幼馴染君がぼっちちゃんを甘やかし過ぎた結果……   作:Miurand

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Q:なんでぼっちちゃんはメンヘラじゃなくてヤンデレなの?

A:ぼっちちゃんは心の奥底ではオリ主君に嫌われてないと確信しているためです。え?じゃあヤンデレにもならなくねだって?

…………えいっ(本編突入)



勇ましいぼっちちゃん

………目が覚めると、外は既に明るくなっていた。窓から入ってくる朝日が寝起きの体をいい感じに温めてくれる。起き上がろうかと思ったが、ひとりがまだ俺を抱き枕にしていた。

 

「おーい、ひとり。朝だぞ、そろそろ起きないと遅刻すんぞ〜」

 

「………んっ…」

 

ダメだ。全く起きる気配がないぞこいつ。仕方ない。ちょっと悪戯して楽しんでやるか。

 

ツンツン。ツンツン。…ひとりの頬って柔らかいし弾力あるよな。本人の前だと恥ずかしくてこんなことできないけど、実はほっぺを触ってみたいと思ったことが何度かある。

 

そして、俺の前だと無茶苦茶無防備になっている胸元。敢えて俺を誘惑するためにわざとそうしてる可能性もなくはないが、それにしたって俺の心臓に大変悪い。ちょっとは男子高校生のことも考えてほしい。

 

さらに、最低限手入れされている綺麗な髪の毛。実を言うとこのピンク色の髪の毛、好きなんだよな。同じシャンプーを使ったはずなのに、ひとりからはほのかな甘い香りを感じる。

 

……ん??待って、俺何してた?ひとりの髪の匂いを嗅いでたのか?マジで?キモ過ぎるだろ俺……。だけど悲しいことに、ひとりならむしろ大喜びしそうだ。そう確信できてしまう自分が憎い。これは絶対秘密にしておこう。……起きてない……よな?寝てるよな?

 

「すぅ…………」

 

良かった、寝ていた。もしここで起きていたら、絶対何かに利用されていただろうな。他人にもこれだけ強気でいければ、きっと友達もできるだろうに…。まあ俺が幼馴染で、俺のことをよく知っているからこそできるんだろうな。ある種の信頼というやつだろう。

 

てか、そろそろ起こさないとマジで遅刻すんぞ?

 

「ひとり〜、いい加減起きろ〜」

 

むにゃむにゃ……。もう食べられないよ………

 

古すぎるんだよなぁその寝言。てかひとりってそんなにガツガツ食うタイプじゃないだろ?

 

「いてて……」

 

グイッとひとりの頬を軽く引っ張ってやろう。昨日のキスマークをこれでチャラとすればよし。………これでキスマークをチャラにする俺って…………。

 

「あっ、優太君……。おはよう……」

 

どうやら痛みで起床できたようだが、まだ寝ぼけた目をしている。ここから2時間くらいかかるんだから、そろそろ起きないと飯抜きになるぞ?ひとりはともかく俺は絶対に耐えられないね。食事は3食しっかり取りたい派なのだ。

 

「いい加減離してくれないと俺が起き上がれないんだが?」

 

「あと五分………」

 

「ダメです。起きなさい」

 

ひとりは起きる気がないようなので、俺がひとりごと起き上がってしまえば問題ない。

 

「あ〜……。私の抱き枕が反抗期に……」

 

「お前のでもねえし、抱き枕でもねえよ」

 

 

 

やっと起こすことに成功し、本日も後藤家の朝食をいただいて登校。いつも通りひとりを引き剥がして各々のクラスに入った。

 

「おっす近藤。昨日はどうだ……」

 

スパンッッッ!!!!!

