ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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31話・予言とセラフの真価

 

━━▶︎ DAY18 17:50

 

カフェテリアでの食事も終わり。

部屋に戻ってデンタルケアを済ませた。

 

今は、書庫でレンタルした

ライトノベルを寮部屋で

静かに読んでいる途中だ。

 

(そろそろ栞挟もっかな。)

 

ピリリリリン!

 

LINNEの着信音が

狙ったかのような

タイミングで鳴った。

 

慌てて開いてみると……

 

(イヴ氏から呼び出し……?

なんだろう。)

 

「ナンジャモさん。

こんな時間に一体、

誰からの呼び出しでしょうか。」

 

タマ氏が心配そうな目で

ボクを見る。

 

「イヴ氏からだよ。

部隊長同士、

2人きりでお話がしたいんだって。」

「そうですか……。

なるべく早く帰ってきて下さいね。」

「うん。」

 

 

………………。

 

 

…………。

 

 

――ナービィ広場、ベンチ。

 

予想通り、イヴ氏は 

ベンチの端に座り込んで

待機していた。 

 

「……急に呼び出して悪いわね。

まぁ、取り敢えず私の横に座りな。」

 

言われた通り、ボクは横に座った。

 

「弥生氏とは一緒じゃないの?」

「豊後は私の仲間が様子を見てるわ。

アンタと折り入った話がしたいから、

こういう形でやるしかなかったの。」

 

「折り入った話……?」

「そうよ。私の部隊には

占いに優れた隊員が居るの。」

 

占いに優れた隊員。もしかして……

 

「劇場版31Cでカニハンドの

母親役をしてた人?」

 

「ドンピシャよ。

話は変わるけど、

以前夜中にアンタと私、蒼井で

話し合った事は覚えてる?」

「うん。忘れもしないよ。」

 

「……そう。なら話が早いわ。

あの時私は、蒼井の様子に

違和感を抱いたの。」

「違和感? ボクには

しょんぼりしてる風にしか

見えなかったよ。」

 

「それとは完全に別ベクトルよ。

私は彼女と対面した瞬間、

沖鳴りを聞いたかのような、

凄いゾワッとした感覚が

全身に奔ったわ。」

 

「それで……。」

 

だから、あんなに優しく

励ましていたのか。

全然気がつかなった。

 

「それだけがずっと心残りでね。

あの後、桜庭の占星術で

彼女の未来を占って貰ったわ。

すると、『ある予言』と『死相』が

導き出されたの。」

 

「予言と死相?」

「セラフの真価が発現した時、

白き光の柱が命を奪うだろう――と。」

 

「もしかしてそれをするのが。」

「そう。31B部隊長の蒼井よ。

水晶に映った死相はおそらく、

この予言が示した

副次的なモノと推測できるわ。」

 

桜庭氏の占いが本当だとしたら、

……マズイ。

最悪の場合、ボクが……。

 

いいや。やるしかないか。

 

ライム姐さんだって、

きっとそうする筈だ。

 

「当然、現在私たち31Cは 

別任務に従事してる都合上、 

いつまでも31B部隊の

そばに居られる訳じゃない。

現在進行形で行動を共にする

アンタ達31Aだけが頼りよ。」

 

「それでボクに……

でもその忠告をするだけなら、

イヴ氏だけが31Aの寮部屋に

来れば良かったんじゃ。」

 

「LINNEで伝えたでしょ。

腹を割って話したいのはアンタだけだと。」

「………どう言う事。」

 

「確かに、31Aの6人掛かりで

止めに入れば阻止できる確率は

一番高くなる。けれども、

その隙をキャンサーに突かれる

リスクだってあるわ。

それで犠牲者が出てしまっては

本末転倒でしょ。」

「………………。」

 

ご尤もだ。

 

「だから、楔という特異能力を

持ったアンタ1人に頼み込んだってわけ。」

「そっか。」

 

「話は変わるけどナンジャモ。

アンタ、『セラフの真価』について

何か心当たりはある?

それさえ掴めれば、

阻止する作戦を

早く練れるのだけど。」

 

セラフの真価……か。

 

――秘術『イノセントワイルド』。

可愛いの極意にして、

あたくしのみが許された『セラフの真価』。――

 

――私が言うのもなんだが……

かなり便利だぞ。『セラフの真価』。

君ら5人にも教えてやろう。――

 

「その顔、

アンタ心当たりがあるようね。」

 

「うん。正確に言うと、

詳しい人に心当たりがある。

今から1人呼んでくるけど……いいかな?」

 

「構わないわ。」

「ありがとう。」

 

ボクは電子軍人手帳で、

とある先輩を呼びつけだ。

 

どうやら偶然近くを

散歩していたらしく、すぐに

その人はボクらの前に姿を現した。

 

「こんな時間にあたくしを

呼び出すなんて……何の用ですの?

