2020/03/28に投稿した物の再投稿です。

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LOG No01
U.C.0087.xx.xx
Confeito near sea space_




Sugar&Rat

 レッドアラート!

 

「ブリッジより各所へ、所属不明艦よりモビルスーツと思われる熱源が発射された。これより本艦は第一種戦闘配置へと移行する。繰り返す、ブリッジより各所へ――」

 

 けたたましいサイレンの音と共に聞こえる放送を耳にしながら、部下であるパイロット二人にモビルスーツへ搭乗するよう命じた。

 自分もモビルスーツへと乗り込み、いくつかの手順をスキップしながら、素早く機体を立ち上げる。

 

「ラット1よりラット小隊へ、これより所属不明のモビルスーツに対し臨検を行う。フォーメイションはアロー。あちらさんと違ってこっちは正規軍なんだ。エゥーゴと分かるまでは撃つなよ」

 

『ラット2、ラジャー』

『ラット3、りょーかいです』

 

 立ち上げた機体を操縦し、ドッグに設置されたエレベーターまで移動させる。

 

『ブリッジよりラット小隊、所属不明のサラミス二隻より発射された熱源は6つ。内2つが高速で本艦へ接近中。ただちに出撃し、これを臨検。敵であるなら排除せよ』

「ラット1、了解」

 

 機体をエレベーターに乗せると、格納庫からカタパルトのある外へと上がっていく。

 辺りに広がる星々の先に敵がいるのだと思えば、鼓動は高鳴り始めた。

 機体の両足をカタパルトへと乗せる。固定した振動がリニアシートまで伝わると、ライト・ディスプレイの表示が、OKに切り替わった。

 

『進路クリア。ラット1、発進どうぞ』

「了解。ラット1、バーザム改。出撃する!」

 

 スラスターペダルを強く踏み込みながらスティックを前に倒すと、抗力で身体が座席に押しつけられる。

 

 星々が後ろへと流れていく風景が映し出されるメイン・ディスプレイから目を外し、レフト・ディスプレイで味方の状況を確認する。

 ちょうどラット2と3のバーザムが、母艦であるシカゴを離れたところのようで、随伴艦であるハーマンからもマウス小隊のジムⅡが出撃しようとしているところだ。

 

 左コンソールのサブ・ディスプレイに表示される、データリンク・モニターへ目をやると、所属不明艦より発射された熱源の内ふたつが、凄まじいスピードで近づいてきていた。

 

『ブリッジよりマウス1、熱源はモビルスーツと判明。機種はネモ・タイプ。先頭の二機は――した、高機動型の――』

 

 突然、通信にノイズが走り、データリンクも切断された。

 

 おそらくミノフスキー粒子が散布されたのだろうが、それでもこちらから撃つことはできない。

 ミノフスキー粒子散布下とは言え、全く通信できないと言うわけでは無いからだ。

 通信が可能である以上、臨検を行わなければならない。

 

「エゥーゴめ……」

 

 規則ではあるが、腹は立つ。不満をこぼしながらも直進していると、モニターの望遠モードで、光点を二つ捉えた。

 

「接近中の機体、ただちに停止せよ。こちらは連邦軍ティターンズ所属シカゴ――」

 

 臨検の旨を伝えようとした矢先、二つの光点は交差するような形で左右へと展開した。モニターを望遠モードへと切り替えて、光点を拡大表示させる。

 

「CG補正」

 

 音声操作を行うと、ぼやけていた敵の姿が鮮明になった。

 

 片方はビームライフル、もう片方はショートバレルのバズーカを装備している。

 しかし、そんなことよりも気になるのは――。

 

「このバインダーは……!」

 

 ジャブロー降下の時にいた、金色のモビルスーツ。忘れもしない、あの化け物と同じ形のバインダーだ。それをネモが装備している。高機動カスタマイズと言うことか。

 

「貴機はコンペイトウ宙域を侵犯している。速やかに停止し、所属を明らかにせよ。繰り返す――!」

 

 左右へと展開した敵機は応答の代わりとして、こちらへビームライフルを向けてきた。しかし、まだだ。まだ撃ってはいけない。

 

 あの演説以来、ティターンズに向けられる世間の目は冷たい物になっている。これ以上、エゥーゴにティターンズ叩きの餌を与えるわけにはいかないのだ。

 

「銃を下ろし、ただちに停止せよ。これは最後通告である!」

 

 射程ぎりぎりの距離まで接近すると、ついに敵がビームを撃ってきた!

 

 敵の指がトリガーに掛かる瞬間に、機体を各部のスラスターを噴かせて、思いっきり急降下させる。

 銃口から放たれた黄色い閃光が、戦闘開始の号令を告げた。

 

「了解した。我々は貴機らを排除する」

 

 見上げるような状態で左右の敵にビームを一発ずつ撃ったが、あっさりと回避されてしまった。

 

 排除すると宣言したはいいが、手練れのネモを二機同時に相手するのは難しい。しかも、高機動型(カスタムタイプ)だ。

 ここは素直にラット2、3の援護を待つのが最良だろう。

 

「ラット1、後退する(OUT)

 

 手足を動かした反作用(AMBAC)で機体を180度旋回させると、敵に背を向け味方機の方向へ走る。スラスターを全開にしているせいで、残燃料を表示するメーターがもりもりと減っていく。

 

 連中も逃がす気はないようで、こちらへと向かってきている。

 黄色いビームとバズーカの弾が、後ろから飛んできた。どの射撃も狙いは正確で、一歩間違えれば死ぬと言う緊張に冷や汗が頬を伝った。

 

