幼馴染君がぼっちちゃんを甘やかし過ぎた結果……   作:Miurand

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 原作沿いの話ってオリジナリティを出すのなかなか難しい。まんまコピーしても面白くないから上手くオリ主を絡ませようと試行錯誤してるけど、なかなかにむずいっすね。オリジナル展開を優先的に書いた方が良さげかもしれんなぁこれ………

 ギャグっぽいタイトルも思いつかないとは……。もしかして早々にスランプ襲来……?



幼馴染の初ライブ

朝になった。日の光を浴びて自動的に目覚めると、またしてもひとりがいた。何度もくどく言ってるような気がするが、この状況は本来なら普通ではない。だが、そんな異常な状況に安心してしまっている自分もいる。隣にひとりがいることで、何故か安心感が生まれてしまっている。

 

 

「………あっ、おはよう…」

 

「おう、おはよう」

 

「………優太君。今日は引き剥がさないんだね?」

 

「………たまにはな…」

 

 

珍しく寝起きのいいひとりと共に俺の家で朝食を取った。父親はもう出勤しているようだが、母親はもう少し後のよう。ちなみにウチは両親共に働いている。でも母の方が仕事の負担は少ないんだそう。

 

朝食時、母親がお赤飯を用意しようとしていやがったので、軽くチョップして強制キャンセルした。ヤってねえっての。ただ一緒に寝ただけだっての。いや、これも聞き様によっては一線を越えたように聞こえてしまうな……。日本語って隠喩が多いせいで本来の意味で言っても別の意味で捉えられることとかあるよね。ニホンゴムズカシイ。

 

一通り用意が済み、今日もいつも通り学校に行こうとするのだが………。俺はツッコミたくてしょうがない。今のひとりの格好はピンクジャージにスカート。まあこの服装はいつも通りなのだが、ギターを背負っている上に、バンドグッズをあちこちに身につけている。なんというか、男子小学生がかっこいいと言いそうな服装とでも言えばいいのだろうか?

 

「………一つ聞くが、ひとりはその格好をして何を狙ってるんだ?」

 

「こうすれば、話しかけてくれる人がいるかなって…………」

 

共通の趣味で人を誘おうってわけか。確かにいい線はいってると思う。実際俺も中川や西村と仲良くなったのは、某レジェンドバトル漫画の話をしたからだ。共通の趣味を持っているだけでも友人というものは簡単に作れるものなんだ。特にみんな友人がいない入学式付近とかは尚更。

 

……だが、アプローチ?の仕方に問題がある。そんな格好をされては逆に話しかけづらいし、何より地雷臭がする。まあ、今まで人とあまり話さなかったのだから致し方ない………。

 

「てか、なんで受け身なんだよ?お前から話しかけなきゃ意味ないだろうが」

 

「えっ……?わ、私から……?む、無理無理…!!私なんかが話しかけたら、微妙な空気になって…………」

 

「はいはいストーップ。取り敢えずこの派手すぎるバンドグッズは外そうな?」

 

無茶苦茶取り付けられたバンドグッズを強制的に外させ、ジャージのチャックも閉めさせた。だがギターだけはそのままにしてある。もしかすると、バンドとかに興味のある人がいるかもしれないからな。ギターくらいなら問題ないと思う。俺の主観がバグっていなければの話だが……。

 

 

 

時は過ぎて放課後。ひとりの戦績を確認するために教室に立ち寄ってみた。すると見事に真っ白になったひとりがいましたとさ。あるぇ…?

