幼馴染君がぼっちちゃんを甘やかし過ぎた結果……   作:Miurand

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 最近モチベ落ち気味ですが、久方ぶりのヤンデレぼっちちゃん書けてちょっと回復。というか、この作品ってスレに貼られてたんですね。見れなくなった作品をどうにかして見れないかと試行錯誤してたら偶然見つけました。



ヤンデレ+酔っ払い=混ぜるな危険

本日は何もない休日………。と言いたいところだが、今日は俺の友人2人が来ることになっている。メンツは言わずもがな、あの中川と西村だ。なんでわざわざ東京の方から金沢八景まであの2人が来ることになったのかというと、正直しょうもない理由だった。

 

「俺、近藤の家に行ってみたい」

 

「ん?急にどうした?」

 

「俺らっていつも家が近い俺の家で集まるだろ?だけど近藤の家には行ったことがないなぁって」

 

「西村の家じゃダメなのか?俺の家は学校からだと無茶苦茶遠いぞ?」

 

「別に俺の家でもいいけど、確か近藤の家って金沢八景だろ?今週末は花火大会があるじゃん?」

 

「ああ、よく知ってんな」

 

「つーことで、俺と西村と近藤で金沢八景まで花火見に行こうぜ!」

 

補足説明しておくと、西村も中川もインドア趣味な方だ。近所や超有名どころの花火大会に行こうという話なら理解できるのだが、わざわざ俺のところまで来る理由が……?

 

「んで、近藤の家に泊まろうぜ。たまにはお泊まりしたい」

 

「ああ、ありだな」

 

「それそっちがメインだろ?」

 

「逆に何がメインだと思ったんだ?」

 

要約すると、『お泊まりしたい!』ということだ。これで説明できる。客人を招くのは久しぶりだな。取り敢えず客間として使っている空き部屋を清掃することにする。俺の部屋に招いてもいいのだが、3人ともなると流石に狭いし、そもそも空き部屋の方がずっと広い。あっちなら5,6人までは余裕で同じ部屋に寝ることができるはずだ。

 

ちなみに今日は両親共に夫婦旅行により不在。一応親には友人達が泊まりにくることは事前に伝えており、許可は得ている。だから親に怒られるなんてことはないのだが、一つ問題があった。

 

「…………飯、どうすっかなぁ…」

 

前にも語ったと思うが、俺は料理スキルを持ち合わせていない。あいつらに各自用意してもらう方式でも……っと、ここで思い出した。そういや祭りにも行くんだったか。ならそこで食べ歩きすれば解決だな。よし、清掃も終了。あとはあの2人が来るまでは特にイベントはなかった……はずだった。

 

「………部屋にいないと思ったらこっちにいたんだ」

 

「ギャアアアアアッッ!!!?」

 

 

 

 

 

 

先程は映像が乱れました。視聴者の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。後藤ひとり様がいつもより湿気を多く含んだ根暗オーラを放った状態で話しかけてきたために、私は幽霊と勘違いして驚いてしまったのです。

 

つーか、何故インターホンすら鳴らさないのか。ここはお前の家ではない。

 

「…………別に家に入るのは構わんが、せめてインターホンを押してくれ」

 

「優太君のお母さんに合鍵をもらったんだけど…………」

 

「………はっ?」

 

なぜ?なんで?どうして?母さんは一体何を考えているのだろうか?普段のこいつの行動を見た上で鍵を渡したのだとしたら正気を疑う。

 

「………ひとり。今日は俺の家に来るなよ。客が泊まりに来る予定だからな」

 

「………お客?」

 

客という単語を聞いたひとりは、久方ぶりにヤンデレスイッチをONにしようとしていた。多分女の子を連れ込む気ではとかロクでもないことを考えているのだろう。面倒なことになる前に事実を話して誤解を解けば解決だ。

 

「…………あっ。もしかしていつもの2人?」

 

「よく分かったな。その通り」

 

「そっか。分かった」

 

………と思ったら、何も説明してないのにひとりが察した。あらこの子、ひょっとしてバンド活動を始めたことによって心に余裕が生まれてるのでは……?これはいい傾向ですね。ならばなおのこと結束バンドに留まってもらわねばならない。

 

「………さあ、チケットを売りにいこうか」

 