「有効射程圏外でよくやる!」

 

 左、右上、右下、左上。細かく不規則に軌道を変えながら、ひたすら逃げる。だが、敵を示す二つの赤い光点と、自分を示す緑の光点の距離は、どんどん狭まっている。

 ビームライフルの予測射程内に入ろうとしたその瞬間、赤の光点はピタリと動きを止めた。

 

『ぎりぎりでしたね、ラット1』

 

 ノイズ混じりに聞こえる声はラット3の声だ。レーダーに表示された、二つの青い光点。友軍のシグナルを確認したことで、自機を再び旋回させる。

 

「ラット1、正対(IN)。左のネモは任せる」

 

 引き返そうと動き始めた右の高機動型ネモに、ビームライフルを放つ。

 

 もう一機の高機動型ネモと合流しようと動く間にラット3が割って入った。

 

 左に展開していた敵機をラット2と3が攻撃しているのを横目にしながら、目の前の敵と距離を詰める。

 

 放ったビームを躱され、反撃で放たれたビームを躱す。互いにライフルの銃口を向け合ったまま、左手でサーベルを抜く。

 

 至近距離で放ったビームを目眩ましに、本命のサーベルを叩きつけた。

 しかし、敵のサーベルに阻まれる。

 

「やはり手練れか!」

 

 互いのサーベルが干渉したまま、回り込むようにバーニアを噴かす。

 月とソロモンの間でサーベルを弾きあい、ライフルを構える余裕もなく、再びつばぜり合う。

 

 幾度かサーベルを交えていると、レーダー上に赤いシグナルが二つ増えた。

 後続のマウス小隊が到着するまで、まだ数分掛かる。

 

 今のままつばぜり合いを続ける余裕が無いと決めると、小指と薬指のファンクションスイッチを押しながら、トリガーを引く。

 すると切り掛かってきた高機動型ネモに、バーザム改が蹴りを入れた!

 

 よろめいた高機動型ネモを両断しようとした時、敵の増援――ネモが放ったビームが、バーザム改の正面を抜けた。

 

 現れた通常のネモは二手に分かれ、ラット2とラット3が押さえていた高機動型ネモの救援にも入ったようだった。

 

 数の不利はそう簡単に覆るものではない。

 ジムⅡ小隊が到着するまで、防戦を行いつつ後退するべきだと判断するのが妥当だろう。

 

「ラット1よりラット小隊。後退せよ(OUT)

『ラット2、了解』

『ラット3、了解』

 

 さすがに余裕がなくなってきたのか、お調子者のラット3の返事が短い。

 

 放たれるビームを躱しながら、サーベルの刀身を縮めてシールド裏に隠し、逆手へと持ち直す。

 

 高機動型ネモのリロードをカバーするように、ネモが立ち塞がってきた。

 

「そこだッ!」

 

 飛び出してきたネモにビームを放つ。

 シールドに守られていない脚部にビームが命中すると、ネモは一瞬バランスを崩した。

 

 好機を逃がす筈がない。

 

 頭部バルカンポッドを撃ってやると、慌てたネモがビームライフルを乱射し始める。

 

「うろたえ弾なぞに!」

 

 放たれたビームをシールドで弾きながら距離を詰めて、サーベルの刀身を再び伸ばす。シールド裏から伸びたビームサーベルは、ネモの胴体からバックパックを両断した。

 

『たす、け……たいちょ……っ!』

 

 混線した無線から聞こえる悲鳴を無視し、リロードを終えたばかりの高機動型ネモへと突っ込む。

 

「これで三対三だなァ!」

 

 不要になったバルカンポッドをパージして機体を軽くすると、高機動型ネモへ接近しながらライフルを放つ。

 しかし、高機動型ネモは後退し始めた。

 

「引いていくのか!?」

 

 レーダーを見れば、ジムⅡのマウス小隊が戦闘宙域に入っていて、交戦を始めている。他の敵機も撤退を開始しているようだった。

 

『ラット2からラット1。敵が引いていきます、追撃しますか?』

 

 逃がしてやる理由はない。

 

「奴らは地球圏を汚すスペースノイドであり、我ら連邦に反旗を翻したテロリストだ。速やかに奴らを――」

 

 言いかけたところで、母艦(シカゴ)からレーザー通信が入ってきた。

 

『ブリッジよりラット小隊、緊急連絡。コンペイトウ内部でクーデターが発生した模様。戦闘の状況はどうか?』

 

 サラミスたった二隻でコンペイトウに来たのはそういう事か。

 

「ラット1よりブリッジ。敵モビルスーツ一機を撃破。残り三機体は撤退、二機は後方で罠を貼っているものと思われる。陽動に付き合う必要は無いと判断。これより帰還する」

 

 後方に待機していたのは、恐らくデータ収集用の偵察型辺りだろう。

 あの高機動型ネモ。所属はエゥーゴだが、生産しているのはアナハイムだ。

 

「奴ら、次期主力量産機のデータ収集でも始めたか」

 

 死の商人共が戦後を見据えていることに、強い憤りを感じる。

 

『ラット1、なにか?』

「いや、なんでもない。ラット小隊、これより帰還する(RTB)

 

 ――ラット小隊はクーデター部隊を鎮圧。その他多くの部隊によって、コンペイトウのクーデターは阻止された。

 

 それから三年が経った、UC0090。

 彼らの母艦であったシカゴとハーマンは、コンペイトウ近海宙域轟沈したと記録されている。




Sugar&Rat fin.

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