混沌世界のプロローグ―好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話・第二部 作:グレン×グレン
味はいいけど「喫煙者OK」な喫茶店だったので、一緒に食べた人は「二度目はちょっと……」なのが残念でした。喫煙者OKってある種のウリではありますけど、匂いと副流煙が人を選びますよね。
まぁそんなことを昨日やりましたが、今夜も話を投稿するぜぇえええええっ!!!
カズヒSide
「……っ!?」
がばりと起き上がるその相手に、私はペットボトルのスポーツドリンクを押し付ける。
「飲みなさい。凄い汗よ」
「……え、と……カズヒさん?」
目を丸くしながら受け取る望月有加利は、しかし喉が渇いていたのかとりあえずそれを飲んだ。
私はそれを確認しながら、備え付けのユニットバスの方を顎でしゃくる。
と、ちょうどいいタイミングで鰐川亜香里も出てきたわね。
「あれ……? 有加利ちゃんも……?」
「亜香里……。そっか、そうだよ……ね」
二人揃って調子が悪いけど、まぁそうでしょうね。
「とりあえずあなたも飲んでおきなさい。吐くとミネラルが消耗するものよ」
スポーツドリンクを鰐川の方に渡しながら、私は心底同情する。
「まぁ、あの惨状と今の精神状態から見ればそうなると分かってたわ。和地もそれなりに気にしていたけど、連続はなんなんで今回は私が引き受けたわ」
なんだかんだで、私達はそれとなく何人か交代で二人を気にかけていた。
あの魔獣化騒動からひと月近く立っている。だけど、それはたったひと月という場合だってある。
だから一応、それとなく気にはしていた。当人たちがなまじ善性だと分かったからこそ、絶対にまだ気にしていると分かっている。トラウマになっている恐れだってあった。
それもあって、この卒業旅行に二人を連れていく形になったのでしょう。精神的なリフレッシュを試みていると、そういう事になるわけだ。
……とはいえ、これはこっちでもやるべきね。
「時間も時間だし、今から寝直すよりは気晴らしをした方が良さそうね」
「え?」
キョトンとする亜香里に、私は肩をすくめながら小さく笑う。
「いい機会だから腹を割って話しましょう。もう温泉の方は空いているし、汗を流しながら……ね?」
今回泊まったホテルは、温泉付きだったりする。ついでに言うとサウナまでついている。
軽く汗を流して温まってから、私達はサウナに入った。
そして息を吐きながら、私は二人の様子を確認する。
汗を流してリフレッシュしたことで、とりあえず二人とも落ち着いてはいるようだ。
とはいえ、それは落ち着いただけ。やっぱり色々と思うところはあるでしょう。拭いきれないトラウマが刻み込まれていると、それぐらいは分かっている。
悪夢を見て飛び起きる。トラウマに由来する形で吐く。どちらにしても、心に刻みついた傷があることの証明だ。
いきなり何とかしようとは思わない。そういったものは基本的に短期でどうにかしない。時間をかけて、段階的に、ゆっくりと治していくのが肝なのだ。
とはいえ、このままってのもあれでしょう。私達との旅行でリフレッシュしてほしいけど、突発的にフラッシュバックする光景はかなり酷いと見たわ。
……なら、ここは私の出番でしょうね。
「気にするな……と言っても、気にしてしまうでしょうね。そこは理解するわ」
「……分かるんですか?」
有加利の方がそう返すけど、少し険もある。
まぁよくある話ね。酷い目にあった者が「気持ちが分かるとか言うな!」なんていうのは常套句。言いたくなる奴は当たり前にいるだろう。
ただ、理解まではできないわけじゃない。
「共感じゃなくて理解ならできるわよ。知識を集め、「自分がそうなったら」を想像する。そもそも相互理解と寛容は融和に必須である以上、異形勢力間の和平を進めるのならそうあらんとしなければならないでしょう?」
そう前置きしたうえで、私は更に続ける。
「……銃の操作を誤り、暴発で仲間に怪我を負わせた新兵」
あえて唐突に語る私の例えに、二人はちょっと固まった。
それをあえて無視して、私は更に語り続ける。
「操縦をミスして味方をひき潰した戦車兵。司令部の撤退命令で同胞を何人も見捨てた歩兵部隊。機体の不調を見逃し、マシントラブルで機体ごと顔見知りが爆散したと知った整備兵。戦局を冷静に判断したがゆえに、一部の部下を生贄にする命令を下した指揮官」
目を閉じてつらつらと語り、私はその光景を思い出す。
それは、私が独立戦争に少年兵として参加した時に実際にあったこと。
そして同時に、そういった件は悪魔祓いになってからも数多い。
「何人も見てきた。乗り越えた者も背負い続ける者もいれば、割り切り無感動になった者いるし、それができず逃げ出した者も狂った者も見てきた。……そして、規模に限定すれば貴女達がそれ以上の重いものを背負っていることぐらい理解できる。……心中ぐらい察するわよ。でなければ様子を確認したりなんてしないわ」
