幼馴染君がぼっちちゃんを甘やかし過ぎた結果……   作:Miurand

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 既存の作品が完結してないのに新作に手を出そうとする愚か者です()
 その新作の方はまだ投稿してないけど、なんかこっちよりも凝った作品になりそうなのが………。なんでかなぁ()。しかしこの作品でやりたいけどやりづらいことは全部そっちでやる模様。もうヒロインはぼっちちゃん1人って決めたのじゃ。今更変更なんてしない(鋼の意志)



この親にして子あり

1週間はあっという間に過ぎ、とうとうオーディション当日になった。ガチガチに緊張しているメンバーをなんとかほぐして、俺は関係者側の席に座った。

 

「今更ですけど、俺がここにいてもいいんですか?」

 

「いいに決まってるだろ。お前だって従業員なんだし」

 

「そうですよ〜」

 

店長とPAさんからのお許しも得たことだし、ここはお手並拝見といこう。と言っても、俺は碌な審査をすることができないので、あくまで前のライブより上手くなったかどうかを判断するだけだ。正確な審査は店長とPAさんがやってくれるだろう。

 

「け、結束バンドです!ギターと孤独と蒼い星って曲、やります!」

 

ひとりの歌詞、リョウさんの曲、ひとりのギター。各々をそれぞれ別々に聞いたことはあるが、それら全てを合わせたものはまだ聞いたことがない。どんな曲になるのか、今日まで密かに楽しみにしていた。

 

虹夏さんの合図により演奏が開始された。出だしは問題なさそうに思える。ひとりも以前よりもだいぶ他の人に合わせられるようになったのか、ズレは感じ取れない。ただまだギターヒーローレベルの力は出しきれていないようだが、この短期間でここまで弾けるようになったのは大きな成長と言っても過言ではない。リョウさんは自分の世界に入ってるのか、楽しそうにベースを弾いている。喜多さんも少し顔が硬い気はするが、歌声に震えのようなものは感じない。

 

…………サビに入った時だった。

 

「………!!」

 

本領発揮……とまではいかないものの、ひとりがギターヒーローの片鱗を見せてきた。どういう心境の変化か分からないが、先程までとは明らかに演奏の仕方が違う。いつものように演奏を楽しんでいるものとはまた違う、何か決意したような、何かを成し遂げたいと言ったような、強い意志を感じる目だった。

 

その変化に他のメンバーも気づいたのか、ひとりの変化に合わせて他のメンバーもラストスパートをかけた。

 

「…………すごい……」

 

多分、プロのバンドよりは実力的には劣っているのだろう。だけど、今まで聞いたどの曲よりも、臨場感あって興奮したように思えた。色眼鏡があるのかもしれないが、これは合格にしてもいいんじゃないかな、と素人耳でそう感じた。

 

音楽は感情が現れやすいとどこかで聞いたことがあったが、まさにその通りだったと思う。全員がこれまで一生懸命練習し、真剣にバンド活動をしたいという思いが伝わってきた………ような気がする。

 

「ありがとうございました!!」

 

「「「ありがとうございました…!!」」」

 

虹夏さんに続き、3人が終わりの挨拶をしたことにより、演奏"は"無事終了した。全員の息があがっていることから、一生懸命演奏していたことがよく分かる。あとは店長の判断次第で、ひとり達がライブに出れるかどうか決まる。俺はバンドメンバーではないはずなのだが、この時ばかりは自分のことのように緊張してしまっている。

 

「………いいんじゃない?」

 

店長がそう言った。つまり合格ということか?『やったな、ひとり!』と、声をかけようとした時、店長の言葉に続きがあることを知った。

 

「……って言いたいところだが…、ドラム、肩に力入れすぎ。ギター2人は下向きすぎだし、ベースは自分の世界に入りすぎだ。でも、お前らがどういうバンドかは分かったけどね」

 

一回"だが"と逆接が入ったところで一瞬ヒヤッとしたが、最後にもう一回逆接が入ったのでひと安心した。多分結果が気になっているステージ上の4人は理解できてないかもしれないが、要約すると『ちょっと気になるところはあるけど合格』という意味だろう。

 

「アドバイス、ありがとうございました………」

 

案の定、返事をした虹夏さんだけでなく、他の3人もしょんぼりしている。多分オーディションに落ちたと思っているのだろう。たださっきのはちょっとしたひっかけのような読解問題だ。よーく聞いていれば、判定がどっちかなんてすぐに分かる。