 

先手必勝。最早何を発言する権利も与えない。お前のせいで昨日はとんでもない目にあったんだからな。許すまじ勇人。

 

「おお、朝っぱらから元気だなぁ近藤」

 

「お前クマ凄いな。今日何時間寝たんだ?」

 

「0」

 

マジかよこいつ。オールしやがったのかよ。このように、西村はよくオールすることがある。その原因は大抵ゲームなどの娯楽類である。

 

「どうした?最近新作のゲームでも出たっけ?」

 

「例のラクガキ対戦ゲームやってたんだけどさ、世界のYAMADAってやつが異常に強くて、つい熱中してたらいつの間にか朝になってたわ」

 

いつの間にかで朝になってるあたり、こいつは生粋のゲーム廃人だな。実際こいつと対戦した時一回も勝てなかった。ハンデありでも1キルもできないのなんなん?もうプロゲーマー目指せよ。

 

「ひでぇじゃねえかよ近藤!!」

 

俺がひっぱ叩いたことに抗議をしたいようだね中川君。お前のせいで大変なことになったんだから、これで済むだけでも感謝してほしいくらいだ。

 

「男に殴られても嬉しくねえよ!!!殴られるなら女の子がいい!!!あ、でも俺は虐める方が好きなんだよな」

 

なんでこうやってすぐにそういう方向に持っていきたがるんだろうか。多分俺とは住む世界が違うのだろう。

 

「………って、その首の痕どうしたんだ?」

 

「!!?」

 

や、やべ。すっかり忘れてた。昨日ひとりにつけられたやつだよこれ。なんとか誤魔化さなければ………。

 

「む、虫刺されじゃないか?多分ダニかなんかだろ」

 

「まあこの時期虫多いからなぁ、これ塗れよ」

 

そう言うと直輝は痒み止めをくれた。この親切がありがたい……。ありがたく使わせていただこう。痒くないけど。

 

「ほーん?俺はキスマークかと思ったが違うのか」

 

「そんなんじゃねえからな?」

 

勇人のことだから、恐らくネタで言っているだけだろう。多分気づいてないよな?気づかれたら色々と面倒だ。

 

まあ、そんな感じで学校をいつも通り過ごした。ちなみに昼はいつもひとりのベストプレイスで2人だけで食べている。ひとり曰く、『ここは落ち着く』んだそう。俺に対してのアプローチは凄くても、根本的な部分は昔ながらのひとりだ。こういうところを見ると安心してしまう自分がいる。

 

さて、学校が終わったのでバイトに向かうとしよう。早速しっかり働かねばな………。と意気込むのはいいのだが、ひとりがさっきから離してくれない。

 

「……ひとり?俺バイト。早く行かないと遅刻する」

 

「一人で帰るのが怖い………」

 

どんだけ社会が怖いんだよこの子は。そこまで言うなら………。

 

「ならお前のお母さんに連絡してやるぞ?『一人じゃ寂しいから迎えを要請してますよ』ってな」

 

「うぇ…!?そ、それは嫌だ……」

 

なんとか納得してもらえたようなので、俺は一人で下北沢で向かう。………そういえば、今日は喜多さんと一緒じゃないな。まあ、まだ友達ってほどの仲でもないし、わざわざ一緒に行っても気まずくなるだけかな。喜多さんはそんなことないんだろうが、バイトに行く度に喜多さんと一緒に行こうものなら、変な噂が流れそうだし、ひとりのハイライトがまた行方不明になってしまう。というか、ひとりが喜多さんに何かしそうで怖い。1番の理由はこれである。お互いのためにも喜多さんとバイト先に向かうのは避けた方がいいだろう。

 

 

 

「こんにちは〜」

 

初めて入る時は緊張したが、いざ一回入ってどんな場所か分かれば案外すんなりと入れるものだ。

 

「随分早かったじゃないか」

 

「授業が終わってから直行してきたので」

 

「やる気も十分あるようだし、早速仕事を覚えてもらうとするか。虹夏」

 

「はいはーい!」

 

というわけで、早速バイトが始まった。掃除にドリンクなどを提供する接客に、受付。一通り説明を受けた後、実際にその飲み物がどこにあるかなど、実際に目で見ながら確認した。しかし虹夏さん、こうしてみると美人系というよりは、可愛い系に分類されるタイプの人だな。この人も学校では多分モテモテなんだろうな。誰にでも優しく接するところが喜多さんに似ているような気がする。

