ナンジャモと大筒木の居るセラフ部隊   作:たかしクランベリー   

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6話・宝探しと事故(パルデア軸)

 

━━▶︎ DAY5 19:20

 

ザッ。

 

「待ってました。ナンジャモさん。」

 

RINNE越しで呼び出された場所は、

ナービィ広場の木製ベンチ。

 

呼んだ当人は、ズレた帽子を被り直し

隣に座るようボクに促した。

 

「どうしたの、タマ氏?」

「そっ、そんな大袈裟な話じゃないです。

ただ、ナンジャモさんと他愛のない話を

したいなー。と。」

 

「ボクよりもお話上手な仲間がいた気がするよ。

ルカ氏とか、つかさ氏とか……

ま、ボクが付き合える範囲でならいいけど。」

 

「それでもです。」

「例えば、どんな話?」

 

「そうですね……

例えば、楽器経験の話しです。

つかささんは習い事って事で

分かりやすいんですけど、

DJ機器ってあんまり触れる機会

無くないですか?」

 

確かに、当たり前のように言ってたけど

周りからしたら

不自然な楽器経験かもしれない。

 

何から話したらいいものか……

 

「うーん……」

 

「もしかしてナンジャモさん……

パリピっていうやつでしょうか?」

「パリピ……とはちょっと違うね。

話すと長くなるけど、いいかな。」

 

「はい。長くても構いません!」

 

長くてもいいなら、話せそうだ。

 

「ボクがまだアカデミーの学生だった頃。

アカデミーに慣れ始めてすぐの事だった。

特別な課外授業が、

校長先生から与えられたんだ。」

 

 

 

 

━━▶︎ DAY??? 10:30

 

在校生全員が、アカデミーのグラウンドに

アナウンスで召集された。

 

爛々と照る快晴の下。

壇上に校長先生が上がりこんだ。

 

「皆さん、集まりましたかね。

それではこれから、

課外授業の説明を行います。」

 

バッと両腕を広げ、校長は力強く言った。

 

「課題のテーマは『宝探し』! 

皆さんには世界を旅して、

自分だけの宝物を探していただきます。」

 

ざわざわと騒めく在校生ら。

それでも、校長の話は続く。

 

「これまで皆さんは学校の中で

多くの知識を学んできたと思います。

しかしこれからは、外の世界にも目を向け

見聞を深めていただきたい。」

 

「…………」

 

「パルデアの豊かな自然、豊かな文化……

そこで暮らすポケモンたち……

そこで暮らす人々……

何処へ行き、誰と出会い、何を成すのか。

それぞれがそれぞれのポケモンたちと

ともに歩き、ともに考え、ともに感じ……」

 

「……」

 

「自分だけの宝物を見つけて

帰ってきてください……!!

課外授業を通して大きく成長した

あなた達に再びご挨拶出来ることを

楽しみにしておりますよ。」

 

「それでは宝探し開始!

……いってらっしゃい!!」

 

「「「「「ぉぉおおおーーー!!!」」」」」

 

一斉に活気づいて郊外へと走り出す学生たち。

ボクはその様子をただ眺めていた。

 

「ナンジャモちゃん!」

「――ッ!?」

 

ボーッとするボクの意識を起こしたのは、

親友のリンちゃんだった。

 

「どうしたのナンジャモちゃん?」

「ごっ、ごめん。突然の課外授業に

驚いて気が抜けてた。」

「うっそー? 担任の先生から

何回も説明あった気がするよ。」

 

「あはは……。じゃあ、ボクが

うっかりしてるだけなのかも。」

 

「もうっ、ホント気をつけてよ。

それじゃ、

わたしたちもみんなに

負けないくらいの宝物見つけちゃお?」

「……だね!」

 

まずボクたちは、

一番近いセルクルジムを攻略した。

ジムテストのオリーブ運びは、

思いの外、何回か転びながらも

ゴールへ運べた。

 

次にリンちゃんがやったけど、

ボクと違い、

全然転ばずスムーズにゴールしていた。

 

悔しいけど、昔っから

彼女の運動神経はやたら高いので

認めるしかない。

 

「くー! またボクの負けかー!」

「いやいや、ナンジャモちゃんも

結構すごかったよ!

