━━▶︎ DAY1 10:30
「ふぃー、疲れた。
ひたすら座って話聞くとか、
あたしにゃ合わないんだよ。」
「……の割には、
結構頑張ったんじゃねぇか。茅森。」
「何ユッキー、肩揉みでもしてくれんの?」
「やらねぇよ。」
今回は、ルカ氏に激しく同意だ。
アカデミーの1授業より、
遥かに叩き込まれる情報量が多かった。
アカデミーを卒業し、
ジムリーダーに就職してからというもの。
座学に触れる機会が滅多になかった。
それもあってか、
長ったらしい座学によって大分疲労している。
軍関係者以外の民間人は、
ドームという場所に避難している事。
電子軍人手帳を用いた
コミュニティアプリや通信機能がある事。
各部隊の部隊長が、
プロフェッサー制度によって
任意の隊員と任務などを行える事。
思い出すだけでも、
具合が悪くなりそうな情報量だ。
だが、これはスケジュールのごく一部。
日が暮れる訳でもなく、
わずかな休憩が終わればすぐに続きが来る。
「みなさん。休憩時間はそこまでです。
次はアリーナでの模擬戦を行います。
私が案内しますので、ついて来てください。」
「えー、もうちょっと休ませてよななみん。
あと3分、3分でいいから!」
「みっともない駄々捏ねるなよ。」
「では、ついて来てください。」
特にルカ氏を味方する事もなく、
ななみ氏は歩き始めた。
このままボクたちも
ルカ氏の気持ちに流されれば、
担当から手痛い罰をもらいそうだ。
「みんな、行こう。」
「ほら、隊長もこう言ってんぞ。」
「……分かったよ。」
なんとかルカ氏を説得して、
アリーナという場所に辿り着いた。
中では既に、手塚氏が待機していた。
「ようやく来たようね。
ここはアリーナ。
構築された仮想空間で擬似キャンサーと
戦ってもらう場所よ。
ラジオ体操で体を慣らしたのち、
すぐに起動するから、覚悟なさい。」
「う……駄目……」
「ん? どうした、かれりん?」
なんだか、可憐氏の様子がおかしい。
「は……ひひゃ……
ひひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……!!」
「唐突に笑い出して、どうしましたか。」
「そろそろ表に出んと、我慢ならんわーー!!」
「何これ……本当に朝倉さんなの?」
「そうだ諜報員……
あんな凡人とワシを一緒にするでない……。」
「誰なの……あなた……」
「ワシか……?
ワシは、カレンちゃんでぇぇええす!!」
ルカ氏がボクを
庇うように移動して構えた。
「そう簡単にナンジャモに
手は出させやしないよ。――うちはマダラ!」
「だったらさっきの
ワシのセリフは聞いておろう。
このうちはマダラには一切の攻撃が通じないと。」
そんな事言ってたっけ?
「やはり……うちはマダラか……!?」
「あなたが朝倉さんの身体を乗っ取ったのか
演技なのかは分からないけれど……
ナンジャモさんに手を出す時は
スキが出来る。
だから、そこを狙わせて貰うわ。」
なんでボクが狙われてる前提で
話が進むんだろう。
「ククク……
ワシは別に簡単にいくと思ってないわ。
ワシにも計画ってのがあるからなぁ……ひひゃ。
それよりも今は、話がしたい。」
「話だと?」
「そうだ……一時期お茶の間を震撼させ、
冥府の彼方からやって来た悪魔こと、
サイコキラーのカレンちゃんでぇぇええす!!」
「なんでちょっとヒットナンバーを
紹介するDJ風なんだよ。」
「サイコキラーカレンちゃんといったら、
当時相当話題になったよな。」
「いや、さっきまで
うちはマダラとか言ってただろ。
何しれっと
カレンちゃんとして話進めてんだよ。」
「学校サボってもさ、
ワイドショーそればっかやってて
すげー退屈だったのを色濃く覚えてるよ……。」
「覚え方が怠惰だな。」
「曲を作りながらだよ!!」
「あーあー、それはすまなかったな。」
「さて、殺しの時間か……
いっちょ派手にやってやるぞい……。」
「ふっ、殺人鬼がなんだって言うの。
その程度でエリート諜報員に敵うとでも?」
「ではみなさん、電子軍人手帳をかざし、
セラフィムコードを唱えてください!」
*
━━▶︎ DAY1 12:30
「ぜぇー、ぜぇー。もう……いいだろ。」
「茅森さん。これくらいで
音を上げてもらっては困るわ。
実戦は更に過酷な状況が継続するのよ。」
疲労困憊のルカ氏に、
容赦なく現実を突きつける手塚氏。
……世界は、残酷だ。
「ぐえー。海上訓練より効きまするぅ……。」
「元艦長なら、もうちょい根性見せろよ……
確かにキツいのは同意だが……。」
タマ氏やユキ氏も苦しそうだ。
「どっ、どうよ……
エリート諜報員の底力……ケホっケホ!」
「ひひゃ……どうやら
認めるしかないようじゃな……ケホアっ!」
「なんで開幕一番カッコつけた奴らが
一番疲労してんだよ。みっともねーわ。」
「……まぁ、初めてはみんな、こんなものよ。
初戦の模擬戦闘にしては、中々に良かったわ。
これは5日後の適正試験が楽しみね。」
「え……そんなものもあるの?」
「勿論あるわよ。ナンジャモさん。
最終目標は、実戦投入ですから。
実戦に足る基礎戦闘力等を
この1週間で叩き込むのが重要なの。」
「つまりは、まだチュートリアルって事ね。」
「えー! やだやだやだー!
