せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
夏コミから時間空きすぎ? それはそう。
「はい被撃墜1。まぁ案外持ちこたえた方じゃないか? 実戦だったらこれで死んでたが」
「まず条件が無茶って事を酌んで?」
気が付くと真っ白い空間にいた。上下の間隔も定かでない中、目の前にもう一人の自分、『レオ・シキシマ』がいる。彼も自分も椅子に座っているのは確かだった。その椅子がゲーセン時代のボーダーブレイクの筐体とセットだった合成革張りの椅子というのが何というか心憎い演出だ。
しかしまぁ懐かしい物だ。アーケード版ボーダーブレイクのサービス終了以降ゲームセンターから離れていたこともあって、この椅子に腰かけるのはウン年ぶりのレベルで久しぶりだ。やりこんでいた当初はそれこそ毎日のように座っていたというのに。
「懐かしんでいるところ悪いが反省会の時間だ。
――お前、まだ寝ぼけてんのか?」
一転、殺気すら感じるような鋭い視線に思わず息をのむ。自分でもそれだけの視線を向けられる理由に心当たりがあったからだった。
「その顔、心当たりがあるって感じだな? そうだよ。お前は『ボーダーブレイク』の戦い方に固執してやられた。地べたでしか動けない強化機兵なんて上空から鴨撃ちにできたってのにな」
全くもってそのとおりである。そう、私の機体はゲームとは違う。とっくに飛べるようになっているのだ。いわば私がゼラやジーナといった敵エースのように強化機兵たちを蹂躙できるのに、それをしなかった。
目の前の状況に呑まれて機体のスペックを半分も出せずに撃破される。間抜けと蔑まれても文句は言えなかった。
「やらかしたポイントはもう一つあるぜ。
お前は飛べるんだよ。強化機兵なんざわざわざ狙う必要すらないんだ。飛び回りながらツィタデルの砲台だけ潰せばそれで良いんだ」
「あっ」
目から鱗とはこの事か。
ユニオンバトルに出てくる巨大兵器は高高度からの爆撃も意に介さない程のシールドを上部に展開し、本体そのものの装甲も並みの兵器では傷1つつかない位にはバケモノだ。とはいえそんな巨大兵器も所詮は人が造った物、弱点が皆無な訳が無い。それが本体の外周部に設置されている各種砲台だ。
ブラストランナーの火器でも破壊可能なそれを一定数破壊する。その後、宇宙から投下される衛星兵器『サテライトバンカー』の誘導ビーコンを巨大兵器の真下に設置する、そして発射された衛星砲が巨大兵器を沈黙に追い込んでいる隙にブラストランナー部隊が内部に侵入し、巨大兵器が再起動するまでの間、動力源のコアをタコ殴りにする。動力源となっているだけあってコアそのものの耐久値はかなり高いけれど、同じような流れを2,3回繰り返すことで最終的に巨大兵器を破壊、あるいは時間切れで撤退させることができるというのがユニオンバトルの大まかな流れだ。
またしてもと言うべきか。つまるところ私はまたゲーム時代の常識に囚われていたということだろう。
そう、何も律儀に強化機兵やドローンの相手をしてやる必要なんて無いんだ。今の私は空だって飛べる。同じく飛行可能な特殊強化機兵やエースに気を付けていれば地上の敵はガン無視で砲台の破壊に集中していれば良いのだ。
「理解したみたいだな。なら早速戦線復帰と行こう」
「あぁ」
レオの声に頷くと、生身でいた自分は機体を展開した状態となり、周囲も戦場の景色に変わっていた――
※※※※※
夕暮れに照らされる第3採掘島に炎が躍る。その炎さえかき消すような轟音が、島全体に響いていた。
――ロックオン! ロックオン!
