灼焔の呪術師   作:辛味噌の人

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1級勝負と女の趣味

 

 

 「よお伏黒、釘崎。ただいま」

 

 真希パイセンとのドキドキお泊まり会の翌日、高専に帰投した俺は真希パイセンと別れ、伏黒と釘崎のもとを訪れていた。

 

 「ああ、おかえり」

 

 「あら早かったじゃない、1週間はいないもんだと思ってたわ」

 

 「いろいろあってな……」

 

 本当に色々あった。熊とか、熊とか、熊とか。

 

 「それで収穫はあったの?1日で帰ってくるってことはなんか掴めたんだろうけど」

 

 「ああ、今までの俺とは一味も二味も違うと思ってもらっていいぜ。呪具も手に入ったしな」

 

 そう言って手に入った無銘のナイフを見せる。そういえばこれが五条センセに見つかったら変な名前つけられそうだから早いとこ名前つけとかないと……

 

 「……すげえなそれ、特級呪具か?銘は?効果は?」

 

 伏黒はナイフが気になったのかまじまじと見ながら質問してくる。まあ特級呪具ともなれば当然か。

 

 「多分特級。銘はない、効果は出血強要と回復阻害だな。結構便利そうだ」

 

 と言うかほんと早いとこ名前つけないと……ハゲジジイめ、名前くらいつけとけば良かったものを。

 

 「じゃあ俺とりあえず部屋に一回帰るから……保存食だけで腹減ってんだよ。なんか適当にガッツリしたもん作って食うわ」

 

 そう言って俺は自分の部屋へと帰ったのだった。銘どうしようかなあ……

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 カツ丼うめうめ。

 

 昼飯を食った俺は自販機でコーラを飲んでいた。コーラいいよねコーラ。ハンバーガーとフライドポテトとコーラを発明したやつはマジの天才だと思う。

 

 飲み終わったコーラをゴミ箱に捨てた俺は、予備のコーラを二本ほど買って部屋へと戻ろうとした時、伏黒と釘崎と出会った。

 

 「お前らもコーラ買うのか?コーラいいよなコーラ」

 

 「アンタのその謎のコーラ推しはなんなのよ……私たちは真希さんのパシリ」

 

 「は?」

 

 パシったのか……?俺以外のやつを……?

 

 

 

 まあそんなこんなで伏黒たちと別れ、のんびりと部屋に向かっていると……

 

 

 「があっ!」

 

 

 伏黒の声が聞こえた。

 

 「っ伏黒!」

 

 (何があった!?呪霊?それとも呪詛師?ありえん、高専内だぞ!)

 

 思考をめぐらしつつ、慌てて駆け戻った俺が見たのは。倒れ伏す伏黒と、半裸の大男だった。

 

 「大丈夫か伏黒!」

 

 「あ、茜屋か」

 

 「茜屋……?お前が茜屋か」

 

 慌てて伏黒を助け起こした俺に、半裸の男が話しかけてくる。何もんだこいつ……?

 

 「いかにも俺が茜屋だが、お前こそ何者だ?伏黒に何をした」

 

 「俺は京都高専の3年の東堂葵だ、怪しい者ではない。伏黒は退屈なやつだからそうなった。見た目で判断せずにわざわざ質問した俺の優しさを踏み躙ったからな」

 

 「……話の流れがわからんが、お前がおかしい奴だということはわかった」

 

 東堂葵……確か1級術師だったか。以前の『百鬼夜行』において1級5体と特級1体を祓ったと言う話を聞いたことがある。

 なんとなくわかる。こいつハゲジジイの同類だ。人の話を聞かず自分ルールを押し付けてくるタイプの異常者、ある意味呪術師に最も向いているタイプの人間。おそらく伏黒の何かがこいつの地雷を踏んだのだろう。面倒なやつに絡まれたな……。

 

 「俺はお前にも興味があるぞ、茜屋。お前が乙骨や3年の変わりたり得るのかを。と言うわけで質問だ。どんな女がタイプだ?」

 

 ほらなんか変な質問してきた!この手のやつは大体そうだ!

