ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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37話・楔の特性

 

 

シュゥウウウッ……。

 

楔が紅く明滅し、

ヒリヒリとした熱みを帯びる。

 

どうやら、 

楔によるビームの吸収は

成功したようだ。

 

「「「「「――ッ!?」」」」」

 

当然この力は座標内以外で

一度も使った事ないので、

みな一様にして

驚愕するのも無理はない。

 

けれども、今回の敵は格が違う。

力を出し惜しみしては

勝てる戦いも勝てない。

 

「何なんだよ……今のは?

一体何が起きたって言うんだよ……」

 

「あれ程強力な砲撃を、

盾型セラフを

使わずに防ぐだなんて……

蒼井も聞いた事がありません。」

 

ルカ氏とえりか氏が

困惑を強めてく中、

聖華氏が眼鏡をクイっとした。

 

「いいや、違うな。

ナンジャモはデフレクタで

攻撃を防いでなどいない。」

 

「……え?」

 

「どういう原理かは知らんが、

『吸収』したんだ。『楔』の力でな。

ふふ……実に興味深い。 

ナンジャモ、

この戦いが終わったら

私のラボに来てくれ。

益々興味が湧いてきた。」

 

「ふっ、なるほどね。

エリート諜報員であるわたしも、

そう考えていた所よ。」

 

いや。

多分つかさ氏の発言は

あからさまな見栄張りだ。

 

取り敢えず、このお喋りを

続けていられる状況でもないし。

今は敵を倒すことだけ考えよう。

 

「2人の発言通り、ボクには

敵のビームを吸収する力がある。

相手が放つビームは

この力でボクが全て捌くから、

みんなは一気に距離を詰めてくれ!

――行動開始!」

 

「「「「「――了解!!!」」」」」

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

 

作戦通り事は進み。

ようやくRED Crimsonを

部隊の攻撃射程内に捉えた。

 

 

――グギュグバァッ!!!

 

何度もビームが防がれた事に

ご立腹なのか。

 

対峙するRED Crimsonは、

大きめの咆哮を

こちらに浴びせてくる。

 

「へっ、気に入らねーのは

こっちも同じだっつーの。

……ナンジャモ、どうする?」

 

ルカ氏が指示を仰いだ。

 

「強力な個体とはいえ、

何度もビームを撃ってるんだ。

そうすぐに乱発は出来ないと思う。

一気に畳みかけるなら今しかない。

ボクが指示を出す。

やるよ……みんなッ!」

 

「「「「「――了解っ!!」」」」」

 

先ずは相手の外殻の破壊からだ。

水瀬姉妹の瞬発的な高火力を

同時に放てば持っていける。

 

その前段階として……

 

「つかさ氏、聖華氏は部隊全体に

支援バフを付与してくれ!」

 

「分かったわ!」

「良かろう……『ドーピング』」

 

「願いよ叶え! いつの日か……!

――Oh Yeah★」

 

「うぉぉおお! 

力が漲ってきたぞぉ!」

「そのダサい

オーバーリアクションやめろよ月歌。

あたしまで恥ずかしくなるだろ。」

 

これで準備は整った。

後は叩くのみだ。 

 

よし、口が開き始めた。

攻めるなら今だ。

 

「いちご氏、すもも氏!

2人は最大火力で挟撃を

叩き込んでくれ!」

 

「おうよ!」

「分かったにゃ!」

 

2人は左右に敵を挟み、

3点のエネルギーを蓄積させる。

 

「退屈凌ぎに派手なのいくにゃ……」

「お前は今から塵となる……」

 

「――にゃっ!!」

「――これでなァッ!!」

 

2人の蓄積されたエネルギーが、

一点に収束し、敵に襲いかかる。

 

バリイィィィン!! 【BREAK】

 

「グギャガガァッ!?」

 

「怯んだ! この隙を狙うよ!

ビャッコ氏、レイジングクロー!

カレン氏、ブラッディ・ダンス!

ユキ氏は牡丹で頼む!!」

 

「ヴァウウッ!」

「切り刻ぁむ切り刻ぁむ

……切り刻ぁむッ!

――カレンちゃんでしたァア!!」

 

「何もない夏だって……?

こうすりゃあ――2人だけの花火さ。」

 

3人の激しい連続攻撃により、

内殻までもが土砂崩れのように

剥がれ落ちていく。

 

バリイィィィン!

 

あと一息だ。

あと1発さえ叩き込めば確実に……

 

「このまま行ったりましょう……!!」

 

「――待ってくださいっ!

