幼馴染君がぼっちちゃんを甘やかし過ぎた結果……   作:Miurand

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 最近暑くて溶けそう。そして無茶苦茶忙しかったのがようやく解放された。やったね!反動でピクミンを3時間ぶっ続けでやっちまったよ。休憩なしで2時間越えでゲームしたのって何年ぶりだろ……。
 そんな無駄話は置いといて、結局このお話、本編は何話まで続くか予想できなくなっちゃった。あまりグダらないようにしますけどね。

追記:ちょっと表現をぼかしました。



囲う両家/飛び出す幼馴染君

「た〜だいま〜!!」

 

「あら?夫とふたりが帰ってきたみたいだわ」

 

「…………」

 

優太とひとりちゃんが閉じ込められてから、1,2時間は経過している。相変わらず進展がないようなので、私は2人を解放してあげることを提案すると…。

 

『ダメよ〜。ひとりちゃんの目的が達成されてないんだから〜』

 

その一言により、否決されてしまった。

 

「あれ〜?お風呂場から声が聞こえるよ〜?お姉ちゃん?」

 

「あれ?ひとり、もうお風呂に入っているの?今日は暑かったもんね〜」

 

おっと…。我々4人の中で唯一の反対派の筆頭と言える、直樹さんが帰宅したようだ。ふたりちゃんとどこかで遊んでいたのだろうか?家族思いのいい父親だ。それだけ愛情を注いで育てれば、嫁ぐことに何か思うところが出てしまうのも仕方ないのかもしれない。

 

「あれ?和義さん?何でうちに?」

 

「すみません。うちの給湯器が故障してしまったもので…。こちらのお風呂を貸していただくことになりました」

 

「気にしなくていいですよ!じゃあ、せっかくですし、今晩は晩酌でもしませんか?」

 

「おや?明日はお仕事ではないのですか?」

 

「大丈夫。僕窓際族だから」

 

この人は昔からこう言っているが、本当に窓際族なのだろうか?もし本当に窓際族なのだとしたら、妻と娘2人を持つ大黒柱としては危機的状況ではないのだろうか?

 

恐らく、自称窓際族なのだろう。そうだと信じよう。

 

「ねえねえおじさん。お風呂が壊れたなら、ユータ君も来てるの?」

 

「うん。来てるよ。息子なら今……」

 

ふたりちゃんに説明しようとして、思いとどまる。直樹さんがいる前で、真実をそのまま語ってもいいのだろうか?娘想いのこの人のことだから、卒倒して倒れてしまうのではないだろうか?

 

「優太君とひとりちゃんなら、今頃仲良くやってると思いわよ?邪魔しちゃダメよ、ふたり♪」

 

「………え"っ?

 

「え〜!私も一緒に入りたい〜!」

 

「ダメよ〜。ふたりはお母さんと一緒に入りましょうね〜♪」

 

ふたりちゃんは、時々歳に似合わぬ辛辣な言葉を吐くことがあるものの、こうして年相応に駄々をこねる様子を見ると、やはりこの子も5歳児なのだと安心する。ひとりちゃんはなんだかんだで舐められているものの、好かれてもいるようだ。

 

「ね、ねえお母さん……?ひとりは今、お風呂に入ってるんだよね?」

 

「ええ、そうよ?」

 

「じゃ、じゃあ優太君はどこにいるんだい?うちに来ているんだろう?」

 

おや?直樹さんの様子が……。後藤家の中は寒くもないのに震えている。私はとんでもない意見に賛同してしまった気がしてならない。

 

「だから、さっき言ったじゃない。『優太君とひとりちゃんなら、今頃仲良くやってると思う』って」

 

「……………か、和義さん?」

 

直接的な表現、具体的な回答を求めているのか、私の方に視線を向ける。正直心苦しいが、ひとりちゃんの病みが深刻化する前に優太とくっつけたいのも事実。直樹さん、娘さんのためだと思って、耐えてください………。

 

「…………優太とひとりちゃんは、今頃お風呂に閉じ込められていると思います」

 

と、とじ……!!?

