━━▶︎ DAY19 16:40
再度Rotary Moleの
目撃情報があったので、
哨戒網の指定ポイントへ向かった。
……が、偶然近くで
任務をしていた30Gが赴き、
既に片付けていたようだ。
「やぁ、31Aの諸君。
獲物を奪って
しまったようですまない。」
「ユイナ先輩!
いやいやとんでもないっス!
むしろあたしら助かりました!!」
ルカ氏、彼女の前だと
ガラッと態度変わるなぁ。
「そうだな。月歌が言うのなら、
きっとそういう事なのだろう。
その感謝、有り難く受け取ろう。」
「いやいやいやぁ〜。」
「いや、お前は何もしてねぇだろ。」
「あら、ナンジャモさん。
あなた方も此方へ来ていましたのね。」
「うん。司令部の指示でね。」
「白河さんの仰る通り、
Rotary Moleの排除は
あたくし達が済ませましたわ。
……同じ轍は踏みません。
あたくしの秘術があれば、
アレを拘束し逃亡阻止させるのは
容易い事でしてよ。」
済ませたのだとしたら、
一つ気になる事がある。
ちえ氏も、察してくれたようだ。
「貴女の言いたい事、存じておりますわよ。
残念ながら、例のキャンサーは
搭乗していなかった。
開かれた敵の口内には、
生物とは思えない
無機質な砲口だけがありましたわ。」
「……居なかったか。
だったらしょうがないね。」
「気に病む必要はありませんわ。
いずれ見つけ出して、
必ず捕えましょう。」
「そうだね。」
辟易とするなぁ。
「さて、私語はここまでにしよう。
30Gの諸君、並びに31A諸君。
私はナンジャモと隊長同士で
情報共有したい事がある。
先に帰投ヘリに搭乗し、
待機していてくれ。」
「了解ですわ。」
「はーい♪」
「小学生の遠足みたいな返事やめろよ。
お前の所為で31A全体の
イメージが損なわれるわ。」
各々が彼女の指示に従って
その場から去っていく。
人影が見えなくなった辺りで、
彼女は口を開いた。
「こういう形で31Aの
部隊長と話せるとはな……
独楽回しや映画も見たが、
素晴らしいモノだったぞ。
今更ながら、
桐生や菅原が世話になったな。」
「あ、あのー。」
「ああ、すまない。
自己紹介がまだだったな。
私は30G部隊長の白河・ユイナ。
名前は好きに呼んでくれて
構わないぞ。」
白河・ユイナ。
……ユイナ氏と呼ぶことにしよう。
「で、ユイナ氏は
どういう用件で話を?」
隊長同士だけで交わす情報共有。
きっと重要な話に違いない。
「ユイナ氏か……悪くない。」
「あ、あのー。」
「大丈夫だ。
ちゃんと話は聞いている。
そして先程の発言は建前だ。」
「……建前?」
「そうだ。今朝方、
恐ろしい神託を授かってな。
この機会に
伝えるべきだと私は判断したんだ。」
予言の次は神託?
この基地では今、
スピリチュアル的なアレや
オカルト的なアレが
流行ってるのだろうか。
そういうの、
正直もうお腹いっぱいだよ。
「ごめん。ユイナ氏。
そういうの間に合ってるから。
……その、また今度で。」
「――頼む! 本気で聞いてくれ!
君についての『神託』なんだッ!
今聞かなければ、
絶対君は後悔する事になるんだ!」
部隊長である彼女が、
ここまで必死になって
訴えるって事は……
余程の事かもしれない。
ボクはあんまりそういうのを
信じる質じゃないけど、
このまま跳ね除けるのも違う気がする。
「……分かった。
聞くよ。その神託。」
「感謝する。」
ユイナ氏は一呼吸置いて、
告げた。
「心してほしい……
その禍々しき楔は、
いずれ貴様から『全てを奪い去る』……」
案の定、物騒な言葉が出てきた。
「それは、ボクが命を落とすという事?」
ユイナ氏は、
顔を険しくして答えた。
「違う。命を落とすよりも
遥かに恐ろしい未来……
文字通り、
『全てを失う日』が来るのだ。
その理由は私にも分からない。」
「…………。」
「ただ一つ言えるのは、
周りが自分を見失っても、
自分だけは『自分を見失うな』。」
「それが……ボクに関しての神託。」
「ああ。覚悟を固めておいてくれ。」
*
━━▶︎ DAY19 18:30
夕食、デンタルケアを終え。
新生She is Legendの新曲を
何回か通しで演習していた。
今は、その合間に挟む休憩時間だ。
ピリリリィン!
