ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー

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30話・すやすや31Aと勇敢なる青

 

ん……何だここ。

31Aの寮部屋って

こんな何も無い所だったっけ。

 

『今こそ解き放つ時だ。

閉じられた限界への扉を

――目覚めよ!』

 

渋いおじさんの声が、耳に響く。

エコーという特典付きで。

 

ボクらは一斉に上半身を起こした。

 

「ここは……何処?」

「知らねーよ! 

あたしも目覚めたら此処に居たんだわ!?」

 

「何だろうな……ユッキー。」

「あたしも知らねーし、

眠くて頭回らねーわ。」

 

「分かったわ! 停電のアナウンスね!」

「ナーーーイス諜報員ッ!

ワシも今そう思った所じゃァ!」

 

ルカ氏が大きく欠伸した。

 

「はぁ〜あ。

なんか怠いから二度寝させて貰うわ。

停電が治ったら起きよーぜ皆。

――zzz」

 

ルカ氏はまた仰向けとなって

眠りについた。

 

「相変わらず寝つきが早えーな月歌。

ま……あたしも寝るか。」

「とことん寝たりましょう……!!」

「ええ。」

 

「「「「「「――zzzz」」」」」」

 

『解放する時が遂に来たのだ。』

 

「五月蝿いのォ……

あと2時間くらいは寝ても良えじゃろ。

サイコキラーは

夜襲が基本じゃからのォ……。」

 

『いや……あの。

目覚ましとかアナウンスじゃなくて……』

 

「「「「「「――zzzz」」」」」」

 

「目覚めろって言ってんだろぉお!

いい加減にしろぉおお!!

何で異空間で二度寝!?」

 

「なんか変なおじさんが居るわ!」

 

つかさ氏の言う通り、

ボクらの目の前に

怪しいおじさんが立っていた。

 

雰囲気からして、

小物感が凄いし……

絶対イッシキ氏やアマド氏じゃない。

 

それに、何の脈絡もなく

ボクら6人が同時に

座標干渉する事は

普通に考えてあり得ない。

 

「……コホン。

ようやく目覚めたか。

私の事が分からぬか。茅森・月歌?

我は常に汝と共に在り。」

 

ルカ氏は、電子軍人手帳を弄っていた。

 

ポチ……ポチ、ポチポチッ。

 

「あっれーー!?

110番に繋がらなーーい!?

助けてユッキー!!」

「繋がる訳ねーだろ! 

この戦時下だぞ!?

こういう時は司令部に繋ぐのが……

ちょっと待てよ!」

 

ユキ氏が冷や汗をかいた。

 

「何です?」

「司令部に繋がらねーってだけじゃねぇ。

電子軍人手帳そのものが

開かなくなってやがる……。」

 

「え……まさかお前、マジもん。

あたしのセラフ……

Brave Blueなの?」

 

「フン……

まぁ、そういう呼び方でもいい。

だがしかし……まだだ!

強くなりたいか? 茅森・月歌。」

 

「いや、いいっす。」

 

ルカ氏、軽く一蹴してる。

心底どうでも良さそうな目してるよ。

 

「私が言うのもなんだが……

かなり便利だぞ。『セラフの真価』。

君ら5人にも教えてやろう。

これより簡単に見せ場を作る!

あまりのカッコ良さに

痺れてしまうぞ!!」

 

え、もしかしてちえ氏も

こんなおじさんから

『イノセント・ワイルド』

教えてもらったの?

 

……そんな訳、ないよね?

 

「五月蝿ぇんだよクソジジイ!

今すぐこのワシが

血祭りにあげてやろうかァアア!!」

 

カレン氏が

こんなに激昂するのも珍しい……。

ノリでやってる

殺害予告より全然怖いよ。

 

「――ひっ! わたし!?」

「東城、何でお前がビビってんだよ。」

 

「……か、勝手に君ら呼んだだけだし……。

わ、私は何も悪く無いというか……

すいませんでしたね。

なんか余計な事して……」

 

凄いクリティカルヒットしてる。

 

「「「「「「………………。」」」」」」

 

「あーでも!

秘術・インビンシブルとか、

秘術・無我夢中とか

めちゃくそ役立つんだけどなー……

なー。」

 

「「「「「「……zzzz」」」」」」

 

「起きろコラぁああ!

いい加減にしろよ……

ってか、君ら女子だよねぇ!?

一応世間体とかあるけどさァ!?

知らないおじさんの目の前で

どうしてそんな無防備に

何度も寝られんだよ!!」

 

(zzz……)

 

「あーもう分かった!

お前らがその気なら

こっちだって本気出すぞ。

今からするカウント以内に

起きないとマジで襲うからな!!

あさーん! にーっ! いーちっ!

あと1しかないよ!? 

マジで襲うよ!? マジで襲うからな!」

 

「「――うるせぇぇええっ!!」」

 

ルカ氏とカレン氏が飛び起きて

彼の両太腿に

強力なドロップキックをくらわせた。

 

「ぐふぁっ!

