めんどくさがり屋の極地   作:暇人

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お久です
暇だから書いたよ


5話目

 

 

 

気がつけば"先輩"は戦闘用フィールドに立っていた。

 

周りの観客席には数人の人影。対面には1人の少女。

そんな中、中央に立つ彼は、

 

「なーんで、こうなったぁ?」

 

そんなことをボヤいた。

 

 

 

●●●

 

 

 

あの日、サラと出会った日のことだ。

美術館に足を運んでいた先輩の元に来たひとつの連絡。

彼は"どうでもいい"ものとして処理していた。

 

しかし、後日。学校内で教師に捕まった彼は首根っこを捕まれ、生徒会室へと連行された。

 

連絡の内容は、

 

『黒鉄一輝との関係を終わらせねば序列一位と戦ってもらう』

 

というもの。

死なない程度に痛めつけることを目的とした嫌がらせ。

 

しかし、勝てばもう口も手も出さないという約束を取り付けた先輩。

顔合わせを済ませ、念書も書き、そして、

 

 

 

 

 

「お久しぶり、ですね」

「うぃっす、お久だね"トーカちゃん"」

 

眼鏡をかけたお下げの少女。破軍学園の序列一位にして、2年生(▪▪▪)でありながら生徒会長を務める東堂刀華。

 

張り詰めた表情の彼女に対して先輩の顔はヘラヘラしたものだった。

 

「……貴方の強さは誰もが認めるものです。意固地にならず──」

「いこじ〜?学園ぐるみ、家族ぐるみ、国ぐるみのイジメを容認したくないよーって気持ちが意固地かよ。腐りに腐った世の中になっちまったなこれ」

「………ッ」

 

先輩の言葉に押し黙る東堂。

言いたいことは分かる。しかし、上の決定に歯向かうことは伐刀者人生を脅かすものだ。

 

東堂とて心苦しいものがある。だが、彼女が背負うものを守るためには従うしかない。

 

「気持ちはわからんでもないよ。トーカちゃんの背負ってるものとか知ってる身からすると。それに比べて俺と来たら、背中にはなーんも乗っかってない怠惰的な人間ですからね」

「…………」

「まあ、そんな俺の背中追いかけてきてる可愛い後輩がいる訳で。そいつのために頑張るのもアリでしょうよ。それに後輩のために頑張る先輩とか、かっこよくない?」

「……そうですか」

 

そうして、東堂はかけていた眼鏡を外した。

 

その口元は笑みを浮かべており、何やら安心した様子。

普段はめんどくさがり屋のくせに、何かのためになら自分を貫ける。そこの性根が変わらない先輩。"東堂が憧れた男"が変わらずにいる事実に少なからず嬉しくなっていた。

それに、

 

「きっかけはなんであれ、君とこうして正式に戦える機会が巡ってきたことは喜ばしいことです」

「俺はやーよ。トーカちゃん強いし」

「お世辞でも嬉しいですね」

 

幼少の頃からの知り合い。だが、未だに剣は交えたことの無い2人。それでも実力は認めあっている双方。

片方にとってはやっと巡ってきた念願。もう片方にとってはついに来てしまった機会。

 

『それでは、只今より非公式戦を開始します。両名は固有霊装を実像形態で呼び出してください』

 

「轟け、【鳴神】」

「奉れ、【九天鏡谷】」

 

双方、手にしたのは日本刀。

東堂はその刀を鞘へとしまい左手に握る。対して先輩は抜き身のまま体の中心線に沿うように構えた。

 

『それでは始めます。3、2、1── LET's GO AHEAD

 

試合開始。直後、東堂が選んだ選択肢は速攻。

彼女の2つ名にもなる"雷切"は伐刀絶技でもある。

それは、いわば居合切り。しかし、ただの居合切りにあらず。鞘の中で電磁加速させな刀身を射出する正しく超電磁砲。

コンマ1秒にも満たない速度の攻撃は一瞬にして先輩の肉体を切り裂く──

 

『───ッ』

 

──ことはなく、寸前のとこで止まった。止まった、と言うよりも止められた。

 

東堂の手に伝わる感触。壁に刀を打ち付けたかのような違和感。しかし、そこには何も無く、目の前にはただボケっと突っ立ってる先輩だけ。

次の瞬間、

 

「なッ……!?」

 