 

優太とひとりがお風呂場にいる。これだけだと、優太にヘイトが向いてしまうかもしれない。あくまで私達が主導したことをアピールする為に、敢えて情報を付け加えた。

 

「飲み物ならたくさん用意したから大丈夫よ?」

 

「そういう問題じゃないでしょお母さん!?何をしたのか分かってるの!?」

 

流石、我々の中で唯一の常識人と言っても過言ではない。普通の人ならこういう反応をするのだろう。私も昔ならこういう考えに至ったのだろうが、哀しきかな。妻に影響された私は、思うことはあれど、阻止するという思考に至らないのだ。

 

「あら〜、別にいいじゃない?両想いなんだし?」

 

「でも、物事には順序っていうものが……!」

 

「もう一緒に寝てるんだし問題ないんじゃないかしら?」

 

「うっ……。でも、だからと言って閉じ込めるのは流石におかしいよね!?」

 

「そうでもしないと、ヘタレで頑固な優太が折れてくれないので……」

 

「和義さんもグルだったの!?」

 

「あなただって2人の様子を見て思うところがあったでしょ?だから私達が手伝ってあげたのよ?」

 

「いや、私はただ傍観者になっただけに過ぎませんが………」

 

「見過ごしてる時点で同じだよ!僕は2人を解放してくるからね!」

 

直樹さんは、珍しく美智代さんに気押されることなく、自身の意見を通して行動していた。

 

「ひとり〜!優太君!今すぐそこから出してあげるからね〜!!」

 

直樹さんが、リビングから廊下、脱衣所へと繋がる扉を開けたまま移動したため、声が丸聞こえになっている。

 

「お父さん。必要ないよ」

 

「えっ?でも………」

 

「お願い。そのまま鍵をかけたままにしておいて」

 

「いやいや、そんなことでき…」

 

「……な、直樹、さん……」

 

微かに優太の声も聞こえた。

 

「優太君!?もしかして熱中症かい!?今すぐに……」

 

「……ごめん、なさい…」

 

「どうして謝るの!!?それ何に対する謝罪!?」

 

「……お父さん。()()()()()()だから、お願い」

 

ひとりちゃんのその言葉を最後に、三人の会話は終わる。脱衣所の扉を閉め、リビングに戻ってきた直樹さんは、椅子に座るなり……。

 

………ふたり。僕はもう疲れたよ…

 

………燃え尽きてしまった。

 

「あはは!!お父さん真っ白〜!!」

 

「やったわね、和義さん!!」

 

「……」

 

素直に喜んでいいのか、今更ながら分からなくなってしまった。本当にこれでよかったのだろうか?

 

「…………直樹さん。今日は沢山飲みましょう……」

 

「今夜は御馳走ね♪腕が鳴るわ〜!」

 

「えっ?ごちそうなの!?やった〜!!」

 

この中で、唯一無邪気に喜んでいるふたりちゃんは、きっとこの空間の中で唯一の癒しだったに違いない。

 

 

 

ちなみに、ご馳走代は私が費用を持つことにした。ヘソクリが減ってしまうが仕方ない。未だに真っ白なままの直樹さんを何とか元気つけたいし、あの後のお風呂場をそのまま使うのはよろしくないだろう。色々な意味で。

 

「えっ?やっと!?入念に打ち合わせした甲斐があったね〜!!!」

 

「いえーい♪」

 

……そして、私の妻、近藤沙織と美智代さんがハイタッチをしている。どういうことかと聞いてみれば……。

 

「実はね、給湯器は壊れてない。ただ元栓を閉めただけ」

 

「…………はい?」

 

「つまりね、優太君とひとりちゃんを無防備な状態で2人きりにするために敢えて給湯器を止めたってこと」

 

「沙織さんありがとね〜。ひとりちゃんもすっごく喜んでいると思うわ♪」

 

「美智代さんこそありがと。うちの優太がやっと素直になれるわ」

 

「………つまり、これは起こるべくして起きたことだということか?」

 

「ねーねーおじさん?なんでお姉ちゃんとユータ君が一緒にお風呂に入って、あんなに喜んでいるの〜?」

 

「………ふたりちゃんも大きくなれば、きっと理解できるよ」

 

「えー?今おしえてよ〜!」

 

「………優太とひとりちゃんが、今までよりももっと仲良くなるから………だと思うよ」

 

「そうなんだ〜!じゃあもうすぐ結婚だね!!」

 

………ふたりちゃんは、本当は意味が分かっているのではないだろうか?そう思えるほど鋭い発言だった。

 