 

「あっ、ゆ、優太君……。私……」

 

「言葉にするまでもない。お前のその様子で分かったよ………」

 

迂闊だった。そもそも仮に話しかけられたとしても、ひとりは人と上手く話せずそのまま会話終了ってパターンも十二分にあり得た。何故そのことを失念していたのだろうか……。

 

「碌に人と話せない私なんかがバンド組んで大丈夫なのかな…?私なんかとバンド組んじゃったら、同じバンドの人に迷惑かけちゃうかもしれないし……」

 

やばいやばい。始まってしまったぞ、ひとりのネガティブモード。こうなると正気に戻すのは苦労する。最近はヤンデレモードばかり見ていたから忘れかけていたが、そういえばひとりって自己肯定感低いんだった………。

 

「だが、お前には3年間で鍛え上げられてきたギターの腕があるだろう?もう向こうの人と約束もしちゃったし、さっさといくぞ」

 

「む、無理無理…!やっぱり私行かない…!!」

 

「おい、もう行くって伝えちまったんだぞ…?今更行かないって言われても……」

 

ピコン♪

 

ひとりを説得しようとしている途中でロインの着信音が届いた。相手は虹夏さんからだ。

 

『優太君、ギターの子早く連れてこれる!?集合時間になっても喜多ちゃんが来ないの!!このままだとドラムとベースだけでライブすることになっちゃう!!』

 

「…………なんやて?」

 

喜多さんが……?あの太陽の代名詞とも言える喜多さんが、バックれたの……?いやいや、それはまず置いといて、ひとりをさっさと連れていかなければならないわけだ。しかし今のひとりをそのまま連れていくわけにもいくまい。

 

「…………ひとり」

 

「優太君に何を言われても私は行かないよ…。いや、私程度じゃ行っちゃいけないんだぁぁ………」

 

1人の世界に入ってるところ悪いが、現実に戻ってきてもらおう。

 

「お前はすごいやつだよ。可愛いし、スタイルいいし、何より一つのことに熱中し続けられるその姿勢には敬意すら感じる」

 

「えっ……?ど、どうしたの急に…?」

 

よし、なんとかネガティブ沼からは脱出できたようだ。この調子でひとりに自信をつけさせれば……。

 

「お前はもっと自信を持て。恐れることなんて何もない。確かに人と話すことは苦手なのかもしれないが、ライブ中は言葉で語る必要はない。お前の演奏で自分を語ればいい。それなら、何も難しいことはないだろ?」

 

「優太君…………」

 

「いいのか?ここで断っちまったら、もうバンドを組む機会は来ないかもしれない。勿論、どうしてもやりたくないっていうなら無理強いはしないが、後のことをよく考えてから決めることをおすすめする」

 

「……私…」

 

まあ、ひとりがギターを始めた理由を知っている俺からすれば、ここまで言えばひとりの答えは決まっている。

 

「……私、行きたい…!バンドを組んでみたい!!」

 

「よし、よく言った!じゃあ行くぞ!」

 

「……うん!」

 

任務完了。あとはひとりを下北沢まで案内するだけだ。

 

「………優太君」

 

「なんだ?」

 

「………さっきの、可愛いしスタイルがいいって………本当?」

 

「……!?い、今更何言ってんだよ。鏡ちゃんと見たことないのかよ」

 

しくじった。ひとりに自信をつける為につい口に出してしまったのだろう。だけど嘘をついてまで否定することもない。今はこの返答で勘弁してくれ。

 

「そっか……。えへへ……。そんなこと思ってたんだ………」

 

「ほら、さっさと行くぞ!」

 

「うん…!」

 

そしてライブは無事に成功した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことはなく、ライブ開始前から不穏な空気になり始めた。

 

「ほ、本当にここなの……?」

 

「ああ。俺は何回もバイトで来てるんだから間違えるわけないだろ?」

 

「こんな個性漲るオシャレタウンに毎日来てるの……?」

 

「いや、毎日ではないけど……」

 

そもそも個性漲るってなんやねん。下北沢駅を降りてからずっと俺の背後にくっついて離れようともしない。本当にライブできんのかなぁ……。

 

「おいひとり。早くしないとライブ始まっちまうんだって。そんなにしがみつかれると急ぐものも急げないんだが………」

 

「で、でででも、私みたいな芋女がこんなオシャレタウンを堂々と歩くのは恥ずかしいよ………」

 

だから普段からお前がやってることの方が………。いや、もう何も言わなくていいや()