 

「………えっ?何そのリアクション?」

 

「多分、オーディションに落ちたと勘違いしてるんだと思います」

 

「えっ?勘違いって………」

 

「合格っすよ。正確には気になるところはあるけど合格……ってところかな」

 

「えっ?そ、そうなのお姉ちゃん?」

 

「だから、そうだって言ってるだろ…」

 

「もー!お姉ちゃん分かりづらすぎ!!」

 

読解力がある人は冷静な状況なら多分分かっていたと思うが、今の4人にはそんな余裕はないだろう。というか、ちゃんと"合格"か"不合格"とはっきり言ってほしいに決まっている。俺だったら入試の時とかに、合否結果で曖昧な書かれ方をされたら怒るまである。虹夏さんの言い分はごもっともだ。

 

合格だと分かった瞬間、喜多さんが真っ先にひとりに抱きつきに行った。あれ?君達いつからそんなに仲良くなったの?ひとりもひとりでどもることなく普通に笑顔で対応しているし…。オーディションによる緊張で余計なことを考えられなくなっているからだろうか…?それとも、受かったことの喜びが大きいのかもしれない。もしくはその両方。

 

「それにしても近藤君、よくすぐに分かりましたね〜。やっぱり同じ属性だからですかね?」

 

「だから俺はツンデレではないでしょうに………。あれはただの少し意地悪な読解問題ですよ。そういうのが得意な人ならすぐに分かりますよ」

 

「別に意地悪してるつもりはないが…?」

 

「今度はそういう誤魔化し方できましたか〜」

 

なんか言い訳扱いされていて誠に遺憾である。PAさんは何故そこまでして俺をツンデレに仕立てあげたいのだろうか?もしかして、そういう男の子がお好みなんですかね?

 

「………なあ優太」

 

「なんですか、店長?」

 

「もしかして、ぼっちちゃんって本当は上手いのか?」

 

「………さあ、どうでしょうね。多分俺よりも店長の方がそういうのは分かるんじゃないですか?」

 

本当はギターヒーローでソロならプロレベルだと教えてもいいのだが、それを言ってしまうとひとりのプレッシャーになってしまうかもしれない。だから余計なことは言わない。

 

「ゔっ…!喜多さん、すみません……!」

 

先程まで2人して笑顔だったはずが、ひとりは口を抑えて後ろに振り向いた。

 

「後藤さーん!!!!?」

 

「…………マンマミーヤ…」

 

ただ今後藤ダムが決壊いたしました。原因は恐らく過度な緊張によるものでしょう。ただでさえ人前で演奏することに慣れていないのに、無理してギターヒーローレベルに近づこうとしてしまったのがいけなかったみたいですね。こうなってしまうと後処理が大変なので大幅なタイムロスになってしまいます。できることなら事前に察知して受け止めてあげればよかったですが、リセットできないので仕方ありません。

 

………って、ふざけてる場合じゃないや。最近RTA系動画ばかり見てたから毒されちゃったかな……?

 

「あー……。取り敢えず掃除に入りますね」

 

「……頼む」

 

 

 

レインボーの後処理なんてやったのはいつぶりだろうか………。かなり前にもひとりの虹色を処理したようなしてないような………。そう思えるくらいにはスムーズに後処理できてしまった。これならもし自分がやらかしても問題ないね!!高校生にしてここまでスムーズに処理できるやつって他にいるのかな…?

 

 

 

「お前のこと、ちゃんと見てるからな」

 

「はぐぁ!!!?」

 

「…………んん?」

 

多分だが、店長はひとりを励ますつもりでああ言ったのだろうが、ひとりは酷く怯えていた。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ………。

 

「………えっ?なんか怖がられてる?」

 

ひとりがステージに掃除しに離れた後にボソッと呟いていた。ひとりはあまり人と関わらないせいで、第一印象を引きずる傾向にある。そのせいで店長のことが未だに怖い人だと思ってしまっているのだろう、多分。恐らく。きっと………。

 

「店長。ひとりにはもっと分かりやすく言わないと伝わりませんよ。あれは多分"常時監視している"って意味で捉えちゃってますよ」

 

「な、なんでだ……?そんなに分かりづらかったか?そんなことないと思うんだけど…………」

 

珍しく弱っている店長かわゆす。俺はもしかするとギャップに弱いのかもしれない。

 

「なら、近藤君に全く同じ台詞を言わせてみたらどうでしょうか?」

 