というわけで、ひとりのチケットが売れるように助力する。どうせ中川達が来るのは夕方以降なので、それまでだったら何も問題ない。

 

「チケットを売るって言っても、いきなり話しかけるの?」

 

「いや、それじゃ買ってくれる人は少ないだろうな。結束バンドはまだ知名度が低い。というか、そもそもライブを一度もやったことがないからな」

 

そんなバンドのためにお金を払うかと言われると、余程の物好きか発掘癖のある人でもない限り望みは極めて薄い。どんな曲を弾くのか、どれほどの腕前なのかも分からぬままライブに行くのは一種のギャンブルのようなものだ。

 

「………正直、知名度をあげるだけならネットを使えばどうにかなると思う。が、チケットを売るとなると話は別だ」

 

最早独自のサイトを運営できるほどの余裕があれば、公式サイトでも作ってそこで電子チケットでも販売すればいいのだが………。

 

「………一番手っ取り早いのは、お前が路上ライブをすることだ」

 

「……………ヴェ!!!?

 

ひとりが汚い声をあげて悲鳴をあげた。まあこの反応は予想できた。ただでさえ人の視線が苦手なのに、仲間も不在の状態でたった一人で路上ライブをしろって言っても無理がある。俺でも渋るし………。

 

「も、もしかして、ギターを持って外に出ろって言ったのって………」

 

「お察しの通りだ。だが、無論一人でやれとは言わないさ。結束バンドのメンバーにでも……」

 

俺はここまで言いかけて、ある致命的な点に気づいてしまった。ギターとベースは持ち運びは比較的簡単だが、虹夏さんのドラムは難しい。車でも運転できれば持ち運びはなんとかなるのだが、今の俺達では年齢的に運転免許を取得することもできないのでどうしようもない。

 

ならば、リョウさんと喜多さんに来てもらうか………?ドラムだけ録音した音声を再生すればなんとかなるか……?

 

「ううぅ…………」

 

俺が思考を巡らしていると、一人の女性が目の前で倒れた。なんだ?急病か?だとしたらまずい。

 

「ひとり、119番してくれ」

 

「えっ、えっ…?」

 

「早く!この人急病人かもしれない!」

 

「わ、分かった!」

 

俺はうつ伏せに倒れた人を抱え、仰向けにする。まずは鼻付近に手を近づけて呼吸をしているかの確認をする。………呼吸はしているようだ。なら心臓も恐らく動いている……。

 

………と、ここまでやってある違和感に気づいた。この女性は独特の匂いがする。ほんわかな甘い香りではない。タバコの匂いでもない。………この匂いは…………。

 

「……………ただの酔っ払いかよ…。いやでも、もしかしたら急性アルコール中毒かもしれない…………」

 

そうと決まれば、救急車が来る前までにできる限りのことをしなければならない。と言っても、今更酒を吐き出させることは難しいだろうから、できるだけ血中のアルコール濃度を薄めるようにする。

 

「あの、すみません。俺のこと見えますか?見えるならこれ飲んでください」

 

幸いにも、まだ未開封の水があったのでそれを差し出すと、女性はお礼を言って500mlあった水を一気に飲み干した。

 

「ぷはーっ…!いや〜ありがとね〜。お陰で生き返ったよ〜!」

 

………………なんだよ。ただの酔っ払いかよ…(2回目)

 

 

 

 

 

 

あと少しのところでひとりが119番通報をしそうになったので、それを止めた。そこまではいいのだが………。

 

「ちょっと〜…!!お酒返してよ〜!!!」

 

「いやあんた状況分かってる!?酒飲んでそんなにベロベロになってるのにまた飲んだら更に状況悪化するぞ!?下手したら死ぬぞ!!!?」

 

この人、よっぽど酒が好きなようだ。しかも常備していた酒はどれも10%を超える高濃度物ばかり。こんなのガブ飲みしたらマジで命に関わる。

 

「まだ未来ある若者には分からないよ〜!大人になったらお酒がないとやっていけないんだよ〜!!」

 

「うちの母は酒が飲めない体質ですが生活は充実してますよ?」

 

「それは君のお母さんが優秀なだけだよ〜!!!!」

 

「とにかく、お酒は酔いが覚めてからですよ。それまではお預けです」

 