 

「………それに、さっきから周りの人に見られるような気がするし………」

 

「それはお前が奇行しているからだよ気づけ」

 

さっきからずっとくっつかれてるせいでバカップルとして暖かい目で見守られてるんだよ。変に笑われるよりよっぽど恥ずかしいんだけど。でも離れろと言ったところで離れないし、もうこのまま連れて行くっきゃねぇ…。

 

「あっ!優太君いたいた〜!!!」

 

おっと。どうやら俺らがあまりにも遅いから虹夏さんの方から出迎えてくれたみたいだ。

 

「もーう!優太君遅いよぉ!!………えっ?」

 

「あっ、すみません。こいつが駄々をこねるもので遅れてしまって……」

 

「あっ、いや〜その……。えっと、優太君って彼女いたんだ?」

 

………んっ??

 

「いや、確かに彼女さんのことを優先するのは偉いと思うよ!でも、それでバイトに遅刻するのはちょっと、モラルに欠けるというか………」

 

「あのちょっと待ってください。彼女って誰のことですか?」

 

「えっ?」

 

「えっ…?」

 

おい待て。まさか彼女ってひとりのことを言ってるのか?いやいや、背中のギター見ろよ。この子があなた達のピンチを救うギターヒーローさん……もとい、後藤ひとりさんですぞ?というかひとりがいるところでそんなこと言ったら…………。

 

「ど、どどど、どうも!!わ、私は()()()()……じゃなかった!!後藤ひとりですいつも()()がお世話になってましゅ…!!!」

 

おいバカやめろ。周囲に誤解を生ませて囲い込む作戦か?

 

「お、奥さん…!!?優太君って私の一個下だよね!!?まだ結婚できる年齢じゃないでしょ!?」

 

「いや、よく見て下さいよ。こいつが背負ってるもの」

 

「………あっ、ギター!!!!」

 

どうやら虹夏さん的には、ひとりが背負っている物より、ひとりが俺の後ろにピッタリくっついている方に目が向いていたようだ。………確かに、側から見たらバカップルだわこれ……。

 

「ということは、もしかしてその子が優太君の例のお友達!!?」

 

「はい。友達というか、幼馴染です」

 

「そうだったんだ〜!!でも優太君、彼女がいたなら最初からそう言えばいいのに〜!!」

 

「いや、彼女じゃないです」

 

「えっ?でもくっついてるじゃん」

 

「これは人見知りの度が過ぎたが故に起こっている現象です」

 

「またまた〜!優太君って照れ屋さんなんだね〜!」

 

えっ?何この面倒くささ。虹夏さんってこういうキャラだったっけ?最初に見たときは、女神というか、天使というか………。とにかくそんな感じの印象だったんだけど。リョウさんといい、喜多さんといい、第一印象と実際の中身にギャップがある人が多いのだろうか。

 

「というかこんな無駄話してる場合じゃないのでは?早くしないとライブに間に合わないでしょ」

 

「あ〜!!そうだった!!」

 

ちなみに誤解はスターリーに向かっている途中でなんとか解いた。ひとりは自己紹介を俺に任せようとしてきたが、流石に自分でやれと黙っていた。今回は俺がそばにいたからなのか、ちゃんと虹夏さんと会話できていた。まあ、髪の匂いを嗅いだり露骨に目線を逸らしたり、突然『私は武道館を埋めた女………』などとぼやいたことを除けばの話だが…………。

 

ライブハウスに着くと、先程までは極度に緊張していたはずのひとりが妙に落ち着いてきた。一体どうしたんだ?