刀が弾かれたと同時に、東堂に彼女の刀が纏っていた雷撃が襲った。

すぐさま距離を取り直撃を避ける東堂。

 

「まさか、カウンター型の能力でしたか」

「んー?んー、まあそうか。"こっちは"そうだったな」

 

含みのある返答。しかし、その真意は分からず。

見えない壁、しかも能力を反射するカウンターの壁。

 

どこにどれだけ展開されてるのか、それすら分からない。

故に、彼女の二撃目はなく、先輩を観察。様子見に終わる。

 

「……来ないの?」

「………」

「俺は……"攻めないよ"?」

「………っ」

 

手詰まり。

下手に攻撃しても反撃を貰うだけ。

故に先輩が動き出すまで手は出さないつもりだった。が、ここで先輩自身からも攻めない宣言。

 

彼女のもう1つの伐刀絶技、閃理眼(リバースサイト)。相手の伝達信号を読み取り動きの先読みをする眼。

それを使い先輩を見てみるが……やはり動き出そうとはしない。

 

だが、お互いに攻めないのであれば思考を割く猶予はある。先輩の能力を考え出した東堂。

 

 

 

一方、観客席に座る1人の老人は顎を扱きながら先輩を見ていた。

 

「ふむ……」

 

"闘神"南郷寅次郎。90を越える国内最高齢の魔導騎士。

東堂刀華の師に当たる人である。

弟子の東堂の試合ということでこの場に足を運んでいた。

 

彼もまた先輩の能力について考えていた。

 

「反撃の壁。反撃できる威力に上限があるか、回数制限か。はたまた別の何かか……なんにせよ厄介な能力じゃなぁ」

 

能力を駆使して戦う魔導騎士にとって天敵と呼べるような能力。

タネを知らずに闘神とて不用意に攻めたいとは思わない。それほどまでに警戒されるべき能力。

 

 

 

そんな中、実際に壁へ打ち込んだ東堂は1つの答えを見つけていた。

 

「(あの瞬間、剣が弾かれた、と言うよりも能力そのものが弾かれた感覚が強かった。あの時、剣には雷撃を纏わせていた。だったら─ッ!)」

 

瞬間、東堂の姿が掻き消える。

掻き消えるというのは少し違うか。周りから見たら、その動きは普通なもの。ただ、先輩の目からは一瞬にして懐に入り込まれたように錯覚する動き。

 

相手の無意識下に自身の存在を滑り込ませ、生命の危機に瀕するその間際まで相手に気づかせない、特殊な歩法と古武術を利用した合わせ技。

初手の雷切でも使用していたものだ。

 

そのまま、鞘から抜き放つ居合切り。しかし、今度はその刀身には雷撃はまとっていなかった。

 

「うお、それは無し…!」

「ッ!」

 

仰け反った。避けた。躱した。

 

先程とは違い、先輩は身の危険を感じ東堂の一撃を受けなかった。

これを好機に東堂は怒涛の攻めを始めた。

 

だが、そのどれものらりくらりと躱す先輩。反射で避ける彼の動きは東堂の閃理眼を持ってしても読めない。故に当たらない。

 

1度互いに剣を撃ち合い距離をとる。仕切り直しだ。

 

「うわー、1回目の打ち合いで気づく?普通」

「実際に打ち込んだからこその気づきですね。傍から見てる分には絶対に分からなかったでしょう。君の能力は"異能の力をはじき返す能力"ですね」

 

目線を鋭く先輩を射抜く東堂。

そんな彼女の様子に先輩はニヤリと笑った。

 

「大正解。実際は能力をはじき返す結界を張るってものなんだけど、些細な違いだな」

「であれば攻め方は見えました。仕留めさせてもらいます」

「それは、ノーセンキューってやつだよ、トーカちゃん」

 

そんな会話を皮切りに東堂は先輩へと肉薄した。

 

 

 

「なるほどの……異能をはじき返す能力、か」

 

南郷は唸るように呟いた。

 

先程の雷切。その技は刀身に雷撃を纏わせた一撃。

纏った雷撃が弾き返され、帰ってきたその力によって刀が押し返された。そこまで読めた南郷。

 

「能力は分かったけどよー、それにしたってあのガキ、よく避けるな。抜き足使ってるはずだろ」

 

そんな声を上げたのは南郷の隣に座る小柄の女性。西京寧々。夜叉姫の異名を持つ世界ランキング3位のAランク騎士だ。

 