PAさんのそんな提案により、俺も店長と全く同じ台詞をひとりに向けて言うことになった。

 

「ひとり」

 

「どうも。ライブ後にぶちまけた挙句幼馴染に処理させるゲロイン後藤ひとりです…」

 

「…………お前のこと、ちゃんと見てるからな」

 

店長ほどじゃないにせよ怖がられるだろうなぁと思っていた俺の予想は大きく外れることになる。

 

「えっ……?それって………」

 

あれ?なんかちょっと嬉しそう。トーンもできる限り寄せて台詞は全く同じにした。そのはずだが、何故か反応が全く違う。

 

「……ありがとう。私、頑張るから…!優太君には一番近くで見ててほしい…!!」

 

「お、おう」

 

そしてごく稀に見せるイケメンフェイスで返事をしてきた。こんな顔他の女子に見せたら一瞬で落とせそうである。

 

 

「………なんなんだ、この扱いの差は…?」

 

「………ひとりは人に心を開くのに時間かかりますからね……」

 

「店長。多分幼馴染の特権ってやつだと思います」

 

確かに。もし俺が幼馴染じゃなくて、ただのひとりの同級生だとしたら、多分今ほどフランクに話せてなかったんだろうな。多分頻繁にバグって会話どころではなくなるだろう。

 

「ところで店長。最初からあの子たちを出す気満々だったでしょう?」

 

「えっ?そうなんですか?」

 

PAさんの意外な指摘で知ったのだが、ライブの枠を1つ分ご丁寧に開けていたらしい。店長はツンデレを発動させて納得出来なかったら出すつもりはないって言ってたけど、やっぱりツンデレだなこれ。

 

そして、めでたくライブできることになったので、次は当然ノルマの話になる。今回のノルマは1人5枚。つまり合計20枚ということになる。

 

「の、ノルマ5枚!?」

 

他の人はともかく、ひとりはこのノルマを熟すのは当然難しい。だが、後藤家と俺の友人を合わせればそのノルマは余裕で達成することができる。

 

「ゆ、優太君……!!どうか、貴方様のお力を……!!!!」

 

案の定、俺と俺の友人にもチケットを捌いてほしいようだった。俺を頼ってくるのは最初から分かっていた。

 

「あ〜…。まあいいぞ」

 

「や、やった…!!これでノルマを達成できる……!!」

 

「………ただし、ノルマ分を捌けたあとだがな」

 

「………………えっ?」

 

俺の一言でひとりはこの世の終わりのような顔になった。確かに俺と友人を使えばノルマは達成できる。でもそれじゃダメなのだ。今回はよくても、今後も同じ方法を取れるとは限らない。そもそも今回だって俺はともかく中川や西村は来れるかどうか分からないし。中川は喜んで来そうだが、西村はゲームしたいからと来ない可能性が余裕である。

 

「いつまでも俺に甘えてもらっちゃあ困る。少しは自分の力でなんとかしてくれ」

 

「そ、そんな………。優太君に見捨てられた………」

 

………まあ、流石にひとりだけノルマを捌けなかったら可哀想だ。もしひとりが努力してもなおチケットを捌けなかった時は買ってやろう。ただし最初から俺をあてにする場合はこの限りではない。

 

 

 

 

「疲れた……。寝よっと」

 

俺事ではあるが、ここ最近は平和な日々が続いている。ひとりが結束バンドに入って以降、他の女子が俺に気がないことを確信したからか、ひとりのヤンデレが徐々に落ち着きつつある。バンド活動で昇華しているというのもあるだろう。だから一緒に寝る頻度は確実に減っている。今でも密着しそうなほど近い距離を歩いたり、実際に抱きついたりすることはある。でも以前よりは確実に良くなっている。

 

 

 

ガラッ

 

「えっ?」

 

部屋の電気を消して布団に入ろうとした時、唐突に俺は横に倒れた。疲れて無意識に布団の中に飛び込んだわけではない。何かに押された。暗くて何も見えない。正体不明の何かに襲われている。

 

やばい。強盗ってやつか?まさかウチに来るなんて思いもしなかった。まずいまずいまずい。もし相手が凶器を持っていたら、今の俺に勝ち目はない。この状況は大変よろしくない。どうすればいい?どうすれば助かる?