もっと緩めなチュートリアルに
してくれなきゃやぁだぁー!」
「小学生かよ。」
「茅森さん。それ以上吠えるなら、
あなただけに
たっぷり補習時間を上げてもいいわよ。」
「すんません。」
「ビビリかよ。」
「七瀬、アナウンスお願い。」
「皆さん、午前課業お疲れ様でした。
一旦ここで区切りをつけ、
90分の昼休憩を設けます。
カフェテリアで昼食し、備品確認、
デンタルケア等を済ませて
午後の課業に臨んで下さい。」
「ありがとう七瀬。
さて、アナウンスはここまでとなるけど、
今あなた達から何か聞きたいことはある?」
「ほいほいしつもーん!」
「どうぞ。茅森さん。」
「午後の課業ってどんなのやんのさ?」
「やる事は至ってシンプルよ。
クラスルームで90分の座学と、
ジム施設で90分の体力作り。その2点。
午後の課業はそれのみ。
無事終われば、自由時間が
消灯時間まで与えられる。」
「無事終わらなければ……?」
「勿論、その自由時間すべてが
補習課業に充てられる。
課業中の過度な私語や態度、居眠りなどが
目立てば、無事じゃ済まない事を覚悟なさい。」
「うちはマダラとかも、
その対象となり得ますので
気をつけてください。お身体に障りますよ。」
「お前もナルトス語録好きなのかよ。」
手塚氏に追随するよう、
ななみ氏も注意を促した。
「うへー。」
「ほら、行くぞ茅森。
ご飯食えば元気出るって。」
「やだ。名前で呼んでくれなきゃ行かない。
元気でない。」
「はぁ!? なんでそうなる……!」
2人の間から、甘い空気が流れ始める。
その他の一同は、あらあらといった様子で
ユキ氏を見ていた。
「……2人とも。
そういうのは他所でやりなさい。」
「くっ……司令官まで。
わーったよ! 行くぞ月歌、これで満足か!」
「うん♪」
気恥ずかしい空気をどうにか誤魔化して、
ボクらはカフェテリアへと向かった。
カフェテリア内では、今朝
起動していなかった券売機が稼働していた。
真っ先にテンションを上げたのは、
ルカ氏だった。
「うおっ! 昼飯選び放題!?
最高じゃんか! これで
うなチー牛のり弁出来るんじゃねぇか!」
「GPもさっきのアリーナ報酬分しかないから、
程々にしとけよ。」
「へーい。」
少し不満そうに返事を返すルカ氏。
そこで何か閃いたのか、可憐氏が挙手をした。
「色々混ぜたい気持ち……あたしもわかる。
でもユキさんの言う通り、
初日のアリーナ報酬じゃ無理があるし、
みんなで大きめなピザを
シェアするとかどうかな?」
「いいねそれ……名案だよかれりん!
なぁナンジャモ!」
部隊長として、ランチタイムの提案を……
舵切りを任された。
当然、ボクの返す言葉は決まってる。
できる事なら、
みんなともっと仲良くなりたいから。
「そうだね! みんなでお昼にしよう!」
「「「「「おーー!!!」」」」」
どうも、たかしクランベリーです。
尺の都合により、
本編より早めにカレンちゃん登場です。
やはり、、、うちはマダラか、、、!?
ではまた明日も、お会いしましょう。