━━▶︎ DAY5 17:30
あれから、あっという間に時が過ぎた。
仲間と過ごす日々が
あまりにも充実してて、時間さえ忘れていた。
気が付けば、
手塚氏の言っていた適正試験の日も
目前に差し掛かっていた。
そんな自由時間の中で。
「ねぇねぇ、みんなこれから暇?」
ルカ氏が一同に問いかけた。
そして、ユキ氏が正直に答えた。
「訓練でへとへとだわ。」
「うそーん。みんな夕食食べて
元気でたんじゃないの?
みんな歯磨きうがいして
さっぱりしただろ?
……な? 行こうぜ。」
「言葉の上下関係が意味不明だわ。」
「まあまあ、そう言いなさんなって。
トレーニングより楽しい事があるって事、
教えてやるからさ。」
「特に楽しいと思って
やっているわけではありませんが!!」
「一体、なんなの……?」
「ちなみにみんな、楽器の経験は?」
「一切ない。」
「ですね!!」
「ゲームばっかしてたし。」
「ピアノなら、小さい頃に習っていたけど。」
「ボクは楽器というか……
DJ機器の経験があるくらいかな。」
何かを確信したように、
ルカ氏が口を開いた。
「勝った。ありがとうございます。
この勝負、もらいました。」
「じゃあ、きっと東城とナンジャモが
頑張る何かなんだな……。可哀想に。」
「ええ……?」
*
ルカ氏の案内で連れてこられた場所は、
ナービィ広場から分岐する小道の中奥。
裏通りのその先。
緑生い茂る場所の少し奥で、
怪しい木小屋が建っていた。
「……何だこの木小屋?」
「まぁ、入って入って。」
「入って大丈夫なのか。
今にも崩れ落ちそうだぞ……」
「なに臆病風に吹かれてるのかしら?
エリート諜報員である
このわたしがいる限り、
何も恐れる必要はないわ。」
「お前がその発言する方が一番こえーわ。」
一同は困惑しながらも、
彼女についてって、例の木小屋へと入った。
「ここでーーーす!」
「え? なんだよ、ここ……。」
「ドラムがあるね……」
「これはキーボード……!!」
「ギターとベース、DJ機器もある!」
「いつでも使えるように手入れしておいた。」
「しておいた!? いつの間に!?」
「昨日。」
「つまりこのキーボードで、
東城が何かを弾いて……あのDJ機器で、
ナンジャモがサウンドを付加する。と、
そういうことか。」
「そう。2人は経験済みの楽器で
演奏するってわけさ。」
「まるで他の担当も居るみたいに言うな。」
「ユッキーはドラムな。」
「お前と出会ってからは驚きの連続だ。
なぜそんなことをさせられる。」
「ずっとパソコンの
キーボード叩いてたんだろ?
ドラムとあんまりやってること
変わらないじゃん。」
「全然ちげーーよ。どっちかというと
キーボーディストに近いだろ。」
「キーボーディストはつかさっちで
先に埋まったんだ。ごめん!」
「まるであたしが
やりたかったみたいに言うな。」
「ドラムは一番誰もやりたがらないんだよ!
頼む!!」
「そんな頼み方でOK!
と快諾されると思うか?」
「だってさ、ドラマーのカッコよさは、
そのままバンドのカッコよさなんだよ!」
「なぜそれを先に言わなかった。」
「よし、オッケーってことだな。
ギターはあたしがやるとして……そうだな。
オタマさん。ベース頼めるかい?」
「はい! どんな音がするかも
想像つきませんが、やってみましょう!!」
「そしてボーカルはかれりんだ!
これでバンド結成!!」
「えー!!」
「ユッキーはボーカルじゃねぇよ。
ドラムだよ。」
「だから驚いてんだろ。
いつやるって返事した。」
「さっき。」
「ああーー!! 現実に
バックログ機能搭載してくれぇ!
時間巻き戻して返事してねぇこと
証明してやりてぇーー!!」
うん。
間違いなくそんな返事はしてない。
「ボーカルはルカさんがやるべきよ。
あたしなんか、とても務まらない。」
おどおどした様子で、
可憐氏がルカ氏に告げた。
……しかし、ルカ氏は首を横に振って
彼女に返事をかえした。
「違うんだ。あたしがボーカルじゃない
バンドをやってみたいんだよ。」
「は? なんでだよ?