「というわけで、今日はうちのお風呂を使ってちょうだい。そっちのお風呂は私が掃除しておくから」

 

「あらいいの?じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら♪」

 

……ところで…だ。何故私があのような強引な手段に賛同したのか、誰に言うわけでないが、弁明させてもらいたい。

 

…………私もまた、迫られて、強引な手段を取られ、幸せを享受できた身なのだ。これ以上は私と沙織のプライバシーに関わるので、勝手に語っておいてなんだが控えさせてほしい。

 

 

 

 

 

 

「あれ?優太君、お母さん達は優太君の家で晩御飯を作ってるんだって」

 

「……」

 

私、近藤優太は、ただ今高校1年生にして15歳である。まだ誕生日を迎えてないのでね。15歳にして既に済ませている方々はどれくらいいるのだろうか?結構いるのかな?みんなそういう具体的な話はしないからなぁ……。

 

いつの間にか解錠されていたので、俺達はやっとの思いで脱出することに成功した。脱出できたのは嬉しい。嬉しいのだが…………。

 

「ふへへ…」

 

長年かどうかは分からないが、目論見が達成して、ひとりはご満悦の様子だ。心なしか、いつもより肌に潤いがあるようにも感じる。少女から女性になったかのような錯覚さえある。これが、所謂『世界が変わって見える』というやつなのだろうか。

 

………こんな表現をすると、まるで俺が卒業したかと思われそうだが、ギリギリしていない。何の卒業かは敢えて明言しない。

 

「多分もうできてるんじゃないかな?早く行こっ?」

 

「………なあ」

 

「……?」

 

「ひとりは、怒ってないのか?」

 

「なんで怒るの?」

 

「いや、だって…………」

 

その後の言葉が続かない。これは羞恥によるもの。いくら相手は幼馴染で家族同然の存在と言えども、あんなことを気軽に口にできるはずもなく……。

 

「……優太君は気にしすぎだよ。別にどっちかが強引にしたわけじゃないんだし……。そ、それに……お互いに好き合ってるんだから………

 

「…………」

 

………祭りの一件以来、ひとりはやたらと自信を持つようになった。自信を持ったと言えども、俺に関連することに限定したものだが……。

 

いつだか、自信を持ったひとりは無敵の人だと心の中で呟いていた気がするが、まさにその通りだった。俺にとって、今のひとりは速度が不安定な暴走機関車のようなものだ。しかも、親達が手厚い支援をしているから、脱線せずに走り続ける。

 

結果、暴走しながらも終点一歩手前まで辿り着いたということだ。これはもう、そういう運命なのかもしれない。

 

「むしろ、そう聞きたいのは私の方だよ。てっきり、優太君は怒るかと思ってた」

 

「………ああ、怒りたいよ。あの2人にな」

 

今回に限って言えば、ひとりは殆ど悪くない。ひとりが単独行動したところで、羞恥でアクションできずにそのまま終わったはずだからだ。

 

…………あの親達と暮らすと碌なことにならないかもしれない。しばらく誰かのところに転がりこむか?西村の家か中川の家にお邪魔するか……?そうでもしないと、あの親達の行動はエスカレートする気がする。そうなると、今回は大丈夫だったが、次回以降は、ひとりのバンド活動に支障をきたすような事態に陥るかもしれない。それだけは避けなくては。

 

 

 

 

俺はひとりを連れて自宅に戻った。取り敢えず、料理はできているようなので、ひとりは先に食べてもらうことにする。

 

「あれ?優太君は食べないの?」

 

「今は食べない。それより、美智代さんとお母さん。それからお父さんも、話したいことがある」

 

「あら?どうしたの優ちゃん?」

 

「話なら後で聞くから、今は食べましょ?今日は2人のためにご馳走を作ったのよ〜!」

 

美智代さんはご機嫌にそう言う。だが、お父さんは自分のしでかしたことを自覚していたのか、何も言わない。あれ?直樹さんが真っ白になって気絶している……。ふたりちゃんがイタズラしても微動だにしない。

 

………いやいや、そっちは置いておく。今はそんなことはどうでもいい。

 

「今すぐに話したいから、いいか?」

 

「あらあら、何のお話かしら?」

 

「仕方なぁ。余程重要なことなんでしょ?」

 

母親2人組は、何故か上機嫌だ。俺が喜んでいると思い込んでいるのだろうか?まあ、ある意味喜びはあったが、それよりも今は………。

 

 

 

 

そして、俺達はリビングから出て自室に誘導する。美智代さんとお母さんは笑顔で、お父さんだけ気まずそうな顔をしている。

 

「ところで、どんなお話かしら?」

 

「さあさあ!結婚のご挨拶をするなら今のうちよ!」

 

「ふ、2人とも、今は………」

 

「…………ふざけてんのか?」

 

「「………えっ?」」

 

母親2人組は拍子抜けした顔をしている。俺がこんな反応をするとは思いもしなかったのか?正気か?