 

「……あれ?優太君、その首の痕どうしたの?」

 

「あー……。これは寝ている間にダニか何かに噛まれたのかと……ははは」

 

「なんかぎこちないけど大丈夫?もし痛みを感じるなら無理しなくてもいいけど………」

 

「あーいや!そこまで大したことないので大丈夫ですよ!気にしないで下さい!!」

 

真っ先に心配してくれるあたり、この姉妹はどうやら優しい人達のようだ。最初このライブハウスに入った時は少々怖い雰囲気を感じたが、それも気のせいだったみたいだな。

 

バイトは順調だった。虹夏さん達は俺が優秀だと褒めてくれていたが、単純に虹夏さん達の教え方が上手だっただけだ。最初に詳しく説明してくれたのは本当にありがたい。説明もないのにいきなりやらせようとしてくるところはダメだ。あれはいかん。

 

「よかった。優太が入ってくれたお陰で惰眠を貪る時間ができそう」

 

「少しでも寝たら時給から引いとくからな」

 

リョウさんって初めて見た時はクールな人かと思ったけど、もしかするとだらしない人なのでは………?ただネタで言ってるだけだよね……?

 

「それでどう?お友達に合いそうなバンド見つかった?」

 

そう。俺がライブハウスのバイトを始めた理由はひとりが入れそうなバンドを見つけるためだ。だけどライブハウスでライブをするのにも色々審査的なものが必要なようで、ある程度実力がないとライブさせてもらえないのだそう。仮に審査が通ってライブ許可が降りたとしても、チケットノルマなんてものがあるそうで、チケットを上手く捌けないとライブハウス側に自腹で払わなくてはならないんだと。売れるまで無茶苦茶金かかるんだなぁ……。まあひとりの実力があればなんとかなりそうだが。

 

まあ、何が言いたいかと言うと、ここでライブしている時点でそれ相応の実力があり、メンバーも揃っているということだ。空きのあるバンドがライブをすることなんて極めて稀なんだそう。その辺の知識に関してはほぼ皆無に等しかったが、冷静に考えれば普通に分かることだった。ちょっと先走りすぎたなぁ…………。

 

「まだですね……。なんせ友人が人見知りなものですから…………」

 

「まあ、まだ1日目だし、4組程度しか見てないからね〜。急ぐ必要はないよ!」

 

「……どうせならうちに入れればよくない?ギターなら二人いても問題ないと思う」

 

「おっ!いいねそれ!!」

 

リョウさんの提案に虹夏さんがノリノリだ。仕事中に聞いた話では、どうやら虹夏さん達のバンドはまだ3人しかいないようで、あと一人くらいは欲しいと思っていたらしい。

 

「えっ?いいんですか?そんなあっさり決めちゃって……」

 

「だって、その子ギターが上手いんでしょ?即戦力になるならありがたいよ!もうすぐライブもあるしね〜!」

 

「ライブ?虹夏さん達も出るんですか?」

 

「うん!初めてのライブだから緊張するけどね〜。そんな時に上手い子が来てくれるなんて心強いよ!!」

 

ほほう。これはいいことを聞いた。虹夏さんや喜多さんのような優しい人達がいるなら、ひとりでも安心してバンドをやっていけるのではないだろうか?これは好都合だ。

 

「そういうことなら、明日話してみます」

 

「よろしくね〜!!」

 

そういえば、今日は喜多さんがいなかったけどいいのか?確か今日も合わせの練習をするとか言ってたような気がするんだが………。まあ俺が気にする程でもないだろう。喜多さんなら自分でなんとかするだろう、多分。

 

ちなみに今日は玄関の前でひとりが待ち伏せしていたなんてことはなかった。久方ぶりに平和な夜を過ごせそうで何よりだ。

 

 

 