「なんで未成年の君が預かるのさ〜!警察に捕まっちゃうぞ〜?」

 

「大丈夫ですよ。酔っ払いに押し付けられたとでも言っとけば」

 

「私を警察に突き出す気なの…!?」

 

「それが嫌ならお酒は我慢してくださいよ。別に一生飲むなって言ってるわけじゃないんですから」

 

「ぐぬぬぬ………」

 

「あわわわ…………」

 

俺と目の前の女性が言い合いになってるせいでひとりが困惑しているのが目に見えている。だが止めないでくれ。相手を止める分には一向に構わないが、俺を止めたらこの人は急性アル中で死ぬ。目の前で人が死んだら流石に目覚めが悪いので、それはなんとしても防ぎたい。何よりも、ひとりにトラウマを植え付ける可能性がある。ただでさえあんなことがあったのに。

 

「おっ!少年の意図が読めたぞ〜…?お酒を返して欲しければ、私の身体を好きにさせろって言いたいんでしょ〜?」

 

「……………はっ?」

 

何言ってんのこの人?でもよく見たらこの人のルックスいいな。顔は整っているし、スタイルも悪くなさそうだ。だけど酔っ払い相手っていうのが……。そもそも俺は……

 

「くぅ…!ほんとはこういうこと気軽にしたくないけど、お酒のためだから仕方ない………!!!」

 

「いやいや俺そんな要求したことないし、どんだけ酒に命かけてるんだよ!!」

 

「そりゃ酒は命よりも大事だから!」

 

「命が軽い!!!」

 

「えーい!身体は好きにさせてやるからお酒返せ〜!!」

 

「どわぁ!!!?」

 

俺は大人の女性というものをなめていたのかもしれない。俺よりも小柄だと思っていたが、意外と力が強い。俺は地面に押し倒されて身動きが取れない状態になってしまった。

 

「あれ〜?君って近くで見ると結構いい顔してるんだね〜。君相手なら別にいいかも……?そういや君のお母さんって優秀な人なんでしょ?なら君も将来安泰だったりするのかな〜?」

 

「ちょっと待って…!やめてくださいって!」

 

「なんだよ〜!君から求めてきたくせに〜!」

 

ちくしょう!酔っ払いなめてた!ここまで話が通じないとは思ってもいなかったよ!!まだヤンデレアクセル全開のひとりの方が話通じるよ!!

 

「いいから早く離れてくださいって!でないとあなたの命が危ない!!」

 

「えっ?どゆこと?もしかして、君ってえぐいテクニシャンなの?」

 

ちがーーう!!!一度スイッチ入ると頭ピンクになるのかアンタは!!もうどうなっても知らねえぞ!!!!

 

 

 

「あの、すみません」

 

「え〜?今お取込み中なんだけど〜?」

 

「優太君から離れてくれませんか?」

 

「えっ?」

 

「聞こえませんでしたか?()()優太君から離れてください。今すぐに

 

あーあ。完全に覚醒してしまったよ。ひとりのヤンデレモードだ。しかも今回のは完全体と呼ばれるものだ。こうなってしまっては、ひとりに怖いものは何もない。これはひとりの死亡フラグでもなんでもない。言葉通り、怖いものがなくなってしまうのだ。

 

「えっ、いや〜。ほら!この子が私の身体を好きにさせないとお酒返してくれないって……」

 

「自分の都合のいいように改変するのやめてください。優太君はそんなこと一言も言ってません」

 

「君が聞き逃しただけじゃ…」

 

「あり得ません。私、優太君の言葉は()()()()聞き逃さないので」

 

やば。今日のヤンデレ濃度はカル○ス原液よりもずっと濃いぞ。これどうなるんだ?チケットどころじゃなくね?どうしてこうなった?