 

「母さん。どうやらあんたもグルだったらしいな。しかも給湯器の故障は偽装だとな。随分手が込んでるな?」

 

「あ、あの、優太……?」

 

母さんは『優ちゃん』と呼ぶのをやめた。ようやく俺が怒っていることに気づいたらしい。しかしもう遅い。

 

「あんたら、自分が何したか分かってんの?1組の男女を風呂場に閉じ込めるとか正気か?」

 

「で、でも………」

 

「でもじゃないだろ。もしひとりの身に何かあったらどうするんだ?最悪、ようやく見つかったバンドを追放されるかもしれないんだぞ?それを承知した上でやってんのか?」

 

「大丈夫よ優太君!それなら私がちゃんと用意してあげたじゃない?」

 

美智代さんが用意したものとは、あの箱のことだろうか?むしろ用意していることに驚いていた。まあ使わないように色々試行錯誤して、結果ギリギリセーフ?なラインで食い止めることができたのだけれども。

 

……いや、アウトな気がしなくもない。でもフュージョンしてないからセーフなものはセーフです。異論は認めたくありません。認めたら俺の精神が死にます。

 

「……スポーツドリンク。全部開封済みだったよな?何を仕込んだのか知らないけど、それを飲むように仕向けておいて、ちゃんと使う保証がどこにあるんだ?」

 

「その時はその時じゃない?私達もフォローするし」

 

「………」

 

ダメだ。お父さんはともかく、この2人との話し合いは無駄らしい。もしも子供ができたとしても、金銭的な部分や育児は自分達がサポートすればいいとでも思っているのだろう。

 

はっきり言って、もしそんなことを考えているなら馬鹿もいいことだ。ひとりの身体の負担を考えろ。そもそもまだ高校生だぞ。しかも1年生だ。もし妊娠して休学、中退しようものなら、学校中に噂が広まることはほぼ確実。そんなことになれば、同じバンドの虹夏さん、リョウさん。更には同じ学校の喜多さんにまで悪評が広がりかねない。

 

もっと言えば、虹夏さんの姉の店長さん……もっと言えば、スターリーの評価にさえ悪影響を及ぼしかねない。

 

娘の願いを叶えるのが悪いとは言わない。だが、もっと周りを見て考えろ。ひとりはいずれ本気でバンドをやるつもりなのだ。その時に、『高校生で出産した無計画野朗』と、悪評レッテルを貼られたらどうなる?

 

大好きなバンド、ひいてはギターすらも嫌いになりかねないんだぞ?

 

そこまで理解した上で、未だに反省しないのか?もしこれらを理解していないのだとしたら楽観的にも程がある。

 

「…………あんた達の考えはよーく分かった。でも最後に確認させてくれ。もしもの話だが、俺とひとりに万が一子供ができたとする。その時、あんた達はどうする?」

 

「大丈夫だって。そうなっちゃったら私達のせいでもあるし、その時は色々サポートさせてもらうよ。何も心配はいらないって」

 

「……沙織。やめないか」

 

「えっ?なんで?」

 

「…………分かった。もういいよ。俺も後で下に降りるから、先に降りてて」

 

俺は返事をした。そこで会話は終了させることにした。もうダメだ。この人たちとひとりを混ぜたら、いずれ多くの人に迷惑をかけることになりかねない。

 

親達をリビングに戻し、俺は自室でできるだけ荷物を纏める。財布、携帯、充電器、ノートパソコン……。必要だと思ったものをとにかくリュックに詰める。教科書類は置き勉しているものが殆どだから問題ない。

 

必要なものをできるだけ詰めた。

 