 

「………ゆ、優太君……」

 

「……………へっ?」

 

生命の危機を感じ、脳をフル回転させていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。間違いなく幼馴染の後藤ひとりだ。ということは、押し倒した犯人もこいつになる。正体が判明したため、緊張が一気に疲れてグッタリしてしまった。

 

「な、なんだ………。ひとりかよ。ビックリした……………」

 

「あ、あのあの……!」

 

「なんだなんだ。待ってやるから落ち着け」

 

何故か知らんが少々慌てているひとりをなだめると、深呼吸をしたひとりがとんでもない爆弾的発言をしてきた。

 

「わ、私の体を捧げればチケットを買ってくれますか?」

 

「…………………はい?

 

唐突に何を言っているんだ?俺何かしたか?なんかひとりのヤンデレの癇に触るようなことをした覚えはない……。

 

「一旦落ち着け。お前疲れてるんだよ」

 

「ふたりはライブハウスに入れないし、ジミヘンは犬だから入れない…!!チケット売れるのは父と母だけ……!!優太君が協力してくれないと本当にどうしようもないの…!!!」

 

「いやいや!それこそ学校のクラス…………」

 

あ〜……。そうだった。結束バンドでのひとりばっか見てたから忘れてたけど、超コミュ障だったわ。そんなひとりが数少ない友人と言ってもいい俺を抜きにしたら、チケットを捌く相手は限られてくる。

 

「わ、私。優太君になら……」

 

「華のJKがそんな簡単に男に跨るもんじゃありません」

 

「ひゃ…!」

 

緊張による疲労はいくらかマシになったので、ひとりを担いでそのまま家まで送ることにした。俺とひとりの家は近所……というか、隣なのでその距離くらいは担いでも問題ない。

 

「…………優太君になら別に良かったのに…」

 

なんかブツブツ言ってたような気がするが聞こえなかった。聞こえなかったふりではなく、マジで聞こえなかった。

 

 

 

数分を経てひとりの部屋まで運んだ後、階段を降りたところで美智代さんに遭遇した。

 

「あら?ひとりちゃんとやるべきことを終えた後かしら?」

 

「さてなんのことやら………」

 

「あれ?おかしいわね〜」

 

 

 

『ひとりちゃん。あなたの魅惑のボディを見せつければ優太君なんてイチコロよ!ついでに責任取らせてチケットも買ってもらいなさい!』

 

 

 

「……って言ったのに…」

 

「あんたの仕業か」

 

後藤ママンの仕業だったか。ひとりがヤンデレ関係なくあんな行動に突っ走ったのはそういうことだったのね納得。

 

「仮にも母親なら、不誠実を起こすような発言をしないでくださいよ……」

 

「あら?私は娘のことを思って言ったのよ?もしも変な男に引っかかったら……想像もしたくないじゃない?」

 

その言葉の後、聞いてもいないのに美智代さんによる未来の後藤ひとりシュミレーターが起動した。

 

 

『ようひとり。金なくなっちまったんだわ』

 

『えっ?ま、またですか……?この前も貸したじゃないですか……』

 

『頼むよ、また貸してくれよ〜。お前だけが頼りなんだよ』

 

『私だけが……!?で、でも…』

 

『俺のこと、嫌いになっちまったのか?』

 

『い、いえ、そんなことは……!』

 

『ありがとな。愛してるぜ、ひとり』

 

 

 

「こんな風にダメ男に貢がされて……」

 

 

 

『あっ?ガキができた?お前が勝手に孕んだんだろ?俺は欲しくねえっての』

 

『で、でも………』

 

『ごちゃごちゃ言うなって。いい病院紹介してやるから、そこ行け』

 

 

 

「身も心も都合のいいように使われて…………」

 

 

 

『え〜?誰その女〜?』

 

『しつこいストーカーだよ。俺との子供がどーのこーのって、ありもしないことをほざいて脅してくるんだよ』

 

『うわサイテー。二度と私のダーリンに近づくな!!』

 

 

 

「最後には捨てられて、結局産むことになってシングルマザーになって……」

 

 

 

 

『ふ、ふふふっ。あの人に似てるね。可愛いよ。カッコいいよ。ずっと愛してるからね』

 

『お、お母さん、こんなのおかしいって……。や、やめて……!!』

 

 

 

 

 

「子供に歪んだ情欲をぶつけちゃうんだわ〜!!!!」

 

「想像力豊かすぎる……」

 