敵機にロックオンされた事を知らせる警報が鳴り止まない。普段であればやられる前にやれと敵機に襲いかかる場面ではあるのだが、今回ばかりは別だ。
「どうしたよエイジェン! お前らの力はこんなもんか!?」
飛行要塞ツィタデルの周囲を貼りつくように飛び回りながら両手に持ったVOLT-Rをひたすらに連射する。本来であれば地上の敵を粉砕していたであろう自動砲台も、その砲身の内側に潜り込まれてしまえばどうにもならない。局所的に吹き荒れらニュードの嵐に翻弄され、爆炎を上げて沈黙する。
「っと、あぶな」
視界の端に何かが光った瞬間に回避行動をとる。それまで私がいた空間を何かが貫き、破壊された自動砲台に突き刺さった。
一部を除いて敵機は地上を這うしかできないが、こちらへの攻撃手段が無くなったわけではない。例えば狙撃兵装持ちの強化機兵が持っている狙撃銃なんかだったら地上からでも余裕で私を狙える。
加えて――
「のわっ!?」
金色のヤクシャが電磁加速砲を放ちながら向かってくる。特殊強化機兵は飛行も可能だ。砲台への攻撃を邪魔されてはいけないと優先的に倒していたが、もう増援が来たか。
「しゃーない、まずはお前らから相手してやるよ!」
これもうどっちがボスか分かんねえな(迫真)
言ってる事は完全にボスキャラのそれなのだが、やろうとしている事も大概ヤバい。特殊強化機兵も飛行が可能ではあるが、ISほどの機動性は無い。囲まれないように気を付けていれば各個撃破は十分可能だ。
そして特殊強化機兵たちは、強化機兵と比べて数が少ない。2機も倒せれば危険性はかなり下がるだろう。
両手に携えたVOLTを撃ちまくる。2丁拳銃は男のロマンだけど2丁サブマシンガンは近接戦における瞬間火力の最適解だ。ニュード属性武器特有の緑色の曳光がレーザーじみた事になっている。1丁でもかなりの高レート武器だったVOLTを2丁持ちすればどうなるか、それは撃墜されて地上に叩きつけられていく金色のヤクシャ達が身をもって教えてくれるだろう。
実を言うとセシリアさんの指導があってなお、私は射撃があまり得意ではない。高速で動き回る的に弾を当てる事の難易度が高いのは当然の話なのだが、相手あっての射撃戦ともなるとその上にこちらも高速で動き回って回避行動を取らないといけない。タイマンでも大変なのに乱戦ともなれば考えなければいけない事は無限大だ。前世のFPSゲームでもスナイパー系の銃はとにかく苦手で、弾をバラまくサブマシンガンを好んで使っていた。
そんな私は強襲兵装の武器ではVOLTが一番好きだ。高レートで弾速も速く、何よりニュードの曳光を目印にする事で修正もしやすい。これがあれば大抵の戦場で何とかなるし、実際何とかしてきた。
思考を逸らすな。目の前の敵に集中しろ。相手は特殊強化機兵、本来だったらブラスト2~3機で囲んで蜂の巣にするような相手だ。最上位の変態達なら鼻歌まじりにタイマンで倒すだろうけど私はそこまでの高みには至ってない。
5~6機は見えた特殊強化機兵も今や3機に減り、追加の増援が来る気配も無いが、油断して無様を晒すのはごめんだ。少なくとも目の前の敵機を片付けてから一息入れるべきだろう。
両手の武装で射撃しながら吶喊。相手もこちらに向けて撃ってくるが特殊強化機兵の持つ電磁加速砲とこちらのVOLTでは射撃レートに大きな差がある。ある程度フェイントをかけてやれば放たれた弾丸の全てを無駄弾にしてやれるのだ。対するこちらは高レート火器の2丁持ちという強みを徹底的に押し付ける。撃った弾の一定数が虚空に消えるが、だいたい7~8割が敵機に命中する。一部は弱点である頭部に命中したのか、敵機が目に見えてひるんだ。
敵機は何とか反撃しようとしたらしいが、2丁のVOLTから放たれるニュードの奔流はそれすら許さない。それなりに硬いはずの特殊強化機兵のヤクシャの装甲が爆ぜ、火を噴きながら墜落していった。これで残りは2機。
3対1でこちらに当てられなかった銃撃が、数が減った上で当てられる筈もなく。残り2機の特殊強化機兵が鉄屑になるまでそう時間はかからなかった。
※※※※※
「さて、お邪魔虫のヤクシャは消えた。残りは本丸を叩くだけ」
地表の強化機兵がこちらに向けて狙撃銃やらガトリング砲を撃ってくるが、動き回っている私に対しては数をバラまくガトリング砲は1発2発当たってもかすり傷だし、狙撃銃やましてショットガンにいたってはかすりもしない。油断しなければ無視して良いだろう。
一歩のツィタデルはまだ複数の銃座が残っているが、明確な脅威となり得るミサイル砲台は真っ先に潰したため、こちらに対してダメージを与えるのはまぐれ以外にはありえない。
「これって……」
『あぁ、お前の勝ちだ』
思わず呟いた言葉に対してもう1人の自分から返事がある。けどそれは死亡フラグっぽいんでやめようね?