一緒にいたらダメだ。ひとりだけが相手なら俺が耐えればどうにでもなる。でも、この親達は本気で囲い込もうとする。とにかく囲い込むことしか考えてない。それによるリスクを考慮できていない。していないのではなく、できていないのだ。この違いは致命的だ。

 

もっと早くに、この手を打っておけばよかった。

 

「…………学校には行くから…」

 

誰かに伝えるわけでもなく、小声で独り言を呟いた。

 

ゆっくり、極力悟られないように玄関の扉を開ける。こんなに背中が重いと感じたのは初めてだ。

 

『優太君、どこにも行かないで……』

 

………よく考えてみたら、俺って最低なことをしてないか?……でも、こうでもしないと、ひとりはバンドを続けられなくなる可能性がある。

 

「…………ごめんな」

 

家が見えなくなりそうな位置まで歩いてきて、やっと俺は振り返った。そして彼女に謝罪する。………せめてロインの返信はしてあげよう。学校でも、バイトでも、できるだけ一緒にいてあげよう。問題なのは、ひとりと俺、そして親達が一緒にいることが問題なのだから。これらのどれか1つでも欠ければ、大きな問題は発生しない。

 

 

 

 

 

「…………遅いね」

 

さっき、優太君は真剣な表情で、彼の両親、そして私のお母さんを呼び出した。何があったのか分からないけど、三人は戻ってきた。そして食事を再開するのだけれど……。

 

「優ちゃん、ちょっと機嫌が悪いみたい。大丈夫よ、しばらくしたら降りてくるよ」

 

「そ、そう……ですか………」

 

やっぱり、私が悪かったのかな…?正直、優太君のお母さん、沙織さんとお母さんからあの作戦を聞いて、流石にまずいんじゃないかと思った。でも、少しでも進展したくて、つい乗ってしまった。

 

やっぱり、謝りに行った方がいいかな…?

 

「ひとりちゃんは悪くないよ。優ちゃんってば、素直になれないから助力したってのにさ〜」

 

「でも、確かにちょっと強引な手段だったかもしれないわね〜」

 

先程まで上機嫌だった2人も、ちょっと気まずそうにしている。やっぱり怒ってるんだ。……謝りに行こう。

 

「えっ?ひとりちゃん?」

 

「ちょっと優太君を呼んでくる」

 

やっぱり謝ろう。いくら優しい優太君と言えど、あんなことをされては怒ってもおかしくない。むしろ、私に対して怒りを向けてない方がおかしいんだ。元はと言えば、私がお風呂に入らなければ済んだ話なのに。優太君は私を責めない。でも、だからと言って私が謝らないのは違う。

 

ちゃんと謝ろう。そして、早めに許してもらおう。嫌な予感がする。このまま放っておくと、取り返しがつかなくなる気がする。

 

「優太君!」

 

あっ、ついノックするのを忘れてしまった。でもそれは謝れば許してくれる。問題はそっちじゃない。

 

「…………あれ?」

 

いない。リビングに降りてきてないのに。じゃあトイレ?

 

…………いない。リビング?やはりいない。もしや、クローゼットか?この前はクローゼットに隠れてたもんね。

 

………いない。なんで?ありとあらゆる空間を探したはずなのに、優太君の気配すら感じない。ふと、玄関を見た。

 

………靴がない。優太君がいつも履いている靴が……。もしかして、お出かけ?このタイミングで?夜ご飯ができてるのに?

 

気がつくと、私はスマホを取り出して、優太君にロインしていた。するとすぐに既読がついた。

 

『優太君どこに行ったの?ご飯は?』

 

メッセージを送信する。

 

『すまん。しばらく家には帰らない。だけど心配しないでくれ。学校にも行くし、バイトにも行く。だけど、泊まる場所を教えることはできない』

 

「………………そんな」

 

………優太君。怒っていたわけじゃなかったんだ。追い詰められてたんだ。私に、お母さんに、優太君のお母さんに…。

 

そんなに、私と一緒にいるのが嫌だったんだ………。なら、なんで……。

 

 

ピコン

 

「……!!」

 

自暴自棄になりかけた時に、もう一通ロインが届いた。

 

『勘違いしないでほしいが、俺はお前と離れたいわけじゃない。むしろ、できることなら一緒にいたい』

 

「…………へっ?」

 

優太君が素直にここまでデレるのは初めてじゃないか?でも、よく考えてみると、取り繕うだけの余裕がないとも取れる。

 