それも、バンド解散と関係あるのか?」
「いや、別に歌いたい訳じゃないんだけど、
誰に向けて歌っていいのか
よく分からなくなっちゃっててさ。」
「少なくとも、あたしは聴いてみてーよ。」
「あたしも。」
「なあ……信じてないわけじゃねーんだけど、
ちょっと歌ってみてくれねーか……?」
「適当でいい?」
「ああ。」
瞬間、場の雰囲気が変わった。
ルカ氏は静かに息を吸い。
喉から出る音階を徐々に
整え上げて、披露した。
「んーんーんーんんーんーんー♪
あーあーああーあーあー♪
あーあーあーあーはああー♪」
思わず息を呑む美声。
ユキ氏やつかさ氏の言っていた伝説の意味が、
ようやく理解できた。
ライムさんの刻む的確な音韻や迫力とは違う、
スーッと染み渡る、丁寧な声遣い。
「上手すぎる!」
「すごい!」
「…………」
「めっちゃ上手い!」
「やべー……鳥肌たった。本物じゃん。
やっぱお前が歌うべきだと確信した。
勿体なさすぎる。」
「それだとSea is Legend時代と
変わらないんだよなぁ。」
「なら、ツインボーカルにしたら?」
「その発想はなかった! いいかも!!」
「月歌さんとあたしが?」
「うん。嫌?」
「やるーーー!!!」
*
「ふう……」
「みんな、すごい……!
朝倉さんも、プロ並みに上手い!」
「さすがにそこまでじゃ。」
やっぱり、音楽って楽しいな。
DJ機器に触れるのも
ライムさんとのコラボライブ以来だけど、
この爽快感は、
いつまで経っても色褪せないや。
「最後のほう、なんだか気持ちよかったです!」
「……だな。全く、何が起きたのやら……」
「すげぇケミストリーが起きたのさ。
こんなすぐに一つになれちまうなんて、
やっぱ音楽って最高だぜ……。」
「…………。」
「ユッキーは?」
「……悪かったな。」
「え? 何落ち込んでんの?」
「リズムがよれよれで悪かったな。
って言ってんだよ……。」
「初めてだろ? それだったらすげーって。」
「ま、二度と叩く事はないだろうから
いいけどさ。」
「え? 続くよ?」
「練習を続けていくってこと?」
「やっぱ人をノせてなんぼだから、
その快感をみんなにも味わってもらいたい。」
「遠慮する。」
「え……こんな楽しかったのに……。」
「タマ氏……」
「あたしも、ゲームの世界に閉じ篭もる
毎日だったけど……
こんな世界、初めて知った。出来れば……
ライブしてぇぇええーーー!!!」
「わたしは、この程度の伴奏でよければ
可能だけど。」
「よし、じゃあまず一曲演れるように
練習していこうな。」
「訓練だけでも大変だってのに、
なんてこった……」
「やってやりましょう……!!」
「すごい……今から緊張してきちゃう……」
「演る曲は?」
「デンチョで検索したら
バンド譜あったんだよなー。
みんなも検索して、
『Burn My Soul』って曲。」
何か気付いたのか、
ユキ氏が信じられない様子でルカ氏に問う。
「待て、それってShe is Legendの
ヒット曲じゃねぇか……。」
「さっすがユッキー。ナーイスハッキング!」
「ハッキングしてないわ。知識だわ。」
「待って、そんな本家のボーカルが居るのに
あたしたちが演るだなんて……
超楽しみぃーーーーー!!!」
「下手な演奏は聴かせられないわね……。」
「She is Legendのコピーバンドに、
どうして本物が1人混じっているんだよ……。」
「別にいいじゃん?」
「プレッシャーがすごいわ。」
「受けて立ちましょう!!」
「よし、その意気だぞオタマさん!
みんなもこれから頑張ろうな!
以上! 解散っ!!」
*
━━▶︎ DAY5 19:15
ルカ氏の強制イベントも終わり、
何をしようかとカフェテリア周辺を
3分ほど彷徨っていた。
と、狙ったかのようなタイミングで
電子軍人手帳が鳴った。
ふと手に取ると、内蔵されていた
コミュニティアプリ『RINNE』に
未読アイコンが1通来ていた。
すかさず、そのアプリを起動してみる。
「誰だろう。――ッ!?」
どうも、たかしクランベリーです。
アニメBORUTO最新話の
カッコいいバトル作画や、
ナンジャモのフィギュア化決定。
嬉しいことばかりだけど、
もう話すネタも尽きてきました。
しばらくの間、この後書きコーナーも
おやすみしようと思います。
ではまた明日、お会いしましょう。