………って待て待て。ひとりに虹夏さん達のバンドのことを話さないと。ずっとバンドを組みたがってたひとりにとってはありがたいことこの上ないはずだ。早速ロインで呼び出すと……あれ?よくよく考えたら、ロインでやり取りするだけで良くね?その方が楽だし、そうすっか。ということで、早速送信っと。

 

『ひとり、今日バイト先でお前に合いそうなバンドが見つかったぞ』

 

おっ、すぐに既読がついた。今日はギターヒーローの収録をしていなかったようだ。

 

『ほんとに!?私ついにバンド組めるの?』

 

『おう。みんな優しい人達だから、お前でも入りやすいと思うぞ。みんな女子だしな』

 

『えっ?女子?』

 

『ああ。男がいない方がお前としても入りやすいんじゃないか?』

 

あれ?なんか急に反応が冷めたような………なんか変なことでも言ったかな俺?ロイン上だとどうしても気が抜けて考えずに送信することがあるからな。読み直してみよっと………。

 

……………あっ。これ原因分かったわ。

 

ガチャ……と扉が開く音がした。

 

「優太君。さっきの話、詳しく聞かせて?」

 

はい、どうやら大正解だったようです。こんなので大正解するならテストの時に難問を正解させたいものだね(白目)

 

「女の子ってどういうこと?もしかしてバイトと嘘をついてデートに………」

 

「しないっての!!俺がそんなにモテないのは知ってんだろ!?」

 

「ま、まあそれはそうだけど………」

 

そこで肯定されると胸が痛むんですけど。まあ事実なんだけどさ。でもモテたらモテたでまた別の問題が起きそうだけどね。主にひとり関係で。

 

「話を戻すぞ。その人達はもうすぐライブを控えてるらしいんだが、即戦力になるなら今からでも全然問題ないって言ってたぞ。ひとりの腕があればいけるんじゃないか?」

 

「えっ…?いきなりライブ…!?人の前で演奏するの…!!?」

 

「なんでそんなにビビるんだ?別にお前ほど弾ければ恥ずかしくないだろ?」

 

「人前に出るのが恥ずかしい………」

 

お前、普段から俺にもっと恥ずかしいことしてるの分かってる?ほぼ告白みたいな愛してるゲームに、夜這い紛いのことをしてくるし、キスマークつけてくるし…………。その度胸があれば問題なくない?

 

「………嫌ではないんだな?……よし。OKだって返信しといたぞ」

 

「えっ!!?そんな勝手に…!!?」

 

「こんなチャンス滅多にないぞ?ここを逃したら多分バンド組めないまま高校卒業するぞ?」

 

「………優太君のいじわる……。でもそんなところも好き…

 

おおう…。小声だったけど俺はしっかり聞いてしまったぞ。

 

冗談はおいといて、ここは強引にことを進めるしかない。ひとりの性格なら、一度引き受けてしまったものを途中で断ることはできないはずだ。ヤンデレ卒業ができなくとも、せめて友達の一人や二人は作ってほしいものだ。多分あの人達ならひとりの友達になってくれるさ。

 

「もう送っちまったからな。まあどうしても嫌だって言うなら訂正文を送るけど」

 

「…………い、行きます」

 

「ほい、その返事を待ってた」

 

始めてみればそのうち楽しくなるだろうさ。ひとりは他人とコミュニケーションを取らないあまり、他人を怖がっている節があるが、同じ志を共にする仲間がいれば怖くないだろう。

 

ピコン♪

 

おや、もう返信がきた。虹夏さん、今日は練習なかったのかな?たまたまスマホを見てただけかもしれないが、早く伝わって何よりだ。ちなみにライブの日程は明後日だそう。

 

「…………なんだひとり?この画面見ても何も面白いものはないぞ?」

 

「………いや、本当に最低限しか話してないんだなぁって思っただけ」

 

誰のせいだと言いたいが、実際虹夏さん達とまだそこまで仲良くない。西村や中川のようになんでも気軽に話せる仲ってわけではないからな。にしても本当にロインの画面をチェックしてくるとは………。お前は浮気を疑っている妻か何かか……?