……くっ、セラフである

この私の足を封じるとはな。

だがまだ甘い……

セラフの真価さえ使えれば、

鼻、口、身体中の至る穴から

ズバリ体液を噴き出させる事も可能。」

 

おじさん。とても苦しそうだ。

 

「みんなそんなの我慢してやってんだよ。

みんな同じなんだ。大切なのは慣れだ。

我が主人にキレられては困る……。

先代たちが

どれ程苦労してると思ってるんだ。」

 

「どこまで心配してんだよ!?

あたしら31Aの実力は

セラフであるお前の方が知ってるだろ!」

 

彼は首を横に振った。

 

「……足らん。故に私は、

君らを元の世界には戻さん。

人類を救うには

まだまだヒョっ子の集まりだからな。」

 

「いいよ別に、

よーし食い物はっと……」

 

ルカ氏が暮らす前提の態度で

冷蔵庫の中身を物色し始めた。

 

「お! 高そうな焼肉弁当あるじゃん!

最高かよ!」

 

「冷蔵庫とか……ちょっ、あっ。

勝手に開けないでくれない……?」

 

「んだよ。どうせ出られないんだろ。

あたしら6人分の食費くらい

賄ってくれよ。」

 

「とにかく、こんな汚い部屋だと

住めたもんじゃないわね。」

 

あ、つかさ氏までベットの掃除に入った。

あれ。なんか薄い本をベットの下から

出してるような……

 

「凄いわ! 手塚司令官が

表紙になってるグラビア雑誌がある!」

 

「あーちょっとぉ!

部屋のモノ勝手に触らないでぇ!!

やめて! 弄らないでぇ!」

 

「この包めたティッシュが

溢れてるゴミ箱……変な匂いする。

すごく気持ちが悪い……。」

 

可憐氏まで掃除手伝い始めちゃった。

 

「コロポッポー!!」

「どうしたのタマ氏!?」

 

「こ、これが面白くてつい……。」

 

タマ氏は卒業アルバム的な代物を

手元に持っていた。

 

ボクも気になって覗き込んだ。

 

「どれどれ……ブッ!」

 

そこには、今とは似ても似つかない

地味すぎるBrave Blueの

学生写真が貼られていた。

 

これには思わず吹き出して、

笑いが込み上げてくる。

 

「……もういいです、もう帰って下さい。」

「何だよ。永久に出られないん

じゃなかったのか?」

 

焼肉のタレを頬につけたまま、

ルカ氏が問いかける。

……が、おじさんは

ゲンナリとして応えた。

 

「いや、もうホント帰って下さい。

私はもう知りません!」

 

諦めたのか開き直ったのか。

強く言い放った彼は、扉を開け……

 

「――あんた何勝手な事

言ってんのォオオ!!」

 

開けた扉から現れた

母親らしき存在に

顔面ドロップキックをくらわされた。

 

「「「「「「――Brave Blue!!」」」」」」

 

あ、おじさん。

母親らしき存在に説教されてる。

 

「母ちゃんには関係ねぇだろ。

首突っ込むなよ。」

「お父さんだって、

仕事の都合があるんだからね。」

 

「何でセラフに両親が居んだよッ!?」

 

ユキ氏の意見に、激しく同意だ。

 

「あのーお嬢ちゃん達。

悪いんだけどぉ、あの子から

セラフの真価。習って貰える?」

 

「「「「「「………………。」」」」」」

 

「なーにやってんのBrave Blue!

早く来なさい! ほら!」

 

「いや……マジでもういいって。

だって、教えるとかそんなレベル

じゃないじゃん!

なんか俺すっげーカッコ悪いし。

殺人鬼みたいな奴いたり、

冷蔵しておいた高級焼肉弁当

勝手にチンして食う奴も居るし……。」

 

泣きながら必死に訴える彼が、

なんだか可哀想に思えてきた。

 

「あんな一生懸命

セラフの真価考えてたじゃない!

母さん知ってるよ!」

 

「アイツら見てる前で

恥ずかしいから

ちょっかいかけんなよ!

鬱陶しいんだよッ!!」

「鬱陶しいって何なのぉお!!」

 

「――秘術・羅刹ぅうう!!」

 

「あーあ。

母ちゃん藻屑となっちゃったね。」

 

「ま……セラフだしそう簡単に

死なないだろ。

あそこが出口の扉だったか?

さっさと行こうぜ月歌。」

 

「ああ、みんなでカフェテリアの

ご馳走食いに行くぜ!」

 

 




どうも、たかしクランベリーです。

昨日のラプラス生誕祭2023、
最高でした。

今回ギャグ全振りだったので、
次回は真面目な
本編路線で行きます。

『こちホロ!』の方は
不定期更新ですが、
コツコツ更新していこうと思います。
よろしくお願いします。

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