 

「で、でもお酒…」

 

「……………………」

 

口で説得しようとしても無駄だと悟ったのか、ひとりは突然無言になった。ハイライトのない暗い瞳で目の前の女性をただ見つめていた。

 

敵意があるようでない。何を考えているのか、何をしでかすのか分からない目だ。

 

「は、はい……………」

 

酔っ払って判断力が鈍った女性も流石に本能で危機を察したのか、俺から離れた。

 

「………はっ!優太君、大丈夫?」

 

「お、おう……。ありがとな……」

 

まさかこのヤンデレ要素が俺の貞操を守る日が来るとは思いもしなかったな…。そしてひとりはヤンデレモードが切れたようだ。普段はコミュ障だが、人に強気に出るために一種の二重人格的な何かが発生しているのかもしれない…。

 

「い、いや〜……。まさか彼女ちゃんがいるとは思わなくてごめんね〜。予め分かってたならあんなことしなかったのに…………」

 

「…………それ、本当ですかね?」

 

しかし、またしてもひとりの目からハイライトが消えかけていた。

 

「まさか少年がここまで頑固だなんて思わなくてさ〜。ちょーっと色仕掛けすれば怖気ついて返してくれるかと思ったんだけど………」

 

「あっ。そういうことですか」

 

ひとりは先程の女性の行動に納得したようだ。その証拠としてハイライトがちゃんと帰還していた。

 

「……あ〜。一瞬とはいえ胃がキリキリしたぁ…。酒キメるかぁ……」

 

どこから持ち出したのか、全てお酒はこちらが預かったはずなのに、ビンを出してきやがった。どこから出した?あんたの服に四次元ポケットでもついてるのか?三次元ポケットじゃ絶対に入らないよね?

 

 

 

 

まあ、酒をキメることは結局止められなかった。もうなるようになれと思って諦めた。多分この様子だと普段から酒を大量に飲んでるだろうし、今更だろう。えっ?諦めが良すぎる?流石にヤンデレと酔っ払いの同時相手はキツいっす。

 

そして酔っ払った勢いで彼女のテンションは爆発的に上がり、先程の出来事を忘れたかのように俺とひとりに接してくる。そうしているうちに彼女の名前が判明した。この女性は『廣井きくり』。新宿のライブハウスでインディーズバンドをやっているそうだ。その情報を聞いた瞬間にひとりはギターを持ってその場を退散しようとするが、きくりさんに捕まった。

 

そこで何故か『ギターを買ってみたが挫折した』と嘘をついて逃げようとするやいなや……。

 

『売るのはいつでもできるんだから…。もうちょっとだけ頑張ってみよ?』

 

………と、廣井さんが言ったのだ。この人、酔っ払ってるからどうしようもない人だと思ってたけど、シラフなら無茶苦茶いい人なのでは……?

 

ちなみに酒とベースを命よりも愛するベーシストだとも言っていた。ここで感じた違和感はひとりも感じたようで…………。

 

「あ、あの……?ベースはどちらに…?」

 

いつも肌身離さず持っているとか言っておきながら、ベースらしきものはどこにもない。でも彼女には四次元ポケットがあるはずだ。でなければ何もないところから酒瓶など出てくるはずがない。そもそもあの大量のパック酒も四次元ポケットがないと収納するのは厳しいはず………。

 

「……お店に置いてきちゃった」

 

そして何故かひとりと俺も巻き込まれ、廣井さんのベースを取りに行くことになった。いやなんでだよ、一人で行ってこいよ。と思ったが、ベロベロに酔ってる人を放っておくわけにも行かず、仕方なく同行することにした。

 

んで、新宿付近まで電車で移動することになったのだが、今日は朝早くから客間を掃除していた関係で無茶苦茶眠かった。

 

「あれ〜?優太君お疲れ?」

 

「今日は家に友人が泊まりに来るので、朝早くから掃除してたんですよ……」

 

「おお〜!友達同士でお泊まりか〜!いいなぁ、そういうの憧れちゃうな〜」

 

廣井さんはやったことないのかと聞こうとしたが、眠気が段々と強くなってくる。電車ってモーター?エンジン?多分モーターかな?その音がうるさいはずなのに不思議と眠たくなるんだよね。

 

「そんなに眠いならお姉さんの肩貸してあげようか?」

 

お構い……なく…………

 

そこから俺の意識は品川まで途絶えることになる………。

 

 

 

 

「ありゃりゃ、寝ちゃったね〜」

 

ここからは優太君の代わりに、幼馴染の後藤ひとりがお送りいたします。えっ?優太君はどうしたかって?彼なら私の隣で寝ています。

 

「あらら。ひとりちゃんの肩を選んだかぁ……。これでカップルじゃなくてただの幼馴染ってマジなの?」

 