 

「ら、ライブは明後日なんだね…!!ならそれまでにクラスの人に声をかけられるようにしないと…!!」

 

あら、珍しく自発的だな。その調子で友達を増やしてヤンデレを卒業してもらいたいものだ。

 

「おし、その調子だ!!頑張れよ!!」

 

「うん!それじゃあ優太君、おやすみ」

 

「おう、また明日な」

 

よかったよかった。ひとりが乗り気になってくれれば後はどうにかなるだろう。虹夏さん達、ひとりの実力を知ったらさぞかし驚くだろうなぁ。敢えてギターヒーローだということを伏せておくと面白いかもしれない。

 

「…………おい」

 

「なに?」

 

「自分の家に帰りなさい」

 

「なんで?」

 

当然のように聞き返さないでくれない?ナチュラルに俺の布団に入りやがって。

 

「それ、俺の布団なんだが?お前が入ったら俺が寝られないだろ?」

 

そう言ったら、珍しく聞き分けがいいひとりは起き上がった。あれ?今日は本当に聞き分けがいい…………

 

「………なにその手?」

 

横をポンポンと叩いているけど、それなんのジェスチャー?布団干す時に叩くあれ?でもそれは干す時にやるやつだよな?なんで今やってんの?

 

「……?いつも通り隣で寝ればいいじゃん」

 

なにその『当たり前のことを聞かないでよ』みたいな顔?当たり前のことじゃないから聞いてるんだよ!!?

 

「……もしかして、優太君は私のことが嫌いになった?」

 

「いや、それはない」

 

「そこは即答するんだ………えへへ…」

 

てか、嫌いになったらそもそも家にいれるわけないだろう。ましてや自室なんかに。

 

「……私、明日は勇気を出してみようと思うんだ。今まで優太君以外の人と話したことなんて殆どないから、緊張と不安でおかしなことになっちゃうと思う。でも、優太君がそばにいれば、それもなんとかなると思うんだ」

 

「………つまりどういうこと?」

 

「優太君の匂いが微かにでも残っていれば、きっと明日は頑張れる…!!」

 

おいひとりさんや。会話という概念を忘れてしまったのかな?コミュ障が人と話すのは緊張するってのは分かる。だから勇気づけてほしいってのも分かる。だがそれと一緒に寝ることがどう繋がるのか全くもって理解できん。

 

………つまり、ひとりは俺の匂いを感じ取れば、俺がそばにいる気がして頑張れると?そういう解釈でいいんだな?

 

「お前のその理論が正しいと仮定したとして、それならいつも一緒に寝てるんだから、普段から人に話しかけられないのはなんで?」

 

「……………」

 

「こら、痛いところ突かれたみたいな顔して黙んな……」

 

「…………なら、私を抱いて……?」

 

「いやダメだぞ…………………はい?

 

こいつ、今なんて言った?空耳か何かか?最近空耳系のネタ動画ばかり見てたから、空耳でも聞こえやすくなったか?

 

「ひ、ひとり?今なんて言った……?」

 

「だ、だから………。私を勇気づける為に、抱いて…………?」

 

抱いて………?抱く………?

 

 

ファッッッ!!!!!!!?

 

 

それってつまり、クリスマスの夜とかによく行われるっていうアレをやれと!!??ヤれっていうのか!!!!!?

 

 

待て待て、冷静になろう優太。もしかすると思春期だからそういう風に聞こえてしまったのかもしれない。ほら、数学に出てくるπって単語を聞くと笑っちまうアレあるだろう?アレと同じ現象だろうそうだろう……?ハハハ……。いくらひとりがヤンデレだからって、まさかそこまで踏み込んだ要求をしてくるわけないもんね…………。ビックリしたぁ……

 

「私を()()()くれたら、明日は絶対に頑張れるから……!!」

 

いや、間違いなく『抱いて』って言ってるぅぅうううう!!!?2回も同じ全く内容の空耳をするわけがない!!!