 

 「質問に答える理由がねえな、なんで初対面のやつにんなこと話さなきゃなんねえんだ」

 

 「お互いに名乗ったんだ、もうお友達だろう。性癖にはソイツの全てが反映される。 女の趣味がつまらん奴はソイツ自身もつまらん。俺はつまらん奴が嫌いだ。だから早く答えろ」

 

 厄介なやつだなあ……とっととおかえり願いたいものだが。

 

 「断る、と言ったら?」

 

 「なら仕方ない……叩きのめしてでも聞くとしよう!」

 

 (来る!かなり速い!)

 

 高速でこちらへと突っ込み、ラリアットをかましてこようとする東堂をいなし、後方へと投げ飛ばす。しかしさすがは1級、容易に空中で体勢を立て直し、着地と同時に再び突っ込んでくる。今度は拳を突き出してくるので、こちらもあわせて相殺する。

 

 「フッ!」

 

 「シッ!」

 

 ここからは超至近距離での高速格闘。パワーではあちらが上だが、スピードではこちらが上だ。いかに捌くか……!

 

 

 「うおおおおおおおっ!!」

 

 「ハアアアアアアアッ!!」

 

 相手の打ち込みをそらし、叩き落とし、時には拳をぶつけ合って相殺する。至近距離での拳の打ち合い、そこに優劣はなく、互角の殴り合いが展開される。

 

 「フンッ!」

 

 「オラァ!」

 

 だが拮抗はそう長くは続かない。お互いがお互いの隙をみて全霊の拳を放った結果、その軌道は交錯するように、互いの頬へと突き刺さり大きく吹き飛ばす。

 

 「なかなかやるな、茜屋。1年生唯一の1級術師だけのことはある」

 

 「そっちこそ……さすがは噂の怪物3年生」

 

 俺と東堂は互いを褒め称える。だが、男の殴り合いは終わらない。熱く燃える心のままに、第二ラウンドの合図が──

 

 

 

 『動 く な』

 

 

 

 瞬間、東堂の動きか完全に停止する。

 

 「何やってんのー!」

 

 そしてその直後、どこからともなくやってきたパンダパイセンの見事なパンチが東堂の頬に突き刺さり、たたらを踏ませる。

 

 「狗巻パイセン、パンダパイセン」

 

 「……久しぶりだなパンダ」

 

 ヒートアップしていたのが少し落ち着いた俺たちは、パイセンたちの乱入によってひとまず拳を下ろす。

 

 「東堂も東堂だけど茜屋も茜屋だ。なんで交流会まで我慢できないかね。ほら帰った帰った」

 

 「そうしよう。どうやら退屈し通しでもなさそうだしな」

 

 そう言ってポリポリと頭を掻き、上着を探し始める東堂。こちらも頬を反転術式で治し、大きく伸びをする。

 

 「だが乙骨には伝えておけ、『オマエも出ろ』とな。」ではさらばだ」

 

 そう言って踵を返す東堂だったが、すぐに足を止め、俺の方を見てくる。

 

 「そういえばお前の性癖を聞かずじまいだったな茜屋。どんな女がタイプだ?ちなみに俺は(ケツ)身長(タッパ)のデカい女がタイプだ」

 

 結局その質問をするのか。まあ殴り合った仲だし、周囲にレディもいないから話してもいいか。

 

 「筋肉質でスタイルの良い女性が好みだ。あと年下はお断りだ、できれば年上がいい。イケメンのな」

 

 「なるほど、いい性癖だ。交流会でまた会おう、友よ」

 

 「ああ、また今度会いましょう、東堂パイセン」

 

 そう言って手を上げて去っていく東堂パイセンに、こちらも手を振りかえして見送るのだった。なんだか東堂パイセンとの間に友情が芽生えた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 「……そういえば伏黒は?」

 

 「あっ」

 

 「おかか」

 

 「俺を忘れるな……」

 

 ごめんちゃい。

 

 




東堂……恐ろしい男……
あと今回ライブ感すごかった気がする。

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