 

「ひとりちゃん大丈夫?」

 

虹夏さんもそれを感じ取ったからか、心配して声をかけるが……。

 

「わ、私の家ぇ………」

 

「違うよ!!?」

 

なんでそうなるねん。まあ確かにどこかで実家のような安心感って言葉を聞いたことがあるような気がするが、ここでそれを感じるのか……?長年ひとりと共に過ごしてきたが、流石にその感性は分からん。

 

まあ原因はともかくとして、落ち着いてくれたなら好都合だ。施設の案内は虹夏さんにそのまま任せるとして、俺はバイトに入ろう。遅れた分を取り戻さなくてはならない。

 

「あっ、優太。やっときた」

 

「リョウさん。遅れてすみません。でも約束通り連れて来ましたよ」

 

「どれどれ……?おぉ……!!!

 

ん?珍しくリョウさんが驚いているようだな。普段は感情を顔に出さないような人が一体……。まさかとは思うが、一目見ただけでひとりのスペックが分かったとでも言いたいのか?それどこぞのバトル漫画?

 

「優太、いい女を釣ってきたね。実はナンパ師だったりする?」

 

「違いますけど!!!?」

 

みんなそういう方向に持っていきたがるんだな。もしかして女子校生ってみんなこんな感じなのか……?女子とそんなに会話するわけではないから、JKという生態がよく分かっていない。

 

「まあ冗談は置いといて、あの子が例のギターの子でしょ?」

 

「……まあそうなりますね」

 

なんだ冗談か……。この人は周りをしっかり見ているらしい。だらしない人かと思ったが、芯はしっかり者なのかもしれない。

 

そしてひとりとリョウさんが初のご対面となったが、何故かひとりは真っ先に謝りだした。どうやらひとり的にはリョウさんが睨んでいるように見えたらしい。顔に出づらい人ではあるが、基本的に人に敵対するようなタイプの人ではないと思う。そういえば、さっき寝不足で細目になっていたPAさんにも唐突に謝りだしたしな。

 

ちなみにリョウさんは変人って言ったら喜ぶらしい。そんな馬鹿なと思ったが、よくよく考えたら俺のすぐそばに自分のことを変態と自己紹介するやつがいたわ。そんなやつがいるくらいなら、きっと変人と呼ばれて喜ぶ人がいても不思議なことではないだろう。ちなみに俺はその感性を理解することはできない。

 

「よーし!メンバー集まったし、早速練習しにスタジオに行こう!」

 

「あれ?そういえばボーカル不在で大丈夫なんですか?」

 

「それなら大丈夫だよ!今日は元々インストでやる予定だったから!」

 

なんだ。それなら心配ないか。しかし本格的にバンド活動するとなれば、ボーカルもほしいはずだ。というか元々ギターボーカルとして喜多さんがいたわけだから、インストバンドとしてやっていく想定ではないはずだ。喜多さんがバックれた原因は恐らく、本当はギターを弾けないからなのだろうが、にしても連絡もせずにバックれるとは予想外だ。

 

「じゃあ、俺は仕事に戻るので……」

 

「…………えっ?」

 

何故か世界の終わりのような顔をしたひとりが俺を見つめてきた。やめろ、その目は俺に効く。てかなんでそんな絶望した顔をしてんの?

 

「えっ?優太君、いないの?」

 

「いや、だって俺はバンドやるつもりないし………」

 

「……ははーん?なるほどねぇ…。そういうことなら優太君もひとりちゃんの演奏聞いてあげなよ!!」

 

「えっ?いつも聞いてるから別にわざわざ聞く必要もないと思うんですけど………」

 

「そんなこと言わずにさ〜!彼女の記念すべき初ライブなんだから〜」

 

「いや、だからひとりは彼女ではないですって」

 

「またまた〜」

 

し、しつこい……!!この人、なんか知らんけど食いついてきよる…!!ただ、否定するとさらに追求されそうだし、ここは適当に流すのが適作かな?