この子にして親ありとはよく言ったものだ。コミュ力化け物の美智代さんとひとりは、容姿はともかく中身は全然似てないと思っていたが、妄想癖に関しては完全にこの人から受け継いだのだろうな。

 

「そんな未来を防ぐためにも、優太君!あなたが必要不可欠なの!!」

 

「なんでそこで俺が……?」

 

「逆に考えてみなさいよ。もしひとりちゃんがそんなダメ男に引っかかっちゃったら………。その男を殺したくならない?」

 

「それはそう」

 

当たり前よ。顔見知りがそんな扱いを受けていたら、例えひとりじゃなくてもイライラするわ。怒りだけで某超人2か3にはなれるくらいだぜ。

 

「それにひとりちゃんに他の男ができたところを想像してみなさいよ!それこそギターヒーローのアカウントで日々載せられる妄想彼氏君みたいな子ができたとして…!!」

 

確かあいつの妄想彼氏は超イケメンで高身長でバスケ部で優しいとかそんな感じだよな?うーん……。別にひとりのことを大切にしてくれるなら問題ないかなーって気はする。

 

「あなたはその男が羨ましくならないの!?」

 

「羨ましく……?う、うーん……。そもそもひとりに彼氏ができる想像がしづらいです」

 

「だったらまた私が解説してあげるわ!!」

 

そうして、また美智代さんの妄想力によって作られたVTR(音声のみ)を聞かされるのであった……。

 

この人、妄想だけで小説書けるんじゃないかな。あと寝かせてほしい、頼むから。

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた。今から数年前、俺達がまだ中学生だった時のことだ。この時のひとりは定期的に髪を切っていたから、それなりに身だしなみは整っていたし、今のようなピンクジャージじゃなくて普通に制服を着ていた。

 

「おはよ、ひとり」

 

「……おはよう」

 

「今日はいつにも増して暗いな……」

 

「だって、今日は体育祭だよ…?優太君は嫌じゃないの?」

 

「つまらない授業じゃないから楽しいじゃん。それに、こういう勝負事って俺好きなんだよね」

 

「そ、そうなんだ……。確か優太君も運動部だもんね……。それもそうなるか……」

 

「大丈夫だって。お前よりも運動できないやつなんて他にもいるんだから。心配いらねえって」

 

体育祭。俺も最初はつまらねえとは思いつつも、なんだかんだで授業を合法的にサボれること、勝負事が好きということもあり、当日が近づくにつれて楽しみになっていたな。毎年そうだった。

 

俺が担当した科目は主に短距離系だ。高校こそ通学時間やひとりのことを考えて部活には所属してないが、中学の時はバスケ部だった。理由はあのバスケ漫画にハマったからだ。影が薄い方じゃなくて、不良の天才スポーツマンの方。バスケをやったことがある人なら分かると思うが、比較的狭いコート内を何往復もする競技なので、自然と短距離は得意になる。そういう背景もあり、主に短距離系を担当していた。

 

『続いては借り物競争です!』

 

そういえば、借り物競争にも出場してたっけな。確かその時に引いたお題は………。

 

「………ひとり。こっちに来てくれ」

 

「ふぇ?えっ……?」

 

困惑するひとりをよそに、俺は手を引いてゴールを目指す。本当なら全力疾走をしたいところだが、それをするとひとりがダウンしてしまう。だが、その年の借り物競争はどれも思春期達にとっては難題だったようで、恥ずかしさから中々進めなかったとか後で聞いた。まあそんな要因もあって、俺とひとりはのんびりゴールを決めた。

 

「ぜぇ…………ぜぇ…………ぜぇ…………」

 

そしてゆっくり走ったつもりなのに、ひとりは既に満身創痍の模様。どんだけ体力がないんだよ。運動できなきゃ生きていけないとまではいかないけど、流石にそのレベルだと日常生活でも支障が出るんじゃないか?

