あとお気に入り200人超え及び赤バーありがとうございます、今後ともよろしくお願いします
「クソッ、なんでこんなのがいるんだよ!」
猛然と振り回される熊の剛腕をなんとか回避しながら悪態をつく真希パイセン。結果論だが、真希パイセンがついてきたのは助かった。ひとりだったらそのまま追撃されて最悪お陀仏だった。
(あばらへの反転は大体回し切った。あとは右腕が半分程度か。もう少し持ってくれよ真希パイセン……!)
熊に目をつけられないように息を潜めながら反転術式を使って最初に食らった傷を治していく。
今回真希パイセンが持ってきたのは刃渡り短めの刀なので、5メートル超えの熊相手にはリーチが少々足りない。故に回避するしかないというのが現状だ。このままではジリ貧である、と思っていたのだが。
突き出された腕をぎりぎりで回避し、そのまま懐に潜り込んで……
「シッ……オラァッ!」
おお、見事な一本背負い。
「おい大丈夫か刃!」
「もう大丈夫です。時間稼ぎありがとうございました」
地面に叩きつけられた熊から慌てて距離をとりながら真希パイセンが心配してくるので応える。パイセンの時間稼ぎのおかげで腕までばっちり回復済みだ。
「あいつパワーとスピードこそあるが知能はそこまでだから単調な攻撃しかしてこねえからそこをつけばなんとかなりそうだ。……というかお前反転術式使えたのか」
「任務から帰ってきた時怪我してるとこ見たことなかったでしょ?」
「まあ確かに。つくづく天才だなお前……」
「でへへそれほどでも」
「うわ気持ちわるっ」
……
術式解放 柳炎煌火
「いきますよ真希パイセン!!」
「……おう」
熊が起き上がり突っ込んでくるのを散開して躱し、牽制の火炎弾を放つ。まあ牽制と言っても2級呪霊程度ならそれだけで倒せるような威力なのだが…
「◾️◾️◾️……!」
「おいおいちょっと焦げただけかよ……」
茶色い毛皮が少し焦げて煙が上がった程度で、大したダメージにはなっていないようだ。
「こっちだオラァ!」
こちらを睨みつける熊の後頭部にパイセンの蹴りが突き刺さる。そのおかげでこちらに向いていた熊の意識が分散された
(生半可な攻撃じゃ通用しねえな……ほんとに熊かこいつ。リーチにビビって遠距離戦続けても埒が開かん!高威力撃とうもんならワンチャン崩落するかもしれんし、近接で攻める!)
「刃!合わせろ!」
「了解!」
長い腕を掻い潜り、懐に潜り込んでふたりでラッシュを仕掛ける。
燃える拳が腹を抉り、鋭い脚撃が喉を突く。赤い手刀が脇を裂けば、無骨な刃が胸を斬る。
しかしそれでも熊は倒れなかった。
「パイセン下がって!」
「チィッ!」
体全体を使った猛撃に俺と真希パイセンは後退を余儀なくされる。
「タフなやつだぜ……!おい刃!なんかないのか!」
「熊の弱点は眉間です!どうにか突けるといいんですが……」
「高いな……」
そう、5メートルを超える熊の眉間はとても高い位置にある。届かせるだけなら容易だが、敵の目の前でジャンプするなど攻撃してくださいと言っているようなものだ。俺の炎で攻撃してもいいが、ただ撃つだけでは避けられるのが関の山だ。速くて威力は高いが規模は小さいなんて都合のいい技は持ち合わせていない。
で、あるならば。
「弱点関係なしに近接でぶっ殺すしかねえよなあ……!」
手から出した炎を剣のようにして構える。本来の炎であればあり得ない形ではあるが、俺の術式による炎は自由自在だ。
「っしゃオラァ!」
間髪入れず前傾姿勢からの突撃を行う俺。振り下ろされる爪をかわし、食いちぎらんと襲いくる顎を逸らし迫る。瞬時に懐に潜り込んだ俺は、一呼吸のうちに熊の両脇と太ももを切り裂いて、即座に熊の背後へと転がって離脱する。
今までの攻撃とは比べ物にならない威力と火力の前に、熊の頑強な毛皮はパックリと裂け、肉はジュウジュウと焼け焦げる。
「◾️◾️◾️◾️◾️……!」
「ったくそんなもんがあるなら早いとこやれよ!」
激痛に叫びを上げる熊の隙をつき、ついでに悪態もつきながら真希パイセンも突撃、俺が攻撃した太ももと同じ箇所を通り過ぎざまに切り裂く。
「◾️◾️◾️……」
「よっしゃ今がチャンス!」
大きなダメージに崩れ落ちる熊をみて好機と見た俺は再び突撃。熊の背中を転がって前側に回り込み、渾身の力を込めて炎の剣を熊の眉間へと突き刺した。
「◾️◾️◾️◾️◾️!」
「よっしゃ見たか!ってうおっ」
致命傷を受け、雄叫びを上げて崩れ落ちる──様に見えた熊だったが。
「◾️◾️◾️◾️◾️……!」
「嘘だろまだ生きてんのかよ……!」
むしろ今まで以上に大暴れを始めたのだ。もはや周りも見えずに狂乱する熊。大昔にハゲジジイが『手負いの獣ほど厄介なものはない』と言っていたのを思い出す。
「だが確かに致命傷だ!一気に決めるぞ!」
「了解!」
暴れ回る熊にとどめを刺すべく、俺と真希パイセンは息を合わせて熊に飛びかかるのだった。
◆◆◆
「ハア、ハア……やっとくたばりやがった」
「クソッ、タフにも程があるだろオイ」
結局その後、やったか→いやまだだ!の流れを4、5回ほど繰り返してようやく熊は沈黙したのだった。
長いこと戦ったせいで熊の死体はもはやズタボロだ。片腕は切断され、両足は潰れ、頭には深い傷が追加で三つほど刻まれている。それでも死なず、真希パイセンがボロボロの呪具を心臓に思いっきり突き立てたことでようやく死んだ。こいつほんとに熊か?
