ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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36話・RED Crimson

 

――オペレーション・プレアデス当日。

ポイントデルタ、菜の花展望台。

 

長い作戦訓練の日々が功を奏したのか。

本任務はスムーズ且つ順調に

進んでいった。

 

菜の花展望台付近の

開けた場所にテントを設営し、

ボクはパルデア在住以来の

ピクニックを

それなりに謳歌した。

 

えりか氏が意外にも

キャンプ慣れしてるのもあってか、

これといったハプニングもなく

みんながみんなゆったりと

野営の時間を過ごしていった。

 

そうして迎えた夜。

 

何故だか夜風に当たりたくなり、

野営地から少し離れて

風を浴びに行った。

 

肌に触れる渇いた風、

茂った草々が奏でる

サラサラとした心地よい音。

 

……何処か、懐かしさを覚えてしまう。

 

そういえば、

ピクニックテーブルの上に 

ランタン置いて。

 

リンちゃんと一緒に

夜空を飾る星々をゆっくり

眺めてた日もあったなぁ。

 

ガサガサっ!

 

「ん? 誰かいる。」

「うわっ!」

 

「いやいや、

そっちに驚かれても困るよ。」

「すみません……。」

 

申し訳なさそうに、

突然現れたえりか氏が頭を下げた。

 

「顔をあげなよ。

別に、ボクも不快に

なったとかはないから。」

「…………。」

 

「それで、ボクに何か用があるの?」 

 

「ナンジャモさんに

お礼が言いたくて……来ちゃいました。」

 

「お礼を言われる事なんてしてないよ。

ボクは入隊式から今日に至るまで、

ただ必死にしがみついて

生きてただけ。それと、

負けたくない勝負があったから。」

 

シネマバトル。

今思い返してみても、

結構ギリギリな勝負だった。

 

31Cとは違うコミカル調な

シナリオが万人に受けたのだろうか。

 

正直、

何が勝利の決定打になったのかは

ボク自身よく分かっていない。

 

「いえ、充分なことをしてくれました。

ありがとうございました。」

「でも、まだ疲れてるように見えるよ。

ちゃんと寝れてるの?」 

 

「あまり……」

「そっか……いつかの日か。

ぐっすり

寝られるようになるといいね。」

 

「……はい。それにしても、 

ナンジャモさんは優しいですね。

まだ蒼井のことをそんなに

心配してくれるなんて。」

 

「ううん。表に出さないだけで、

きっとみんなも心配してる。

みんな、

えりか氏を困らせたくないんだ。

だから自信を持つといいよ。」

 

「はい! 

蒼井、自信を持っていきます!」

 

「そうそう、その意気だよ。」

 

「ありがとうございます。

なんだか今なら、

ぐっすり眠れそうな気がします。」

 

先程の重たい顔つきが、

軽く朗らかなモノへと変わった。

 

この短い会話の中でえりか氏の

中の重荷が少しでも減ったのなら、

外に出た甲斐がある。

 

この調子なら、えりか氏は

今後立派な隊長として

やっていけるだろう。

 

きっと、ボクが

セラフ部隊から居なくなった後も。

 

(覚悟は出来てる。

あとはそれを……実行に移すだけ。)

 

「おやすみ。えりか氏。」

「はい。おやすみなさい。」

 

 

 

 

━━▶︎ DAY25 4:00

 

「……起きろ小娘。

起きろと言ってるのだ。」

 

(ん、誰かボクを呼んでる?)

 

背に伝わる砂床のような感触。

……座標か。

 

ボクは身体を起こした。

 

目の前には、

イッシキ氏が佇んでいた。

 

「久しぶりだね。イッシキ氏。

急にボクを呼びつけてどうしたの?」

 

「ようやく起きたか。

貴様を呼びつけたのは他でもない。

『忠告』の為だ。」

 

「……忠告?」

 

「俺の勘が言ってるのだ。

これから大事が起きるとな。」

 

「その為にボクを?」

 

「……そうだ。俺の勘は

こう見えて結構当たるんだ。

貴重な器である貴様を

失う事態は極力避けねばならん。

いい加減仮眠を中断し、

現実の方へ目を向けろ。

何かがあってからでは遅い。」

 

「忠告ありがとう。

ボクも、そろそろ動くとするよ。」

 

 

………………。

 

 

……。

 

 

意識を座標から現実へ起こすと、

一同が緊迫した顔付きで

辺りを周辺警戒していた。

 

思わず気になって、訊き込んでみる。

 

「タマ氏、これは一体……」

 

「なんというか……

静か過ぎます……。」

 

確かに、言われてみれば

静か過ぎる気もする。

 

嵐の前の静けさ……

という奴だろうか。

 

どちらにせよ。

自分がその嵐に

飛び込む事は決まっている。

 

その先の空が晴れていたのなら、

ボクの役割は、それで充分だから。

 

「早朝だからそんなもんじゃない?」

 

ルカ氏が眠た気に

タマ氏の発言に答えた。

 

「でもまぁ、散歩がてらに

様子でも見ていこうぜ。」

「はい!」 

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

 

━━▶︎ DAY25 5:00

 

「こっちです。ナンジャモさん!」

 

道中、司令部より

オペレーション・プレアデスの

破棄司令、及び

新種キャンサー接近の報告があった。

 

RED Crimsonと呼称された

新種キャンサーとの交戦。

それがボクらに

新しく課せられた任務だ。

 

今は移動指示に従って動き、

丁度ポイント・アルファまでの

移動を済ませた所だ。

 

「うん。案内ありがとう。

少し余裕が出来たみたいだし、

一旦、司令部に報告を入れよう。

えりか氏、頼める。」

 

「任せてください。」

 

えりか氏が了承し、連絡を繋げた。

 

「……31B蒼井より司令部、

31Aと指定ポイントに移動しました。」

 

『こちら司令部、RED Crimsonとの

接触まで残り8,900です。

そちらからの視認は可能ですか?』

 

「……難しいです。

現在地の視界が開けていない為、

明確な視認が出来ません。」

 

『了解しました。

北西方向に移動して視認が可能か

試して下さい……。』

 

ジジッ……。ドドドド……。

ボゴォォンッ!!