RED Crimsonの様子が変です!」

 

えりか氏が、

何か異変に気づいたみたいだ。

 

その予感は当たり。

 

敵は崩れ落ちるような姿勢を

とったかと思いきや、

再び立ち上がった。

 

そして頭部を開き、

エネルギーを収束し始めた。

 

そのエネルギーの塊は、

対峙するボクらの視覚だけでも

充分に分かる危険な代物だった。

 

「待て! これ以上はもう限界だ。

月歌、撤退するしかねぇ!!」

 

「無理だ! 避けられる距離じゃない!」

 

「死ぬぞ、ここで!!」

「くっ……。

(もう、方法はないのか……。)」

 

「諦めないで下さい!

蒼井がみんなを守ります!」

 

――ドクンッ!!

 

これは……イノセント・ワイルドの

発動と同じ……『秘術の予兆』だ。

 

そうか、これが予言の未来か。

今がその『分岐点』。

 

会いに行こう。

 

瞳を閉じて、干渉する。

 

この素足に伝わる、砂の感触。

……うん。成功だ。

 

「只ならぬ事態になったな。

……小娘。

あの攻撃をどう捌く気だ?

それとも、身体をこの俺に

明け渡す気になったか?」 

 

「…………。」

 

イッシキ氏は、余裕綽々と

ボクに問いかける。

確かに、彼に今すぐ明け渡せば

解決する話だろう。

 

だからといって何も考えずに

明け渡せば、

予言の変化を起こせなくなる

可能性がある。

 

あの予言は

ボク自身の手で変えなければ、

何の意味もない。

 

「黙り込んでどうした?

……因みに言っておくが、

今の貴様の練度では、

あの攻撃を先程のように

吸収する事など出来ん。

塵となって死ぬだけだ。」

 

「……だろうね。」

「諦観したか? 

なら、その身体を今すぐ明け渡せ。

俺が解決してやる。」

 

「――断る。」

 

そうだ。今は明け渡さない。

明け渡さずに解決する方法を、

今の今まで準備していたのだから。

 

「そう答えるって事は、

貴様なりの

解決方法があるって事だな。

それは何だ?」

 

「あるよ。

ボクには吸収し続けた

ビームのエネルギーが

楔に蓄積されている。

だからこそ、出来る手段だ。」

 

「……ほう。」

「だけどそれじゃ足りない。

この窮地を乗り越えるには、

イッシキ氏の協力も必要なんだ。」

 

「協力だと?」

「これを見てほしい。」

 

ボクは片手にエネルギーを

収束し、乱回転させる。

 

「その術は……うずまき・ナルトの

使っていた『螺旋丸』か。

どういう経緯で体得したかは

知らんが、今は

目を瞑っておいてやろう。」

 

「ボクは、この螺旋丸で

敵の攻撃を相殺したい。

力を貸してくれないか……イッシキ氏。」

 

「前にも言った筈だ。

貴様は俺の貴重な器であると。

そう簡単に死なれては困る。

不本意ではあるが、手を貸してやる。」

 

「ありがとう。」

 

 

…………………………。

 

 

…………。

 

 

座標でのやり取りは上手くいった。

後は、全てを片付けるだけ。

 

えりか氏は歩を進め、

一同の先陣に立った。

そして、手を横に薙ぐと。

 

セラフが旋回しだした。

 

(今だ。)

 

 

「――インビ……」

 

――ギインッ!

 

えりか氏のセラフを、

秘術・少名毘古那で縮小する。

 

「――え?」

 

「何ッ!?

蒼井のセラフが突然消えたッ!!

クソっ! さっきから何なんだよッ!」

 

いちご氏が愚痴を溢し、

握り拳を強く締める。

 

しかし、これも必要な工程だ。

えりか氏がこの先も生きられるように。

 

バッ!

 

「――!?」

「……そこまでだ。『蒼井・えりか』。

………………ひひゃっ。」

 

困惑するえりか氏を捕え、

カレン氏が鎌の切先を首元に寄せる。

 

「おい殺人鬼テメェ!!

お前の仕業かッ! 何の真似だッ!

この期に及んで

蒼井に何がしテェんだよッ!!」

 

カレン氏は、いちご氏を一瞥し。

狂気的に笑った。

 

「ひひゃ……ひゃーっひゃっひゃあ!!

ワシの殺戮衝動が高まった迄よォ!

……おっとォ、妙な動きは取るなよ。

この女の首から出る血飛沫が

見たく無かったらなァア!

あひゃひゃひゃひゃひゃああっ!!!」

 

「畜生っ……!

何処まで腐っていやがるッ……!」

 

いちご氏が自分の無力感に

苛まれながら、また愚痴る。

 

「何やってんだよカレンちゃんっ!

あたし達仲間だろ!!

こんな事していいのかよッ!」

 

「仲間だとォ……?

茅森、何を言ってるんだ貴様は?

ワシは貴様らの仲間になった

覚えなどないわ。……忘れたか?

――ワシは只の殺人鬼よォ!

あーひゃひゃひゃひゃぁあああっ!」

 

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