「そう……よね。ごめんなさい、八つ当たりになるわよね?」
気圧され気味で謝る有加利に、私は肩をすくめて見せる。
「気にすることはないわ。追い詰められている者が周りに気を使うのは大変だもの。むしろ頑張っている方でしょうに」
そう告げたうえで、私は腹をくくる。
どうせ誰かが言っているとは思うけど、あえて自分から言うべきだ。
「唐突だけど、私には前世の記憶があるわ」
「「……え?」」
きょとんとするけど、私はそこで構わず続ける。
……知っている者達も多いから割愛するが、我ながら本当に碌でもない。
兄に対して告白し振られた、小学生にもなってないその時から始まった地獄。
心がマヒし、どこかが歪み腐っていくなら、それでも救いだった日常。
それが大きく削れ、ふとした瞬間に反転した自分。
その果てに壊した姉同然の乙女ねぇ。そして決定的な本質を自覚してしまった、愛しい誠にぃ。
そして生まれた子供にいけしゃあしゃあと幸せの香りなんていう意味を込め、そして決定的な破綻を自覚したあの爆発。
……そして、それからの私を決定づける笑顔の誓い。
それでも私は遅すぎて、結局は何もかもが手遅れで死ぬ。それでも、私を友と呼んでくれた二つの救い。
そして気づいた二度目の生。そこから歩む、
そして互いに知らぬとはいえ再会し、涙換救済と共に戦い、そして再び彼に救われた。
そして、取り返せないはずだった
そこまで語り、私は言うべきことを言う。
「……自分のことが許せないのはいいの。そこまで強制しないわ」
「え、ええ!?」
亜香里の方が困惑するけど、実際そこは止めない。
「
そう、私は私を許さない。その事実は変わらない。
「カズヒ・シチャースチエは道間日美子を許さない。それをすれば私はまた腐るとすら思っている」
そう、それが私という女。
それでも、もう一つの絶対がある。
「だけど、和地が……鶴羽が……リーネスが……オトメねぇが。更にイッセー達も含めて、誰かが私を許してくれることは受け入れた」
そう、それはもう一つの絶対だ。
自分で自分を許せない人がいるように。被害者が罪人を許さないことがあるように。その逆もまたあり得るのだと、私はそれを受け止めた。
その否定はしてはいけないことだ。私が私を許さないからとしても。誰かが私を許さないとしても。それがむしろ当然だとしても。
私を許してくれる誰かがいることを、私が否定してはいけないのだ。
「……だから、貴女たちもそこは許してあげなさい。……貴女たちが自分を許せなくても、貴女たちと向き合ったうえで許してくれる誰かを否定してはいけないわ」
そこまで言ったうえで、私は軽く苦笑する。
「まぁ、私がそれを認めれたのはつい最近なんだけどね?」
そういう意味だと、説得力が薄いかしらね。
「………貴女が、あの……人?」
ぽかんとしながらつぶやく有加利だけど、どうやら和地はぼかして言ったみたいね。
なら、隠す必要もないでしょう。
「まぁそういうわけで。貴女達が下であることと、それより下に私がいることは矛盾しないわ。嫌になったら私を思い出しなさい?」
もっと酷い奴でも許してくれる奴がいるんだから、貴女達を許してくれる人もいるんだとね。
「……さて、そろそろサウナは出た方がいいわね。汗を流したらみんなと合流して、朝食にしましょうか」
これで、少しは気晴らしになればいいんだけど……ね。
Other side
「……流石にここまでくると少し暑いわね」
「そうだねっ。なら水着も持ってきたらよかったかも」
「水着のレンタルはあると思うわよ、お姉ちゃん」
「あ、それもそっか。……じゃ、今日は色々観光して、明日は一緒に泳がない?」
「私はお姉ちゃんの行きたいところでいいわ。そんなに意見を聞かなくてもいいのよ?」
「だめだめ! 一緒に楽しみたいんだから、シルファちゃんもちゃんと意見してよね?」
「……ふぅ。分りました、ヴィーナお姉ちゃん」
相互理解や把握は共存共栄に超重要。ぶっちゃけ得たいが知れない奴や理解できない奴より知れるし理解できる相手の方が近くにいても怖くない。
少なくとも、そういう姿勢はある程度必要だと思う今日この頃。金が入ったらまず食文化から知るべきだと思い、意外と世界ではメジャーらしい昆虫食にも最終的に試してみたいグレン×グレンです。……蛇やカエルや鳥っぽい味だから試してみてもいいけど、イナゴの佃煮はエビっぽいらしいんだよなぁ。自分、甲殻類苦手だけどどこから手を付けたものか……。
そんなわけで、我らがボスたるカズヒが過去話で下に下を見せつけて気を楽にさせる話でした。えげつなさすぎるから、嫌われる可能性を無視すれば不幸自慢じみた鬱を黙らせる特効薬にはなりそうですよねぇ。