 

通信に急なノイズが奔るのと同時、

地響きと揺れが発生した。

 

グギュグバァッ!!!

 

遠方にいるとは思えない、

大きな咆哮が耳に入る。

途端、ここにまで届く熱波が

吹き始めた。

 

燃えたであろう木々から

漏れる焦げ臭さが、

此方の鼻腔まで来る。

 

どれほどの範囲が

この一瞬にして

燃やし尽くされたのだろうか。

 

おそらく。ボクらの想定を

遥かに上回るレベルで、

これから接触する敵は強大なのだろう。

 

「何事だ!?」

「攻撃かもしれません!!」

 

『手塚よ。周辺の状況を

報告しなさい。』

 

「何が起きたか分からない。

爆発音がして、地面が揺れたんだ。」

 

『司令部が観測した結果を伝えるわ。

RED Crimsonの砲撃により

泰野北部に設置済の無人観測機が

消失したわ。』

 

「「………………。」」

 

『砲撃の威力、射程は

これまでのキャンサーとは

一線を画すと推定されます。

よって、司令部はRED Crimsonの

緊急排除を決定したわ。』

 

そうなる事は、

周りの誰もが察していた。

 

『31A、31B両部隊に命じます。

蒼井さんの盾で敵の攻撃を防ぎつつ、

トランスポートでRED Crimsonに

接近し、これを討伐しなさい。』

 

「え、それって

無謀なんじゃねーのか……。」

 

諦観気味に、ルカ氏が問いかける。

が、手塚氏は平然としたまま

淡々と応えた。

 

『勿論危険は伴います。

ただRED Crimsonの進路から

防衛ラインが突破されれば、

複数のドームが壊滅するわ。

その犠牲は我々には見過ごせない。

……そう判断したの。』

 

「和泉だ。横から悪いが、

増援はどうなるんだ?」

 

『悪いけど、あなた達2部隊だけよ。

他部隊は撤退か、

射程距離外に退避させます。』

 

「……あたしらだけで討伐ってのは、

それなりの理由があるんだよな。」

 

『そうね。時間と無理な増援で

犠牲を増やさない為よ。』

「ちっ、想像通りか。」

 

ユキ氏が舌打ちし、

より険しい表情となった。

 

対してルカ氏は、

あっけらかんとした状態だ。

 

「どういうこと?」

 

「要は増援を出すのが

悪手だったって事だ。

実際集まる時間もないし、

蒼井の防御がなければ

撃たれて終わりだからな。」

 

『その通りよ。司令部は

最も犠牲が少なく且つ、

成功率の高い作戦を採用したの。

……ただ。本作戦の要は

蒼井さんの盾による防御力。

だから、討伐が上手くいくかどうかは

攻撃の役割を持つあなた達次第。』

 

「…………。」

 

『厳しい戦いなのは否定しない。

無理強いもしない。

その場合は、

別の策に切り替えるつもりよ。』

 

「いいえ、やります!

やり遂げてみせます!!」

 

『ナンジャモさんはどう?』

「ボクも、

最初からやるつもりだったよ。」

 

予言の未来を変えたいのなら、

この場で交戦を諦める……

という選択肢は無い。

 

絶対にみんなを救ってみせる。

 

その先がどうなろうと、

どんな罰が自分に下ろうとも、

それが……ボクの選んだ道だから。

 

――心してほしい……

その禍々しき楔は、

いずれ貴様から『全てを奪い去る』――

 

――じゃが、一度きりの大博打じゃ……

失敗は許されんぞ。――

 

分かってる。全部。

それぞれが真摯にくれた忠告も。

全部、手に取るように思い出せる。

 

だけど、ボクは進むよ。この道を。

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

 

開けた場所へと移動して早々、

えりか氏が逸早く敵影を捉えた。

 

「目標の咆哮! 

距離約5,000メートルです!」

 

「近いっ! 気づかれたかも!」

「いちごさん、すももさん!

注意をこちらに向けます。

戦闘準備をお願いします!」

 

「待て! なんか溜めてやがるぞ!!」

「……口を大きく開けてるにゃあ!!」

 

「気をつけろ!! 

すげーのが来るぞ!!」

「ヴァウウウッ……!」

「……っ!!」

 

『……来るぞ。小娘。』

 

(知ってるよ。イッシキ氏。

だから……使わせて貰うよ。

楔の力を。)

 

『ほう、楔の特性を既に

理解してるようだな。

……やってみろ。』

 

思い出すのは、

アマド氏とのやり取り。

 

――自然発生以外のエネルギーを

吸収して、自らのエネルギーに

還元する能力があるんだ。――

 

――楔に、そんな力が……。――

 

初めはボク自身も

信じられなかったけど、

ボルト氏との長い修行で

ようやく形になった。……楔の力。

 

「みんな! 伏せてくれっ!」

 

ボクは即座に先頭へ移動して、

楔を構えた。

 

「ナンジャモ! 

またあの時と同じ事をするのかにゃ!

絶対に無茶だにゃ!!」

 

「無茶なんかじゃないよ。

すもも氏。

それにみんな……信じてくれ。」

 

 

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