あとはジムリーダー戦だね!」

「うん!」

 

…………。

 

……。

 

「あらぁ〜、お二人とも小さいのに

強いわねぇ。私驚いちゃったわ。」

 

ボクたちは2人一緒に、

セルクルジムの勝利写真をゲットした。

 

「いやー、やっぱバトルでは

ナンジャモちゃんが一枚上手だなぁ。」

 

「いやいや、ポケモンバトルなんて 

やればやるほど上手になるんだから、

リンちゃんだってすぐボク以上に

バトル上手くなるよ!」

 

「優しいね、ナンジャモちゃん……」

「そんなことないって。」

 

初ジム勝利の喜びを2人で噛み締めていた

その時、1人の男がボクらに寄ってきた。

 

六角形のレンズした眼鏡を付けていて、

白衣に身を纏った不思議な雰囲気の大人だ。

 

「やぁ、お嬢ちゃんたち。

私は研究者のジニアだ。」

 

「あら、ジニアさん。私に用?」

 

「いいや、今回はカエデさんに

お話ししに来たわけじゃないんだ。

実はポケモン図鑑の定期更新に備えて、

パルデア自然区域の

現状を再度確認したいんだ。

しかし、私も忙しくてね。

ニャースの手でも借りたい状況なんだよ。」

 

「なるほどね……。」

 

「そこでお嬢ちゃんたち。

少し私の手助けをしてくれないかな。

手伝ってくれたら、

お礼として光の石と闇の石をあげるよ。」

 

「手助けというのは?」

 

「西エリア1番にある

岩山の山頂に行って欲しいんだ。

山頂から見下ろした景色や、

登山中の周辺状況を

私に伝えてくれるだけでいい。」

 

「面白そうだね! 

行こうよナンジャモちゃん!」

「うん!」

 

課外授業で外に出たばっかりで、

右も左も分からぬ状況。

 

校長先生の言った通り、

パルデアの自然に

触れる良い機会かもしれない。

 

そうこう考えながら、

リンちゃんとお喋りして

例の山までついた。

 

どうしてだろう。

 

なんの変哲もない岩山な筈なのに、

空だって晴れ渡ってる筈なのに、

寒気を感じてしまう。

 

「ほら、行こうよナンジャモちゃん!」

「わかった!」

 

そうだ。きっとこれはただの杞憂だ。

標高だってそんなに高くない。

この山登りに、危険なんてある訳ない。

 

こんな楽しそうにしてる

リンちゃんに茶々なんか入れくていい。

 

余計な考えをシャットアウトし、

雄大なパルデアの自然を楽しみながら

登っていき、ようやく山の中腹辺りについた。

 

「うーん! ホント冒険って楽しいね!

ナンジャモちゃん!」

「ボクも同じ気持ちだよ!」

 

「それじゃあ、一旦休んじゃ……

――ッ!?」

「どうしたのリンちゃん?」

 

「ナンジャモちゃん危ないッ!!」

 

突然、リンちゃんがボクにタックルし

吹き飛ばす。

状況が掴めないまま

リンちゃんの方を見ると、

丸い巨岩が真上に――

 

ズドオンッ!

 

「リン……ちゃん?」

 

信じられない光景だった。

急いでボクは駆け寄る。

 

嘘だと思いたい。

リンちゃんの半身が、

巨岩の下敷きになるなんて。

 

「はは……ホント鈍感だね。

ナンジャモちゃん。」

 

鈍感なんかじゃない。

彼女の高い危機察知能力と

運動神経がなければ、ボクは死んでいた。

 

「なんで……

なんでボクなんかを助けたのさ!」

 

「それはね……ナンジャモちゃんが

わたしの宝物だからだよ。」

「違う! 

ボクはリンちゃんの宝物なんかじゃない!」

 

「木登りと鉄棒ぐるぐるで一人遊ぶしか

取り柄のない小さくちっぽけなわたしに、

ナンジャモちゃんが手を伸ばしてくれた。

初めての友達になってくれた。

ずっとそばに居て、

わたしのお話に付き合ってくれた。」

 

弱々しく震える手を、ボクは握った。

 

「大丈夫、ボクが救急車を呼ぶから……っ。」

「分かってるんでしょ。

本当はもう間に合わないこと……」

 

「……でもっ。」

 

やだ。こんな終わり方。

 

「もう、お別れだよ。

最後に腰下のポーチから、

わたしのモンスターボール……受け取って。」

 

ポーチから

モンスターボールを取り出した。

 

「ナンジャモちゃんの

好きな電気タイプポケモンじゃないけど、

大切にしてほしいな……」

「……大切にするよ。だから。」

 

「わたしたち、ずっと一緒だから……ね?

わたしとの冒険は、 

この子と一緒にいけば……それでいい。

……さよなら、ナンジャモちゃん。」

 

リンちゃんは、

静かに瞳を閉じて息を引き取った。

 

 


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