ボクのLINNEが鳴った。
イヴ氏やユイナ氏の次は
一体誰なんだろうか。
すごく忙しない。
<<大島・六宇亜
大島家同盟の仲間として、
助けてくださいナンジャモさん。
最近姉さん達の様子が可笑しいんです。
(ムーア氏に何が!?
これは……気になる。)
<<自分
今、31Aのみんなと
新曲練習中だから、
ルカ氏に聞いてみるね。
「おいおいナンジャモ、
興味津々にデンチョ覗いて
どうしたのさ。」
「ちょっとムーア氏に呼ばれてね。
皆には悪いけど、
一旦離脱していいかな?」
「ムーアが!?」
「ナンジャモさん!
私もお供して宜しいでしょうか!」
「えー! おタマさんが
行くならあたしも行くー!」
「待て月歌! 行くなッ!
バンマスのお前が抜けたら
練習どころじゃねー。
少しは頭冷やせ!」
「何でおタマさんは良いんだよ!?」
「戦艦の頭脳でしたから!」
「だそうだ。
まー、月歌よりは頭回るし、
1人で行かせるよりは
良いんじゃねぇか。
三人寄れば文殊の知恵って奴だ。」
「何でよ!?
ユッキーいつもダメ艦長とか
罵ってるのに!
今日だけやたら
おタマさんに甘くない!?」
「……言い掛かりは止せ。
あたしは
最適な判断を下しただけで、
特に深い意味は……」
ポロっ……
ユキ氏のブレザーから3つ程
袋詰めのどら焼きがこぼれ落ちた。
「ガッツリ賄賂貰ってるじゃん!」
「行け! ナンジャモ、國見!」
「「――了解!!」」
「この裏切りモンがああああ!!」
ルカ氏の怒号から避けるように
その場から走って
ボクらは逃亡した。
必死に走り、なんとか
時計塔付近のベンチまで辿り着いた。
「ぜぇ……ぜぇ。
もう無理ポ、足折れちゃう!」
「はぁ……流石にここまでは
追ってこないでしょ。」
久々に楔の力抜きで猛ダッシュした。
タマ氏の言う通り、
足が痛くて折れそうだ。
「和泉さん、大丈夫でしょうか。」
「ルカ氏の扱いは
彼女が一番慣れてるし、
きっと大丈夫だよ。」
「ですね!」
「あたしは、
全然大丈夫じゃないよ……。」
「「……!?」」
咄嗟に感想を述べた声の方を
見ると、ゲンナリとした
ムーア氏の姿があった。
「ムーア氏!?」
「へへ……顔を合わせるのは
独楽勝負以来かな。
これでやっと、話せそうだよ。」
「聞いたりましょう!」
「うん。」
「取り敢えず、
ナービィ広場のベンチで
横並びに座って話そうか。」
「良いでしょう……!」
ボクらはムーア氏と共に
ベンチへ向かい、座った。
ムーア氏は、夕空を少しだけ眺め。
深呼吸で心を落ち着かせ、口を開いた。
「……よーし、勿体ぶるのも
意味ないし話すよ。」
「わくわく……!!」
ワクワクする話には
見えないけどなぁ。
………………。
…………。
〜SIDE『大島・六宇亜』〜
それは、今朝方からの話です。
あたしは姉妹の中でも
目覚めが早いタイプで、
一番乗りで起床するのは
よくある事でした。
いつも通りの何気ない朝。
洗顔、歯磨きうがい。髪梳かし。
スッキリとした爽やかな寝覚めが
消えないうちに、制汗シートで
全身の寝汗を丁寧に拭き取り。処分。
寝巻きから緑のジャージに着替えます。
その後は、日課通りに冷蔵庫を物色。
スポーツドリンクを一本取って
早朝の筋トレに臨……
「あれ? スポーツドリンクって
こんなロゴだったっけ?」
これ? エナドリな気がする……。
(あはは……あたしったら
おっちょこちょいだなぁ。
寝ボケてエナドリを
取ってしまうなんて。)
スッと冷蔵庫の中に
エナドリを戻して、
スポーツドリンクを探してみる。
上段、中段、下段。
野菜室、冷凍コーナー……。
エナドリ、エナドリ、エナドリ……。
カニカマ、エナドリ、
カニカマ、エナドリ……。
「いやぁああああああっ!」
思わず叫んでしまい。
姉さん達を起こしてしまった。
「どうしたの六宇亜!?」
「一千子姉ぇ!」
逸早く駆けつけてきたのは、
一千子姉だった。
「六宇亜、何があったの?
わたしに話してみなさい。」