「は、はい」

 

最近、虹夏ちゃんや喜多さんとかによく『二人はカップルみたい』って言われるけど、実際はただの幼馴染の関係に留まっている。私としてはもう少し進展があってもいいのではないかと思っている。でも、彼は私を異性として意識していない節がある。少しでも異性として意識してるなら、今頃少しはえっちな悪戯されてもおかしくないはずだ…。お母さんもそう言ってた。こういう類の話をするときのお母さんは嘘をつかないから間違いないはずだ。

 

…………やっぱり私に魅力がないのだろうか……?でも、前に可愛いしスタイルもいいって褒めてくれたはず…。優太君は嘘をつくのが凄い下手くそだから、あの時の反応を見るに本心から出た言葉のはず…………。

 

「そーだ!せっかくならひとりちゃんと優太君のことについて話聞かせてよ!異性の幼馴染って私の周りにはいなかったからさ〜!ちょっと気になるんだよね!」

 

「あっ、はい」

 

私は廣井さんに、自分と優太君が普段からどんな生活を送っているのか話すことにした。まずはやっぱり外せないのが目を覚ましてからのおはよう……

 

「ちょいちょいちょい…。ちょっと待って?目を覚ましてからのおはよう?それって電話で?それともロインで?」

 

「あっ、いえ。普通に口から…です」

 

「…………?????」

 

あれ?廣井さんの手が止まった。さっきまでお酒飲みながら話していたのに……?

 

「えっ?何?ひょっとして、二人って一緒に寝てるの?」

 

「あっ、はい。流石に毎日ではないですけど、週に数回は……。優太君はダメだって言うんですけど…………」

 

「…………えーっと?えっ?んん??」

 

さっきまでマシンガンの如く話題が途絶えなかった廣井さんが打って変わって黙り込んでしまった。そんなに難しいこと言ったかな?

 

「………ちょっと待って。お酒飲んでるせいかな?状況がちょっと理解できない。えーっと?君達は別に恋人でもなんでもないけど幼馴染なんだよね?」

 

「は、はい…」

 

「でも一緒に寝てると?」

 

「あっ、はい」

 

「で、それは今の話?それとも昔の話?」

 

「いえ、今の話です」

 

「………それで付き合ってない…?ホントに?」

 

「ほんとです」

 

「嘘つけ」

 

廣井さん。本当のことなんです。そもそも一緒に寝ること自体は昔からしてることだし、それが今も続いているだけだから何もおかしいことはない。

 

「………あれ?」

 

昔から一緒に寝てるから……?もしかして、幼少期からずっと一緒にいたせいで異性として見られていないのでは…!?じゃ、じゃあ…!!!愛してるゲームは………!!?

 

『おやおや、あのひとりがそんなゲームをやりたがるなんて…。まさかひとりに春が訪れたのか!?』

 

うぐっ……!!じゃ、じゃあ…!!いつも一緒に寝てるのは!?

 

『大きくなっても一人で寝れないなんて、自立した時どうすんのさ。高校生になってもこんなんじゃ、お兄さんは心配で心配で仕方ないぞ。今回だけ特別だ』

 

ふごぉ……!!?じゃ、じゃあ、もしかして今まで好きって言ってもスルーされたのって……!!?

 

『何今更言ってんだ?そんなこと知ってるぞ。だって、俺とお前はもう家族………いや、兄妹みたいなもんだろ!』

 

……あぁ。そういうことか。私は優太君の幼馴染として生まれたから、事実上優太君を独占できるって思ってたけど、逆だったんだ。幼馴染に生まれたことによって、信頼関係は構築されても『幼馴染』止まり…!!そこから先のあんなことやこんなことをやるような関係にはならないルートだったんだ…!!

 

「あっ、あはは…………。私は最初から無駄な努力をしていたんだ………」

 

「わははは!!ひとりちゃんってもしかしてやばい子〜??っておいおい溶けてね?ちょっと待て!待て待て!!早まらないでよひとりちゃん!?うぉーい!!!!?」

 

 

 

 

 

「んはっ!!!」

 

あ、あれ?ここはどこ?私は誰……?

