあったポイントに行くぞ。

ナンジャモ、指示を頼む。」

「分かった。」

 

ユキ氏が軽くルカ氏をあしらい、

任務の方へと動き出した。

 

パリィィィン!

 

「ふぅ……スッとしたぜ。」

 

何かをやり遂げたかのように、

ルカ氏が夕景を見上げる。

 

粗方敵影の掃討が済み、

目標ポイント近辺へと到着したので、

職人気質に振る舞いたい気持ちは

充分にわかる。

 

だけどボクは、

緊張を緩める気は無い。

 

「何一息ついてんだよ月歌。

しかも一人で

やり遂げたみたいな態度やめろ。

あたしらも少しは労えよ。」

 

「いやいや、ユッキーは

ゾウに踏まれても平気そうだし、

まだ余裕あるっしょ。」

 

「残念ながらお前らとそんな

体力変わらねーんだよ。

なんなら本職ハッカーなんだよ。」

 

「おい貴様らァ! 

呑気に駄弁ってる場合かァ!!」

「ひえっ!? カレンちゃん!?

脅かさないでよ!」

「脅かしてなどおらんわァ!

異様な気配を感じ取ったのじゃ!」

 

「見つけた、アレだ!」

 

ユキ氏の向く方に視線を合わせると、

確かにRotary Moleの姿があった。

 

「ナンジャモさん!

どう攻めたりましょうか……!」

 

「トランスポートで急接近し、

一斉に先制攻撃を仕掛ける。

その後は、ボクが

随時口頭で指示をする。

行くよみんな!!」

 

キィン! 

バババァン! ジャキィンッ!

 

「ルモォォオオオ!!」

 

効いてる。手応えアリだ。

外殻も大方剥がれている。

 

「でけぇけど、今の

あたしらにとっては敵じゃねーな。」

「はっ、そうよ!

ズタズタに切り裂いてやるわい!」

 

「ナンジャモ、次の指示を!」

 

「ボクとカレン氏以外は

周辺警戒とフォローの体制に切り替えて。

破壊率を稼いで一旦様子見するから!

カレン氏、頼んだ。」

 

「ひひゃ……

モグラの輪切りと行くかのォ!

――カレンちゃんはどうして

そんなに可愛いの?

美少女の方が絵になるからァア!

ひひゃぁああっ!!」

 

振り下ろした重たい斬撃に

連なるように、爆炎が噴き出して

Rotary Moleを灼きつくす。

 

内殻も爛れてだいぶ傷んできてる……。

このまま攻めれば討伐出来そうだ。

 

「――ッ!?」  

 

突然、Rotary Moleが

触手の先端をボクらに構えた。

そして……

 

シュバババッ!

 

黒い棘を雨のように放った。

 

「カレン氏、後方に退避!」

「分かっておる!」

 

シュッ。

 

あと数秒気づくのが遅かったら、

刺さっていた。

 

なんとか被弾しなくて

済んだものの……

その回避自体が、悪手だった。

 

「さぁ、もう一度立て直……」

 

ギュルルルルッ!

 

素早く地面を掘削し、

Rotary Moleは地中へと

逃亡してしまった。

 

「あやつ、逃げおったぞ!?」

「くっ……ごめん。

陽動だと見抜けなかった……。」

 

「あの逃亡は想像以上に

速かったです……。

無理もありませんよ。ナンジャモさん。」

 

「ああ。攻撃する隙すら

なかったな……。」

「外殻を破壊しただけに

終わっちまったか。」

 

「空いた穴から追えば

良いんじゃないかしら!」

 

「やめとけ東城、

行った先に酸素があるかもどうかも

怪しいし、地中で穴が崩れたら

即座に生き埋めだぞ。」

 

「危険すぎでしょう……!!」

 

「うん。今の所は退却する他ないね。

ボクが帰投ヘリを呼んでおくよ。」

 

ヘリで基地へ戻り。

司令室にて哨戒任務の出来事を

全て手塚氏に伝えた。

 

「……成る程。外殻が剥がれると

地面を掘削して逃亡する。

かつてあった資料と同じ生態を

しているようね。」

 

「つまり……どういう事だってばよ。」

 

「月歌、お前司令官室でも

お構いなしにナルトス言うんだな。

まぁ、それはそれとして……

司令官、過去の資料から

奴の逃亡を阻止する方法は

記載されていたか?」

 

「全ての触手を拘束する装置の

開発をしていたそうだけど、

固定砲台故、実用には至らなかった。

Rotary Moleの出没する

区域が一々変わるのも要因だと

考えられるわ。」

 

「確かに、資源や資材も有限だから

そう易々と試験装置をばら撒けないか。」

「力になれなくて悪いわね。」

「いいや、充分だ。

此方も何か作戦が練れたら伝える。」

 

「それは助かるわ。

……では、解散。」

 

どうしよ。

隊長らしい会話

全部ユキ氏がやってしまった。

 

まぁ、人って適材適所あるよね。

ボクがカッコつけて話したって

空回りしそうだし。

 

………………。

 

…………。

 

司令官室から出た

31Aの面々は、

自由時間の為に各自散っていった。

 

けど……

 

「タマ氏はどっか行かないの?」

 

そう。

彼女だけはどこにも行かず

佇んでいた。

 

「なんか最近、ナンジャモさん

気負ってる気がしてて……

それが少し、心配なんです。

私は元艦長ですから、

リーダーの背負う気苦労とか……

そういうのに人一倍敏感なんです。」

 

「……タマ氏。」

 

タマ氏は朗らかな笑みを

向けて言った。

 

「気分転換に、フレーバー通りの

カフェで一息して行きませんか?」

 

(本当にいい仲間を持ったな。

……ボクは。)

 

「うん。

タマ氏のおすすめデザート、

ボクに教えてくれないかな。」

 

「勿論ですとも!」

 

 

 


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