『だけど、美智代さんとお母さんは手段を選ばないんだ。お前の身のことも考えないし、将来のことも考えてない。万が一お前が身重になれば、色々なところに迷惑がかかるのに、それを考慮せずにあんなことをする』

 

『高校生の妊娠、出産がどれだけ社会的評価に悪影響を及ぼすか知ってるか?就職はおろか進学も不利になるらしいぞ。そして学校に噂が広まるのはほぼ確実だ』

 

『そして、いずれはバンドメンバーの虹夏さん、リョウさん、学校も同じ喜多さんにも多大な迷惑をかけることになる』

 

「………………あっ」

 

………そうだった。妊娠できれば、中退もできてラッキーなんて考えていたけど、今の私は優太君だけじゃない。虹夏ちゃんに、リョウさんに、喜多さん……。バンドメンバーがいる。演奏が下手な私を必要としてくれている。特に、喜多さんは私を先生として慕ってくれている。

 

…………そんな状況の中で、私のせいでバンドに迷惑がかかったら………。

 

「優太君………」

 

だから、私と付き合うことを避けていたんだ。そこまで考えて。私がバンドを組めたから…。そのバンドを続けてほしいって思ってるから………。

 

それなのに、私は軽率にあんな作戦に乗ってしまった。優太君が必死に堪えていたものを、私は台無しにしてしまったんだ……………。

 

『だから、すまんがしばらく家を留守にする。俺に会いたくなったら言ってくれ。家の周辺じゃなければ、いくらでも会いにいく』

 

「……………ふふっ」

 

いけない。本当は笑っちゃいけないのは分かっている。でも、優太君がここまで素直になってくれたのが嬉しくて……。初めて本人の口から本心を聞けたような気がして………。

 

『ごめんね。私もそこまで考えが及んでいなかった』

 

『お前が謝ることじゃない。よく考えれば、事前に俺が説明しておけば良かっただけだったのに、それをしなかった俺の責任だ』

 

…………分かった。分かったよ優太君。じゃあ、妊娠するようなことさえしなければ、いいんだよね?

 

私にしては、珍しく肯定的な受け取り方だ。私らしくないのは私自身が一番分かっている。でも、彼の本心をようやく聞けたのが嬉しくて、つい大喜びしそうになってしまう。

 

でも、隣に優太君がいない。学校とバイトでしか会えない。それは嫌だな。私のせいだと分かっているけど。少しでも一緒にいたい。寂しいものは寂しい。でも、いつでも会いに来てくれると言っていた。この辺じゃなければ。学校でも、バイトでもちゃんと顔を出してくれる。

 

それだけでも、安心することができた。

 

 

 

少しして、お母さん達は優太君が家出したことを察したらしい。だいぶ慌てている。

 

「そんな。そこまで優太を追い詰めていたなんて…………」

 

「ど、どうしましょ…!?」

 

「……あれ?お姉ちゃんは、ユータ君が家出しても平気なの?」

 

「…………うん。優太君、いつでも会いにきてくれるらしいから」

 

「そーなんだ!」

 

「ひとりちゃん!優太君はどこにいるか分かるの!?」

 

「それが分からない。でも、学校とバイトには顔を出すって」

 

「……ああ…!ちょっと強引な手段かなって思ったけど、まさかそこまで傷つくなんて…………」

 

「だ、大丈夫ですよ!優太君、ちゃんと信頼できる人のところに泊めてもらうみたいですから…!」

 

でも、このタイミング家出なんて酷いよ優太君。せっかく()()()()をしたのに。これからもっともっと楽しみたかったのに…………。

 

「………早く学校に行きたいなぁ」

 

今はただ、優太君に会いたい。それだけを考えていた。

 




 結論から申し上げよう。最後までは行ってない(何もしていないとは言っていない)。これでも付き合ってないんだって。こんな状況でも幼馴染だと言い張る男がいるらしい。
 でも、親達の行動って、作品としての展開だから許されてる感あるけど、現実で同じことされたらブチギレて最悪絶縁されても文句言えないと思うんですよね。創作フィルター(今思いついた表現)ってすごいなぁと思う今日この頃。

 もう誰だよ。このぼっちちゃん影武者だろ。誰だよ暗殺したやつ、許さn(メッセージはここで途切れている)
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