 

「お願い抱いて……!!私を抱いてくれたら、間違いなく明日頑張れるから…!明日には友達がたっくさんできてるから…!!!!」

 

「やめろ…!そんなに『抱いて抱いて』って連呼しないでくれ…!?」

 

ピコン♪

 

ん?ロインの着信音が聞こえたぞ。気を紛らわせるためにメッセージの確認をしよう。そして俺の理性を回復させるんだ。今すぐに……!!!

 

ん?母さんからじゃないか。なんでわざわざロインなんかで…………?

 

『ちょっとぉ、ひとりちゃんとそういう関係なら素直にそう言いなさいよ。そしたら私達だって気を使うのにさ。取り敢えず私とお父さん、今日は耳栓して寝るから、あまりうるさくしないようにね。

 

孫はちゃんと成人してからにしてね♪』

 

 

「何が成人してからじゃボケぇ!!!!

 

「うぇ!!?ど、どうしたの優太君!!?」

 

「あっ、いや、その………なんでもないデス…………」

 

一回叫んだら冷静になってきた…。さて、状況を整理すると、勇気づけるためにひとりが抱いてくれとお願いしている。ナンデェ……?マジで覚悟決めなきゃあかんやつなのこれ?

 

いやいやダメだろそんなの。そういうことは……せめて付き合ってからだ…!まだ付き合ってもいないのにそんな不誠実なことなんてできないって……!!えっ?今更何言ってんだって?それとこれとは違うやん!!

 

「……………ひ、ひとり」

 

「あっ……。私を抱いてくれる気になった?」

 

なんで堂々と言えるのこの子?勇ましすぎない…?男である俺より勇ましくて男らしくない?その勇ましさを人付き合いにも使おうよ?なんでここで使うの?

 

「だ、だだだだ、ダメだ…!!せめてそういうのはな……!!せ、責任をしっかり取れるようになってからじゃないとダメなんだぞ……!!!?」

 

「責任……?よく分からないけど、いつも私が優太君にしてることだよ…?」

 

えっ?もしかして、俺の知らぬ間にパックリ喰われてた……?えっ?俺初体験の記憶ないんだけど……?もしかして、今までひとりの猛烈なアタックに耐えてこられたのって………。

 

「ほら、私いつも優太君を抱き枕にしているじゃん」

 

………………えっ?抱き枕…?

 

「ああ……。そういえば一緒に寝る時はいつもひとりの抱き枕にされてたっけ……………」

 

「うん。それを今度は優太君から私にしてほしいって言ったんだけど………」

 

「………………ひとり」

 

「えっ?(ゆ、優太君がいつになく真剣な顔に……!?これってついに告白されるんじゃ…!?)」

 

「………………俺の頭を思いっきりぶん殴ってくれない?血が出るくらい思いっきりやってくれ頼む…………」

 

そんなことできないよ!!!?

 

結局、俺がただ勘違いして一人で勝手に見えない何かと戦っていただけだった。なんて恥ずかしい…………。もうこれ人生の黒歴史確定だろ。間違いなく刻んじゃったよ。思い出す度に羞恥に苦しむやつだよこれ。

 

ちなみにその日、ひとりの要求は快く引き受けた。俺が勘違いしていた要求に比べたら容易いことだったので、なんともない気がした。きっと感覚が麻痺してしまったんだろう。……まあ、ひとりが幸せそうだし、いっか……。

 




 書いてて思った。「あれ?オリ主よりひとりちゃんの方が主人公してない?」
 次回からようやく原作開始部分に突入しますが、できるだけオリジナル展開を増やすつもり。てか、このヤンデレぼっちは虹夏達と仲良くできるのかな…。なってくれないとオリ主のお嫁さんに即就職コースですぞこれ。

 あっ、そういえばまだ2話しか投稿してないのに沢山の評価とお気に入り登録ありがとうございます。まさかこの短期間でこんなに付くとは思わなかった。ぼざろって凄い人気なんだなぁ……。最低週1を目標に頑張ります。
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