 

「………まあそういうことなら」

 

「流石!やっぱり優太君って彼女思いなんだね!」

 

「えへへ……。それほどでも………」

 

「なんでひとりちゃんが喜んでるの…?」

 

ほら、あんなことばかり言うからひとりが調子に乗っちまってるじゃないか。

 

「それ以上ふざけるようならひとりを今すぐに帰しますけど?」

 

「ごめん、おふざけがすぎた………」

 

多分ここで甘やかしたら一生このネタで揶揄われそうなので、ここいらで俺も言う時は言うんやぞってところを見せないと。やっぱり女子校生ってそういう色恋沙汰に興味深々なのだろうか?確かに恋バナとかよくしているような気がするけれども………。

 

まあそういうことで、3人の演奏を急遽聞くことになった。他二人はどうか知らないが、ひとりに関しては俺がいるからか、はたまたギターヒーローとしての実力があるからか自信はあるようだ。ドラムスティックによる合図と共に演奏が始まり………。

 

 

 

数分後、演奏が終わった。

 

虹夏さんとリョウさんは2人で顔を見合わせていた。ひとりの圧倒的な実力に度肝を抜かされていたのだろう。

 

 

「ド下手だ……」

「ぷっ……!!」

 

 

……なんてことはなかった。おかしい。音楽にあまり詳しくない俺でも、今の演奏は確かに酷いと思った。普段のひとりは素人耳でも上手だと思えるくらいには腕がいいはずだ。その証拠としてギターヒーローのチャンネル登録者数は3万人を超えたのだから。

 

多分だが、バンドというものはメンバーと息を合わせて行うものであり、ソロで演奏するのとはわけが違う。例え演奏そのものが上手かったとしても、他のメンバーに合った演奏をしなければ音がごちゃごちゃになってしまい、結果として下手に聞こえてしまうのかもしれない。なんというか、素人感溢れる考察だな………。

 

もしかすると、初めてのライブを前にして、ひとりが緊張して実力を出せていないのかもしれない。もし後者だとしたら今回に限ってはどうしようもないと言える。

 

「ま、間違えた…!えっと………」

 

ショックを受けたひとりを見て、虹夏さんがすかさずフォローを入れようとするが、言葉が見つからないようだ。

 

どうも…。プランクトン後藤でーす………

 

「売れないお笑い芸人みたいな人出てきた!!?」

 

あーあ。またネガティブモードになっちまった。まあド下手なんて言われてしまえば、ひとりがこうなるのも最早必然と言うべきか………。そしてこうなったひとりは暗く狭くてじめっとしたような場所を好む。この付近にそれらしい場所は…………。

 

 

 

 

ゴミ箱だった。おいバカやめろ。華の女子校生がそんなところに入るんじゃありません!!

 

「ねぇ出てきて!!本番始まっちゃうよ〜!!!」

 

「や、やっぱりできません…!!」

 

「しょうがないよ!即席バンドなんだし、私だってそんなにうまくないし…」

 

「私は上手い」

 

虹夏さんがいい感じでフォローしてくれたというのに、リョウさんは何故そこで張り合うのだろうか……?確かに上手だったけれども。

 

「MCでも全くお役に立てないので…。あ、あ〜!私の命を持って腹切りショーでも…!!」

 

「冗談でもそういうこと言うな」

 

「いてっ」

 

命を粗末にするような言動は許しませんのことよ。ひとりならネタとしてではなく本当にやりかねないし。

 

「大丈夫。ひとりがヤジられたら私がベースでポムッってするから」

 

「ベースってそんなファンシーな音しますかね……?」

 

「流血沙汰もロックだから」

 

「ロックだから」

 

「ロック免罪符すぎる……!!」

 

ひとりが珍しくツッコミに回っている。この人たちは漫才師か何かか?