「反射、じゃな。あれは」

「反射ぁ〜?」

「熱い薬缶に手が当たったら手を引っこめる。足裏が浮くほどの椅子に座り膝を叩いたら勝手に足が上がる。羽虫が顔の前に来たら手が出る。それらと同じ類のものじゃよ」

「それをずっとやってんのか?あのガキは?」

「無意識の反射を意識的に使っておる。受けに関してはワールドクラスと言っても良いな」

 

南郷のその言葉に絶句する。

つまり自動(オート)による防御(ディフェンス)を可能にしている。言葉にすれば簡単だが、実際に出来るものなど世界中探してもまずいないだろう。

 

危機察知能力がずば抜けて高い。それが2人の評価であった。

 

「それにしても、おかしいのう」

「……?何がだジジイ」

「"慌てる様子"がない」

 

オートディフェンスで避け続けられるにしろ、先輩の戦い方というのは傍から見ても素人みが強い。

イッキとの模擬戦でも彼を苦しめた無意識のカウンターを入れに行くが東堂もまた驚異的な反射神経でそれを防御。

能力を看破され、地力の勝負に持ち込んだにしろ、身体能力の差は歴然。

それでも先輩は未だ飄々とした態度をとっている。

 

何か、別の奥の手を隠してるような、そんな不気味な雰囲気。

 

「まだ、この勝負……一悶着ありそうじゃのう」

 

闘神はその口元に弧を浮かべた。

 

 

 

東堂と先輩の打ち合いはさらに白熱していた。

抜き足による懐への踏み込み、それに対して反射の防御。

東堂の攻撃に合わせてカウンターの一撃。それを距離を取り避け、また抜き足を使い先輩へと肉薄。

 

流れは先程から同じ、ただその一連の流れのスピードが加速度的に上がっていく。

やがて身体スペックで劣る先輩の息が上がってきていた。

 

「あっぶ…!」

「………ッ」

 

足が崩れた先輩。

その隙を見逃さず東堂はさらに踏み込みを強く攻めた。

 

雷切ほどではないにしろ、重みも鋭さも今までと桁が違う居合切りがさく裂。剣を盾に防御できたにしろ、先輩はそのまま吹き飛ばされ地面へと転がった。

 

「……ふぅ、まだ、やりますか?」

 

東堂は横たわる先輩へそんな問いを投げた。

それに対し彼は、

 

「だっはははははは!」

 

笑った。

 

「つえー!勝てねー!無理だな!無理!"このままじゃ"勝てねーや!」

 

そんな笑い声とともに体を起こす。

頬をポリポリかきながらいつものような飄々とした態度で言葉を続けた。

 

「いつもならこのまま引き下がっておしまい……って感じなんだがなぁ。今回ばかりは俺の生き方も決まってくる大事な局面。いやはや頭を悩ましてくれるなぁ。……まあ、いいか。トーカちゃん強いし。なりふり構わずいこうか」

 

そう言って不敵な笑みで立ち上がる。

その様子に東堂の背筋に嫌な寒気を感じさせ、一歩後ろへ後ずさりさせた。

 

 

 

「何が始まるんだろう、ね」

「………っ」

 

この戦いを見に来ていた東堂と先輩の幼なじみでもある2人。

御祓泡沫と貴徳原カナタ。

今まで見た事ない異様な雰囲気を纏う先輩に冷や汗を流していた。

 

 

 

「こっからが本番てわけかのう」

「何が始まんだ?」

「さあな。ただ、まだあの小僧は本気ではなかったということは分かるな」

 

闘神と夜叉姫もまたこの雰囲気に興味を持つ。

 

 

 

「こっから出し惜しみはなし。だからそっちも本気で来なよ。……人生初の本気かぁ」

「………ッ」

「下手に手を抜いて様子見なんてことしたらぶち殺すぞ?

「っ!?」

 

強い言葉を使う。

それが何を意味するのか、東堂は理解していた。

 

先輩が強い言葉を使うのは覚悟を決めた時。

東堂はそれを見て、鞘を左手に、右手に柄を握り雷切の体勢。

 

そんな中、先輩は刀を片手に言葉をつむぎ出した。

 

 

 

 

 

──四海啜りて天涯纏い、万象等しく写し削らん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艶羅鏡典




なんかノリと勢いの殴り書きみたいになって上手く纏まった話になってない気がするけど、許して
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