『ツィタデルの弱体化を確認した。これよりサテライトバンカーを投下する。
本来なら単機でのコア破壊は難しいが、今回は特別だ。単機でも破壊可能なレベルにしてあるぞ』
「了解した!」
ミニマップを確認するとどうやらサテライトバンカーはこちらのベースに投下されるようだ。となれば弾薬補給も兼ねて一度戻るのが得策だろう。
まだこちらを攻撃しようと地上でわちゃわちゃしている敵機やドローンを見やりながら、ベース方面へと機体を向けた。
※※※※※
『サテライトバンカー、投下!』
オペレーター代わりの自分の声に仮想の空を見上げると、上空から円柱状の物体がスラスターで減速しながら降下してくるところだった。衛星兵器サテライトバンカー、その照射位置を特定するためのビーコンだ。
このビーコンというのが中々に曲者で、ゲームでは両手で保持しなければいけないため持っている間武装は使用できず、かなりの重量物なため機動が制限される上に設置中は数秒間完全に無防備になるという、ハイリスクな物なのだ。
ただしリスクに見合うリターンはあり、一定のダメージを与えた巨大兵器なら一撃で機能停止に持っていけるし、敵コアの至近で起動できた日にはコアの耐久値が面白い勢いで減る様子を見られるだろう。
本来であれば行く手を塞ぐ敵機やドローンをかき分けて巨大兵器の直下に潜り込んで設置しなければいけないこのビーコン。しかし今は違う。
「ヘイヘイどうした! もっとよく狙えよ!」
空を飛べてしまう私は機動力の低下のデバフをほとんど受けない。何せ敵機の射程より高く飛んでしまえば相手にはもうどうしようもないのだから。脅威になるのは狙撃武器を持つ機体だが、どうやら対空目標への対処はプログラムに組み込まれていなかったようだ。その上奴らの持つ狙撃武器は徹甲榴弾を3連射するもの。2発目以降は反動が大きすぎてかすりもしない。
そして、
「OK、タッチダウンだ」
巨大兵器の天板部分に着地してしまえば巨大兵器そのものが盾となるためもうどうする事も出来なくなる訳だ。
『ビーコンの信号を確認した。サテライトバンカーを発射する!』
アナウンスのきっかり3秒後、巨大兵器を光の柱が貫いた。
あまりの衝撃に巨大兵器そのものが地表に向けて沈み込む。――それでも墜落しないあたりどんな動力してるんだという話だが――
潰しきれていなかった砲台が爆散し、地表で右往左往していた敵機やドローンたちに至っては形も残らない。ゲーム画面だったらしばらく敵機撃破の報告が流れ続けるだろう。
光の奔流が収まった時、戦場に動く物は存在していなかった。
一度発射されてしまえばあらゆるものを粉砕する戦略兵器。サテライトバンカーはその威力を遺憾なく発揮してみせたのだ。
ってちょっと待って。巨大兵器ワンパンはおかしくないか?
『はーいそこまで。
本当だったらこの後ツィタデル内部に乗り込んでコア攻撃するところだけど、1人でやっても削り切れるもんじゃないし今日はこの辺で終わるぞ』
どういった仕組みか知らないが、目の前に【圧勝!】と書かれた立体映像が現れる。それと同時に巨大兵器が爆散し――そこで目が覚めた。
「夢……? いや、違うか」
さっきまでしていた事が夢とは思えない。けれど本当に夢だった時にあの経験を忘れても困ると思い、私はメモアプリを立ち上げた。
ちなみにこの後の展開は全く考えてないので原作読んできます