 

「大丈夫!今日のライブに来るの私の友達だけだし!普通の女子校生に演奏の良し悪しなんか分かんないって!」

 

なんか炎上しそうな発言だなぁ…。確かに細かいことは分からないが、演奏が上手いか下手かは素人でも流石に分かるぞ。ひとりを励ますための言葉の綾の類だとは思うのだが……。

 

「だから安心せい!」

 

「………ごめんなさい」

 

「けど………」

 

「……無理強いするものじゃない」

 

ひとりがあまりにも否定的な反応をするためか、2人はどうやらひとりがライブをやりたくないものだと捉えてしまったらしい。そんなはずはない。理由がどうであれ、バンドを組みたいからギターの練習を3年間も続けたのだ。そこまで続けておいて、ここに来てちょっとした理由で諦めるひとりではないはずだ。

 

「………そうだよね。無理なお願いしてごめん……」

 

「あっ、いや、そこは……!本当に嬉しかったんです、声をかけられて…。バンドはずっと組みたいと思っていて……。でも、メンバーが集まらなかったので、普段はカバー曲をネットにあげたり………」

 

俺が間に入ってひとりの代弁をしようとしたが、その必要はないようだった。やはり、3年間練習を続けてきただけに、余程バンドを組みたかったのか、あるいは………。

 

「………普段は何を弾くの?」

 

「結成した時にすぐ対応できるように、ここ数年の売れ線は全部……」

 

「えっ?すご…!」

 

「いや全然……。結局あんな感じになって……。やっぱり私には誰かを組むバンドなんて…………」

 

「………売れ線のカバーばっか……。なんかギターヒーローさんみたいだね?って知ってる?」

 

………んん??今知ってる名前が出てきたな。

 

「優太君は知ってる?」

 

「いや〜、聞いたことあるようなないような〜………」

 

ここはあえて曖昧な態度を取る。もし虹夏さんがギターヒーローの視聴者ならば、この後レビューというか演説が来るはずだ。少なくともソロで弾く時はひとりのギターは無茶苦茶上手い。それを利用してひとりの自信を再び取り戻させる作戦だ。

 

「知らないなら後でURLを送るよ!もう最高にうまいから聞いてみて!!」

 

 

計 画 通 り。ゴミ箱に篭っているひとりの顔を見てみれば、見事にデレデレしている。

 

「確かに凄く上手かった」

 

リョウさんも知っているらしい。バンドをやる人やギター好きの間では相当有名な存在なのかもしれない。

 

「まあ、でもネーミングセンスはちょっと痛いけど………」

 

「……!!!?」

 

………えっ?あのネーミングセンス痛いの?俺普通にかっこいいと思ってたんだけど…………。ちょっとショック…。

 

「でも、そんな上手な人でもね、私達の見えないところで沢山練習してると思うんだ。特にギターヒーローさんはそれが伝わってくるから、ひとりちゃんも見てみてよ!!」

 

虹夏さんがそう言った後、少ししてひとりがゴミ箱の中から出てきた。

 

「わ、私……も………!」

 

「も、もしかして出てくれる気になった?」

 

ようやく決心がついたかと思ったが、まだ一歩足りないようだ。なんでもかんでも俺が関わるべきではないとは思うが、背中を押すくらいなら別に問題ないだろ。

 

「……ひとり」

 

多くは語らない。俺はひとりの肩に手を乗せた。たったそれだけだ。でもわざわざ言葉にせずとも、ひとりが相手なら伝わるはずだ。『お前はできるやつだ』と。人と話すことは苦手かもしれない。人と合わせることは苦手かもしれない。だが、お前はやればできるやつだ。

 

「優太君…………」

 

「……緊張するならこれに入れば?」

 

リョウさんの一言によって、俺の後押しは無駄となった。完熟マンゴーというダンボールに被ったひとりは何故か少し気が大きくなり、そのままライブに出ることになった。

 

ちなみに、この後ひとりにはリョウさんに『ぼっち』という渾名がつけられるのだが、当の本人は無茶苦茶嬉しそうであった。本来なら咎めるところだが、ひとり自身が嬉しそうなら何も言わないでおこう………。

 

 

 

「よう近藤君。お勤めご苦労さん」

 

「すみません店長。遅刻した上に碌に仕事しなくて………」

 

「いや、大丈夫だよ。虹夏の我儘に付き合ってやったんだろ?むしろ感謝するよ」

 

「それにしても、近藤君が連れてきたギターの子、ある意味印象に残りますね〜」

 

「……………」

 