 

「や、やったぞひとり…!1位になれたぞ!!」

 

「ぜぇ……あっ、よ、よかった、ね…」

 

取り敢えずひとりがやばいので、飲み物をおそそ分けして水分補給させた。少しすると息も整ってきたようだ。

 

「ねぇ、お題ってなんだったの?」

 

「さてね、秘密」

 

「えっ?急に私を走らせたのに教えてくれないの?」

 

「ご褒美なら後でハーゲン○ッツでも買ってやるから」

 

「そ、そういう問題じゃないよ…!」

 

その時俺が引いたお題……。それは……

 

 

 

 

 

 

 

「…………随分懐かしい夢を見たな…」

 

昨夜は美智代さんにあんなことを言われたから、てっきりそれに関連した夢を見るものだと思っていたが、そんなことはなかったようだ。いや、ひとりがダメ男に引っかかる夢とか見たくないから別によかったけど。

 

「優太く〜ん…………」

 

何故朝イチにひとりが俺の部屋にいるのだろうか。どうやら俺の布団に潜り込んだわけではないらしいが、せめて身支度を終えてから来てほしいものだ。どうせ家はすぐ近くなんだし。

 

「…………チケット販売、手伝ってください…………」

 

「……………しゃあないなぁ…」

 

仮にこの子が本当の恋に目覚めたとしても、ダメ男に引っかかるくらいなら…………。

 

…………やっぱり俺は中学の時から何も変わっていない。自分のことは自分が一番分かっている。故に、自分を誤魔化し続けるのも限度がある。

 

 

 

 

「お母さん、出かけてくる」

 

「あらそうなの?いってらっしゃい、優ちゃん。…………さーて、今日は久々に家の片付けでもしよっかな〜……」

 

優太の母は、休日は疲れを癒すために全力でダラダラして過ごすことが多いが、気分によってはたまに掃除をすることがある。

 

「あら、優ちゃんが幼稚園の時の写真だ。懐かしいな〜………」

 

その写真にもしっかりと優太とひとりの2人が写っていた。2人は生まれた時から幼馴染の関係にあり、物心がついた時にはすでに一緒にいるのが当たり前になっていた。

 

「あらやだ、こうやってアルバムを見てると片付けなかなか進まないんだよね〜…。…………あっ」

 

優太の母は思い出というものを大切にする人間だ。その為、家族で撮った写真や思い出の品はアルバムに保管したり、金庫に閉まっていたりする。

 

「これって確か中学の時の借り物競争の………。せっかく相手がぐいぐいきてるんだから、素直になっちゃえばいいのに」

 

優太の母はそう愚痴ると、紙に書かれたお題を丁寧にしまって、ひとりと優太が一緒にゴールした写真と同じ場所にしまった。

 

「………まあ、思春期の男の子ってそういうものなのかな〜…」

 

だが、優太の母はそのお題を本人の許可無しで勝手に教えるほど意地悪な人間ではない。だが、あまりにもヘタレな息子を見てはいい加減ひとりちゃんに教えちゃおうかしらなんて考えている。

 

「でもそれやると優ちゃんに嫌われちゃいそうだしな〜……」

 

 

()()()()

 

優太とひとりが一緒にゴールした写真と共にしまわれた紙には、手書きの文字でそう記されていた。

 

もしかすると、その時の優太は純粋だったのかもしれない。家族や友達としての好きという意味かもしれない。しかし、それならわざわざ隠す必要はないはずだ。つまり…………。

 

 

 

へくしょうぇいっ!!!!

 

「すごい癖のあるくしゃみ……。もしかして、また風邪?」

 

「いや、お母さんが俺のことをヘタレって罵ってきた気がする」

 

「凄い具体的…………」

 




 原作コミックス読んでて思った。『ぼっちちゃんの妄想癖って間違いなく美智代さんの遺伝だよな』と。どうやらお婆ちゃんもぼっちちゃんと同じタイプのようなので、原作でそろそろ出てきてくれないかなぁと思う今日この頃。孫は自分に似てると思って親近感を感じてたら、他校の子達とバンド組んでライブまでしてる様を見て孫の成長に感動すると同時に脳破壊されてほしい()

 ちなみに、「なんで優太君はとっとと付き合わないの?」と思ってる人は少なくないと思います。私から現時点で言えることは、幼馴染君は思い込みが強い一面もあるということ。とだけ言っておきます。この言葉の意味はそのうち……というか、それを表している描写は一応既に出ています。

 ちなみにアンケートについてですけど、ぼっちちゃんはまあ想定内だとして、虹夏が多いのが意外だった…ww。まああんな過去もあるし、一番可能性としてはあるかも…?PAさんも3位と意外な結果ですね。星歌さんが圧倒的に少ないのはなんか解釈一致。

ヤンデレが一番似合うのは…?(皆さんのお好みを知りたいだけです)

  • 後藤ひとり
  • 喜多郁代
  • 伊地知虹夏
  • 山田リョウ
  • 伊地知星歌
  • PAさん
  • 廣井きくり
  • 後藤ふたり
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