映画はもう終わったでしょう。」

 

「急に呼び出して悪いね、

ちえ氏にしか訊けない事があるんだ。」

「それは、横にいる31Cの部隊長と

関係のある話ですの?」

 

「その通りだよ。

イヴ氏、少なくとも彼女は

大事な話を悪戯に

広めるような人じゃない。

ちえ氏にも、経緯を話してほしい。」

 

「分かったわ。」

 

イヴ氏は事の経緯をちえ氏にも

全て話した。

 

「……成る程、

それは物騒な話ですわね。

ですが、あなた方からセラフの真価に

ついて知りたいと訊かれるなんて

思いもしなかったですわ。」

 

「で、話してくれるのかい。」

「当然ですわ。

仲間の命がかかってるのですから。」

 

ちえ氏は一呼吸置いて、口を開いた。

 

「――『セラフの真価』。

それは、心身がセラフの能力に

『追いついた時発現する』特殊能力ですわ。

強大すぎる力が故に、

過剰に使えば命さえも

削る諸刃の剣ですわよ。」

 

「それって……イノセントワイルドも。」

「ええ。そしてあたくし達は、

セラフの真価によって

発現した特殊能力を『秘術』と

呼称し、定義していますわ。」

 

「……ほう、つまり蒼井隊員が

発現させる秘術を阻止すれば

いいって訳ね。」

 

イヴ氏はニヤリとした。

 

「残念ながら、

そう簡単に秘術は止められません事よ。

あなた方が思っている以上に、

秘術の力は強大ですの。

それこそ、セラフに大きな損傷を

与えるなどの細工をしない限り

止まりませんわ。」

 

「……なら、可能かもしれない。」

「ナンジャモさん。貴女正気ですの。」

「うん。」

 

「ナンジャモには『楔(カーマ)』がある。

それだけで理由は充分じゃないかしら。

どんな手を使うのか、

私にもわからないけどね。」

 

「左様ですか。

であれば、あたくしが

心配をする必要はなさそうですわね。

ですが、万が一の事があります。

せめてセラフの真価が発現する

予兆だけは覚えて下さいまし。

という訳でお二人さん、 

今すぐアリーナに行きますわよ。」

 

 

 

 

━━▶︎ DAY18 19:10

 

イヴ氏、ちえ氏と共に

アリーナで何度も擬似キャンサーの

掃討を行い、予兆の感覚も掴んだ。

 

アリーナを出た所で、

今度はボクがLINNE越しに

呼び出された。

 

<<蒼井

ナンジャモさん。

あまりに遅いから

月歌さんが怒ってますよ。

 

<<自分

ごめん。

すぐ練習に参加するから待ってて。

 

(遅すぎて心配されてる……。

早く行こう。)

 

余計な事は打たず、スッと

電子軍人手帳を懐にしまった。

 

スタジオに着くと、

もう既に聴いたことない

新曲をみんなが通していた。

 

「はいみんなストップ。

真打DJの登場だぜ。」

「あはは……みんな遅れてごめん。」 

 

「気にするな。

隊長には隊長なりの忙しさがある。

あたしらも

それは理解してるつもりだ。」

 

「ナーーーイスハッキング!」

「ハッキングじゃないわ。

只のフォローだわ。」

 

 

……………………。

 

…………。

 

 

新曲練習を何回か通して、

今日という1日が夜に染まった。

 

ボクを含むみんなが

デンタルケアを済ませ、

消灯までそれぞれのベットで

適当に時間を潰していた。

 

おそらくあの予言の日は、

オペレーション・プレアデスの

実行当日だ。

 

やはり時間がない。

えりか氏を死なせない為にも、

あの人の協力が必要不可欠だ。

 

「ちょっといいかな可憐氏。」

「……え、あたし?」

 

「2人きり……じゃなくて

3人だけで話したい事があるんだ。

エントランスの屋上まで

付き合ってほしい。」

 

「分かった……!」

 

「あららー。

おタマさん負けちゃったねぇ。

ナンジャモは朝倉姉妹丼を

ご所望のようだぜ。」

 

「負けてないし!

姉妹じゃなくて二重人格だし!

ね!? ナンジャモさん!」

 

凄い。タマ氏が珍しく必死だ。

まぁ、ボクも変な誤解されては

困るし、言うべき事は言っておこう。

 

「心配しなくていいよタマ氏。

ルカ氏の妄想通りに

なるつもりはないから。」

「そうでなくては困るわい!

さっさと終わらせるぞナンジャモぉ!」

 

カレン氏まで出てきた。

 

「うん。」

 

 

………………。

 

……。

 

――エントランス、屋上。

 

星々が輝いて見える夜空の下、

ボクは朝倉氏2人と向き合った。

 

「ナンジャモさん……話って?」

「今日遅れた事について全て話す。

その内容も、

そして今後ボクがする事も。」

 

ボクは、今日イヴ氏と出会ってからの

全てを話した。

 

「――という事なんだ。」

「どうしてその話をあたしに。」

 

「仲間には内密にして、

ボクに協力して欲しいんだ。

もしもの事があった時、

ボクは部隊長として

指示に専念しないといけない。

止めるには人手も足りないし、

他のみんなは絶対躊躇するから。」

 

「何をする気なの。」

 

「失礼を承知の上で言うよ。

こんな事、殺人鬼である

2人にしか頼めない。

えりか氏が秘術の前兆を見せたら、

ボクが彼女のセラフを

楔の力で『縮小』し、無力化する。

それが合図だ。朝倉氏2人は

えりか氏に――してほしい。

勿論、全ての責任はボクが負う。」

 

「そんな事したら……

ナンジャモさんは。」

 

「いいよ。ボクはどうなったって。

何があろうと仲間の命が最優先だ。

次の部隊長はルカ氏が上手く

やってくれる筈……だから、頼む。」

 

「それは、残された國見さんの

事も考えてるの?」

「……それはっ……でも、

こうするしかないんだ。頼む……。」

 

可憐氏は俯き、

口角を上げながら向き直った。

その狂気的な目は……

カレン氏のモノだった。

 

「ひひゃ……ひゃーっはっはァ!

いいじゃろォ! その威勢買ったァ!

ワシらは乗るぞォ! 

じゃが、一度きりの大博打じゃ……

失敗は許されんぞ。」

 

「……分かってる。

ありがとう、2人とも。」

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

突然ですが、諸事情により
更新ペース落とします。

まったりゆったり、
更新したい気分になりました。
よろしくお願いします。

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