「あーもうだめだ、呪力すっからかん」
「最初にパワーとスピードが脅威だと言ったがありゃ間違いだな。こいつの一番の強みは耐久力だ」
事実俺はもはや呪力は尽き、真希パイセンもボロボロで得物も壊れてしまった。最初のうちは割と余裕あったのにどうしてこうなった。
「あーくそ疲れた。刃、風呂かせ」
「今すぐには無理ですよ。川まで行って水汲んでから薪で沸かさないと……」
改めてクソ不便だなこの家……都会の暮らしに慣れた今、二度と暮らしたくねえや。
「うわマジかよ。どうするかな、もういっそ帰るか」
「それでもいいんですけど合宿じゃなかったんですか」
「知らん、疲れた。というか色々と掴めるもんあっただろ、もう十分じゃねえの」
「それはまあ……そうなんですけど」
まあ長きにわたる激闘の末色々と身についたものはある。刻一刻と迫る呪力切れに少しでも対応するために呪力の節約精度が大幅に上がったし、体力が尽きる中で身のこなしも上手くなった。身のこなしに関しては真希パイセンも同じだろう。確かに得るものはあった、あったが……
「日帰りは流石に企画倒れすぎません?」
「……それもそうか。しゃあない、一泊だけして帰ろう」
「そうですね、そうしましょう」
とまあ色々あって、地下を出る……前に、地下空間をいろいろ探索してみる。ハゲジジイが遺したものだし、何かいいものがあると踏んだのだが、その考えは正解だったようで、何やら無銘のナイフと刀が出てきた。感じる呪力からして特級クラスの代物だろう。
「刀の方は真希パイセンにあげますよ」
「いいのか?お前のじいちゃんのもんだろ」
「俺は術式で出せますし、今回ので刀壊れちゃいましたし、構いませんよ」
「じゃあありがたくもらっとくぜ、サンキュー」
そうして地下空間から引き上げた俺たちを待っていたのは……
「うわあ綺麗な夜空」
「うっそだろもう夜なのか」
満天の星空だった。地下に入ったのは10時ごろなので、10時間は地下にこもっていたことになる。あの熊タフすぎるだろ……
「そう思ったら腹も減ってきたな」
「そうですね……あっ真希パイセン。ご飯にします?お風呂にします?それともお・れ?」
「お前で」
「えっ」
えっ
「冗談だよ、風呂にする。水汲んでくるから火おこししといてくれ」
……
あーびっくりした。というか率先して力仕事するなんてやだ……イケメン(トゥンク
◆◆◆
そうして真希パイセンが水を汲んでいる間に火をおこした俺(呪力切れなのでわざわざ原始的な火おこししなきゃいけなかった。クソオブクソ)は、帰ってきた真希パイセンが風呂に入っている間、先ほど手に入れた呪具を検分していた。
「こっちのナイフは切れ味と……痛っ」
うっかり手に刺さった瞬間、血がかなりの勢いで流れ出てきた。慌てて反転術式を回すも、いつもより治りが遅い。火起こしした後しばらく休んでいなかったらまた呪力切れになっていただろう。
「あーびっくりした、強制出血と回復阻害か」
いやほんとに冷や汗かいたわ。刀の方は同じく切れ味の良さと、刺した相手の呪力を奪うというものだった。おかげさまでまた呪力がすっからかんだ。
「おーいあがったぞー」
そうこうしているうちに真希パイセンが風呂から出てきたので、俺も入ることにする。
(この風呂に入るのも久しぶりだなあ、半年ぶりかあ)
風呂にゆっくり浸かって疲れをとる間に、この家で過ごしていた日々を思い出す。思わずノスタルジックな気分に、気分に……
「ならねえな、碌な思い出もねえ。明日になったらとっとと帰ろう」
そうして風呂から上がった俺は、真希パイセンと共に持参していた保存食を食い、パイセンにハゲジジイが使っていた布団(硬い)を貸し、自分で使っていた布団(クッソ硬い)で眠りにつくのだった。
正直気が気じゃなかったです、はい。
キャーマキサンイケメーン!
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