ひとりよ。本当にそんなんでいいのか?多分数ヶ月後にフラッシュバックを起こして顔ドラムするんだろうな。容易に想像がつく。

 

 

 

 

そしてライブは終了。虹夏さん達はライブ後の小休憩ということで、俺が掃除をしていたところだ。

 

「近藤君おつかれ。今日はもう大丈夫だぞ」

 

「いいんですか?ではお先に失礼します」

 

ひとりにとっての初ライブはお世辞にも成功したものとは言えない。ダンボールで顔は見えなかったが、ようやくバンドを組むことができたのだから、例え失敗したとしても、ひとりにとってはいい思い出になったのではないだろうか。多分、いい顔をしていたはずさ。

 

ガチャ…

 

スタジオの扉が開いた。開けたのはひとりだ。

 

「おつかれさん。帰るのか?」

 

「うん」

 

「んじゃ、一緒に帰ろうぜ。俺も丁度バイト終わったところだからさ」

 

「うん…!」

 

恐らく、いつもより人の視線を多数感じて疲れたのだろう。顔には疲労が見えるが、どこかやり切ったような顔にも見えた。

 

「………ひとり」

 

「なに?」

 

「……初ライブ、楽しかったか?」

 

出来なんて関係ない。最初からできるやつなんてほんの一握りだ。だから俺は出来なんて聞かない。楽しかったかどうか、それだけ聞けばいい。

 

「………うん。楽しかった…!虹夏ちゃん、次から頑張ろうねって言ってくれた…!!」

 

「………良かったな」

 

その満面の笑みを見るに、本当に楽しかったんだと思う。例え下手でも、観客を満足させられる演奏ではなかったとしても、ひとりにとってはかけがえのない青春の1ページになっただろうな。

 

「…………でも、虹夏ちゃんは可愛いし、リョウさんは美人だよね」

 

「……?なんだよ突然?」

 

もしも優太君の魅力に気づいたら、私にとってはとんでもない強敵になり得るのでは……?でも虹夏ちゃん達は同じバンド仲間だから………

 

「おいひとり。馬鹿なこと言ってないで早く帰るぞ。明日も学校あるんだからな〜」

 

「あっ、ま、待って!置いてかないでよ〜!」

 

忘れてた。俺の幼馴染はヤンデレでもあったんだわ。確かに虹夏さんもリョウさんも綺麗だもんなぁ。多分ないと思うけど、惚れられないように行動しないといけないな。まあ俺自身モテたことがないから、多分普段通り行動すれば大丈夫なはずだ。

 

「………ひとり」

 

「うん?」

 

「……頑張ったな」

 

「えへへ、ありがとう」

 

………やっぱり笑うと可愛いんだよな。俺の幼馴染(ひとり)って。

 

 




 ヤンデレどこ行った?イチャイチャ(一方的)どこ行った……?

 ちなみにこの回はシリアスをぶち込もうとしましたが、早すぎる気がしたので今回は取り敢えず見送りました。他にもヒロイン追加しようか悩んでいるところでございます。正統派ヒロインvsヤンデレヒロインとかもやってみたいなぁとか思ったり……。

 感想と高評価でモチベをもらっております。ありがたや……

追記:
この作品の趣旨を考えると、ヒロインを増やすのはやっぱり違うということで没と化しました。アンケートでは一応ありって答えた人の方が多かったんですけど、ここはぼっちちゃんオンリーじゃないと色々と方向性がおかしくなりそうなんで。あと読者の方からも指摘があった通り、結束バンド内でヒロインを増やしてしまった場合はギスギスバンドにならないと逆に不自然になってしまうという問題点もあり、私はギスギスバンドに仕立てあげたいわけではないので没にしました。

ヒロイン追加するのあり?(喜多ちゃんとか虹夏ちゃんとかとか…。なおヤンデレはぼっちちゃんの専売特許とする)

  • ありよりのあり
  • ぼっちちゃんだけでいいのだ
  • 俺に質問するな(訳:おまかせする)
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