 

「あっ、よかったひとりちゃん。少しの間だけど気絶してたんだよ?」

 

そ、そうだ。廣井さんのベースを取りに東京に向かってる最中だった。

 

「………ひとりちゃん、寝言で意識されてないって言ってたけどさ。一つ聞かせてくれない?」

 

「えっ?はい……?」

 

「………一緒に寝る時、優太君はダメだって言うんでしょ?どんな風にいつも断ってるのさ」

 

……?それを聞いてどうするんだろう?

 

「えーっと…。確か、『付き合ってもいないのに一緒に寝るのはおかしい』って…………」

 

「へぇ。じゃあ問題ないじゃん。優太君は君のことを十分異性として意識してるじゃん」

 

「………えっ?ど、どうしてそんなこと言い切れるんですか?」

 

「だって、異性として全く意識してないなら、『付き合ってもいないのに』なんて言葉、出てこないと思うよ?」

 

「…………あっ」

 

それもそうかもしれない。もし私と優太君が兄妹だったとして、未だに高校生になっても兄と一緒に寝たがる妹に『付き合ってもいないのにおかしい』なんて言うだろうか………?いや、言うはずがない。せいぜい『この歳にもなっておかしいだろ』とか『いい加減恥ずかしくないのか?』とかだろう。

 

じゃ、じゃあ………!!

 

「というわけで、アプローチしていけば自然に落とせるでしょ。頑張れひとりちゃん!」

 

「あ、ありがとうございます…!」

 

初めて会った時は『優太君を横取りしようとするコソ泥』かと思っていたけど、実は無茶苦茶いい人だった。だってこんなに私のことを応援してくれるんだもん!!絶対いい人に決まってる!!

 

「そうそう。優太君を確実に落とすならまずは…………」

 

 

 

 

 

「ふぁぁ……。眠い…………」

 

居酒屋でベースを回収するなり、再び金沢八景に向かうという謎ムーブをかます女性、廣井きくりさん。もしかすると家がそっちの方なのかもしれない。多分そうなんだろう。

 

「優太君、行きの電車ではずっと寝てたもんね」

 

そしてひとりは行きの電車で廣井さんと沢山喋ったらしく、その反動からどうかは知らないが今は隣で寝ていた。俺の方に頭が乗っかっているが、流石に振り払うようなことはしない。それをするとせっかくグッスリ寝ているのに可哀想だし。

 

「あーそうそう。私、ひとりちゃんに()()アドバイスしといたよ」

 

「………ん?ああ。音楽の道を行く先輩としてですか?いや〜ありがとうございます。ひとりはただでさえ人見知りなので、目上の人と話す機会なんて殆どないでしょうし………」

 

「なんか勘違いしてるけど違うよ?」

 

えっ?ひとりが熱中して話せるのは音楽関係くらいだと思ったけど違うのか?廣井さんもバンドをやってるって言うし、てっきりそっちの方向で盛り上がったのかと………。

 

「ううぅぅ……!!!つーかなんで私が恋のキューピッドになってるんだよぉおお……!!これからリア充が誕生すると思ったら虚しくなってきた……!!今からヤケ酒だぁ……!!!」

 

「おい馬鹿やめろ!!瓶まるごとはやめろ!!!死ぬぞ!!!!!!」

 

なんか不穏なワードが聞こえたような気がするが、俺は廣井さんのヤケ酒を阻止するのに必死になっていたので、事が済んだ頃にはすっかりそのことを忘れていた。

 




 楽しみにしていた作品が読めなくなって物凄くショックだ……。まだ読み進めている途中だったのに……。そんなことはともかく、今回は少し難産でした。お姉さんとオリ主をどう絡ませようかと思案した結果、久方ぶりのヤンデレアクセル全開のぼっちちゃんが書けました。できればもっとぼっちちゃんに積極性を持たせたいけど、ぼっちちゃんだからなぁ……。ということで、次回も少し難産気味になるかもしれません。

 そしてなんだかんだで酔っ払いを放っておけないという理由で同行する優太君……。こんな行動を昔からぼっちちゃんにやってたらそりゃ依存するよね………。

ヤンデレが一番似合うのは…?(皆さんのお好みを知りたいだけです)

  • 後藤ひとり
  • 喜多郁代
  • 伊地知虹夏
  • 山田リョウ
  • 伊地知星歌
  • PAさん
  • 廣井きくり
  • 後藤ふたり

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